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5年 導入の工夫 - 静岡県総合教育センター
生命の誕生 卵の中にはメダカのミニチュアが入っている?! 5年 導入の工夫 この単元では,魚の誕生と人の誕生を子どもが選択して学習します。 そこで,選択できるような情報を与えるためにも,発生の進んだメダカ 卵をまず観察させたいものです。 産卵7日後のメダカ卵 1 準備 ・産卵7日後程度のメダカ卵,顕微鏡 2 方法(例) (1)メダカ卵を顕微鏡(40倍程度)で観察する。(実体顕微鏡や解剖顕微鏡でも可) ※メダカ卵がない場合はふ化直前の卵のみビデオを見せる。 「これはもうすぐふ化するメダカの卵です」 観察できること 考えたり,不思議に思うこと(例) ・大きな眼がある。 ・メダカの体はできている。 ・心臓のようなものが動いている。 ・小さなメダカが卵の中に入ってる。 ・体中を血液のようなものが流れている。 ・もうメダカは生きている。 (心臓も含めて動いていることを生きていることと して考える子どもも多い。) ・卵の周りに毛が生えている。 ・何のための毛かな? 水草などに付着するためのもの。長い毛と短い毛 の2種類がある。 (2)産卵直後の卵の中がどうなっているのか,考える。 「これは産卵してから7日たったものです。3日前はどうなっていたと思いますか? 7日前(産卵直後の卵)はどうなっていたと思いますか?」 ※全く考えられない子どももいるため,いろいろな意見を出させながら考える材料を与える。 意見例 根拠としそうなこと(例) ・生まれた(産卵した)時から小さな体のメダカが 入っていてだんだん大きくなる。 ・卵は栄養があるからそれを食べれば大きくなるに違 いない。 ・赤ん坊は母親の体内から出てくるときにはすでに人 間の形をしている。(犬や猫も) ・インゲンマメの種子の中に幼植物体が入っていた。 ・卵の中になにかモヤモヤしたものが入っていてそ ・教科書にある写真などから連想して。 れがだんだんメダカの形に変化してくる。 ・いつ受精したのかな?メダカも雄や雌があるのかな?など卵以外のことに着目した意見も出る。 (3)自分の考えをまとめ,記録させる。 ※個々の考えによる発生の概念を知る材料としたいので,班やクラスで意見を集約するよりも, 一人一人がどんな考えを持っているかを大切にしたい。 - 128 - 3 人の誕生との選択 ・「受精した卵は少しずつ体ができていく」ことをとらえることは,メダカ・人,どちらの教材で も共通した学習内容になりますが,継続観察による学習・資料による調べ学習,卵生・胎生とい う違いもあり,選択させるタイミングや選択後の学習内容の共有など,留意する必要があります。 4 単元の準備と構成例 ○準備 産卵用水槽の準備 ・2週間∼1ヶ月前 飼育と管理・採卵 ・餌やりは子どもが行う。(朝,2時間目の休み時間,昼休み,放課後 の4回) ・産卵が始まったら,「採卵と卵の管理」を参考に産卵日ごとにペトリ皿に入れておく。 ○構成例 全員共通 ○導入「卵の中にはメダカのミニュチュアが入っている?」 ○メダカ成体の観察 ○チャック付きビニール袋による個別飼育と虫眼鏡による観察(授業時間外) ○初期発生の観察とまとめ「産卵後0,1,2日目の観察」 ○人の誕生について説明 ○3日目以降の観察 選択 メダカ 人 ○3日目以降の観察 ○観察結果をまとめる ・体外受精 ・卵に蓄えた養分を利用 ○資料による学習 ○人の誕生をまとめる 互いに 共有化 ・体内受精 ・胎盤を通して母体から養分を得る 意外と多い 前生説的考え 実践してみたところ,「メダカのミニ チュアが入っていて,それが卵の栄養を食べなが ら大きくなる」という考えをもつ子どもが意外に 多かったことにびっくりしました。しかし,子ど 産卵直後の卵 もの今までの経験からすれば,このような前生説 卵の養分を食べてだんだん大きくなる 的な考え方はごく自然なことかもしれません。