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第11期消費生活審議会答申 (PDF形式 507キロバイト)

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第11期消費生活審議会答申 (PDF形式 507キロバイト)
震災に備えた消費生活と行政の役割について
答申
第11期世田谷区消費生活審議会
震災に備えた消費生活と行政の役割について
目次
はじめに ........................................................................................................................................... 1
第1章 消費生活行政の現状 .......................................................................................................... 2
1 東日本大震災を受けて .......................................................................................................... 2
2 消費者を取り巻く環境の変化 ............................................................................................... 2
3 国・都の動き ......................................................................................................................... 3
4 世田谷区の現状 ..................................................................................................................... 4
第2章 震災に備えた消費生活行政の課題と取り組み .................................................................. 9
1 区民啓発の新たな取り組みの重要性 .................................................................................... 9
2 震災に備えた相談体制の整備 ............................................................................................. 15
第3章 震災後における消費生活行政の課題と取り組み ............................................................ 17
1 情報伝達・発信の課題と取り組み ...................................................................................... 17
2 震災後の相談対応への取り組み .......................................................................................... 18
おわりに ......................................................................................................................................... 21
はじめに
平成23年3月11日の東日本大震災の発生後、交通や通信の混乱、生活物資不足
の不安感による買いだめ、食品の安全性への不安等、消費生活をめぐる様々な現象が
みられ、全国の消費生活センターには多くの震災関連の相談が寄せられました。
世田谷区では、世田谷区地域防災計画等と連携をとりながら、消費生活の分野では、
震災発生後の生活情報の提供や消費生活相談の体制を定めているところですが、今回
の震災は、予想を超える事態を発生させました。区民の安定した消費生活を確保する
ためには、特に日頃から震災に備えた区民意識の向上や、震災時に自ら行動できるた
