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気体が外部にした仕事
第1章 様々な運動 気体が外部にした仕事 気体が外部にした仕事 気体は膨張することにより外部に仕事をする.この仕事は気体の圧力が外部に向か って働くことで為す仕事である. ① 定圧過程における気体の為す仕事 なめらかに動くピストンとシリンダ ーに封入された一定量の気体の定圧加 熱による膨張を考える.シリンダーの 断面積を S ,気体の圧力を P ,ピスト ンの膨張方向への変位を ∆x とする.このとき,気体が外部(ピストン)を押す力は PS であり,この力 PS が変位 ∆x でなす仕事が,気体のなす仕事 W そのものである. = W PS × ∆x ここで気体の体積増加を ∆V とすると, ∆V = S ∆x で表せる ので, 定圧過程で気体が為す仕事 : W = P ∆V これは PV 図の面積に相当する. また,理想気体の状態方程式より,定圧過程では P ∆V = nR∆T が成立するから,物 質量 n ,気体定数 R ,温度変化 ∆ T を用いて, 定圧過程で気体が為す仕事 と表すこともできる. 2 : W = nR∆T 第 25 講 ② 気体が外部にした仕事 一般的な過程における気体の為す仕事 圧力が変化する過程においては,気体がピストンを押す力 が一定でないため,気体のした仕事を P ∆V とできない.し かしこれはあくまで過程全体についてであって,各瞬間,ご く短時間での仕事は,その間のわずかな体積増加 ∆V によっ て P ∆V と近似できる.過程全体での気体のした仕事は,こ の累積によって計算できる.すなわち,図のように,圧力が 変化する過程であっても,気体のした仕事は PV 図の面積と してよい. 気体が為す仕事 : PV 図の面積 W = ∫ V2 V1 P dV 3 第1章 様々な運動 体積 V0 ,圧力 P0 の一定量の単原子分子理想気体がある.圧力を一定に保ちながら,こ の気体を加熱し,体積を 3 倍にした.この過程について,以下の問いに答えよ. (1) 気体が外部にした仕事 W を求めよ. (2) 気体の内部エネルギーの変化 ∆U を求めよ. (3) 気体に与えた熱 Q を求めよ. 物質量 n で温度 T0 の一定量の単原子分子理想気体がある.圧力を一定に保ちながら,こ の気体を加熱し,温度を 3 倍にした.この過程について,以下の問いに答えよ.気体定数 を R とする. (1) 気体が外部にした仕事 W を求めよ. (2) 気体の内部エネルギーの変化 ∆U を求めよ. (3) 気体に与えた熱 Q を求めよ. 4 第 25 講 気体が外部にした仕事 図のように,なめらかに動くピストン(断面積 S 〔m2〕,質量 m 〔kg〕)と断熱材ででき たシリンダーがある.このピストンの重力によりシリンダー内に単原子分子の理想気体 1 モル〔mol〕を閉じこめたところ,ピストンの高さは h〔m〕であった.外気の圧力を P0〔Pa〕, 重力加速度の大きさを g 〔m/s2〕,気体定数を R 〔J/mol・K〕として,次の各問に答えなさ い. (1) 理想気体の圧力 P を P0 , m , g , S を用いて表しなさい. (2) 理想気体の温度 T を P , R , h , S を用いて表しなさい. ヒーターにより熱を加えたことにより, d 〔m〕だけピストンが上昇した.この変化に おいて,以下の問いに答えよ. (3) 理想気体が外部にする仕事 W を P0 , m , g , S を用いて表しなさい. (4) 理想気体の内部エネルギーの変化 ∆U を P0 , m , g , S を用いて表しなさい. (5) ヒーターにより理想気体の得た熱 Q を P0 , m , g , S を用いて表しなさい. 5 第1章 様々な運動 図のように,固定された断面積 S のシリンダと, そのシリンダ内をなめらかに動けるピストンに封入 された一定量の単原子分子理想気体の状態変化を考 える.ピストンには,垂直にばね定数 k のばねの一 端がとりつけられており,ばねの他端は壁に固定さ れている.はじめ,ばねは自然の長さで静止している.このとき,シリンダの底面とピス トンの間の距離は L であった.大気圧を P0 とする. 気体をヒーターで加熱すると,ピストンはゆっくりとばねを押し縮めはじめた.ばねが 自然の長さから x だけ縮むまでの過程において,以下の問いに答えよ. (1) 気体が外部にした仕事 W を求めよ. (2) 気体の内部エネルギーの変化 ∆U を求めよ. (3) 気体がヒータから得た熱 Q を求めよ. 6 第 25 講 気体が外部にした仕事 7