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紅まどんなの雨よけハウス設置のポイント①

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紅まどんなの雨よけハウス設置のポイント①
紅まどんなの雨よけハウス設置のポイント①
9月下旬からの雨よけ栽培(+ネット被覆)で正品率が高まり収益性は向上す
る。低コストで不整形な園地にも設置できる簡易ハウスが増加している。
簡易ハウス
片屋根式ハウス
0.13農POフィルム
白色ネット4mm目
クロス式
Φ22巻上直管
ビニペット
Φ25直管
トンネル式
Φ48鋼管
Φ32直管
4.0m
桁
4.0m
 パイプは全てΦ25
梁
 間口2.5~3mで作業性やや劣る
 資材費低コスト
傾斜地
筋交
Φ48の鋼管
ビニペット
75㎝間隔
傾斜地
問題点
 風に弱く、強風で骨材・フィルムの破損
 傾斜15度以上の園地に設置できる
 谷桶がないため雨水がハウス内に入る
 ネットが周年被覆でないため夜蛾対策が難しい
 谷部の排水が可能
 骨組みは鋼管Φ48、アーチは75㎝間隔
紅まどんなの雨よけハウス設置のポイント②
巻き上げ機によるフィルムの開閉を行うことで、成熟期の果皮障害の発生を軽減できる。
さらに、発芽期からの生育促進や土壌乾燥の促進で高品質果実の生産が可能となる
APハウス
平張ハウス
 緩傾斜地に適する
 屋根の傾斜角度が緩いと雨水が
スムーズに流れず、屋根のフィルム
に溜まる
 雨水が溜まる場合は、スプリング
止めを行う
直管75cm間隔
 間口6m、軒高4.2mで作業性が良い
 屋根面フィルムの開閉、周年ネット被覆が可能
 フルオープンにすると、換気が優れ、雨水をハウス
ビニペット
固定張0.5m
Φ32,25直管
3.0m
全体に入れることができる
傾斜地
3.0m
屋根面フィルムの被覆管理
 3月下旬(発芽期)に被覆
 出蕾~一次落果終了までは最高
温度25℃以下で管理(晴天日は巻き
上げて換気)
Φ48の鋼管
屋根面フィルムの止め方
Φ22直管
0.1~0.13農POフィルム
被覆スプリング
 梅雨明け後は巻き上げる
8月中下旬~ 多雨時のみ被覆
9月下旬以降 被覆
フィルム留め材
防虫ネット4mm 白 (オキペット)
Φ32直管
‘紅まどんな’で問題となっている病害虫(温州萎縮病)
温州萎縮病(ウイルス病)は多くのカンキツ類に感染し、発病すると葉の奇形や糖度の低下など果実
品質への影響が大きい。‘紅まどんな’では感染すると春葉が奇形とな典型的な症状となるが、夏秋梢
では症状がでないことから発病樹での果実品質への影響を検討した。
果実品質に及ぼす影響
発病樹
無毒樹
発病樹
春葉
調査
樹数
2
2
1果重
251.0
290.0
22年
Brix
10.2
11.4
クエン酸
1.0
1.0
調査
樹数
2
3
1果重
213.0
253.3
23年
Brix
10.4
11.4
健全樹
発病樹では
○1果重並びに糖度の低下が顕著である。
○階級割合が低くなり小玉果になる傾向である。
クエン酸
0.8
0.8
‘紅まどんな’で問題となっている病害虫(疫病、樹脂病など)
‘紅まどんな’でこれまでに問題となった病気には、温州萎縮病、樹脂病、疫病、褐色腐敗病の4種で
ある。今後も引続き発生が懸念されるため注意が必要である。
疫病
温州萎縮病
1.接ぎ木部が埋没
しないように定植
2.排水対策の徹底
3.予防的にアリエッ
ティ水和剤を散布
1.健全苗木の定植
2.健全穂木の利用
3.改植時の土壌の
入替等
褐色腐敗病
樹脂病
1.日焼け、寒害、カミ
キリムシ等による
傷を少なくする
2.発病患部を早め
に削り取る
3.傷口には癒合剤
を塗布する
1.土壌から雨滴の
