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紀州ファインピンク
平成 27 年 秋号 第 334 号(5) 和歌山県JA花き情報 1.はじめに 暖地園芸センターでは、スターチス・シ ヌアータのオリジナル品種開発に取り組 んでおり、 ‘紀州ファインバイオレット’な ど‘紀州ファイン’シリーズ 7 品種を育成 してきました。 近年は、県育成オリジナル品種として初 となるピンク系の作出を目指すなど、花色 の充実を目標に育種を行っており、昨年度 新たに 3 品種を育成しましたので紹介しま す。 図 1 ‘ 紀州ファインピン ク’ の切り 花と 花房の 写真 なピンク色で、花冠の色は淡いクリームで す(図 1)。 2.育成経過 2010 年~2012 年に県内で育成された品 ▶作業性がよい 種・系統を混植したハウス内で自然交配さ ‘紀州ファインピンク’は枝が横に張らな せ、交雑個体を得ました。その中から早生 いため、採花作業が容易な品種です(図 1)。 で花色がよい個体を組織培養により増殖 し、特性調査や生産力検定を行うことで選 抜を行いました。 その結果、高性で花房数が多く、作業性 がよいピンク系の 1 系統、高性で切り花に ボリュームがあるブルー系の 1 系統及び収 量性が高い紫系の 1 系統を有望と認めまし た。さらに、複数年の調査を行い形質の安 定性を確認できたため、2015 年 3 月にそ れぞれを‘紀州ファインピンク’、 ‘紀州フ ァインブルー’、‘紀州 ファインパープ ル’ と命名し、育成を完了しました。 3.‘紀州ファインピンク’の特性 ▶花色がピンク色 ‘紀州ファインピンク’ のがく色は、これ までの県オリジナル品種にはない鮮やか ▶切り花長が長く、花房数が多い ‘紀州ファインピンク’の切り花長は 77.8cm で、高性の‘アルテミスピンク’と 同程度です(表 1)。また、1 本当たりの花 房数は 10.5 個で、対照品種より多くの花 房をつけます。 表1 ‘ 紀州ファインピンク’ の切り 花特性 切り花長 (cm) 77.8 茎径 (mm) 4.9 花房数 (個) 10.5 アルテミスピンク 76.4 4.9 6.1 エターナルピンク 84.6 6.0 7.9 品種名 紀州ファインピンク 調査期間:2014年11月6日~2015年3月17日 調査場所:暖地園芸センターガラス温室 栽培概要:2014年9月10日定植 株間30cm、条間40cm、2条千鳥植え 最低夜温3℃で管理 ▶秀品率が高い ‘紀州ファインピンク’の彼岸までの収量 は 12.5 本で、多収性の‘アルテミスピン ____________________________________________________________________________________ 平成 27 年 秋号 第 334 号(6) 和歌山県JA花き情報 ク’よりはやや少ないですが、ピンク系の ▶切り花長が長く、ボリュームがある 中では比較的収量性が高い品種です(図 2)。 ‘紀州ファインブルー’は生育初期から極 また、2L の本数は‘アルテミスピンク’と め て 草 丈 が 高 く 、 切 り 花 長 は 85.3cm で 同等のため、秀品率は‘アルテミスピンク’ ‘アナブルー’や‘インペリアルラベンダ より高くなります(2L 率 80%)。 ー’より長くなります(表 2)。また、花茎 が太くしっかりとし、花房の数も多いため 収量(本/株) 20 切り花にボリュームがあります。 