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Title 自律神経機能
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自律神経機能 : 理学的検査法
竹宮, 敏子; 清水, 幹子
東京女子医科大学雑誌, 54(10):935-940, 1984
http://hdl.handle.net/10470/5419
Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database.
http://ir.twmu.ac.jp/dspace/
4
1
( 東 女 医 大 誌 第5
4巻 第 問 )
頁 935~940 昭和 5
9年 1
0月 J
自律神経機能一理学的検査法一
東京女子医科大学
脳神経センター
タケミヤ
神経内科学教室〔主任:丸山勝一教授〕
トシコ
シミズ
ミキコ
助教授竹宮敏子・清水幹子
〔 受 付 昭 和5
9
年 8月 2日
〕
PhysicalExaminationso
fAutonomicNervousSystem
ToshikoTAKEMIYA,
M.D.a
n
d MikikoSHIMIZU,
M.D.
D
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2
. Dermographia
はじめに
神経機能検査のうち,特に理学的検査法について
自律神経機能検査は古くより各種のものが行な
われているが,大別すると表 1のようになると考
解説し,主に臨床の研修医の方々の参考に供した
いと思う.
える.
1.循環器系
いずれも個体のー断面,一時点での機能を
1
. Ashner眼球圧迫試験
checkするわけであり,判定に際しては検査を行
原理:眼球圧迫により,三叉神経の鼻毛様体神
なった時点で、の外部環境と個体の内部条件につい
経の毛様体神経節との交通枝が刺激され,刺激は
ての配慮を忘れてはならない.
延髄に伝達される.その結果,反射的に迷走神経
疾患によっては,夜間に発症したり,増悪化を
が興奮し徐脈になる.左右の眼球圧迫により左右
みたりするもの(例えば,夜間狭心症,夜間心臓
別々に迷走神経が興奮する.右側の眼球圧迫で,
e
s
t
l
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s
sl
e
g
s
哨息,気管支瑞患,脳血栓,群発頭痛, r
右迷走神経が興奮し,右迷走神経は心臓の洞結節
syndromeなど,枚挙にいとまがな L、ほど多しうが
に抑制的に作用する.左側の眼球圧迫では左側の
i
r
c
a
d
i
a
nrhythmとして 2
4時間
あり,睡眠を含む c
迷走神経が興奮し主として房室結節に抑制的に
を単位とした見方も重要である.
作用する.
e
d
s
i
d
eでの自律
本稿では日常行なわれている b
~935
手技:被検者を背臥位とし,足の方向に視線を
4
2
判定:副交感神経緊張充進の程度を脈拍数の減
表 1 自律神経機能検査
少度によって表わす.
H 自覚症状と精神・心理学的検査
脈拍減少 1O~ 1
9
/分(+), 20~29/ 分(十十λ
3
0
/分以上(サ),数秒間心停止,日区吐など(附).
1)質問紙法 CCMI,Y.G,SDS)
2
) 投影法テスト CSCT,P.F,ローノレシャツハ)
3
)ストレス負荷試験(クレペリン,ストレスインタ
ビュー, MDT)
注意:眼球圧迫前に, コンタクトレンズを使用
3
2理学的検査
していないかどうか必ず調べること.眼球圧迫の
1)循環器系
程度を一定にすること.被検者が眼球が痛いと感
① A
schuer眼球圧迫試験
② C
qermahs.Hering頚動脈洞圧迫試験
ずるくらいが圧迫効果がえられる.加圧時間は
③ C
o
l
dp
r
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④ P
o
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e
s
t
10~15 秒の範囲内とし,数回反復する.決して 1
分以上行なってはならない.
D 呼吸と循環器系
①呼吸性不整脈
2
. Czermak-Hering頚動脈洞圧迫試験
② V
a
l
s
a
l
v
aManeuver
原理:ー側の内外頚動脈分岐部の加圧により降
3
)皮膚血管系
圧と徐脈を起こさぜるものである.頚動脈洞神経
① K
e
s
t
n
e
r皮膚毛細管反応
② D
ermographia
を経て求心性刺激が中枢に達し,反射的に迷走神
3
3電気生理学的検査
経が刺激され,心臓の働きが抑制されて徐脈,降
①指先容積脈波
圧を来たすと考えられる.