発 生生物学の分野でも初めは前生説が主流でしたが,顕微鏡による詳細な研究により,「体はだんだ ん作られていく」という後生説に変わっていったという歴史的な経緯があります。 - 129 - 生命の誕生 こうすれば毎日産卵する 5年 親メダカの飼育 準備 飼育に失敗すると全く卵を産まない,なんてことも。ここで は,実験用にたくさんの卵を採取することを目的とした飼育方法 を紹介します。子ども一人に一つの卵は最低でも準備したいもの です。 1 飼育環境 ・45cm以上の水槽を利用し,直射日光の当たらない明るいところに 設置する。 ろ過装置 ・砂利や水草は病原菌の住処になってしまうこともあり,採卵する ことが目的の場合は要らない。 ・おくびょうな魚なので,採卵用の水槽は子どもの出入りが少ない 場所に設置したい。(準備室が望ましい) ・教室や廊下に設置する場合は隠れ家として水草があった方がよい。 1日汲み置いた水 45cm水槽が扱いやすい ・産卵させるために餌を多く与える。水の汚れが激しいため上面濾 過装置をセットする。 ・45cm水槽の場合,個体数は20匹前後が望ましい。 2 飼育方法 ○餌 ・体が小さく,一度にたくさんの餌を食べることができない ため,市販のメダカの餌(粉末のものや乾燥赤虫など)を 餌 肝臓 卵巣 1日3∼5回,底に残らない程度に与える。 ・体の割に大きな卵を産むことを考えれば,産卵するために 卵巣は肝臓から栄養をもらい卵を作る は多量の養分が必要であることがわかる。 ○水 ・1日以上汲み置いた水が良いが,市販のカルキ抜きの溶液を加えた水道水でもよい。 ・メダカは急激な水温の変化には弱い。野外から採集してきた個体や,購入してきた個体を水槽 に入れる時は温度変化に注意する。 ・メダカは餌を取るごとに,排尿や排便を行っているため,毎日でも少しずつ水を換えるとよい。 透明できれいに見えても,尿素やアンモニアで汚れている場合も多く,汚れがひどいと,餌も あまりとらなくなり,体調を崩して産卵しなくなる。少なくとも毎週1/3程度入れ換える。 よく食べ,よく産卵する。「乾燥赤虫」 管理よく飼育できれば,20∼30匹の成体から毎日100ヶ程度の卵を得ることができます。 コツは,とにかく食べさせること。動物性タンパク質が良く,乾燥赤虫は特に効果絶大です。雌の 腹部がパンパンに膨らんでくれば毎日のように産卵します。 - 130 - ○班毎,あるいは個別に小さい容器で飼育させたい場合 ・すでに産卵を確認している個体を使うのが望ましい。 ・ペットボトルなどを利用する場合,産卵させるための管理方法が理解できていればよいが, そうでない場合は必ず教師側で産卵用の飼育を別に行っておく。 材料の入手 野生のメダカ(黒メダカ)は近年その生息地が減っていますが, 野外から採取したメダカを校庭の池に放しておけば,自然に増殖 し,毎年安定して材料を得ることができます。また,観察後の子メ ダカも池へ戻すこともできます。 黒メダカが入手困難な場合は,ヒメダカを購入することになりま 校 庭 の 池 飼育水槽 卵の観察 子メダカの飼育 校内でメダカを管理する す。発生の観察だけを考えると,ヒメダカの方が卵内部の観察がし やすく適しています。ヒメダカも校庭の池で増やすことができますが,黒メダカと混ぜることは避け ます。 購入してきたヒメダカは痩せている個体が多く,産卵させるためには2週間程度餌を与え続ける必 要があります。 メダカ豆知識 メダカは飼育・増殖も比較的容易で,多目的に利用できる生物教材として古くから研究用に利用さ れてきました。学名は,Oryzias latipes といい,属名は生息する稲田に,種名は大きな尻びれにち なんで命名されています。大きな眼,上向きの口が特徴であり,雑食性。卵は 1.3mm大,約10日でふ 化し6ヶ月で成体となり,寿命は3∼5年。日本では最小の脊椎動物です。 