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3 南アフリカ市場の日本品と 「東洋の脅威」 論

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3 南アフリカ市場の日本品と 「東洋の脅威」 論
第4章
3南
世界恐慌期における日本一南アフリカ通商関係史
ア フ リ カ 市 場 の 日本 品 と 「東 洋 の 脅 威 」 論
ダーバ ン駐在 名誉領事 の報告 に基 づいて
(1)「
日阿 取 極 』
1930(昭
和5)年10月16日
に ケ ー プ タ ウ ン山 崎領 事 と南 ア フ リカ連 邦 外 務 大 臣 代 理 フ ァ レ
ル との 間 で交 わ され た一 通 の取 極 文 書 が あ る。 これ が 日本 人 の南 ア フ リカへ の入 国 居 住 に関 す
る 「日阿 取 極 』 で あ る。 この文 書 は、 これ ま で の慣 例 に従 って 日本 人 に対 して 与 え られ て き た
入 国 規 定 を 明文 化 した もので あ っ た。 昭 和 初 期 に お い て、 日本 人 は、 仮 入 国 許 可 の 規 定 を 適 用
して 自 由 に入 国 で き、 南 ア フ リカ連 邦 内 の旅 行 に は差 しっ か え は な か ったが 、 商 業 に従 事 し、
不 動 産 を所 有 す る こと は許 可 され て い な か った の で あ る。
した が って、 日本 政 府 は、 南 ア フ リカ市 場 を確 保 す る た め に南 ア フ リカ政 府 に対 して 日本 人
の居 住 と営 業 の 自 由 を承 認 させ る こ とを 急 務 と して い た。 同様 に、 南 ア フ リカ の1913年
移民
法 制 定 以 前 に移 住 した永 住 権 保 有 者 の 補 助 員 呼 び寄 せ に関 す る件 と トラ ンスバ ール 州 にお け る
1908年 の ア ジ ア人 登 録 法 の 修 正 ま た は 日本 人 に対 す る例 外 適 応 の 件 につ い て、 日本 政 府 は交
渉 を 重 ね た。 そ の結 果 、 っ い に、 日本 側 の要 求 は受 け入 れ られ る こ とに な った。1936(昭
11)年6月16日
和
、太 田領 事 は、 有 田八 郎 外 務 大 臣 に宛 て て次 の よ うに打 電 して い る。
「居 住 営 業 権 二関 ス ル改 正 法 は十 五 日議 会 ヲ通 過 シ我 方 主 張 ハ全 部 貫徹 シ タル 次 第 ニ シテ本
官 ハ 関 係 各 方 面 殊 二総 理 大 臣 二対 シ其 ノ好 意 二対 シ深 甚 ナ ル 謝 意 ヲ表 スル ト共 二本 法 通 過 ハ 日
阿 両 国 ノ為 慶 賀 二堪 ヘ ス此 ノ上 トモ両 国 親 善 関 係 増 進 方 二 付 努 力 ア リ度 キ 旨述 へ置 キ タ リ」(17)
この 『日阿 取 極 』 は、 南 ア フ リカに お け る商 工 業 者 に少 な か らぬ 不安 を もた ら した。 この点
に関 して 、 当 時 ダ ーバ ンの 名誉 領 事 の職 に あ った ウ ィ リア ム ・ロバ ー ト ・ライ トの通 商 報 告 に
基 づ い て 考 察 す る。
(2)ダ
ーバ ン名 誉 領事 の 任命
1926(大
正15)年4月16日
付 、 幣 原 喜 重 郎 外 相 か らケ ー プ タ ウ ン今 井 忠 直 領 事 に 宛 て た
「ダ ーバ ン駐 在 名 誉 領 事 ウ ィ リア ム ・ロバ ー ト ・ライ ト任 命 通 知 ノ件 」 に添 付 され て い た
「任
命通 知」 に は、 ダ ーバ ン名誉 領 事 任 命 に つ いて 次 の よ うに記 され て い る。
「日本 国 ト英 領 南 阿 弗 利 加 トノ 間通 商 貿 易 ノ 関 係 漸 次頻 繁 二赴 キ随 テ ダー バ ンニ帝 国名 誉 領