跳ね上がりを防ぐ
2.雨の吹込み注意
3.施設内の雨漏れ
対策の徹底
4.アリエッティ水和
剤等を予防散布
‘紅まどんな’で問題となる病害虫(チャノホコリダニ)
‘紅まどんな’で問題となるダニ類には①チャノホコリダニ②ミカンハダニ③ミカンサビダニの3種がいる。
ここでは、診断が難しい①チャノホコリダニの被害の特徴と防除のポイントを紹介する。
被害の特徴
防除のポイント
1.主な発生時期:5~7月
2.防除時期
落弁直後(5~10日後)
3.有効薬剤
・サンマイト水和剤(3000倍)
写真2 被害果2(果梗部のみ)
写真1 被害果1(果実全体)
日陰部分に被害が広がるのが特徴
発芽直後に多寄生
→伸長停止
肉眼では
確認不可
卵
雌成虫
(体長0.25mm)
写真3 寄生状況
・コテツフロアブル(6000倍)
・アプロードエースフロアブル(2000倍)
・フロンサイドSC(2000倍)
・柔らかい葉や幼果で増殖
→被害が深刻
・被害確認後では手遅れ
→常発園では定期防除
被害の症
状を再確認
写真4 夏秋梢被害
‘紅まどんな’で問題となる病害虫(ハマキムシ類)
‘紅まどんな’で問題となるハマキムシ類には①チャノコカクモンハマキ②チャハマキ③ミカンマルハキバガ
の3種がいる。ここでは、果実を加害する2種(①・②)の被害の特徴と防除のポイントを紹介する。
幼虫
被害の特徴
幼虫
防除のポイント
1.果実被害発生時期:9~11月
←被害果→
2.防除時期
9月下旬~11月上旬
(多発園:15日間隔の2回散布)
成虫
3.有効薬剤
成虫
・ダーズバン乳剤40(1500倍)
・オリオン水和剤40(1000倍)
写真1 チャノコカクモンハマキ
写真2 チャハマキ
・老熟幼虫:体長約17mm、淡緑色
・老熟幼虫:体長約25mm、灰色~淡緑色
・成虫:開帳13~20mm
・成虫:開帳20~35mm
・果実表面と穴を開けて果肉部も食害
・果実表面を浅く食害
両種ともハマキガ科の仲間で、糸を張る習性がある等、生態はよく似
る。この糸の有・無で他の害虫(カネタタキ等)との被害を見分ける。
・ファイブスター顆粒水和剤(2000倍)
・対策は両種ともほぼ同じ
・袋掛け前、虫の発生に
要注意
→発生有の場合は防除
甘平の高品質果実生産技術
増糖対策には、9月中旬以降から徐々にかん水量を控えて10月から水分ストレスを付与する。
但し、過乾燥は酸高、ユズ肌症を助長するため注意が必要。
14.5
15
14.0
H19
H24
H18
13.0
H22
Brix
H20
12.5
r =-0.8
H23
12.0
少灌水Brix
少灌水クエン酸
4.5
多灌水Brix
多灌水クエン酸
14
4.0
13
3.5
12
3.0
11
2.5
10
2.0
9
1.5
8
1.0
7
0.5
糖度
9.2
10.1
11.4
11.9
12.4
9/30
10/20
11/10
11/30
12/20
クエン酸
2.9
2.2
1.7
1.4
1.2
11.5
0
100
200
300
9月上旬~10月下旬の積算降水量 (㎜)
400
6
0.0
9/1
10/1
11/1
12/1
1/1
2/1
2月収穫時
糖度13以上
9/中~10/中の少量灌水で糖度が上昇
秋季に雨が多いと 収穫時の糖度は低い
9月中旬からのマルチ栽培
16
マルチBrix
露地Brix
マルチ酸
露地酸
10分
4
9~8分
7~6分
5分以下
15
3
*
13
2
12
11
マルチ被覆
1
10
クエン酸(g/100ml)
*
14
Brix
1月30日時点のBrix
H21
13.5
時期別糖度の目安
節水管理
クエン酸(g/100ml)
降水量と糖度の関係
マルチ
47
露地
19
29
30
20
28
4
23
9
8
0
9/21
