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若年性ネフロン癆と考えられた一例
若年性ネフロン瘻と考えた1例 京都第一赤十字病院 腎臓内科・腎不全科¹ 近江八幡市立医療センター 腎臓内科² 山下紀行¹ 薗村和宏² 伊藤泉¹ 太田矩義¹ 中山雅由花¹ 中ノ内恒如¹ 【症例】24歳女性 【主訴】嘔吐 【現病歴】 生後間もなく網膜色素変性症により全盲となったが, その他は 特に問題なく, 健診等で検尿異常を指摘されたこともなかった. 10歳時の採血ではCr 0.5mg/dlと基準内であった. 約1年半前に他医で 血清Cr 2.4 mg/dlを指摘されたが, 精査は行われなかった. 1か月前からの食思不振, 数日前からの嘔吐を主訴に当院を受診し, 血清Cr 3.7 mg/dlと腎機能低下を指摘され精査目的に入院となる. 【内服歴】なし 【家族歴】 祖母が妊娠時に腎障害を指摘→詳細不明だが透析導入には至らず 4年前に他界 その他父母や祖父母、兄弟、叔父叔母、従兄弟に腎疾患なし 入院時現症 身長: 157cm 体重: 42.7kg 体温: 36.9℃ 血圧: 131/80 mmHg 脈拍: 90 回/分 SpO2:100%(室内気) 全盲 左右に振れる眼球運動あり 眼瞼結膜 :貧血なし 肺音 :清 ラ音なし 心音 :整 雑音なし 腹部 :平坦 軟 圧痛なし 四肢 :浮腫なし 検査所見 【血算】 WBC 9210 /μl RBC 390万 /μl Hb 11.3 g/dl Ht 34.0 % Plt 23.6万 /μl 【動脈血ガス】 pH 7.360 pO2 87.4 mmHg pCO2 37.8 mmHg HCO3- 20.8 mmHg 【生化学】 TP 8.9 g/dl Alb 5.3 g/dl AST 14 IU/l ALT 11 IU/l T-Bil 0.9 mg/dl LDH 208 IU/l BUN 33 mg/dl Cre 3.76 mg/dl eGFR 13 CRP 0.1 mg/dl UA 6.1 mg/dl Ca 10.7 mg/dl P 2.1 mg/dl Na 140 mEq/l K 2.6 mEq/l Cl 107 mEq/l HbA1c 4.7 % (NGSP) 検査所見 【尿検査】 <定性> 比重 1.007 蛋白 (+/-) 潜血 (+) 白血球反応 (-) 糖 (-) <沈渣> 赤血球 1-4 /HPF 白血球 <1 /HPF 円柱 - /HPF <定量> 尿蛋白 0.65 g/gCr β2MG 23800 μg/l NAG 3.4 U/l 【外注検査】 IgG 1649 ㎎/dl IgG4 19.6 ㎎/dl IgA 215 ㎎/dl IgM 102 ㎎/dl C3 85 ㎎/dl C4 23 ㎎/dl CH50 53 U/ml 抗核抗体 <40 倍 PR3-ANCA <1.0 EU MPO-ANCA <1.0 EU 抗SSA抗体 陰性 抗SSB抗体 陰性 ACE 16.9 U/l 画像検査 胸腹部CT 腹部超音波 右腎 左腎 腎長径 右:101㎜/左:98㎜ 萎縮性変化なし 皮質はやや厚め 小嚢胞も含め腎嚢胞は認めず 入院後経過 消化器症状について 腹部CT及び消化管造影検査では通過障害を認めず 消化管蠕動促進薬を処方し、食後の臥位を回避したところ 嘔吐等の消化器症状は消失した 腎不全について 補液を行ったがCrは3台のまま改善を認めず 精査目的に経皮的腎生検を施行した Ø 若年者の腎機能障害 Ø 検尿異常に乏しい Ø 網膜疾患を合併 Ø 尿細管間質障害マーカー高値 Ø 腎機能に比し腎形態が保たれる 腎不全の原疾患として 若年性ネフロン癆の可能性を考えた 腎病理所見 光顕所見 高度の間質線維化 Masson染色 ×40 光顕所見 全節性硬化糸球体が多数 PAS染色|PAM染色 ×400 光顕所見 残存糸球体はほぼ正常 PAS染色|PAM染色 ×400 光顕所見 細胞性半月体(この糸球体のみ) PAS染色|PAM染色 ×400 光顕所見 皮髄境界に尿細管の嚢胞様変性病変 PAS染色|PAM染色 ×100 光顕所見 尿細管の萎縮、拡張、線維化 尿細管基底膜の非対称性の肥厚、多重化 PAS染色|PAM染色 ×100 IF IgG IgA C3 IgM C1q 電顕 パラメサンギウム領域のdeposit 生検所見まとめ 光顕 糸球体:総数22個 全糸球体硬化10個 メサンギウム細胞の増殖は、巣状分節性に軽度 細胞性半月体形成を1つの糸球体で認める 基底膜の変化は認めない 間質:線維化高度 尿細管の変性や萎縮、尿細管の拡大を認め, 尿細管基底膜は非対称性に多重化 皮髄境界の部位に嚢胞様変性した尿細管の集積を認め, 周囲に炎症細胞の浸潤を認める 血管:特に病変なし 蛍光染色 IgA及びC3が一部(+) 電顕 尿細管間質の変性所見に加えパラメサンギウム領域にdepositを認める 慢性尿細管間質性腎炎 生検所見まとめ 光顕 糸球体:総数22個 全糸球体硬化10個 メサンギウム細胞の増殖は、巣状分節性に軽度 細胞性半月体形成を1つの糸球体で認める 基底膜の変化は認めない 間質:線維化高度 尿細管の変性や萎縮、尿細管の拡大を認め, 尿細管基底膜は非対称性に多重化 皮髄境界の部位に嚢胞様変性した尿細管の集積を認め, 周囲に炎症細胞の浸潤を認める 血管:特に病変なし 蛍光染色 IgA及びC3が一部(+) 電顕 尿細管間質の変性所見に加えパラメサンギウム領域にdepositを認める 慢性尿細管間質性腎炎+IgA腎症? ご教授いただきたい点 ①ネフロン癆の診断でよろしいでしょうか? ②これまでの尿検査で血尿は認めませんが, IgA腎症合併の可能性はありますでしょう か? (細胞性半月体と考えてよいでしょうか?)