事 ヲ置 ク ノ必 要 を感 スル ノ際貴 下 ノ勤 勉 誠 実 ナル ヲ信認 シ今 般 本 大 臣 二於 テ上 奏 ヲ遂 ケ候 結果
貴 下 ニ ダ ーバ ン駐 在 名 誉領 事 ヲ命 セ ラ レ候 因 テ之 二 関 ス ル辞 令 書 弐 通 ヲ封 送 シ併 テ任 命 二対 ス
ル賀 詞 申 述 候 貴 下 ノ御委 任状 ハ追 テ大 不 列 巓 国 政 府 ノ認 可 状 ヲ得 タル後 在 ケ ー プ タ ウ ン今 井 領
事 ヨ リ貴 下 へ 転 文 ノ筈 二 有之 候 貴 下 ノ現 官 ハ 名 誉 職 ナ ル ニ依 リ俸 給 及 事 務 所 費 ハ 不 賜候 … …」
1926年(大
正15)年4月20日
付 、 今 井 領 事 よ り幣 原外 相 へ の電 文 に よ れ ば、4月26日
り ダー バ ンで 名 誉 領 事 館 が 開館 さ れ、 連 絡 先 は、POBox1021,Durban,SouthAfricaと
よ
記さ
れ て い る。 あ る い は、 郵 便 の宛 先 がC/OWmCotts&Co.Ltd.,49PointRoad,Durban,
Natal,S.A.と
な って い る文 書 も見 られ る。 ま た、1926(大
か ら幣 原 外 相 へ の連 絡 に よ る と、5月21日
正15)年5月25日
付、 今井領事
付 で ダ ーバ ン名 誉 領 事 に つ い て 南 ア フ リカ連 邦 総
51
督 の 承 認 が え ら れ た よ う で あ る 。1942(昭
和17)年5月8日
ン神 田 代 理 公 使 宛 て 書 簡 に よ る と 、 こ のW.R.ラ
付 、 東 郷 外 相 か ら在 ス ウ ェ ー デ
イ ト名 誉 領 事 は 、1941(昭
和16)年12月8
日付 で 、 日 本 と 南 ア フ リ カ と の 国 交 断 絶 に よ る 解 任 に 至 る ま で 職 務 を 続 け た(18)。
(3)南
ア フ リ カ市 場 の 日 本 品 と 「東 洋 の 脅 威 」 論
W.R.ラ
イ ト は 、1930年
代 前 半 の ナ タ ー ル 経 済 の 動 向 を 知 らせ る 資 料 と して
業 会 議 所 年 報 」 を 外 務 省 通 商 局 に 郵 送 し て い る。 ダ ー バ ン商 業 会 議 所 は 、1856年
市 内 ス ミス 通 の ソ ー ル ズ ベ リ ー ハ ウ ス に 置 か れ て い た 。 そ の
年)』 に よ る と 、 会 頭 はA.M.ネ
「第80回
イ ル ソ ン、 副 会 頭 にD.R.マ
『ダ ー バ ン 商
に設 立 され 、
年 次 報 告 書(1935-36
ッキ ン トッ シ ュ、 理 事 会 は当 時
ダ ー バ ン に お い て 有 力 な イ ギ リ ス 系 企 業 の 経 営 に 関 与 して い た 人 々 に よ っ て 構 成 さ れ て い た こ
とが わ か る。
と こ ろ で 、 ラ イ ト名 誉 領 事 か ら外 務 省 通 商 局 に 送 られ て き た 当 時 の ダ ー バ ン市 場 に お け る 日
本 品 の 動 向 に 関 す る 報 告 に よ って 通 商 問 題 の 一 端 を 明 らか に して お こ う(19)。1931(昭
6月 、
ダ ー バ ン のF.H.ハ
ドフ ィ ー ル ド社 の 社 長 は
和6)年
『ナ タ ー ル ・マ ー キ ュ リ ー 」 の イ ン タ
ビ ュ ー に 答 え て 、 「ア イ ロ ン、 ラ ン プ シ ェ ー ド、 ス イ ッ チ な ど の 日 本 製 電 気 製 品 が 三 分 の 一 の
価 格 で ナ タ ー ル に 流 入 して い る 」 と 語 っ た 。 日本 製 の ゴ ム 底 靴 に っ い て も 、 そ の 低 価 格 を 非 難
す る記 事 が 新 聞 紙 上 を 賑 わ し た(20)。
こ う した 事 態 に っ い て 、 南 ア フ リカ 工 業 会 議 所 連 合 会 のJ.N.ボ