野生のメダカは,水田用水路の整備や農薬の散布,カダヤシの繁殖などの原因で激減しましたが, 体色がオレンジ色の品種のヒメダカが養殖され広く出回っています。 自然条件下では4月下旬より産卵を始め,断続的に9月頃まで産み続けます。メダカの産卵には水 温だけでなく日照時間も関係しており,水温を25∼30℃,蛍光灯などを使用し明期を14時間,暗期を 10時間に調整すると年間を通じて産卵させることができます。 室内で殖えたメダカは放流しない これは,「メダカが地域固有の遺伝的特性を持っている」「本来は野生で生存できな い個体も,室内の環境では生育した可能性がある」といったことを配慮するためです。メダカが絶 滅危惧種に指定されたことを知っている子どもなどから,「地域の川に放流しよう」という声があ がってくるかもしれません。しかし,環境が改善されていなければ,いくら放流しても生息するこ とはできません。外来種放流なども含めて,野生生物のあり方について考える良い機会でもありま す。 - 131 - 生命の誕生 15分でできる 5年 水カビや卵の腐敗防止 採卵と卵の管理 産卵は通常早朝に行われ,水草や砂利を入れな ければ,腹部から卵をぶら下げた雌個体を見つけ ることができます。あるいは,水槽の底に卵の塊 が落ちている場合もあります。これらの卵は,今 朝産卵したものであることがはっきりしているの で,卵を観察するには好都合です。 1匹の雌から採取した卵 写真中のBは異常卵。 何もしないでおくと,Bは 水カビが生え,それが正常 な卵に影響を与えてしまう。 途中で死んでしまった卵な ども含めて,除去する必要 がある。 1 採卵の方法 (1) 卵を付けている雌の腹を指ではさんで尾 の方へ動かし,卵塊を取り出す。 (すべての卵が正常に発生が進んでいるわけ ではない) (2) 二重にしたガーゼの上に卵塊をのせ,水 道水を少しずつ流しながらそのまま指で転 がしてやさしく洗う。 卵は丈夫な卵膜で守られている。ぜひ 子どもにも触らせたい (3) メチレンブルーを加えた水道水(1リッ トルに0.5%のメチレンブルーを1滴。なけ れば水道水のまま)の入ったペトリ皿を用 意し,卵塊をガーゼで保持しながら指で一 つ一つ卵をばらしていく。 排泄物などのゴミ が付いている 卵を洗い,ゴミを除去 する 一つ一つバラバラにする (4) ペトリ皿を黒い紙の上に置くと,肉眼で 観察して白く濁っている卵がある。これらは 未受精卵や未成熟卵,過成熟卵であり正常な 発生は望めないため,この段階で取り除く。 白濁した卵を除去する (5) 透明な卵を観察に用いる。 実体顕微鏡で観察すると 白濁した卵は透明な卵と異なる。 白く濁った卵を除去することは, 子どもでも可能である。 - 132 - 正常卵 異常卵 透明 白濁 万能薬 メチレンブルー メダカの卵の管理にメチレンブルーを使うようになってから,卵にカ ビが生えたり白く濁って死んでしまうことが激減しました。メチレンブ ルーは卵や飼育水を消毒するだけでなく,死んでしまった卵を青色に染 色する効果があります。青く染色された卵は見つけ次第ピペットで取り 除くようにします。 矢印が青く染まった卵 水草の入った水槽の場合 卵は水草に付きますが,卵の処理は前ページと同じ方法で構いません。初期発生の観察では,産卵 後0日,1日,2日の3日間で卵内部が大きく変化しますので,教師が顕微鏡で事前に確認してから 子どもに観察させるようにします。 また,親メダカの入った水槽にそのまま入れておくと,ふ化した稚魚が親に食べられてしまうので 注意が必要です。 どのくらい産卵するのか? 1本の水槽で何匹の雌が産卵しているのでしょうか?また,1匹の雌が1回で何個産卵 す る の で し ょ う か ? 8 月 9 日 ∼ 18日 ま で の 10日 間 , 以 下 の 条 件 で 調 べ て み ま し た 。 ・ 3 本 の 45cm水 槽 に 各 雄 雌 10匹 程 度 を 入 れ る 。 ・乾燥アカムシを2回∼4回/日与え,毎日採卵した数を個体別に記録する。 ・ 実 験 室 に は 担 当 者 以 外 は 入 る こ と な く , 水 温 は 28℃ ± 2℃ に 保 っ た 。 9日 10日 11日 12日 13日 14日 15日 16日 17日 18日 合計 平均 6 7 9 4 11 3 9 15 9 11 84 8.4 採卵数計 171 213 195 108 239 98 212 353 200 232 2021 202 有効卵数 134 201 152 92 189 96 159 223 141 174 1561 156 産卵個体数 ・平均すると,1本の水槽から50個の卵を得ることができた。 ・雌1匹あたり1回の産卵数は,最大で44個,最小で10個であった。今回の条件では平均して20 個の有効卵(未受精卵や未成熟卵は除く)が得られた。 メダカのストレス? センターで飼育しているメダカもストレスを受ける時があるようです。研修で多くの人 が実験室に入ったり,水槽を覗いたりすると,とたんに産卵数が減ります。人の出入りだけで驚く わけですから,水槽のガラスをたたくような行為はメダカにとっては恐怖そのものかもしれません。 ストレスを与えずにたっぷり餌を与えれば毎日よく産卵します。 - 133 - 生命の誕生 チャック付きビニル袋を使って 5年 簡単に 卵の個別飼育 メダカ卵は,体が形成されていく過程や心臓の拍動の観察な ど,生命を直接感じとることができる優れた教材であり,授業時 間内の観察だけでは物足りなさを感じます。子どもに個別飼育を させながら,教室内で常に観察できる環境を整えることで,継続 的な観察が可能になります。 チャック付きビニル袋での飼育 1 チャック付きビニル袋で簡単に個別飼育 ・チャック付きビニル袋は70mm×50mmの大きさのものが使いやすい。 ・メチレンブルー入りの水道水(あるいは水道水)と共にメダカ卵を入れる。 ・直射日光が当たったり,温度変化が激しい場所には置かない。 ・2∼3日に1回水換えを行い,死んでしまった卵は必ず除去する。 2 観察の環境を整える 教室内で個別飼育をしながら,自由に観察できる環境を 授業では観察の視点をはっきりさせて 個別に虫眼鏡があると効果的 虫眼鏡 微小水槽を用いて 40∼100倍で観察。 解剖顕微鏡 チャック付きビニル袋 に入れたまま顕微鏡で 教室に解剖顕微鏡や実体顕 微鏡を置いておき,常に観 観察することもできる。 察できるようにしておく。 ○同じ卵の継続観察 ・微小水槽に卵を入れ,スライドグラスごと培養液の入ったペトリ皿に 完全に沈めてしまう。この状態で双眼実体顕微鏡や解剖顕微鏡のステ ージにセットし,教室内に置いておけば同じ卵を継続的に観察するこ とができる。(ペトリ皿内の水は3日に1回は取り替えること) 色のうすいものを観察するときには・・ メダカの卵は透明に近く,肉眼や虫眼鏡,実体顕微鏡など で観察する場合,背景が白いとわかりにくく,黒い背景での観察が適 しています。産卵後3日程度で体に色素ができはじめ,眼もはっきり 背景が白 背景が黒 してきます。3日目以降は逆に色の付いた部分が観察のポイントにな りますので,背景が黒よりは白い方が観察しやすくなります。子どもはなかなか判断できないので, 教師側でしっかりと指示する必要があります。 - 134 - 生命の誕生 倍率を上げて簡単に観察できる 5年 微小水槽の作製と使い方 顕微鏡の観察には,スライドグラスで作製する微小水槽が便 利です。40∼100倍で観察すると,心臓の拍動や拍動に伴って動 く血球の様子がはっきりとわかり,6年生の「動物のからだの つくり」につながる観察ができます。 1 微小水槽の作り方 材料:スライドグラス,カバーグラス,厚手の両面テープ(超強力両面テープ 厚さ1.3mm) 卵が入る厚みが必要なので,使用する両面テープは必ず1.3mm厚のものを使う。 ①スライドグラスに両面テープを カバーグラスよりも大きめに貼る。 ②カバーグラスをのせ,その大きさ に両面テープを切る。 両面テープ 底辺を合わせる ③両面テープを下図のように カッターで切る。 カバーグラス ④両面テープの紙をはがし,カバー グラスを貼る。 ※カバーグラスの替わりにOHPシートを切断して利用すれば,割れることはない。 2 微小水槽の使い方 (1) メダカ卵は,スライドグラスにピペットの先端を当てながら水とと もに流し込む。 ※2mlのピペットが最も使用しやすい。 ※観察中に卵の向きを変えることは困難。いろいろな方向から観察す る必要があるときは,5個程度入れるとよい。 (2) 卵を取り出す時は,スライドグラスを振ってペトリ皿などに落とす。うまく落ちなかった時は, 枝付き針などでかき出す。 ○1時間程度の観察 ・そのままステージに乗せて観察する。微小水槽に入っているため,動 かしても揺れたりすることなく観察しやすい。 - 135 - 生命の誕生 必ず観察させたい 5年 産卵0,1,2日後 メダカ卵の観察 産卵後2∼4日で,体の形が観察できるようにな り,心臓も動き始めます。そのため,「受精した卵は 少しずつ体ができていく」ということを実感させるた めには,産卵0,1,2日後の観察が欠かせません。 「卵の中にミニュチュアのメダカが入っている」と考 えている子どもに2日目以降の卵だけを見せてしまう と,その考えを裏付けることになってしまいます。 1 0日後 2日後 できれば3日分を比較しながら観察させたい 3日間の継続観察 同一卵を3日間継続観察する。 虫眼鏡や解剖顕微鏡でも可。 3日分を比較しながら観察 今朝生まれの卵 昨日生まれの卵 2日経過した卵 ・継続観察させる場合は,毎日しっかり記録をとっておく。 ・3日分を比較しながら観察する時は,顕微鏡にプレパラートをセットし,見せたい状態の卵に あらかじめ教師側でピントを合わせておくなど,観察や話し合いをする時間を多く取りたい。 2 観察の留意点 (1)産卵0日目 ・受精は明け方行われるので,朝採卵してもすでに受精後数時間経過しています。 ・卵内にある油滴に目がいってしまいますが,体を作る部分は油滴の反対側にあります。 ・顕微鏡でピントが合うのは立体の卵のある一面であるため,方向やピントを合わせた場所の違 いなどで,同じようには見えていない場合も多く,注意する必要があります。 採卵したばかりの卵 いずれも同じ時期のものを角度,ピントを合わせる位置,を変えたもの。観察として適しているのは左 側の写真であるが,油滴に目がいってしまうため,真ん中のような状態で観察しているケースが多い。 - 136 - (2)1日後(温度によって発生の進む速さが変わる) ・発生は想像以上に早く進みます。室温が25℃程度あれば,次の日に は脊椎や眼の原基となる部分が観察できるようになり,すでにメダ カのミニュチュアともいえます。 ・0日目の観察をせずにいきなりこの卵を観察してしまうと,「卵の 中にはあらかじめ小さなメダカが入っていて,それが卵の栄養を食 べながら大きくなっていく」という誤った概念をより強固なものと してしまいます。 (3)2日後以降 ・2日目には心臓の拍動が,3日目には血流が観察できます。 ・観察のポイントは体が少しずつ作られていくことにありますが,そ れに関連して,卵黄の役割や血管がだんだん増えていく様子,など 発見できることがたくさんあります。 ・どのような時期に何が観察できるのかについては,「あすなろ学習 室」の「メダカの飼育と観察」を参考にしてください。 ふ化後の管理 水温が25℃の時は,10日ほどでふ化します。ふ化した稚魚をすべて成体 まで飼育することは難しいのですが,継続的に観察してきた子どもにとっ て稚魚は格別の存在であり,大切に扱いたいところです。