めの支援が消費生活行政においても必要であり、重要であると知らしめられました。
このような状況の中、世田谷区消費生活審議会は、平成24年5月16日、「震災
に備えた消費生活と行政の役割について」、区長から諮問を受けました。
本審議会は、現代社会を反映した様々な消費者問題への対応を踏まえながらも、諮
問に沿った課題を抽出し、その解決に向けた取り組みを中心に審議を重ねてまいりま
した。
特に震災に備えた対策として、「自助」「共助」「公助」の考え方に基づいた区民啓
発の手法や相談体制のあり方について、また、震災発生後の対策として、災害対策課
等との密接な連携を前提とした情報伝達・発信のあり方や相談体制のあり方について
活発な議論を交わしました。
ここに本審議会の答申として提言いたします。
1
第1章
1
消費生活行政の現状
東日本大震災を受けて
東日本大震災は、地震による被害とともに、津波による甚大な被害をもたらした。
世田谷区においても、発生直後から交通機関の混乱が招いた帰宅困難者の問題や広域
的な流通遮断の混乱による様々な問題が発生した。
全国の消費生活センターや国民生活センターには、震災後1年間で約3万3千件の
震災に関連する相談が寄せられた。岩手、宮城、福島、茨城の被災地4県において、
震災直後はガソリンの物資不足や不動産賃貸、工事・建築、修理サービスなどの住宅
に関する相談が上位を占めた。また、証明手続き等に関する行政サービスや労働問題、
生活支援の相談先、ライフラインの復旧確認など、通常の消費生活相談とは異なった
相談が数多く寄せられ、他機関と連携した相談体制が必要となった。
消費者施策の基幹となる消費者基本法において、行政や事業者の責務として「消費
者の権利の尊重と自立支援等」を基本理念として取り組むことが規定されているが、
首都直下地震や東海地震等の震災発生時には、「国民の消費生活における基本的な需
要が満たされ、その健全な生活環境が確保される中で」という消費者の権利の前提が
崩れてしまうことが心配される。
これらの問題が東日本大震災によって顕在化したことを認識し、震災に備えた消費
生活行政に取り組むことが求められる。
また、福島第一原子力発電所の事故の影響から、食品の安全性やエネルギー利用の
あり方などについて強い関心が寄せられるようになった。このような予期しなかった
問題に対しても行政は対応を求められている。
2
消費者を取り巻く環境の変化
(1)震災への不安
東日本大震災が発生したことや、首都直下地震や東海地震等が近い将来に発生
すると心配されることから、震災に対する不安感が高まっている。このため、防
災用品や非常食の準備、家具の転倒防止、緊急連絡方法の確認など震災への備え
を新たに行う消費者が増えている。
(2)新たな情報手段の利用
震災直後に、中継ケーブルの切断や基地局の電源喪失による電話情報網の寸断、
家族間の安否確認等が集中したことで、電話がつながらないなどの障害が発生し
た。このような状況から、新たな情報手段として災害用伝言サービスや電子メー
ル、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などの利用が注目されてい
る。
2
(3)エネルギーへの関心の高まり
原子力発電所の事故等に伴う電力不足により、 計画停電が実施され、企業はピ
ークシフトやピークカットなど様々な節電対策を行った。家庭においても節電の
徹底が呼びかけられたことを機に、LED照明、省エネ家電への切り替えや、太
陽光発電の導入、ハイブリッド車の購入など、消費者の省エネルギーに対する関
心が高まっている。
(4)最近の消費者問題と大震災による消費者問題
ICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)の急速な
進展や、国際化、高齢化、規制緩和等の経済社会の変化により、新たな消費者ト
ラブルが急増し、その内容も複雑化、多様化している。
最近の消費者問題の特徴として、電子商取引、オンラインゲーム、SNS等の
インターネット関連のトラブルが年齢を問わず増加している。また、高齢者の被
害も増え続けており、貴金属等の強引な訪問買取りや、実態が不明な投資取引の
被害、これまでの被害救済を装う二次被害など、資産を狙った悪質なものが次々
と発生している。
一方、東日本大震災の発生後、新たに様々な消費者問題が発生した。
震災直後には、生活関連物資の供給不足や買いだめによる混乱、原子力発電所
の事故による食品の安全性や電力不足の問題が起こった。
また、被災地支援や新エネルギーをうたった投資話や金融商品のトラブル、祈
祷サービス等の開運商法など震災に便乗した新たな悪質商法があらわれた。
このように、震災時には多岐にわたって深刻な消費者問題が発生することが明