マ ー キ ュ リ ー 」 の イ ン タ ビs一
ス会 頭 は、
「ナ タ ー ル ・
に 答 え て 、 「日本 製 ゴ ム 靴 の よ うな 製 品 の 南 ア フ リ カ 市 場 へ の
流 入 は 、 西 洋 の 工 業 と文 明 へ の 挑 戦 で あ る 」 と語 っ た 。 ま た 、 ダ ー バ ン商 業 会 議 所 のR.エ
リ
ス ・ ブ ラ ウ ン会 頭 は、 「南 ア フ リ カ の ヨ ー ロ ッ パ 人 の 生 活 、 す な わ ち 西 洋 文 明 は、 二 っ の 東
極 東 と近 東
の 脅 威 に さ ら さ れ て い る 」 と語 っ て い る(21)。
ダ ー バ ン商 業 会 議 所 は 、 日本 か ら流 入 す る 安 価 な ス ー ッ ケ ー ス 、 絹 製 シ ャ ツ 、 ゴ ム 底 靴 、 ド
リル な ど の 繊 維 品 へ の 苦 情 を 訴 え た 。 同 商 業 会 議 所 は 、 独 自 に 研 究 を 進 め た 結 果 、 日本 女 性 が
週60時
間6シ
リ ン グ で 働 く の に 対 し て 、 南 ア フ リ カ 連 邦 の 女 性 は 週46時
間10シ
リ ン グ ∼3
ポ ン ドの 給 料 で あ っ た と 報 告 し て い る 。 「こ の よ う な 低 賃 銀 の 日 本 や 中 国 か ら入 っ て く る 絹
シ ャ ツ や パ ジ ャ マ と南 ア フ リカ の 業 者 は 競 争 で き な い 」 と の 訴 え が あ っ た 。 ま た 、 ジ ョハ ネ ス
バ ー グ で は 、 ニ ッ ト製 品(メ
3シ
リ ン グ6ペ
リヤ ス)工
業 か ら警 告 が 発 せ ら れ た 。 日本 製 ソ ッ ク ス は1ダ
ン ス 、 南 ア フ リカ 製 品 は6シ
ー ス
リ ン グ で あ っ た 。 南 ア フ リカ 工 業 会 議 所 連 合 会 は
通 商 局 に 対 し て 輸 入 制 限 措 置 を と る よ う に 訴 え た(22)。
こ う した 非 難 が 聞 か れ る一 方 で 、 日本 品 が 安 値 に も か か わ ら ず 良 質 な の に 驚 き の 声 が 聞 か れ
た 。 た と え ば 、 ジ ョハ ネ ス バ ー グ と ジ ャ ー シ ス ト ンだ け で1,000人
ツ 製 造 業 で 働 い て お り、 一 週 間 で15万
の ヨー ロ ッパ人 女 性 が シ ャ
の シ ャ ッ が 生 産 で きた。 と こ ろ が 、 試 み に 日本 製 の
カ ー キ シ ャ ツ を 輸 入 し た と こ ろ、 そ の 製 品 の 優 秀 さ に 驚 い て い る。 ま た 、 ジ ョハ ネ ス バ ー グ の
あ る シ ャ ツ 工 場 で は60人
の 女 性 が 解 雇 さ れ 、 別 の 工 場 で は75人
の解 雇 が あ った 。 南 ア フ リカ
連 邦 の シ ャ ツ工 業 で は 関 税 な し に原 料 を 獲 得 して い る に も か か わ ら ず 、 日本 の 完 成 品 は市 場 で
現 地 品 価 格 の 三 分 の 一 で 売 ら れ て い る。 試 し に 日 本 品 を 輸 入 した 業 者 は 、 南 ア フ リ カ 連 邦 で1
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第4章
ポ ン ドす る の に 日 本 品 は ダ ー バ ン に お い て19シ
世界恐慌期 にお ける日本一南 アフリカ通商関係 史
リ ング で 陸揚 げ さ れ て い る の を知 って愕 然 と
し た 。 ジ ョハ ネ ス バ ー グ の 業 者 は、 日本 製 の ス ー ツ 、 オ バ ー オ ー ル 、 靴 が 流 入 す る と も は や 対
抗 策 は な い と ま で 語 っ た(23)。
