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番組情報のLinked Open Data化の検討
番組情報のLinked Open Data化の検討 インターネット上のWebページでは,ページ上のハイパーリンクをクリックすると,他のページに飛ぶことができる。 このように,Webページ同士がリンクでつながった「Web」と呼ばれる空間を通じて,さまざまな情報を容易に得ること ができるようになった。このWebは,あくまでも「人が見るためのWeb」であったが,Web上の情報が膨大になるにした がって,その情報をソフトウエアが自動処理し,人々にさまざまなサービスを提供できるようにするという考え方が生まれ た。インターネット上のさまざまな場所にあるデータを,ソフトウエアが処理可能な形式で表現し,さらにそのデータ同士 を明確な意味を持ったリンク情報で結び付けることで, 「ソフトウエアのためのWeb」を実現するのがLinked Open Data (LOD)という仕組みである。 当所では,番組情報をLOD形式で提供できるデータベース「番組情報データハブ」の開発を進めており,番組のタイトル, 放送時間といった基本的な情報に加え,番組に関連する人物や場所,外部のデータとのリンク情報を,ソフトウエア処理可 能な形式で蓄積している(1図) 。例えば,ある番組「A」に「渋谷さん」という名前の俳優が出演していることを記述す る場合,データベースの中で“渋谷”という文字で示すだけでは,それが「人名」なのか「地名」なのかを,ソフトウエア は判断することができない。 「番組情報データハブ」では,番組に出演しているのが“渋谷”という名前の「俳優」である ことを,外部データとの「出演者」リンクで明確に表現しており,これにより,番組情報を「ソフトウエアのためのWeb」 上で活用できるようになる。ソフトウエアが番組情報データハブや外部データのリンクをたどることで, その俳優が映画 「B」 にも出演しているという情報が得られたり,外部サービスの利用者への番組情報提供なども可能となる。 今後は,番組情報データハブの高度化を進め,放送局の番組情報が,放送局内だけでなく,外部のさまざまなサービスや アプリケーションで活用できるような仕組みの実現を目指していく。 外部サービス Webページ Webページ さまざまな外部サービス/ LOD を通じて多くのユーザーから利用可能 外部LOD (Wikipediaなど) 外部LOD (映画DB) 俳優 映画B 映画 出演 Webページ 作家 外部サービス “渋谷” 出演者 Webページ 番組A 番組 Webページ Webサイトに 来た人のみが利用 ハイパーリンクによるWeb (人が見るためのWeb) 番組 NHK 番組情報データハブ Linked Open DataによるWeb (ソフトウエアのためのWeb) 1図 番組情報のLinked Open Data化の概要 NHK技研 R&D/No.156/2016.3 63 結晶セレンを積層した高感度撮像素子の研究 当所では, 8Kスーパーハイビジョンカメラなどの高感度化に向けて, 新しい撮像素子の研究を進めている。撮像素子とは, 入ってきた光を電気信号に変換する,カメラの眼にあたる部分である。近年,8Kをはじめとした映像システムの高精細化 が進み,撮像素子の画素数は大幅に増加した。撮像素子を大きくせずに多画素化すると,1画素あたりに入ってくる光の量 が減少して,撮像素子の感度が低下するという問題が生じる。そこで,入射光から発生する電荷(電気信号)を信号読み出 し回路の上に積層した光電変換膜の中で何倍にも増幅することができれば,この問題を抜本的に解決することができる(1 図) 。 電荷の増倍には「アバランシェ増倍」と呼ばれる現象を利用する。アバランシェ増倍とは,光電変換膜に加えられた電界 のエネルギーにより加速された電荷が,膜内の原子と衝突を繰り返すことで,新たな電荷をなだれ式に生成する現象である。 このアバランシェ増倍の発現には,107V/m程度の強い電界が必要となる。一方で,信号読み出し回路の耐圧は数十ボルト 程度であり,この電圧でアバランシェ増倍に必要な電界を得るには,光電変換膜の厚さを数μm以下に薄くしなければな らない。 当所では,結晶セレンを材料とした光電変換膜の研究を進めている。結晶セレンは,可視光領域における光の吸収特性が 他の材料と比較して優れていることから,光電変換膜の膜厚を0.5μm以下まで薄くしても光を十分に吸収することができ る。このため,低い印加電圧でも,膜内にはアバランシェ増倍に必要な強い電界を加えることが可能となり,信号読み出し 回路の耐圧以下でアバランシェ増倍を実現できる可能性がある。 これまでに,結晶セレン膜を用いた撮像素子を試作し,光電変換膜としての動作を確認した。また,結晶セレンの結晶粒 径は膜厚が厚くなるほど大きくなるが,この結晶粒径を信号読み出し回路の画素の大きさよりも十分小さくすることで,ざ らつきを低減した高画質な映像を取得できることも実証した(2図) 。今後は,この光電変換膜を利用して,新たな撮像素 子の開発に取り組んでいく。 入射光 カラーフィルター 電荷 光電変換膜 画素電極 絶縁膜 電荷増倍 信号読み出し回路 1図 積層型撮像素子の構造 結晶セレン膜表面の 顕微鏡写真 膜厚:2 μm 膜厚:0.5 μm 2図 結晶セレンを積層した撮像素子による撮像例 64 NHK技研 R&D/No.156/2016.3