土壌の乾きにくい水田転換園等で有効
11/13
増糖効果がみられる
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1/22
完着果の割合高く、果梗部の緑色果少ない
媛小春の特性と安定生産技術
強樹勢のため着果がやや不安定で、高接ぎ4年目頃から結実し始める。
果実は温州規格のL玉中心、熟期は1~2月で、糖度12、クエン酸1%程度となる。
栽培上の留意点
果実品質
14
6.0
Brix
♀清見×♂黄金柑
クエン酸
13
5.0
12
4.0
Brix
11
3.0
10
2.0
クエン酸 (g/100ml)
平成15年高接ぎ
9
1.0
8
7
0.0
8/20
果頂部の奇形、浮皮、ヤケ果、鳥害に注意
葉裏に着果多く、摘果は9月以降で良い
収量・階級
1月30日時点
糖度12
1/30
2/20
クエン酸1.0
ヒリュウ(わい性)台木の利用
収量
1果重
カラタチ
140
ヒリュウ
120
50
収量 ㎏/樹
樹勢は強く、樹高4m
扁球形でネック生じる
発芽・開花が遅い
子房小さい
果実は120g程度
果皮は鮮黄色
剥皮は容易
種子は若干入る
減酸早く、清涼な風味
熟期1~2月
9/30 10/20 11/10 11/30 12/20 1/10
100
40
80
30
60
20
40
10
20
0
0
高接ぎ4年
5年
6年
7年
樹が落ち着くと連年生産可能
果実の大きさは温州規格のL果中心
1果重 g
60
9/10
樹容積(m3)
収量(kg/樹)
Brix
クエン酸
カラタチ台 ヒリュウ台
3.2
2.0
2.4
5.8
11.7
12.4
1.23
1.32
ヒリュウ台木はカラタチ台木に比べて①初期の結実性が
良好②樹の生育は緩慢(コンパクト)③浅根性で果実品質
良好のため媛小春における適応性を検討中
キウイフルーツ‘愛媛2号’の特性
高糖度、良食味のベビーキウイ!
果実品質(2012年)
交配親 香粋×チーフタン
品種名
育成者 果樹研究センター
交配年 平成17年
倍数性 3倍体
果実重
(g)
果肉硬度
(kg)
糖度
(%)
酸含量
(g/100ml)
愛媛2号
38
1.2
19.3
0.5
香 粋
27
1.2
15.1
1.0
117
1.2
16.5
0.3
ヘイワード
※果肉硬度は、藤原製作所KM-5型(円錐針)で測定。
○ 開花期は‘ヘイワード’よりもやや早い5月下旬。
○収穫期は10月中下旬。
○果実重は30~50gのベビーキウイ。
○果肉は黄緑色で、糖度は18~20%と高く、食味が良い。
○3倍体であるため、トムリ、マツアなどの6倍体品種の花粉で受粉した
場合には種がほとんど入らないが、結実に問題はない。
これまでのキウイフルーツとは外観や食味が大きく異なるため、キウイフルーツの新しい
ジャンルとして需要拡大に貢献できると考えられる。
クリ‘ぽろたん’の特性
渋皮が容易に“ポロっと”むける大果で食味の良い早生品種
収穫期、総収量、果実品質(2008年 鬼北農業指導班)
交配親 早生系統550-4×丹沢
品種名
収穫盛期
(月/日)
1果平均重
(g)
果肉色
肉質
ぽろたん
9/7
32.7
黄色
ヤヤ粉
国 見
9/8
31.1
ヤヤ淡黄色
ヤヤ粘
筑 波
9/25
29.7
淡黄色
粉
育成者 (独)果樹研究所
登録年 平成19年
収穫期 9月上中旬
※樹齢9年生
○‘国見’とほぼ同時期に成熟する早生クリ。
○裂果率が‘丹沢’や‘国見’よりも少ない。
○果肉は黄色、肉質はやや粉質で、甘味・香気が強く食味が優れる。
○収量性は‘丹沢’、‘国見’と同程度。
○大果で、30g程度の果実重となる。
○剥皮性が優れ、良食味の早生品種として有望と考えられる。
‘ぽろたん’の果実
チュウゴクグリのように、焼栗にすると渋皮が容易にむける注目品種!