こ の よ う な 状 況 に お い て 、 南 ア フ リカ 連 邦 が 日 本 と 結 ん だ 協 定 に 対 す る批 判 が 聞 か れ る よ う
に な っ た 。 関 係 業 者 は 、 「日阿 取 極 』 が 前 例 と な って 中 国 や イ ン ド と も 同 様 の 協 定 が 結 ば れ る
の で は な い か と い う 懸 念 を 隠 さ な か っ た 。 これ に 対 して 、 南 ア フ リ カ 政 府 は 、 「日 阿 取 極 」 が
南 ア フ リ カ産 の 羊 毛 や ワ イ ンに 日本 市 場 を 与 え る も の で あ る と論 じ た 。 す な わ ち 、 農 務 大 臣 の
J.C.G.ケ
ン プ は、 日本 と の 協 定 は 、 農 業 問 題 に 対 す る 対 策 の 一 環 で あ る 、 と語 っ た 。 す な わ
ち 、 日本 と の 協 定 は 、 小 麦 輸 入 の 制 限 と価 格 安 定 、 地 主 へ の500ポ
ン ドの 貸 付 、 移 民 救 済 法 、
メ イ ズ割 当 法 、 非 合 法 価 格 決 定 法 の 中 に 位 置 付 け られ る も の で あ る と い う わ け で あ る(24)。
『日阿 取 極 』 の 締 結 以 後 、 この よ う な 日 本 品 の 脅 威 論 に 対 して 、 日 本 領 事 ぽ 、 「日本 品 の 南 ア
フ リ カ市 場 へ の 進 出 は 、 つ ま り 日本 品 の 低 価 格 は 経 営 の 優 秀 さ、 工 業 組 織 、 効 率 的 な 機 械 、 科
学 的 管 理 方 法 、 大 量 生 産 方 式 に よ る も の で あ っ て 、 南 ア フ リカ 商 人 は む し ろ 日本 市 場 を 研 究 し
て 輸 出 促 進 策 を 講 じ る べ き だ 」 と の 談 話 を 発 表 し た 。D.F.マ
極 』 と衣 服 産 業 の 不 満 に っ い て 、 「安 価 な 日本 品 の 流 入 は
ラ ン 内 務 大 臣 も ま た 、 『日 阿 取
『日阿 取 極 』 と 関 係 が あ る と の 訴 え
が あ っ た が 、 安 価 品 は む し ろ チ ェ コ ス ロ バ キ ア や ベ ル ギ ー か ら流 入 して い る の で あ っ て 、 政 府
へ の 不 満 が そ う し た 不 快 感 を 生 ん だ の だ ろ う」 と述 べ た(25)。
そ れ に も か か わ ら ず 、 当 時 誕 生 し た 南 ア フ リ カ経 済 学 会 ダ ー バ ン支 部 で は 、 金 本 位 制 や 不 況
問 題 だ け で な く、 日本 の 脅 威 に つ い て も議 論 す べ き で あ る と の 意 見 が 出 さ れ た 。 ま た 、 南 ア フ
リカ 工 業 会 議 所 連 合 会 は、 こ の 「東 洋 の 脅 威 」 を 問 題 視 し、 被 害 を う け た 全 産 業 は 「ラ ン ド集
会 」 を 開 い た 。 こ う し た 動 き に 呼 応 して ナ タ ー ル 工 業 会 議 所 も集 会 を 開 催 して い る 。 南 ア フ リ
カ 工 業 会 議 所 連 合 会 会 頭H.J。
レイ トは
「日本 の み な ら ず 東 洋 か ら の 安 価 品 の 流 入 は 南 ア フ リ
カ 工 業 の ダ メ ー ジ と な る」 と の メ モ ラ ン ダ ム を 回 覧 し た 。 と く に 靴 製 造 業 、 皮 鞣 工 業 、 ス ー ッ
ケ ー ス 工 業 、 シ ャ ッ工 業 か ら の 日 本 品 の 低 価 格 に 対 す る弾 劾 は 厳 し い も の で あ っ た(26)。
1930年
代 前 半 、 南 ア フ リカ市 場 に お い て 生 じた 日本 品 との通 商 摩 擦 の た め に、 関 係 業 者 か
ら商 工 局(BoardofTradeandIndustry)に