② M
i
c
r
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v
i
b
r
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t
i
o
n
③ SPR
④ T
hermograply
手技
甲状軟骨の高さで胸鎖乳突筋の前縁に総
頚動脈の内外頚動脈への分岐部を触れる.この外
M 生化学的検査
①カテコールアミン
側部が頚動脈洞である.この部分を圧迫すると,
②セロトニン
洞圧迫により血圧下降と徐脈がおこる.血圧下降
③各種ホノレモンの定量
は刺激直後から始まり
④尿中 p
o
r
p
h
y
r
i
n体
1分以内に最低値に達す
る.圧迫する場合は,心ず右側より一側ずつ行な
⑤ DBH
⑥ c.AMP
, c.GMP
う.
3
5薬理学的検査
判定:脈拍数の減少: 10~19/ 分(十), 20~29/
①アドレナリン〔エピネプリン〕
分(十十), 3
0
/分以上(+件),心拍停止,めまい,失
②ピロカノレピン
③アトロビン
神(時).
④ノノレアドレナノレン〔メコリーノレ〕
これは一応の判定基準であって一定のものでは
⑤チラミン
⑥少量薬物試験
ない.圧迫の程度,個人差などのため正常人で、も
3
6サーカーディアンリズムと p
o
l
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g
r
a
p
h
反応が起こらないこともあり得る.
連続 2
4時間血圧,脈拍測定
注意:加圧部位をまちがえないこと.総頚動脈
H
o
l
t
e
r心電図
終夜脳波,呼吸曲線等
本幹を圧迫すると頚動脈洞内庄が下降し,血圧の
上昇と頻脈がおこる.圧迫の程度や時間により反
むけさせて閉眼さぜる.まず右側の眼球を眼険の
応にバラツキがあり,再現性にも問題があり,あ
上から検者が揖指で中等度に加圧する.右側の眼
まりすすめられない検査である.
球圧迫で効果がはっきりしない時は,つぎに左側
を圧迫する.原則として両側の眼球圧迫を同時に
3
. 寒冷昇圧試験 c
o
l
dp
r
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o
rt
e
s
t
原理:寒冷刺激により血管運動神経反射による
末梢血管抵抗の増大で,血圧が上昇することを利
行なってはならない.
効果として徐脈〔不整脈〉を来たす.反応過剰
用するものである.
の場合には,一時心拍停止を来たすことがある.
手技.安静背臥位の状態で,血圧,脈拍を測定
本試験の場合,可能であれば同時に心電図または
し,安定したらー側の手を手関節の上まで 4Cの
指先容積脈波を記録しておくと情報量が増す.
5秒毎に対側で血圧を測定する.
氷水中に入れ, 1
-936ー
0
4
3
1分後に手を氷水中から出し,その後 2分毎に血
り失神を来たすような場合は器賞的異常と考えて
よし、
圧測定を行ない,冷水浸前の値に復するまで続け
注意
る.持続血圧計があり,一定条件で記録されれば
体位変換による血圧や脈圧の変化は反射
便利である.指先容積脈波が同時に記録できれば,
であり,きわめて短時間で調節されるのが普通で
末梢血管抵抗増大の程度が他覚的に示され,さら
ある.調節に要する時間についてのチェックも必
に好都合である.
要で,遅延する場合は異常で、ある.従って体位変
判 定 収 縮 期 血 圧 の 上 昇 が 20mmHg以上であ
換後ただちに脈拍と血圧を測定するだけでなく,
れ ば 血 管 運 動 神 経 緊 張 充 進 状 態 で あ る :2
0-29
l分から 3分
mmHg(十
)
, 30-39mmHg(
十
十
)
, 40mmHg以上
する必要がある.
5分
7分
, 1
0分と経時的に測定
付. S
c
h
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l
l
o
n
g簡易循環機能検査法
(
+
凡
,I
I,I
I
I部に分かれているが,一般には
原法は 1
本態性高血圧者では本反応、が著明に允進し,回
I部(立位負荷試験〉と I
I部(運動負荷試験〉が
復遅延が目立つ.
拡張期血圧については上ー昇が 10mmHg以下を
用いられている.
h
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p
o
r
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c
t
o
r
), 1
0-20mmHgは正常
低反応性 C
立位負荷試験では臥位で血圧と脈拍数を測定し
(
n
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r
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c
t
o
r
), 20mmHg以 上 は 高 反 応 型
(
h
y
p
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r
r
e
a
c
t
o
r
) とL、う.