らかになり、これらに対応できる具体的な取り組みが消費生活行政に求められる。
3
国・都の動き
(1)国の状況
国は、国民の生命、身体及び財産を災害から保護し、もって、社会の秩序の維
持と公共の福祉の確保に資することを目的とする災害対策基本法を定めている。
平成24年6月、東日本大震災から得られた教訓を生かし、大規模広域な災害に
対する即応力の強化、被災者対応の改善等について法改正を行った。
平成24年7月、中央防災会議では、首都直下地震は国家の存亡に関わるもの
であり、現行の対策を検証し、充実・強化を図ることが喫緊の課題であるとした。
消費者庁と国民生活センターでは、東日本大震災に対応して、
「震災に関連する
悪質商法110番」の開設、被災地における相談窓口への各分野の専門家派遣、
放射性物質検査機器の貸与などの地方自治体への支援を行っている。
3
(2)東京都の動き
東京都は、東京都防災会議で策定された地域防災計画に基づき、災害対策本部
を中心に国、区市町村、その他の機関と連携しながら、災害に対応している。
平成23年11月には、東日本大震災を機に、新たに東京都防災対応指針を策
定し、防災対策の方向性と具体的な取り組みを示し、首都東京の防災力を高度化
しようとしている。平成24年3月には、自助・共助・公助の考え方に基づき、
帰宅困難者対策を総合的に推進する東京都帰宅困難者対策条例を制定し、平成2
5年4月に施行した。同条例では、一斉帰宅の抑制の推進、安否確認及び情報提
供のための体制整備、一時滞在施設の確保、帰宅支援等について規定されている。
東京都の消費生活行政部門では、震災に乗じた悪質商法を未然に防止するため
の注意喚起、震災に関する「ヒヤリ・ハット調査」の実施、震災対策に係る消費
者教育講座の実施などの震災関連の啓発に努めている。
4
世田谷区の現状
(1)災害対策
世田谷区は、災害による被害を未然に防ぎ、災害が発生した場合は被害を最小
限度にくい止めるため、世田谷区災害対策条例を制定している。この条例では、
区、区民、事業者が自助・共助・公助の考え方に基づきそれぞれの役割に応じて
連携し、災害対策を進めることを基本としている。
また、災害対策基本法の規定に基づき設置されている世田谷区防災会議では、
世田谷区地域防災計画を作成し、地域並びに住民の生命、身体及び財産を災害か
ら守るために、区及び防災関係機関がその全機能を有効に発揮して、震災予防、
震災応急対策、災害復旧等、一連の災害対策を実施することを定めている。
平成23年度には、東日本大震災を踏まえ、災害時における実効性の高い対策
の確立と体制の強化を図ることを目的に、全庁をあげて災害対策総点検が実施さ
れた。区の災害対策の課題、地震だけでなく風水害や富士山の噴火、大規模事故
などの対策を含めた10分類80項目について、現状、課題、これまでの取り組
み及び今後の取り組みについて検討し、現在、その内容を反映した世田谷区地域
防災計画の修正を行った。
消費生活の分野においては、従前から世田谷区震災復興マニュアル及び世田谷
区地域防災計画の中で、震災発生後の生活情報の提供や消費生活相談の体制等に
ついて定めている。
(2)消費生活相談
全国の消費生活センター等に寄せられた消費生活相談は、平成16年度の19
2万件をピークとして減少傾向にあり、平成23年度は、90万件弱となってい
る。その中で、世田谷区消費生活センターに寄せられた平成24年度の消費生活
4
相談は5,571件で、平成23年度より65件増加している。相談内容におい
ては、複雑、困難なケースが増えており、1件の相談に長時間を要する案件が多
く、消費生活相談員は、専門的な知識と実務経験等に裏打ちされた高度な問題解
決にあたっている。また、あっせんの割合は全国平均に比べて高い傾向を示して
いる。
東日本大震災後半年間には、区の消費生活センターにも、約190件の震災関
連の相談が寄せられた。具体的には、不動産賃貸、工事・建築、修理サービスな
どの住宅に関する相談や、買いだめの影響から飲料水に関する相談、旅行などの
キャンセルに関する相談が寄せられている。このように、震災に関する相談に対
しても、より適切に対応することの必要性、重要性が示された。
平成19年度から平成24年度までの相談件数の推移は下図のとおりであった。
消費生活相談件数推移
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
19年度
20年度
19年度
■相談件数
■あっせん件数
あっせんの割合
21年度
20年度
22年度
21年度
23年度
22年度
24年度
23年度
24年度
7183
5923
5790
5172
5506
5571
402
506
575
613
574
477
5.6%
8.5%
9.9%
11.9%