こ な わ れ た 。 た と え ば 、 当 時 日 本 円 は 、18シ
は さ ま ざ ま な 訴 え が よ せ られ 、 種 々 の 調 査 が お
リ ン グ=9.764円
で 、 日本 円 の 下 落 の た め に 日本
か ら の セ メ ン トの 輸 入 は 南 ア フ リ カ セ メ ン ト業 界 の 脅 威 と な り、 連 邦 の セ メ ン ト工 業 の 保 護 の
た あ に 日本 品 に対 して ダ ン ピ ング税 を課 そ う と して い た。
ま た 、 日本 か ら輸 入 さ れ る ハ ン カ チ 、 男 性 用 下 着 、 ゴ ム 製 床 、 ワ イ ヤ ネ ッ ト、 乾 豆 、 キ ル ト、
買 物 カ ゴ、 子 供 用 靴 な どの市 場 調 査 が 商 工 局 に よ って行 われ て い る。 当 時、 男性 用下 着 産 業 は、
日本 品 の 輸 入 の た め に 大 打 撃 を こ お む り 、 そ の 保 護 を 立 法 化 す る よ う に 要 求 して い た 。 ゴ ム 製
床 、 ゴ ム タ イ ル 業 も打 撃 を 受 け た よ う で あ る 。 茶 、 トイ レ ッ トパ ウ ダ ー 、 香 水 、 テ ニ ス ラ ケ ッ
ト、 婦 人 用 ハ ン ドバ ッ グ な ど の 日 本 か らの 輸 入 に 対 し て も関 係 業 者 か ら為 替 ダ ン ピ ン グ税 を 課
す よ う に 訴 え が あ っ た 。 ナ タ ー ル の 製 茶 業 は 、 南 ア フ リ カ 連 邦 の 需 要 の8%を
(昭 和7)年
も80%も
み た し、1932
以 後 、 茶 の 価 格 が 上 昇 し た た め に茶 の 増 産 が 見 込 ま れ て い た が 、 セ イ ロ ン茶 よ り
安 い 日 本 茶 の 侵 入 の た め に 現 地 の 製 茶 業 は脅 威 を 感 じ て い た 。 ま た 、 日本 製 ス リ ッ
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パ の 輸 入 に 対 す る 為 替 ダ ン ピ ン グ 税 が 課 せ ら れ た 。 日本 製 ス リ ッ パ の 価 格 が 、 為 替 下 落 の た め
に 低 価 格 と な り、 日 本 か らの 輸 入 は9,904足(1933年)か
ら45,041足(1934年)に
急 増 し、
南 ア フ リカ 製 品 は ま っ た く競 争 で き な い よ う な 状 況 に な っ た か ら で あ る。 ブ ー ッ と 短 靴 の 製 造
業 者 を 含 め て 、 日本 か ら の 輸 入 は 現 地 の ス リ ッパ 業 者 に 著 しい 不 利 益 を も た ら し、 業 者 か ら保
護 の 訴 え が 相 次 い だ(27)。
4日
(1)南
1920年
本 の 対 南 ア フ リカ 通 商 政 策
ア フ リカ の 通 商 政 策
代 中 ご ろ に 、 南 ア フ リカ 連 邦 の 通 商 政 策 は 、 金 、 ダ イ ヤ お よ び 羊 毛 の 輸 出 に 依 存 し
た 政 策 か ら輸 入 代 替 工 業 の 育 成 に 基 本 を お く政 策 に 転 換 した 。 更 に そ の 貿 易 相 手 国 も多 様 化 し
て い る 。 す で に1920(大
tryandScience)が
正9)年10月
に は 、 工 業 科 学 諮 問 委 員 会(AdvisoryBoardofIndus-
設 立 さ れ 、1921(大
ofTradeandIndustry)が
正10)年
に は 、4人
政 府 の 助 言 機 関 と して 設 立 さ れ た 。1924(大
国 民 党 と 労 働 党 の 連 立 政 権 が 成 立 し、 同 政 権 は 、BTIの
は 、4人
の 委 員 か ら な る 商 工 局(Board
正13)年6月30日
再 編 成 と 関 税 の 改 正 に 着 手 す る 。BTI