クリ‘美玖里(みくり)’の特性
大果で甘味・香気の強い、良食味の中晩生品種
収穫期、総収量、果実品質(2008年 鬼北農業指導班)
交配親 秋峰×石鎚
品種名
収穫盛期
(月/日)
1果平均重
(g)
果肉色
肉質
美玖里
9/28
27.9
黄色
粉
筑 波
9/25
29.7
淡黄色
粉
石 鎚
10/1
18.0
淡黄色
中
育成者 (独)果樹研究所
登録年 平成23年
収穫期 9月下旬
※樹齢9年生、肉質は育成者のデータによる
○ ‘筑波’と‘石鎚’の中間に成熟する高品質な中晩生品種。
○双子果や裂果の発生が少ない。
○炭そ病をはじめとした腐敗果の発生が少ない。
○胴枯れ病に抵抗性あり。
○果肉は濃い黄色、肉質はホクホクとした粉質で、甘味・香気が強く、
食味が優れる。
○粒揃いが良く、28g程度の果実重となる。
鬼北農業指導班 5年生‘美玖里’
中生の‘筑波’と晩生の‘石鎚’の間を補完する良食味の品種として有望。
ブドウ‘クイーンニーナ’の特性
着色良し、味良し、ボリューム良し、注目の赤系ブドウ!
果実品質(2003-2005年の平均値)
交配親 安芸津20号×安芸クイーン
品種名
果房重
(g)
果粒重
(g)
糖度
(%)
酸含量
(g/100ml)
クイーンニーナ
517
17.6
21.7
0.37
巨 峰
426
12.4
19.3
0.50
ピオーネ
534
16.7
19.5
0.45
育成者 (独)果樹研究所
登録年 平成23年3月
倍数性 4倍体
※データは (独)果樹研究所のWebサイトより抜粋
○ 収穫期は‘ピオーネ’よりも3日~5日遅い8月下旬~9月上旬。
○ジベレリン処理により容易に無核化、大粒生産が可能である。
○フォクシー香があり、糖度は20%以上。酸味は少なく渋味もない優れ
た食味である。
○鮮紅色が美しく、高温でも着色が優れる。
○果粒重は15g~17g程度となり、‘ピオーネ’を上回る迫力がある。
※写真:石川県砂丘地農業研究センター提供
○果樹研究センターでも2013年より栽培試験を開始している。
高温地域でも着色がよく、果皮色が美しい赤色となる。果粒重も‘藤稔’程度の大きさに
なる大粒品種。肉質は欧州系品種に近い崩壊性で噛み切りやすく食味も良い。
ブドウ‘ブラックビート’の特性
着色良好!!温暖化に対応する黒系ブドウ
果実品質(果樹研究センター 2013年)
交配親 藤稔×ピオーネ
育成者 河野隆夫(熊本県)
登録年 平成16年
倍数性 4倍体
品種名
果房重
(g)
果粒重
(g)
着色
(CC)
Brix
(%)
酸含量
(g/100mL)
ブラックビート
337
12.3
10.2
17.4
0.37
ピオーネ
500
14.5
7.4
19.1
0.30
※着色はカラーチャート値
○ 収穫期は‘巨峰’よりも10日程度早い、8月上旬頃。
○やや花振るいするものの、ジベレリン処理により無核化し、実どまりも
良くなる。
○果肉は締まり、糖度は16~17%程度だが、多汁でさっぱりとした食味。
○裂果は少なく、果梗も果芯も強いため脱粒しにくい。
同時期の果房のようす
(左:ブラックビート、右:ピオーネ)
○大粒で14g~18g程度の果粒重となり、果粉も多く、皮がむきやすい。
高温地域でも着色が良く、栽培しやすい注目の品種!