10.4%
8.6%
注)①「あっせん」とは、消費生活相談員が消費者と事業者の紛争解決のための
話し合いの仲介支援を行うことをいう。
② 平成19年度の相談件数が多くなっているのは、振り込め詐欺・ワンクリ
ック詐欺など、不当・架空請求に関する相談が多数を占めているためである。
一方で、同年度はあっせんの割合が低く、比較的平易なケースが多かったと
推察される。
5
(3)消費者カレッジ
世田谷区では、
「自立した消費者」の育成を図るため、消費者が自ら主体的に学
習する機会として総合的、体系的な学習の場を提供している。また、様々なテー
マの講座を開催することにより消費生活に関する多様な情報を提供している。
具体的には、出前講座、ステップアップ講座、消費生活講座、区民講師フォロ
ーアップ研修等を開催している。
平成23年度は、東日本大震災を機に発生した消費者問題などの最新情報を出
前講座に取り入れ、より効果的な講座とするため、区民講師を対象としたフォロ
ーアップ研修を実施している。研修後、出前講座のプログラムを見直し、食品の
備蓄や放射能、節電などの内容を取り入れ、講座の質の向上が図られている。
消費生活講座においては、平成24年9月に「いざという時に備えられる保存
食」について実演を交えた講座を開催し、区民が日常生活に保存食を取り入れ、
実践できるよう情報提供を行っている。また、11月には「災害から身を守る整
理収納」について講座を開催し、日頃から心がける安全な収納について情報提供
を行っている。
さらに、平成24年11月に消費者団体が主催した「世田谷くらしフェスタ」
は「今、私たちができる備えは?」をサブテーマに開催し、区災害対策課による
講演会を実施している。これらは、諮問に応えた新たな取り組みを先行して実施
したと評価できる。
(4)消費者啓発
消費者問題に関する意識の向上と消費者被害の未然防止を図るため、消費者を
取り巻く諸問題や商品・サービスの安全性など、日常生活に関する情報を提供して
いる。具体的には、各種啓発紙等を発行・配布するとともに、区のホームページ
を活用し、より迅速に消費生活関連情報を提供している。平成23年12月に発
行した「消費生活センターだより」においては、地震保険の基礎知識に関する特
集記事を掲載している。
また、高齢者の消費者被害を防ぐため、高齢者や高齢者の身近にいる人に情報
を届けることを目的に、消費者あんしん講座を開催している。
①「消費生活センターだより」の発行
○通常号 ~
年3回発行(6・9・12月)
町会・自治会を通じ回覧を行うほか、区内施設、小・中・高校・
大学等、金融機関、農協、生協、スーパーマーケット、病院、公
衆浴場等へ配布
A4判6P、各35,000部作成
6
○特集号 ~
年1回発行(3月)
通常号の配布先の外に消費生活講座や出前講座でも配布
A4判8P、43,000部作成
②小・中学生向け小冊子の発行
小・中学校における消費者教育の副教材として、区立小学校の6年生及び区立
中学校の2年生向けに教育委員会の協力を得て小冊子を作成し、配布している。
③ホームページの運営
より迅速な情報提供と消費者被害の未然防止を図るため、区のホームペー
ジ内に消費者被害情報や相談事例を掲載し、情報提供を行っている。また、
消費者カレッジ、消費生活情報誌、資料コーナー等の各種事業を案内すると
ともに消費生活に関する様々な情報を発信している。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
世田谷区の災害対策関連URL
世田谷区災害対策条例
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/104/141/559/d00029152.html
世田谷区ホームページ > くらしのガイド > 救急・防犯・防災 > 防災・災
害対策 > 区の防災対策・計画・方針等 > 災害対策・危機管理関連条例・規
則等
地域防災計画
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/104/141/559/ d00005567.html
世田谷区ホームページ > くらしのガイド > 救急・防犯・防災 > 防災・災
害対策 > 区の防災対策・計画・方針等 > 地域防災計画
災害時区民行動マニュアル(マップ版)
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/104/141/557/d00028764.html
世田谷区ホームページ > くらしのガイド > 救急・防犯・防災 > 防災・災
害対策 > マニュアル・マップ等の資料 > 区民行動マニュアルマップ版・