発砲スチロール の容器に水と水草を入れ,午前中日光の当たる場所に設置し,ふ化した稚 魚を入れる方法が最も簡便です。 稚魚には,1日1回餌(市販されているメダカの餌を乳鉢などで細かく したもの)を与えます。成育には,光(成長ホルモンの分泌が盛んにな る)と温度が必要なため,なるべく9月下旬までに成体にしたいところで す。 さらなる疑問を残して終わる 単元終了後にこのような感想を書いた子どもがいました。 メダカの体がだんだん作られていくということはよくわかりました。 でも,なぜ何もないところからメダカの体が作られていくのか,そこ には何かしくみがあるのか,もっと疑問が出てきました。 発生の本質にせまるような疑問が,小学校5年生から出てくるとは思いもしませんでした。一つ のことがわかっても,さらにその先にもっと疑問点がたくさんあることに気付くことは,理科にと って大切にしたいことです。 - 137 - 生命の誕生 形態の違いを発見するためには 5年 メダカ成体の形態観察 多くの子どもはメダカにも雄と雌があると考えています。雌雄 は有性生殖には欠くことのできない存在で,子孫を残すための最 小単位でもあります。一般に雄と雌の形態の差は生殖行動との関 わりが深く,メダカも例外ではありません。 産卵する個体が雌 1 チャック付きビニル袋を使った成体の観察 ・チャック付きビニル袋に入れたまま ひれを中心に形態を観察する。 ・口とえらの動きが連動していること なども観察できる。 ・観察終了後,水槽に戻してからどの ひれをどのように動かしているか観 察する。 2 この写真の個体は雄 引っぱって平らにすると観察しやすい 雌雄の違いを見付け出す観察 チャック付きビニル袋にメダカを入れたものを配り,2つのグループに分ける作業をしていく。 雄の個体群 形態の違いから2つの グループに分ける。 個体差ではなく,雄と雌の形態的 特徴がはっきりとわかる。 雌の個体群 ・雄1匹対雌1匹で比較すると,個体差に目がいってしまうが,個体数を増やすことで,雄個 体群と雌個体群の比較となり,容易にひれの特徴を見いだすことができる。 ・雄だけが入った水槽と雌だけが入った水槽を用意し,比較させることも良い方法である。 雄・雌の形態的な違い ・しりびれと背びれに顕著な違いがあります。 - 138 - 拡大 ※雄のしりびれをよく観察するとブツブツした小さな突起が観察できます。 ※繁殖期になると,尾びれとしりびれにいくつかの黒い条が発達し,緋黄色が尾びれの背腹両側 に目立つようになります。これは一種の婚姻色です。 生殖行動の観察 ・今朝産卵した雌と体の大きな雄を,底を切ったペ ットボトルなどを用いて図のように隔離する。 ペットボトルなど ・夕方実験台の上に置き,段ボールなどで水槽を覆 い暗くしておく。 ・翌朝静かに水槽に近づき,段ボールを取り,ペッ 雄 トボトルを静かに持ち上げる。 ・状況が良ければ30分以内に生殖行動を観察するこ 雌 とができる。 ※メダカは物陰の動きに敏感に反応するため,観察者は頭や体を動かさないようにする。 生殖行動 一連の雌雄の動きからなる。 ・雄は雌の頭の前で円舞ダンスを踊り雌を誘う。 ・雄が雌を抱きかかえるような行動をし,その際背びれとしりびれで雌の体を抱きかかえる。 ・放卵と放精がほぼ同時に起き,すぐに受精する。 (詳しくはあすなろ学習室をご覧ください。) 次から次へと卵を生むのに,なぜ絶滅危惧種? メダカは繁殖力も強く,水質の変化にも比較的強い魚です。しかし,身近なところから メダカは姿を消し,学区に生息地がない地域もたくさんあります。メダカは,水田や水田周りの水 路に多く生息していました。水田に水が入り,ミジンコなどの水中の微小生物が繁殖する頃がちょ うどメダカの繁殖期です。水深が浅く,外敵が入り込まない水田で稚魚の時代を過ごし,秋から冬 にかけては水田周りの流れの穏やかな水路で冬越しをしていました。1年を通して生活に適した環 境が水田周りにあったのです。 