...

離島研修における下血症例についての報告

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

離島研修における下血症例についての報告
下血を主訴に来院された虚血性腸
炎の1例
与論徳洲会病院
久保田望 久志安範 高杉香志也
症例・主訴
症例 : 64歳 女性
主訴 : 下血
現病歴
生来健康,食欲低下で当院に入院されている
母親の看病を毎日されておりを疲れていた
とのこと。
12月29日朝から腹部不快感を認めていたが
その他は特に症状はなかった。15時頃、自
宅のトイレで排便したところ赤黒い便を認め
たため当院を受診した。
家族歴・既往歴・生活歴
それぞれ特記すべき事項なし
飲酒 機会飲酒 , 喫煙 なし , 常用薬 なし
来院時身体所見
意識レベル JCS0 GCS15 E4V5M6
体温 36.4℃ ,
血圧 128/70 mmHg ,脈拍数72 /min (reg),
呼吸数 16 /min ,SpO2 99% (Room air)
来院時身体所見2
眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄染なし
咽頭発赤、腫脹なし
頚部リンパ節触れず
胸部 肺 雑音なし
心 心音整、雑音聴取せず
腹部 グル音亢進
圧痛・自発痛なし、リバウンドなし
肛門鏡 痔核なし、出血なし、便潜血検査陽性
検査所見
【血液検査所見】
WBC 6600 /µl, Hb 11.3 g/dl(11/22Hb 13.1) , Plt 20.4 万/µl ,
CRP 0.3以下 mg/dl ,
Na 141 mEq/l , K 3.7 mEq/l , Cl 106 mEq/l ,
AST 18 U/l , ALT 14 U/l ,
BUN 24.5 md/dl , Cre 0.5 mg/dl , BS 103 mg/dl
【尿検査所見】
潜血(±),糖(-),蛋白(-),ケトン(-),
RBC1~4/HPF,WBC1~4/HPF
【ABG】 (3Lカヌラ,呼吸数 18/min,仰臥位)】
pH 7.39 , PO2 196 mmHg , PCO2 40 mmHg , BE -0.8 mmol/L ,
HCO3- 24.0 mmol/L
胸部レントゲン
心拡大なし , CPA sharp , 肺野特記すべき異常陰影なし
心電図
正常洞調律 , 心拍 74 bpm , 正常軸 , Afなし
QT延長なし , ST-T変化なし
診察中に大量の下血あり
意識消失する
血圧触診にて80台
直ちに2ルート確保し生食ラクトリンゲル投与
再び肛門鏡挿入し多量の凝血塊認め肛門
からの出血であることを確認
腹部エコーにて
上行結腸に浮腫像
腹部造影CTで
上行結腸に浮腫像
CT上では出血源は確認できなかった
急速補液により意識回復しバイタル
安定した。
その後画像検査・症状から大きな出
血は続いていないものと判断し後日
内視鏡検査を予定し点滴・止血剤に
て経過観察とした。
来院時(17時)Hb11.3だったが徐々に
低下し24時にはHb6.0まで低下した
ためRCC4単位輸血した。
腹部造影 CT
腹部造影 CT
腹部造影 CT
鑑別疾患
憩室症
虚血性腸炎
大腸癌
憩室炎
上部消化管出血
入院後経過
出血:ラクトリンゲル液にて補液、止血剤(アドナ・トランサ
ミン)投与
貧血:入院1日目8時間でHb11.3→Hb6.0に低下したため
RCC4単位投与、鉄剤(フェジン)投与
下部消化管内視鏡:入院5日目→便塊のため不明瞭であ
り後日再施行。活動性出血認めない。
入院11日目 →大腸内ポリープ・mass・潰瘍認めず
上行結腸に軽度発赤・びらん認めた。薄まった血液
を大腸内に認めたため小腸からの出血は否定できず
腹部造影CT施行するも小腸に異常を認めず。入院時
認めていた上行結腸の腫脹は改善していたためその
まま経過観察。その後貧血改善傾向であり経過良好。
下部消化管内視鏡(入院11日目)
腹部造影CTの比較
• 左側入院初日
右側入院11日目
下血について
• 消化管からの出血が肛門から排出される
状態。
• 上部消化管からの出血が過半数。
• 大腸からの出血は2~3割。
• 小腸からの出血は2~3%程度。
下血の原因疾患
1.消化器疾患
a.大腸疾患・・大腸癌,大腸憩室,虚血性大腸炎,単純性潰瘍
感染性腸炎, Crohn病,腸管Bechet,動脈瘤
薬剤性腸炎,放射線性腸炎
b.小腸疾患・・ Crohn病,腸管Bechet,Meckel憩室,単純性潰
瘍,悪性リンパ腫
c.肛門疾患・・痔核,裂肛
c.上部消化管疾患
2.全身性及び臓器系統疾患
a.血液疾患・・多発性骨髄腫,DIC,アレルギー性紫斑病
b.血管性病変・・遺伝性出血性血管拡張症,血管異形成
c.その他・・アミロイドーシス,心不全,膠原病
虚血性腸炎(Icshcemic colitis)について
【疫学】 動脈硬化の進行した高齢者。70歳以上に好発。
性差はない。好発部位は左側結腸。右側結腸は20%以下。
【症状】 腹痛(左下腹部痛) , 下血(新鮮血) , 水様性下痢
【検査】 内視鏡で急性期に粘膜の発赤・腫脹・びらん・出血・縦走
潰瘍
注腸X線で急性期母指圧痕像・縦走潰瘍、狭窄
【診断】 大腸の炎症所見+大腸内視鏡や注腸X線の特徴的所見
【治療】 原則として絶食、輸液、抗生剤投与
【予後】 一過性型が90%以上を占め再発も少なく予後良好
壊死型は死亡率が50%前後と高く予後不良
結 語
下血症状にて外来受診された症例。精査の
結果,下血の原因は年齢や症状,画像所見か
ら虚血性腸炎が最も疑われた。内視鏡では
虚血性腸炎の回復期をみた可能性が考えら
れた。病変部位や症状は非典型的な部分も
みられた。
下血の対応を再確認するとともに,虚血性腸
炎についての基本的な分類を復習した一例
であった。
Fly UP