防災カード > 区民行動マニュアルマップ版(1-4 頁)/ 区民行動マニュアル
マップ版(マニュアル 5-8 頁)
世田谷区防災マップ(広域避難場所)
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/104/141/557/d00028764_d/fil/bousaimap00/.pdf
世田谷区ホームページ > くらしのガイド > 救急・防犯・防災 > 防災・災
7
害対策 > マニュアル・マップ等の資料 > 区民行動マニュアルマップ版・
防災カード > 区民行動マニュアルマップ版(地図版)全面
防災倉庫別備蓄物品一覧
http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/104/141/559/d00005595_d/fil/5595_1.pdf
世田谷区ホームページ > くらしのガイド > 救急・防犯・防災 > 防災・災
害対策 > 区の防災対策・計画・方針等 > 災害対策・危機管理関連統計情
報
8
第2章
震災に備えた消費生活行政の課題と取り組み
東日本大震災の教訓を生かし、首都直下地震や東海地震等を想定した対応や、消費
者を取り巻く環境の変化への対応など、消費生活行政は新たな取り組みを求められて
いる。
震災時に適切な対策を実行して被害を極力減らすためには、平常時から震災に備え
た「自助」
「共助」
「公助」のそれぞれの取り組みが重要となる。特に、自らが被災者
とならないために、各自が震災対策に取り組む「自助」は震災対策の礎である。この
「自助」と町会・自治会等、地域の支援である「共助」、行政の取り組みである「公
助」の3つが連携し、効率的に機能することによって、はじめて効果的な震災対策を
行うことができる。
本章においては、区民への啓発をどのように進めていくべきか、相談体制はどうあ
るべきかを重点的に、震災に備えた消費生活行政に求められている新たな方策を踏ま
えて課題を抽出し、区民に密着した消費生活行政の実現に向けた今後の具体的な取り
組みについて提言する。
1
区民啓発の新たな取り組みの重要性
震災の被害をより小さくするには、家庭や地域で震災への備えを行い、震災時
に適切な対応をする必要がある。しかし、「自助」、「共助」による震災対策は区
民に十分普及しているとは言えず、震災に関連した消費者問題を含め、家庭や地
域で取り組む震災対策を様々な手法で啓発しなければならない。
震災に備えるためには、区民啓発の新たな手法の必要性と重要性が大きな比重
を占める。区民啓発に関する課題と取り組みについて以下に示す。
(1) 自助の重要性を踏まえた震災対策の啓発・・・[自助]
【課
題】
震災の発生から公的機関による支援体制「公助」が整うまで、しばらく時間が
かかることが予想される。いざ震災が発生し、自分や家族、自宅を守るためには、
被災状況に応じた避難の判断(身の安全の確保)、緊急的な避難に持っていく非常
持出品と災害復旧までの生活を自活するために必要な非常備蓄品の備え、家族と
の連絡手段の確保、正しい情報の収集、家屋の耐震化や家具の転倒・落下・移動
防止、初期消火や応急救護など、区民一人ひとりが震災対策に取り組まなければ
ならない。
【取り組み】
区は、災害対策課と連携し、自助の重要性を踏まえた震災対策を啓発する必要
9
がある。
震災時に適切な対応ができるよう、非常用物品の準備、家屋の耐震化や家具の
転倒・落下・移動防止など各家庭で実践する震災への備えと、
「災害時区民行動マ
ニュアル」、震災時の情報伝達ルート、震災復興マニュアル、地域防災計画等の震
災対策を、出前講座や消費生活講座、「区のおしらせ」・区のホームページ等で啓
発し、区民一人ひとりの防災力を高めていくことが求められる。
さらに「消費生活センターだより」に震災特集を組み、日頃の備えや避難生活
でのくらしの知恵、被災生活で製品事故にあわないための情報、防災訓練の案内
などを掲載し、消費者啓発の充実を図っていく必要がある。
(2) 家庭での取り組みに対する支援・・・[自助]
① 非常用物品の備えについて
【課
題】
震災発生時の混乱した状況の中では、食料や生活用品等の調達、供給は困難
を極めることが予想される。避難所に届く調達物資による炊き出し、配給が始
まるまでは、各家庭で備蓄した飲料水や食料、生活用品で自活することが求め
られる。
「災害時区民行動マニュアル」では、ローテーションを図りながら3日分(7
2時間)の飲料水や食料を備蓄するよう記載しているが、備蓄加工食品の表示
の見方、保存の注意点、活用方法等についても情報提供するべきである。
【取り組み】
区は、この課題に対応するため、各家庭でローテーションを図りながら飲料
水・備蓄食品を備蓄する方法、具体的には、いつも買う2倍の量の米、水、レ
