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こどもと国際交流 Part2

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こどもと国際交流 Part2
ノウハウシリーズ:
「こどもと国際交流 Part2 」
前回に引き続いて、アジア太平洋こども会議・イン福岡事務局の新田さんにボランティ
アの方々をいかに活用していくかというテーマで書いていただきました。本文中でも紹介
されているように500名という大勢のボランティアの方々に支えられて、毎年、真夏に同会
議は開催されているとのことですが、子どもたちに負けないボランティアの若者たちのパ
ワーも、こども会議を成功させている大きな原動力となっているようです。
*新田
裕木子(にった
ゆきこ)
1973年福岡県生まれ。福岡教育大学卒。1997年APCC実行委員会に事務局スタッフとして入
局。プログラムコーディネーターとしてホームステイ・海外招聘担当をへて、1999年から
主にボランティアの登録・運営に従事。
「こどもと国際交流」第2 回目の今回はAPCCの運営体制について、特にボランティアの活
用という視点でご紹介させていただきます。
【APCC 登録ボランティア】
市民による草の根の国際交流活動であるAPCCの12年間を振り返るとき、福岡のおおらか
で精力的な市民ボランティアの存在は欠かせません。当初は(社)福岡青年会議所のメン
バーによって始められたこの活動も、現在では中学生から中高年層まで、また福岡市民・
県民だけでなく県外在住者にもその輪は拡がっています。ここ数年APCCで活躍するボラン
ティアは毎年平均500人。この数字にホストファミリー(約400家庭)やイベントに協力し
ている他の市民ボランティア団体(約7団体)は含まれていません。この数字はAPCCの活
動のみに携わる「登録ボランティア」の数なのです。
(参考)2000年度の登録ボランティアは総数599名。その内訳は、性別で見ると女性447
(74.6%)、男性152(25.4%)。所属で見ると全体の過半数を中学生から大学生までの学
生が占めています。
【ボランティア登録制度】
1996年までは交流キャンプを運営するために結成された「WITH(ウィズ)」というボラ
ンティアグループが大学生を中心にスタッフを募集し、自主的に活動をおこなっていまし
た。しかし、回を重ねるごとに交流キャンプだけでなくもっと広範囲にAPCCでの活動の幅
を広げたり、若い人に限らず、時間の融通が難しい社会人や主婦の方など誰でも興味があ
ればボランティアに登録できるボランティア制度の必要性を感じたため、1997年APCC実行
委員会が直接ボランティアの個人登録制度を実施し、その管理運営にあたることになりま
した。
まずボランティアを募集するにあたって、ラジオや広報誌・新聞などにボランティア募
集広告を掲載します。この方法は、特に社会人や主婦の方々に反響があったようです。ま
た、市内の大学の学生課をいくつかまわり、ボランティア募集のポスターを貼ってもらい
ました。特に、学生たちには口コミで広がる場合も多いので、これは有効です。
登録希望者は必ずはじめに登録会に参加してもらうのですが、登録会は毎月1∼3回の頻
度で行い、ビデオや各種資料を使ってAPCCの事業やボランティア活動についてわかりやす
く説明します。登録の意志を固めた人は、次回登録用紙を提出し、それと同時に活動する
部会を決め、黄色のスタッフTシャツを受け取ります。これで正式に登録されたことになり
ます。
登録期間は登録日から翌9月末日までとなります。これは、APCCの活動は夏がメインのた
め、10月1日から事業年度がはじまり翌9月末日をもって終わるからです。単年度でおこな
う理由は、せっかく登録しても全く活動に参加できない方(いわゆるスリーピングメンバ
ー)が増えると、実行委員会側でもボランティア管理や情報提供の面で負担が大き
くなるからです。そこで、毎年9月末にアンケートを実施し再登録の希望の有無を確認しま
す。その年はまったく活動できなくても来期の再登録はできますし、残念ながら参加する
気持ちがなくなった方には次期の登録は辞退していただく方針を取っています。ちなみに、
2000年度の登録者の中で再登録者の占める割合は39.3%(235 人)でした。
また、活動を安全で快適におこなうために、ボランティア活動保険に任意加入してもら
います。これは「社会福祉法人全国社会福祉協議会」がおこなっているもので、APCCでは
一人あたり年間500円のプランを勧めています。
【ボランティア活動の運営】
12回目の今年の年間運営状況を例にあげると、1999年の10月に第12回APCC実行委員会の
運営組織が決定し、活動内容ごとに15部会ができました。大半の部会は年明け頃から活動
を開始します。そこで、再登録したボランティアへ、年末に郵送で新しい部会を紹介し自
分がどの部会に所属したいかアンケートをとり、部会毎にメンバーリストを作成します。