の 委 員(A.J.Bruwer,M.H.deKock,EJ。Faley,H.E.S.Fremantle)か
れ た 。 鉱 山 会 議 所(ChamberofMine)は
自 由 貿 易 を 主 張 した 。
商 業 で は、
AfricanChamberofCommerce)内
、
ら構 成 さ
、 保 護 貿 易 が 農 業 と鉱 業 に 悪 影 響 を 及 ぼ す の で 、
南 ア フ リ カ 商 業 会 議 所 連 合 会(AssociationofSouth
部 の 意 見 が 、 北 部 と 南 部 で 対 立 した 。 工 業 で は 、 南 ア フ
リ カ 工 業 会 議 所 連 合 会(SouthAfricanFederatedChamberofIndustries)1ま
、保護貿 易を
主 張 し た 。 農 業 で は 、 南 ア フ リカ 農 業 同 盟(SouthAfricanAgriculturalUnion)が
、 国内
市 場 に 依 存 す る 農 民 と 海 外 市 場 に依 存 す る農 民 の 対 立 の 中 で 分 裂 し た 。 以 上 の よ う な 状 況 の 中
で 、 国 内 工 業 化 の 促 進 を 目 指 し た1925年
関 税 法 は 成 立 す る 。 こ の 法 律 で は、 食 品 、 飲 物 、 衣
類 、 繊 維 、 家 具 、 紙 、 文 房 具 な ど が 保 護 の 対 象 と な っ た の で あ る(28)。
太 田領 事 は、 南 ア フ リカ の通 商 政 策 につ いて 外務 省通 商局 へ の報 告 の 中 で次 の よ うに述 べ て
い る。 ま ず 、 南 ア フ リ カ 連 邦 経 済 に お い て 、 「金 鉱 依 存 の 危 険 性 を 緩 和 し、 経 済 の 堅 実 性 を 増
す た め に政 府 は 第 二 次 産 業 の 保 護 と して 種 々 の 施 策 を 講 じて い る 。 そ の主 要 な 産 業 と し て は金
属 製 品、 飲 食 料 品 、 車 両 、 家 具 、 砂 糖 な どで あ る」 と分 析 した。
次 に 、 通 商 政 策 に つ い て 、 南 ア フ リ カ 連 邦 は 英 帝 国 経 済 ブ ロ ッ ク の 一 員 と して 英 帝 国 各 構 成
国 と特 恵 関 税 を 有 す る ほ か 、 国 内 産 業 保 護 の 立 場 か ら通 貨 価 値 下 落 国 の 商 品 に対 して は為 替 ダ
ン ピ ン グ 税 を 採 用 し、 他 方 、 最 高 、 中 間 、 最 低 の 三 段 関 税 制 度 を 設 け て 各 国 と の 通 商 協 定 成 立
促 進 を 図 っ て い る。1936(昭
和11)年
ま で の 通 商 協 定 国 は 、 英 本 国(北
ア イ ル ラ ン ド、 非 自
治 植 民 地 、 保 護 領 、 パ レ ス タ イ ン、 ト ラ ン ス ジ ョル ダ ン、 タ ン ガ ニ ー カ 、 カ メ ル ー ン、
トー
ゴ ー ラ ン ド、 な ど の 英 国 委 任 統 治 地 を 含 む)、 カ ナ ダ、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 ア イ ル ラ ン ド 自 由 国 、
イ タ リ ア 、 オ ラ ン ダ、 フ ラ ン ス 、 ベ ル ギ ー 、 ル ク セ ン ブ ル ク 、 ベ ネ ズ エ ラ、 ス イ ス 、 ス ウ ェ ー
デ ン、 ノ ル ウ ェ ー 、 リベ リア 、 モ ロ ッ コ、 エ ジ プ ト、 ドイ ツ 、 デ ン マ ー ク 、 コ ス タ リ カ 、 コ ロ
ン ビ ア 、 ア ル ゼ ン チ ン 、 南 ロ ー デ シ ア 、 モ ザ ン ビ ー ク な ど で あ っ た と論 じ て い る(29)。
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