「マルドリ」方式による栽培技術の概要
「マルドリ」はマルチとドリップ(点滴かん水)を組み合わせた施設。かんきつは夏から秋の雨で
品質が左右されます。そこで、不必要な降雨をマルチで遮断し、必要に応じてかん水・施肥を行う
ことで、毎年安定して品質の高い果実が生産できます。
技術の概要
○必要に応じてマルチを敷設
○マルチの下に点滴かん水チューブを敷く
○かん水と施肥の自動化
○施肥を液肥で管理できる
○効率的に施肥管理が可能
液肥混入機
(約15万円/10a)
コントローラー(約10万円/10a)
原図 近中四農研機構
原図 近中四農研機構
マルドリ方式の全体図
マルチ,点滴かん水設備(約25万円/10a)
‘はれひめ’での「マルドリ」の効果と活用方法
マルドリ方式による秋冬期および3月下旬からの点滴かん水施肥により、肥料成分を4割
減らしても、十分な葉中の窒素濃度を維持でき、充実した新梢が発生し着果が安定します。
3 翌年の着果
1 時期別収穫量
マルドリ方式区は着色が良いため収穫時期が早く収量が多い
収量1(kg/10a)
2,500
マルドリ方式区
慣行区
2,000
マルドリ方式区は充実した新梢が発生し着果量が安定
↓着色が早い
翌年の着果量・新梢長
生理落果後
着果量
(1少-5多)
1,500
1,000
500
マルドリ方式区
0
12月10日 12月12日 1月4日
1月7日
マルドリ方式区 慣行区
撮影 11月28日
2 葉中の窒素濃度の推移
マルドリ方式区は少ない施肥量で、葉の窒素含有率を維持
3.40
3.20
マルドリ方式区
慣行区
直果(%)
有葉果(%)
新梢長
(cm)
4.7
38.2
9.1
9.6
*
5.6
*
慣行区
1.3
4.5
有意性
**
n.s.
残存果率=生理落果後÷生理落花前×100
有意性:t検定(*5%、**1%)
4 新梢と細根の状況
液肥施用(慣行区の6割の成分量)
粒状肥料施用
マルドリ方式区は充実した新梢と細根が発生
新梢
窒
素 3.00
含 2.80
有
率 2.60
3.2
残存果率
細根
細根がいっぱい
(
)
% 2.40
2.20
12月 1月
2月 3月
4月
5月
6月
7月
葉中の窒素含率の推移(2012-2013)
8月
9月
マルドリ方式区
慣行区
マルドリ方式区
慣行区
カンキツ有機栽培における銅水和剤並びに石灰硫黄合剤の
体系散布による品質向上
有機栽培で使用できる銅水和剤(ICボルドー66D)の散布は、ミカンサビダニによる被害を増加させる
傾向がある。このため、同じく有機栽培で使用できる石灰硫黄合剤を組み込んだ体系によるミカンサビ
ダニ抑制効果および収穫果実の品質への影響を検討した。
試験区の内容(宮川早生)
図 果実品質に及ぼす影響
試験区
発芽前
(3/22)
新梢初期
(4/19)
落弁期
(5/16)
6月上旬
(6/6)
7月上旬
(7/5)
8月下旬
(8/23)
単独区
○
○
○
○
○
○
100%
体系1区
○
○
○
■
■
○
90%
体系2区
○
○
■
○
■
○
80%
無散布
-
-
-
-
-
-
70%
1)○:ICボルドー66D(3/22:40倍、4/19~7/5(80倍)、8/23(200倍)
2)■:石灰硫黄合剤(100倍)
50%
100
被害果率%
ミカンサビダニ被害果
60%
40%
80
30%
60
20%
40
10%
20
0%
単独区
0
単独区 体系1区 体系2区 無散布
図 ミカンサビダニによる被害果の発生
体系1区
1級
2級
体系2区
その他
無散布
出荷不可
(果実品質(出荷基準の区分))
銅水和剤と石灰硫黄合剤の体系散布によりミカンサビダニの被害果実が減少し、かつ果実品質も向
上した。なお、これらの体系では黒点病並びにそうか病に対する効果は、ほぼ同等であった。
キウイフルーツかいよう病の防除対策は収穫後からが重要