部会のミーティングの日程が決定するとその部会担当のコーディネーターがメンバーへ通
知し、第1回目のミーティングが開催されました。
原則的にボランティアは希望どおりの部会に所属できます。各部会にはリーダーである
部会長と担当のコーディネーターがおり、各部会ごとに目的にあった様々なイベントの事
業企画からその運営までボランティア主体で活動していきます。忙しい部会では、4月以降
7月の本番までの間、週に何度も集まり、打ち合わせや準備をおこないます。1月以降、新
規で登録したボランティアたちへは登録会の時に、各部会の紹介をし、登録と同時に希望
する部会に所属してもらいました。
ボランティア活動のルールとして、交通費や食費など自己負担で参加すること、ミーテ
ィングの出欠は必ず担当のコーディネーターに連絡すること、アンケートなどの提出期限
を守ること、などがあります。しかし、なかなか徹底できていないのが現状です。
一方、私を含めAPCCの専属スタッフであるプログラムコーディネーターは現在6 名おり、
それぞれ、2∼3部会を担当しています。コーディネーターは部会長と共に部会の目標を定
めたりもしますが、その後は調整役となります。ボランティアの中にもかなり経験の長い
方もいらっしゃるので、そういう方にリーダーシップを発揮してもらいます。APCCの主旨
に基づくボランティアの自由な発想で、ひとつひとつ事業を手作りしているのです。
ところで、ボランティアの中には遠方に住んでいる人、仕事が忙しく活動時間がなかな
かとれない人などもいます。そういうボランティアは部会には所属せず、実行委員会から
ときどき単発的にイベントの当日スタッフの募集や事務作業のお手伝い、翻訳といった自
宅でできる活動などをお願いしています。
【今後の課題】
運営面では、現在、実行委員会からの情報提供や各イベントスタッフの募集、ボランテ
ィアからの連絡をいかにスムーズに、しかも低コストでおこなうかが課題となります。ボ
ランティアの個人情報はデータベースで管理しており、連絡手段はEメールやFAXを持って
いる人はそちらを最優先します。現在、Eメール保持者はボランティア全体の50.1%で、
これらの人たちには低コストで同時に情報を送る事ができます。ボランティアからの返信
も迅速です。今後、携帯電話の普及に加えて、Eメールを持つボランティアはもっと増える
と予想しています。いずれはインターネットを通じてすべてのボランティアと連絡がとれ
るようなネットワークを作っていけたらと考えています。そうすれば、単発的な事業を開
催する場合も、必要に応じて適当なスタッフを簡単に募集することができますし、ボラン
ティアにとっても気軽に自分が興味のある活動を選び参加することができるようになるで
しょう。
また、APCCでは来年度から、時間的にも労力的にも深く関わっていた(社)福岡青年会
議所が実行委員会の組織構成メンバーからはずれることが決まっています。今後は登録ボ
ランティアの中から部会長をはじめとする運営責任者を養成することに力を注がなくては
なりません。それと同時に、現在のボランティアは学生が過半数を占める若い世代が中心
ですので、事業に責任をもって取り組める30代以上のボランティアを今後いかに確保して
いくかが鍵となると思います。
部会名
イベント
ジュニアプログラム
スタディキャンプ
チャリティゴルフ
人数
79
33
99
6
部会名
医療
シャペロンシンポジウム
交通運輸
交流キャンプ
人数
22
23
37
176
ネットワーク
ピース大使プログラム
ホームステイ
ボランティア定例会
ワークヘルプ
20
100
70
20
25
広報キャンペーン
国際交流キャンプ
総務・広報(写真)
通訳
派遣
翻訳
11
78
6
9
18
79
※複数の部会にまたがって所属する者あり
※所属のないボランティアもあり
【さいごに】
夏の本番では、ボランティアたちは暑い中本当に一生懸命活動しています。そのなかで、
ボランティア同士のチームワークも生まれ、みんなで事業を成功させようという気持ちが
高まります。例えるなら、学校の文化祭のような雰囲気です。メインイベントのフィナー
レでは海外の参加者約400名、福岡のこどもたち約170名、ボランティアたち約200名が一緒
にテーマソング「We are the BRIDGE 」を大合唱し、みんなで興奮と感動の涙を流しまし
た。「体力的にきつくても、事業終了後の達成感・充実感を味わうとまた来年のAPCCが待
ち遠しい」とあるボランティアは言っていましたが、実にその通りだと思います。
ボランティアとは、人のために役に立ちたいと努力することで、結果として自分自身が
多くを学べるものではないかと思います。今後、さらに多くの市民の方が、ボランティア
として自分の町の国際的な事業であるAPCCに理想と誇りを持ち、ボランティア活動に参加
できるよろこびを感じてもらえるよう、私たちもさらなる努力をしていきたいと思います。
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