0秒以内におこ
正常では,最大反応は冷水浸後 3
た後,静かに楽な姿勢で、立たせ,その直後および
り,離漫後 2分以内で前値に復する.異常反応(最
起立により,収縮期圧が著しく低下し,拡張期
大反応出現までに時間がかかり,前値への回復時
いし弱反応〉を示すものは,高血圧症,甲状腺機
h
y
p
o
t
o
n
i
c r
e
a
c
圧が上昇する場合は低緊張型 (
t
i
o
n
)といい,収縮期圧,拡張期圧ともに著しく低
下する場合を無力型 C
hypodynamicr
e
a
c
t
o
n
)と
能克進症,
いう.正常では血圧,脈拍共に変化は軽徴である.
l分毎に 3分間(変法では 2分毎に 1
0分間〉血圧
と脈拍数を測定する.
間が遅延するものや,過剰反応あるいは無反応な
レイノー病,躍原病,および神経筋の
h
y
起立性低血圧の著明な疾思としては, S
変性疾患等である.
4
. 体位変換試験 p
o
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a
lt
e
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t
Drager症候群,脊髄疾患,シモンズ病,糖尿病性
n
e
u
r
o
p
a
t
h
y等があるが,立位で失神の危険があり
原理'安静背臥位から他動的に立位に体位変換
e
d
t
i
l
t試験を行なう.
得る場合には B
注意:環境温度を一定とする.
I
I
. 呼吸と循環系
を行なうと,重力の影響で血液は下方に沈下し,
静脈壁が拡張して血液は下部に残りがちで心臓へ
e
s
p
i
r
a
t
o
r
yarrhythmia
1.呼吸性不整脈 r
の戻りが悪くなる.そのために静脈環流量が減少
原理・迷走神経緊張が吸気時の心拍数増加と呼
気時の心拍数減少を来たす.
し,心拍出量も減少して収縮期圧が下降する.
手技:被検者を臥位安静として脈拍と血圧を測
手技
被検者宅ど背臥位にして呼吸曲線と心電図
定した後,他動的に立位として脈拍と血圧を測定
第I
I誘導または指先容積脈波を同時に記録する.
する(他動的に出来ない場合は出きるだけ静かに
数秒間,呼吸を停止させたり,軽い深呼吸をさぜ
行なう).
てみる.
判 定 : 最 大 p-p間 隔 と 最 小 p
-p間 隔 の 差 が
判定:正常では起立直後の脈拍は臥位に比し
10-20/分の増加がみられ,収縮期圧は 10mmHg
0
.
1
6秒以上を異常所見とする.吸気時の心拍数増
以内の下降,拡張期圧は 5-10mmHgくらいの上
加と呼気時の減少に注目する.
呼吸曲線は胸部で記録する.小鬼では常に著明
昇をみる.
1
/分 以 上 の 増 加 あ る い は 収 縮 期 圧 が
脈 拍 が2
であるから小児性不整脈の別名がある.また,成
16-30mmHg程度の低下は機能的異常,脈拍が不
変で,収縮期圧が 30mmHg以 上 低 下 し 立 位 に よ
人で軽い深呼吸により不整脈が著明に現われる
か,あるいは深呼吸により増強するものを陽性と
9
3
7
4
4
mmHg
mmHg
T
b
、
川
11
0
0
斗
A
f
d
1
5
0
1
5
0
1
0
0
50
50
5
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図
V
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eM
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巴r
時の血圧変化 a
:腕動脈から行なった観血的血圧曲線.
↑). c
:コントローノレ 1-4の数字は各相.
b 呼吸曲線〔吸気:↓,呼気
判定する.これは副交感神経過敏の徴候であり,
間呼出努力の後,検者の合図で呼吸を再開させる.
a
t
r
o
p
i
n
e注射によって消失する.
2
.V
a
l
s
a
l
v
amaneuver
原理.血圧を指標とし, V
a
l
s
a
l
v
amaneuver
(以下 VM)により,圧反射を介する循環系応答の
再開直前の血圧,脈圧最小時点を第 2相とする.