生命の連続性は,年間を通して安定した環境があることで初めて保たれます。 - 139 - 生命の誕生 付着生活している微生物の観察はとっても簡単 5年 水中の微生物の採集と観察 発展 「水中の微生物」というと,水の中を遊泳している生き物を思い浮かべてしまいますが,浮遊生活 する微生物は数も少なく,観察が難しい場合もあります。そこで,石などに付着している微生物を中 心に,簡単で失敗することの少ない観察方法を紹介します。 子どもにとって,顕微鏡の世界は未知の世界であり,いろいろな微小生物が水中には生存し,その 生物がメダカの命を支えていることを観察を通して実感させたいものです。 微生物の入手 ・野外からの採集 ・センターなどから プレパラートの作製 ・カバーグラスをかける ・泡が入らないように注意 顕微鏡で観察 ・低倍率で観察してから高倍率へ 操作の基本手順 1 付着生活している微生物の採集と観察 ○石から取り出す (1) 河川や池底で,泥が溜まる場所を避け,こぶし∼頭大の やや緑がかった石を採取してくる。 (2) 白いバットの上で緑色をした部分を歯ブラシでこすり落 とす。 ○水槽のガラス面から取り出す (1) ガーゼを4枚重ねにし,緑色になった水槽のガラス面を 拭き取る。 (2) ペトリ皿の上でガーゼを揉みながら微生物を落とす。 ○顕微鏡による観察 ・微生物の入った液をピペットで吸い取り,スライドグラスに一滴落としてカバーグラスをかけ て顕微鏡で観察する。 石から取り出した微生物 ゴミのように見えるものも多く含ま れている。何を見たらよいかわから ない場合は「緑色をしたものを見つ けてごらん」と指示を出せばよい。 動物性の微生物は動いているのでよ くわかる。 ラン藻のなかま ケイソウのなかま - 140 - ラン藻 単細胞だが,多くは糸状もしくは球状の群体を形成する。 ケイ藻 単細胞植物で,細胞壁が二酸化ケイ(珪)素でできている。細胞壁には美しい 模様があり,植物プランクトンの中心的な存在である。 緑藻 緑藻類は単細胞または多細胞で,群体をつくるものもある。 ボルボックス,ミカヅキモ,アオミドロなど。 2 浮遊生活している微生物の採集と観察 ・肉眼で確認できるミジンコは,ピペットなどで採集する。採集したミジンコは乾燥酵 母を餌として与えればよく殖える。 ・肉眼で観察しにくい微生物はプランクトンネットを用いたり,バケツにくんだ水を目 の細かいネットでろ過したりして個体密度が高い状態を作る必要がある。 うまく観察できない場合 観察で最も多い失敗は,プレパラートに目的とする微生物が全く入っていなかったり, 2∼3個体しか入っていない場合です。顕微鏡の操作に慣れていない場合は,個体密度が高い状態 のプレパラートを作り,観察しやすい状況にすることが大切です。 3 その他の方法 ○田の土から微生物を殖やす ・・・いろいろな微生物が観察できます。 (1) 田に水が入る前に,稲株ごと土を採取しておく。(ミジンコがたくさん生息していた田) (2) 大きめのペトリ皿などに池の水(水道水でも可)と少量の土,米粒を2∼3粒入れ,直射日 光の当たらない明るい場所に放置する。 (3) 1∼2週間でさまざまな微小生物が出現してくる。 ※多くの微生物は乾燥から身を守る手段をもっており,水のない時は土の中で休眠状態で存在し ている。植物種にとっては土中の無機物と光が,動物種は米粒を栄養源とした細菌類や先に出 現した植物種などが栄養源となり増殖してくる。 ○総合教育センターから微生物を入手 採集の場合,生物の名称がわからない場合が多いです。総合教育センターでは下記の微生物につ いて,電話で受け付け郵送しています。(ゾウリムシ,アメーバ,ボルボックス,ミカヅキモ,ツヅミモ,ミドリムシ) 0537−24−9725(カリキュラム開発課 理科生物担当あるいは理科実習助手まで) ミカヅキモ クンショウモ - 141 - アメーバ