温州ミカン新品種`佐賀果試9号`

佐賀県研究成果情報
（ 作 成 平 成 27 年 ３ 月 ）
温州ミカン新品種‘佐賀果試９号’の育成
［ 要 約 ］‘ 上 野 早 生 ’ の 珠 心 胚 実 生 で あ る ‘ 佐 賀 果 試 ９ 号 ’ は 、 同 時 期 の ‘ 上 野 早 生 ’
に比べて着色や減酸が早く糖度が高い。
果樹試験場・品種開発研究担当
部会名
果
樹
専門
連絡先
育
種
0952-73-2275
[email protected]
対象
温州みかん
［背景・ねらい］
佐 賀 県 に お け る 温 州 み か ん は 、 10 月 に 出 荷 す る 極 早 生 の 品 質 が 、 そ の 後 出 荷 さ れ る
温 州 み か ん の 市 場 価 格 に 大 き く 影 響 す る 。 そ こ で 、 10 月 に 出 荷 可 能 な 品 質 の 高 い 温 州
み か ん と し て 、‘ 上 野 早 生 ’よ り 樹 勢 が 強 く 、着 色 や 減 酸 が 早 く 糖 度 が 高 い‘ 佐 賀 果 試
９号’を育成した。
［成果の内容］
１ ． 本 品 種 は 、 1995 年 に ‘ 上 野 早 生 ’ を 母 本 に ‘ 川 野 夏 ダ イ ダ イ ’ を 花 粉 親 に し て 交
配 し た 珠 心 胚 実 生 で あ る 。 2004 年 か ら ‘ 佐 賀 果 試 ９ 号 ’ と し て 特 性 調 査 を 開 始 し 、
2013 年 に 選 抜 を 完 了 し た 。 2014 年 7 月 14 日 に 品 種 登 録 出 願 公 表 さ れ た 。
２ ． 果 皮 色 及 び 着 色 程 度 は ‘ 上 野 早 生 ’ と 比 較 し て 高 い （ 表 １ ）。 ハ ン タ ー Lab の ａ 値
に つ い て は ‘ 上 野 早 生 ’ よ り 高 い （ 表 １ 、 写 真 １ ）。
３ ．‘ 上 野 早 生 ’ と 比 較 し て 、 ク エ ン 酸 含 量 は 0.28 ポ イ ン ト 少 な く 、 糖 度 は 1.6 度 高
い （ 表 １ ）。
４ ． 糖 酸 比 は 11.6 で あ り 、‘ 上 野 早 生 ’ と 比 較 し て 4.5 高 い （ 表 １ ）。
５ ． マ ル チ 栽 培 で は 、 い ず れ の 年 も 10 月 中 旬 で 11 度 以 上 と な っ た （ 表 2）。
［成果の活用面・留意点］
１．糖度を上げるため 6 月上旬（梅雨入り前）のマルチ被覆を実施する。
２ ．水 は け が 良 く 、乾 燥 し や す い 園 地 で 栽 培 す る 。平 坦 地 の 場 合 は 高 う ね 栽 培 を 行 う 。な
お、減酸の状況によっては灌水が必要であり、用水を確保できる園地が望ましい。
３．
‘ 上 野 早 生 ’と 比 較 す る と 樹 勢 は 非 常 に 強 く ト ゲ の 発 生 が 見 ら れ る が 、経 年 に よ り
消失する傾向にある。
［具体的データ］
表１‘佐賀果試９号’の果実特性（2011 年より 3 ヶ年の平均値
果重
(mm)
(ｇ)
果肉
歩合
佐賀果試９号 60.5
48.8
124.1
96.6
85.1
2.3＊ 3.5*
上野早生
48.0
126.4
93.0
85.4
1.2
品種名
縦径
(mm)
60.7
※1 独法果樹試ｶﾗｰﾁｬｰﾄ値※2 ﾊﾝﾀｰ Lab a 値
ａ
浮皮
ｸｴﾝ酸
含量
糖度
（※2）
(※3)
(％)
(Brix)
糖酸
比
-3.3*
0.0
0.87*
9.7*
11.6*
0.0
1.15
8.1
7.1
果皮色
果形
指数
横径
(※1)
着色
1.9
調査日：10 月 1 日）
-14.0
※3 甚大 3 軽 1 無 0
※4‘上野早生’をコントロール群として Dunnett の検定により比較した場合、*印のあるものは 5%水準で有意差あり
表２‘佐賀果試９号’のマルチ栽培における果実特性
年次
2012年
2013年
2014年
調査日
10/12
10/13
10/10
10/15
10/10
10/20
品種
佐賀果試9号
上野早生
佐賀果試9号
上野早生
佐賀果試9号
上野早生
被覆日
6/7
6/10
6/5
横径
(mm)
61.4
57.8
64.0
64.0
60.7
61.6
果実重
着色歩合
（ｇ）
90.5
80.9
102.9
111.5
91.7
92.0
写真１‘佐賀果試９号’着果状況及び果実比較（上段；上野早生
糖度
(分)
9.7
8.7
3.1
－
8.4
9.7
13.1
11.7
11.4
10.2
11.1
10.3
クエン酸
（％）
1.24
1.17
0.96
1.28
1.04
1.36
下 2 段‘佐賀果試９号’）
［その他］
研究課題名：極早生・早生温州みかんのブランド確立のための突然変異を利用した新品種の育成
予算区分 ：県単
研究期間 ：1995～2013 年度
研究担当者：松尾洋一、八田聡、坂井有美子、中村典義、野中美穂子、納冨麻子、竹下大樹
発表論文等：松尾ら‘佐賀果試９号’品種登録出願公表 2014 年 7 月 14 日（第 28893 号）