M/S 15 表2 ‘紀州ファインブルー’の切り花特性 切り花長 (cm) 85.3 茎径 (mm) 5.8 花房数 (個) 9.2 アナブルー 73.6 4.7 8.5 インペリアルラベンダー 76.1 4.2 8.6 L 10 2L 5 品種名 紀州ファインブルー 栽培概要等は表1と同じ 0 紀州ファイン ピンク アルテミス ピンク エターナル ピンク 図 2 ‘紀州ファインピンク’の収量特性 調査期間:2014年11月6日~2015年3月17日 調査場所:暖地園芸センターガラス温室 栽培概要:2014年9月10日定植、株間30cm、 条間40cm、2条千鳥植え、最低夜温3℃で管理 2L:切り花長70cm以上、花房数5個以上 L:切り花長60cm以上、花房数4個以上 M/S:切り花長40cm以上、花房数3個以上 ▶収量性はやや低いが、秀品率が高い ‘紀州ファインブルー’の収量は 14.1 本 で対照品種よりやや少ないですが、2L の本 数は 12.6 本で‘アナブルー’より多く、 ‘イ ンペリアルラベンダー’と同等です(図 4)。 そのため、2L 率は 89.4%と高く、秀品を 採花しやすい品種です。 4.‘紀州ファインブルー’の特性 20 ‘紀州ファインブルー’のがく色は、透明 感のある淡い紫色で、花冠の色は淡いクリ ーム色です(図 3)。 収量(本/株) ▶花色が淡い紫色 M/S 15 L 10 2L 5 0 紀州ファイン ブルー アナブルー インペリアル ラベンダー 図 4 ‘紀州ファインブルー’の収量特性 栽培概要等は図2と同じ 5.‘紀州ファインパープル’の特性 ▶花色が紫色 ‘紀州ファインパープル’のがく色は紫色 図 3 ‘紀州ファインブルー’の切り花と花房の写真 で、既存の紫系オリジナル品種と比較する と、青紫色の ‘紀州ファインバイオレット’ ____________________________________________________________________________________ 平成 27 年 秋号 第 334 号(7) 和歌山県JA花き情報 とやや赤みのある紫色の‘紀州ファイング レープ’の中間の色合いです(図 5)。また、 花冠の色は淡いクリーム色です。 6.おわりに 今回新たに育成した‘紀州ファインピン ク’、‘紀州ファインブルー’及び‘紀州フ ァインパープル’の 3 品種は、2015 年 8 月 に品種登録出願公表されました(出願番号 ‘紀州ファインピンク’ :第 30048 号、 ‘紀 州ファインブルー’ :第 30049 号、 ‘紀州フ ァインパープル’:第 30050 号)。 そこで、今後はこれら 3 品種の種苗生産 を和歌山 県が許 諾した 培養業者 に委託 し、 県内の生産者が利用できるよう体制を整 える予定です。 また、 ‘紀州ファインピンク’の育成によ り、県育成オリジナル品種に主要な花色が 図 5 ‘紀州ファインパープル’の切り花と花房の写真 そろいましたが、当センターでは今後もス ターチス の育種 を継続 し、より よい品 種、 ▶収量性が高い ‘紀州ファインバイオレット’や‘サンデ ーバイオレット’と比較すると、 ‘紀州ファ 特徴ある品種を提供できるよう努めてい きたいと考えています。 インパープル’は切り花長が短く、花茎が 細いため、ややボリューム感に欠ける面が あります(表 3)。しかし、収量は 19.0 本 と多く、そのうち 2L は 15.6 本で収量性が とても高い品種です(図 6)。 紀州ファ インピ ンク 表3 ‘紀州ファインパープル’の切り花特性 切り花長 (cm) 79.8 茎径 (mm) 5.1 紀州ファインバイオレット 86.4 6.0 7.0 サンデーバイオレット 93.3 5.3 10.8 品種名 紀州ファインパープル 花房数 (個) 7.8 栽培概要等は表1と同じ 収量(本/株) 20 紀州ファ イン ブ ルー M/S 15 L 10 2L 5 0 紀州ファイン パープル 紀州ファイン バイオレット サンデー バイオレット 紀州ファ インパ ープ ル 図 6 ‘紀州ファインパープル’の収量特性 栽培概要等は図2と同じ ____________________________________________________________________________________