キウイフルーツかいよう病の発生圃場は増加傾向にあり、本病に弱い品種では感染後早い時期に
枯死するなど被害が拡大している。
本病の対策は発病樹の早期発見・伐採であるが、今後周辺圃場(樹)への感染拡大を抑えるた
め、主要な感染時期である収穫後からの銅水和剤の発病抑制効果を検討した。
30
発病葉率(%)
25
銅剤
20
枝への感染抑制
15
発病・感染抑制
枝から菌の漏出(2月)
10
5
0
ICボルドー66D 50倍
コサイドボルドー 500倍
無散布
ICボルド-66D(50倍)散布の発病抑制効果
(散布月日:12/1、1/14、2/15、3/11 調査:6/3)
新葉での発病(5月上旬)
ICボルドー66D(50倍)を収穫後~発芽前までに定期的に散布することは感染抑制効果が高いことから
発病園地および周辺園地では必要。(なお、50倍の収穫後からの使用はH26春に適用拡大予定)
キウイフルーツ根腐病菌の生息域
キウイフルーツ根腐病はPythium vexznsとP.helicoidesを病原菌とし、根腐症状を呈する病害で、症状が進
むと枯死に至ため、早急な対応が必要である。
耕種的防除として客土の効果が期待されるため、土壌中の菌の生息域について検討を行った。
皮層組織の軟腐症状
発症苗根部
1m
切断面の症状
1m
罹患境界組織の褐変症状
罹病樹の土壌中には主幹から半径1m、深さ30
㎝の範囲を中心に病原菌が分布することが明らか
となった。
罹病樹の改植の際、その範囲の土壌を入れ替
え、病原菌の動向を調査中。
30㎝
病原菌の生息範囲
キウイフルーツの新しい台木‘シマサルナシ’
根腐病発生園で威力を発揮する!
キウイフルーツ根腐病
キウイフルーツ根腐病は、
ピシウム菌が引き起こす土
壌病害です。感染樹の根は
軟腐状態となり、吸水が制
限されるため写真のような
立枯症状を引き起こします。
根腐病による立枯症状(Hort16A)
シマサルナシ台木試験(途中経過)
台木の違いが‘Hort16A’の初期生育に及ぼす影響(2012年)
試験区
台木幹周
(cm)
穂木幹周
(cm)
総新梢長
(cm)
根腐病感
染の有無
シマサルナシ
11.2
6.0
2,420
無
9.8
6.6
1,538
有
慣 行
※定植2年目の生育状況、慣行台木は‘ヘイワード’挿木。
シマサルナシ(Actinidia.rufa)
シマサルナシはキウイフルーツ
と同じマタタビ属の植物で、温暖
な西日本の沿岸部に自生してい
ます。
果樹研究センターでは、根腐病
に強いキウイフルーツの台木とし
て‘シマサルナシ’を選抜し、その
実用化試験に取り組んでいます。
シマサルナシ台木‘Hort16A’
慣行台木‘Hort16A’
○‘Hort16A’(ゴールドキウイ)の場合では、慣行台木では
根腐病への感染が認められ、新梢生育が劣っているのに
対し、シマサルナシ台木では根腐病への感染は認められ
ず健全に生育しています。
○今後は、収量性、果実品質を比較し、シマサルナシ台木
の有効性を確認します。
キウイフルーツすす斑病の防除対策
キウイフルーツすす斑病は「ヘイワード」「ホート16A」等の主要な品種に発病が確認されており、徐々発生
が拡大している。
薬剤防除ではベンレート水和剤とストロビードライフロアブルの効果が認められているため、さらに防除時期
について検討した。
ベンレート水和剤の散布時期による効果の比較(紅妃)
葉裏のすす状病斑(紅妃)
25.0
果実では貯蔵後も
さらに発病する。
9月~
貯蔵後
20.0
発
病
果 15.0
率
(
7~8月
散布間隔を2ヶ月
開けると効果が落
ちる
10.0
)
%
5.0
0.0
6月・7月
7月・8月
6月・8月
無散布
貯蔵果実(貯蔵開始:9月24日、調査1月24日)
すす状病斑
凹状病斑
凹状病斑
キウイフルーツすす斑病は7月上旬以降に葉や果実にすす
状の病斑を作り、その後果実では凹状の病斑となる。
ベンレート水和剤2,000倍およびストロビードライフロアブル