再開後,胸腔内圧低下と同時に血圧は一旦低下す
るが,直ちに上昇し始め,脈圧も拡大し,血圧,
脈圧ともに最高,最大(第 l相よりもさらに過大〉
一端を知る.即ち,時間毎に血圧を連続記録しな
v
e
r
s
h
o
o
tの時点、を第 3相と呼ぶ.
となる.この o
がら,強制呼出後,一定時間呼気位のまま呼吸停
その後,血圧と脈圧が次第に下降,脈圧が狭小化
止を続けた後,呼吸を再開すると,呼吸再開後し
するばかりでなく徐脈傾向となり,やがて血圧,
ばらくの時聞を含み,全経過を通じて血圧は一定
脈圧,脈拍数共に V M施行前値に戻る.この戻っ
のパターンをもって変動する.このノミターンから,
た時点を第 4相とする.
圧受容器を含んだ左反射弓および t
a
r
g
e
to
r
g
a
n
とした V Mの 効 果 を 得 る の に 必 要 な 初 期 強 制 呼
である心,血管の機能を推察するものである.
反射弓の一部または t
a
r
g
e
to
r
g
a
nに機能異常
があれば,
末梢動脈連続血圧測定により,血圧変動を指標
このパターンが健康人とは異なる.健
気圧は 50-60mmHg
,後続呼気停止時聞は 1
0秒以
上である.
康人であっても V M施行条件の如何で血圧応答
判定:第 l相で血圧の低下が起らず,第 2相で
の程度またはパターンに差異を生ずるので,健康
血圧低下の程度が軽い場合は交感神経緊張克進状
人,疾病の場合を通じて施行条件, ことに強制呼
態であり,アドレナリンを少量注射後に v
a
l
s
a
l
v
a
気圧と呼気位停止時聞を一定にする必要がある.
試験を行なうと同様の変化を認める.心疾患がな
手技 :VM施行にあたっては,水銀血圧計にゴ
くて,第 1相および第 2相で血圧下降が著明で,
ム管の一端をつなぎ,他端から吹き込んだ被検者
第 3相における血圧上昇が軽度もしくは消失して
の強制呼気圧をみることにする〔図1).被検者を
いる場合は,交感神経緊張低下状態ないし副交感
安静仰臥位とし,平静呼吸,血圧の安定を確認し
神経緊張允進状態が考えられる.
て,検者が合図をして被検者にできる根り強く呼
o
v
e
r
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o
o
t
)の程
第 3相における過剰血圧上昇 (
出させる(胸腔内圧上昇〉と,血圧は直ちに上昇
度が強く,増加した脈拍数の復帰時間が著しく延
し(最高に達した時点を第 1相とする),続いて声
長する場合には交感神経緊張允進状態を考える.
門を閉じ,呼気位のまま同程度の強さで呼出努力
1
1
1
. 皮膚血管系
を続けさせる(胸腔内圧上昇のままでキノミル
1
. Kestner皮膚毛細管反応
-Forcede
x
p
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r
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i
o
na
g
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i
n
s
tc
l
o
s
e
dg
l
o
t
t
i
s
),血
原理:皮膚の一部を冷却し,その部に発赤が生
圧上昇直後に徐脈となるが,血圧下降と同時に脈
ずるまでの時間,発赤の強度と持続時聞を測定し,
圧も次第に狭小化し,脈拍数も増加する.約 1
0秒
それによって自律神経系の機能を推測する.
-938ー
4
5
手技・皮膚の局所はどこでもよいが,通常は前
合
,
自律神経機能検査の選択について考えるべき
胸部皮膚に約 2.5cm2 の氷片をのせ,3秒後に取り
点は下記のようなものである.
除き吸取紙で水分を吸いとる.発赤出現までの時
1)全身反応、か局所反応、か
脈拍,血圧,呼吸,体温等のパイタノレサインを
間,発赤の強度,持続時聞を測定する.
判定.発赤なし( 〉,発赤持続 1~29秒(:t),
30~59秒
指標とする場合は勿論全身反応として把握すべき
〔
十
)
, 60~89秒 (
十
十
)
, 90-119
秒(十件),
である.眼症状(ホルネル症候群,アディー症候
t
o
n
i
cまたは a
t
o
n
i
cb
l
a
d
d
e
r
)
群など〕や跨脱症状 C
1
2
0秒以上(判的.
精度上に難点があり,あまりすすめられない.