2,000倍で6~8月の間に1か月間隔で2回散布する。
イセリヤカイガラムシの生態と防除
イセリヤカイガラムシは明治時代に海外から侵入した害虫で、カンキツ地帯に広く分布した。その後、有
力な天敵であるベダリアテントウが導入され、多発することは少なくなっていた。しかし、近年、使用薬剤
の変遷等により、本種の多発による「すす病」発生園が増加している。
○生態
○防除
雌成虫は4~6mmで、体の後方に白い大きな卵
のうを伴う。カンキツのほかナシ、ナンテンなどの樹木、マメ
科植物など寄生範囲は広い。
越冬は主に幼虫で行われ、幼虫の主な発生は第
1世代が5月下旬~6月中旬、第2世代が8月中旬
~9月、第3世代が10月~11月である。
被害は吸汁による生育抑制のほか、虫体から発
せられた甘露による「すす病」がある。
写真1
雌成虫
写真3 主幹部への寄生
写真2 1齢幼虫
写真4 排出した甘露
防除は第1、2世代幼虫発生期に重点をおく。薬剤
には比較的弱く、特に有機リン系やカーバメート系薬剤
(図1の青色棒グラフ)の効果が高い。葉や新梢の他、
主幹部にも多く寄生するため、虫体に薬液が付着す
るよう丁寧に散布する。
ベダリアテントウの生態と薬剤の影響
イセリヤカイガラムシの導入天敵であるベダリアテントウは非常に有効であるが、他の害虫を目的とした
防除などによりその効果を発揮できない場合が多い。
写真1 イセリヤカイガラムシを捕食する
写真2 ベダリアテントウ若齢幼虫
ベダリアテントウ成虫
写真3 イセリヤカイガラムシ(左)と ベダ
写真4 ベダリアテントウ蛹
リアテントウ老齢幼虫(右)
ベダリアテントウ成虫は5mm程度で、翅に黒色の5つの斑紋が
ある。条件が良ければ年間8回程度発生し、1頭が一生に
300~400頭のイセリアカイガラムシを捕食する。この発生回数や
捕食量が多いことから、短期間でイセリヤカイガラムシを駆逐する。
ベダリアテントウは4、5月及び10月以降に活動が盛んなた
め、イセリヤカイガラムシ発生園で本種を確認した場合は、影響の
大きい薬剤(表1の朱字)の散布を控える。
表1 ベダリアテントウに対する各種薬剤の影響(2013年 愛媛果研セ)
補正死亡率
供試
剤形
薬剤名
幼虫
成虫
倍率
5日後
1日後 12日後
蛹化率 羽化率
有機リン スプラサイド乳剤40
1500
100
100
-
0
系
ジメトエート乳剤
1000
100
40
60
30
30
ダーズバン乳剤40
1000
100
30
60
40
40
カーバメー オリオン水和剤40
1000
100
70
100
0
ト系
ラービンフロアブル
800
90
50
60
40
40
ネオニコチノ アドマイヤーフロアブル
4000
100
100
-
0
イド系
モスピラン顆粒水溶剤 4000
100
100
-
0
スタークル顆粒水溶剤 2000
100
30
100
0
ダントツ水溶剤
4000
100
60
100
0
合成ピレ ロディー乳剤
2000
100
90
100
0
スロイド系 テルスターフロアブル
3000
100
30
100
0
IGR系
アプロード水和剤
1000
30
20
100
0
マッチ乳剤
3000
33
10
10
90
90
その他 ハチハチフロアブル
2000
100
100
-
0
スピノエースフロアブル
6000
70
10
50
50
40
コテツフロアブル
4000
20
0
0
100
100
コルト顆粒水和剤
4000
30
0
0
100
90
キラッ プフロアブル
2000
40
0
0
100
100
殺ダニ剤 ダニエモンフロアブル
4000
20
0
0
100
100
スターマイトフロアブル
3000
30
0
0
100
100
ダニサラバフロアブル
2000
30
0
0
100
100
ダニカット乳剤20
1000
60
0
30
70
70