など部分症状が顕著な場合でも全身的な c
heck
2
. 皮膚紋酋症 Dermographia
を忘れないように心がける.
原理・先端の鈍なもので皮膚に機械的刺激を加
2
) 方法
えると,皮膚面に色々な反応がみられる.刺激の
第一に患者の病状を考麗した上で,必要な情報
強さと末梢の毛細血管の反応性とにより,白色線
を得るための手段として,何をどんな方法で測定
条,赤色線条,膨疹等に分ける.
したらよいかを決める.
先端の鈍な硝子様や消息子などで負荷圧
検者の経験,手技,判断が最も間われるのが理
を一定とし,移動速度は 5cm/sec程度に一定とす
手技
学的検査法であり,電気生理学的検査や生化学的
る.擦過部位は背部を選ぶ.
検査および薬理学的検査等では,専門家による測
a
) 白色皮膚紋画(白色線条)・比較的弱い機械
的な刺激により刺激部位に限局しておこる白色線
条で 10~15秒で出現し,
定が多いので,現在当科で行なっているものにつ
いては測定誤差は非常に少なくなっている.
2~ 3分後に消失する.
3
) 負荷試験
レイノー症状については冷水浸試験, ホノレネル
殆んどの人に出現するものである.
b
) 赤色皮膚紋画(赤色線条):皮膚に強い機械
徴候やアディー瞳孔についてはアトロピン,
ピロ
的刺激を与えると刺激部位に限局して 3~15 秒の
カノレピンおよびチラミンの点眼試験,起立性低血
潜伏時聞を経て,赤色線条が出現する.
e
d
t
i
l
t試験が,
圧症については起立負荷または B
c
) 浮腫性皮膚紋画(膨疹):強 L、機械的刺激に
より刺激部位に限局しておこる浮腫反応で 1~ 3
さらに排尿障害については跨脱内圧曲線や
c
y
s
t
o
m
e
t
r
y等が必要である.
分の潜伏時間を経て出現する.
夜間睡眠中の無呼吸や,早朝高血圧等について
判定:白色皮膚紋画は,交感神経末梢刺激によ
は連続ポリグラフ(脳波,呼吸曲線,心電図,脳
る皮膚毛細管収縮と思われる.殆んど全ての人に
l
e
c
t
r
oophthalmographyを組合
波,血圧さらに E
出現するので診断価値は少ない.
せた記録を 12~24 時間連続で行なう〉も必要とな
赤色皮膚紋画は,副交感神経の末梢刺激により
る
末梢毛細血管の拡張で生ずると考えられる.一般
4
)判定について
には男性よりも女性に,老年期よりも思春期によ
各機能検査の成績をまとめると下記のようにな
り強く出現しやすい傾向にあり,全自律神経の不
る
A.交感神経緊張↑
安定状態を反映する.
B
. 交感神経緊張↓
浮腫性皮膚紋固は,毒麻疹様の腫脹をきたす.
副交感神経中の栄養神経末端刺激による毛細血管
C
. 副交感神経緊張↑
の透過性克進によると考えられている.やはり全
D
. 副交感神経緊張↓
自律神経不安定状態に関係する.
E.全自律神経緊張↑不安定
F
. 全自律神経緊張↓不反応
考 察
検査の選択を含み,理学的検査法について概説
実際には A とD, BとCの鑑別が困難なことも
してみた.実地臨床で,医師が患者と相対した場
あり得るので,検査はできるだけ複数の組合ぜで
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4
6
丸山勝一教授の御校聞を感謝します.
行なう方が判定しやすくなる.
文 献
さらに責任病巣として,中枢か,経路か,末柏、
泉・金井正光.臨床検査法摘要. 2
8版 1
8編
9-12頁 金 原 出 版 ( 19
7
8
)
1)金井
か,あるいは targetorganの受容体か,と¥, 、うこ
とになると,薬物負荷試験が必要となる.
2
) 揚 俊 哲 :V
a
l
s
a
l
v
aManeuverの方法論.診断と
11
0
6-110 (
19
7
3
)
治療 6
3
) 安田利顕:皮膚科検査.金原出版(19
7
3
)
結 語
自律神経機能の理学的検査について,現在行な
われているものを中心に解説し,検査の選択につ
いて 2-3の問題点を指摘した.
9
4
0
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