ダニトロンフロアブル
1000
80
10
40
60
60
イオウフロアブル
400
60
20
30
60
60
殺菌剤 ジマンダイセン水和剤
600
20
0
0
100
100
Mダイファー水和剤
600
50
0
0
100
100
ストロビードライフロアブル 2000
20
0
0
100
100
デランフロアブル
1000
40
0
0
100
100
キノンドー水和剤80
800
40
20
20
80
80
フロンサイドSC
2000
40
0
0
100
100
コサイド3000
2000
80
0
0
100
100
注1 ) 供試虫: 成虫は果樹セ内の自然発生個体を、幼虫は室内増殖した個体(若~中齢)を使用。
各1 0 頭( マ ッ チ 乳剤の成虫は9 頭)
注2 )試験法: 各薬剤に1 0 秒間浸積処理し、風乾後、餌としてイセリ ア カイガ ラを与え2 5 ℃で管理。
注3 )朱字: 影響 大、黒字: 影響 弱、 青字: 影響 無
有機リン、カーバメート、ネオニコチノイド、合成ピレ
スロイド系等の薬剤はベダリアテントウに対し影
響が大きい。
ユズ寄生性ヤノネカイガラムシの初確認
ユズは抵抗性を有するためヤノネカイガラムシが正常に発育できないとされていたが、昨年内子町のユズ
に寄生する本種が初確認された。今後、発生地域の拡大の恐れもあり注意が必要である。
防除対策
ユズ枝枯れ被害
ユズ果実被害
100
80
80
60
60
40
40
20
20
生存率(%)
100
寄生樹種
ユズ
サワー
オレンジ
0
0
0
10
20
30
40
50
センター内みかん寄生
ヤノネカイガラムシ個体群
0
10
20
30
40
50
1、冬期のマシン油乳剤散布
2、有効薬剤
アプロード水和剤 1,000倍
スプラサイド乳剤 1,500倍
3、適期防除
第1世代が6月中旬頃
第2世代が8月下旬頃
4、天敵の保護
ユズ園でも、導入天敵(ヤノネツヤコバチ・ヤノ
ネキイロコバチ)の寄生を確認した(表1)。これら
天敵保護のため、不用意な薬剤散布は控える。
接種後
日数(日)
現地ユズ寄生
ヤノネカイガラムシ個体群
図1 寄生樹種の違いがヤノネカイガラムシの生存率に及ぼす影響
みかん寄生個体群はユズでは全く発育しなかったが、現地
ユズ寄生個体群は、ユズとオレンジで正常に発育した(図1)。
表1 ユズ園におけるヤノネカイガラムシ生存率と天敵寄生状況
採集場所
ヤノネカイガラムシ ヤノネツヤコバチ ヤノネキイロコバチ
生存率(%)
寄生率(%)
寄生率(%)
備考
内子町A園
51.3
32.6
0.0
減農薬園
内子町B園
68.8
19.6
0.0
減農薬園
内子町C園
96.0
0.3
0.3
慣行防除園
注)各園2013年1月30日採集、1月31日調査
クリタマバチの被害と導入天敵の状況
発生の現状
クリタマバチの有力天敵としてチュウゴク
オナガコバチが導入されて以降、県内全域で
高い防除効果が得られていたが、近年は天敵
の発生が減少傾向にあり、クリタマバチの被
害が増加傾向にある(図1)。
2mm
クリタマバチ雌成虫
2013年
2mm
クリタマバチ被害
チュゴクオナガ
コバチ雌成虫
図2 チュウゴクオナガコバチ等Torymus属
寄生蜂羽化消長(10園合計)
防除対策
1、天敵の保護
3月中旬から4月上旬にかけて、天敵寄生蜂がクリ
タマバチゴールから羽化する(図2)。このため、こ
の時期まで剪定枝を園内に残し天敵を保護する。
2、耕種的防除
適正な肥培管理と縮・間伐や剪定を行い、樹勢を強
く保つ。
年
図1 クリタマバチ被害芽率と天敵羽化数の推移(10園平均)
3、化学的防除
クリタマバチの羽化時期の6月下旬~7月上旬にア
グロスリン水和剤1,000倍、アディオン乳剤1,000倍な
どを散布する。
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