トルト食品、缶詰などを購入し、半分使ったら使った分を補充していくローリ
ング・ストック法(ランニング・ストック法)や備蓄食品を無駄なく活用するた
めの調理法等を、消費生活講座や出前講座で紹介していく必要がある。
あわせて、調達物資の配給やライフラインが復旧するまでの生活を自足する
ため、常備薬等の生活必需品、携帯ラジオ、予備電池、生活用品等の非常用物
品の備えを啓発することが求められる。
② 震災関連の悪質商法等の未然防止について
【課
題】
東日本大震災の被災地では、不動産貸借、損壊した住宅の修繕工事、修理サ
ービス、生活再建に関する公的支援や罹災証明等の行政サービス、地震保険、
震災に便乗した悪質商法など様々な消費生活相談が寄せられた。過去の相談事
例を活用し、知識の普及啓発による消費者被害の未然防止を図っていくことが
10
重要である。
【取り組み】
区は、消費者被害の未然防止を図るため、出前講座や消費生活講座、
「区のお
しらせ」
・区のホームページ、エフエム世田谷等の多様な手法を用いて震災関連
の悪質商法の手口などを紹介し、区民に注意喚起していくことが求められる。
具体的には、損壊した住宅等の修繕工事を行う際の契約の注意点、震災復興
支援等を名目にした投資話の被害などを適宜周知し、震災時に冷静な消費者行
動ができるよう啓発していく必要がある。
また、食料品や生活用品の不足、震災に便乗した悪質商法、製品事故など震
災に関連して発生した消費者問題の情報を、災害対策課や防災関係機関と共有
し、震災関連の広報紙等に反映させていく取り組みが求められる。
③ 省エネルギー対策の取り組みについて
【課
題】
原子力発電所の事故の影響で、電力供給は不安定な情勢が続いている。また、
火力発電所の稼動に伴うCO2の増加や電気料金の値上げ問題を踏まえると、節
電をはじめとした省エネルギー型のライフスタイルを確立しなければならない。
【取り組み】
東日本大震災後、光熱・水道等の節約意識が引き金となり、個人のエコ活動
意識は高くなってきている。区は、家庭内で実践できる待機時消費電力の削減
や季節に応じた節電の工夫などの紹介や地域別の防災訓練等を利用して家庭の
省エネ診断や効率的な省エネ型ライフスタイルの情報提供を検討し、省エネ行
動の実践を促進していく必要がある。
(3) 出前講座等の新たな取り組み・・・[自助]
①「災害時区民行動マニュアル」等を活用した啓発活動の実施
【課
題】
震災対策は、事前の備え、発災時の行動、生活再建や地域復興など多岐にわ
たっている。また、家族構成や地域特性によって個々の家庭で取り組む震災対
策は異なり、震災に関連した消費者問題など従来の防災訓練等だけでは伝えき
れない情報もある。震災対策の情報提供の場を広げ、一人でも多くの区民に理
解を求め、関心を深めてもらうことが重要である。
【取り組み】
区は、この課題を踏まえ、家庭や地域で取り組む震災対策に、消費生活の視
11
点を取り入れた講座を開発する必要がある。
区民講師が行っている出前講座は、各所管課が作成した啓発資料を活用し、
講座を実施しているが、今後は「災害時区民行動マニュアル」を活用した効果
的な講座の組み立てや防災訓練など新たな場での啓発手法を検討し、町会・自
治会や小・中学校の防災訓練、防災教室に出向き、
「災害時区民行動マニュアル」
を説明するとともに、震災時に冷静な消費者行動ができるよう啓発活動を行っ
ていくことが求められる。
また、消費生活講座で、非常用物品の準備、家具の転倒・落下・移動防止、
発災時の安否確認や情報収集、避難生活に関する知識、震災に便乗した悪質商
法、住宅トラブル、製品事故など、震災対策に対応した講座を積極的に開催す
る必要がある。
さらに、区民向けには食品の安全・安心や生活の中の放射能等に関する講座、
小・中学生やその保護者には家族の安否確認や避難生活に関する知識を普及す
る親子講座など、世代や家族構成を考慮した新たな消費者教育・啓発等の取り
組みが求められる。
② 区民講師等による新たな啓発活動の必要性
【課
題】
区では、区民講師による出前講座や消費者あんしんサポーターによる消費者
あんしん講座を実施しているが、これらの講座に震災対策に対応した内容を取
り入れていくべきである。
また、区の震災対策を効果的に伝えるため、区民講師や消費者あんしんサポ
ーターのレベルアップを図るとともに、啓発活動の幅広い担い手が必要である。
【取り組み】
区は、これらの課題に対応するため、震災に関連した消費者問題を含め、家
庭や地域で取り組む震災対策をメインにした出前講座や消費者あんしん講座を、
区民講師や消費者あんしんサポーターと協力して組み立てていく必要がある。
また、区民講師や消費者あんしんサポーターが区の震災対策を効果的に伝達
するため、災害対策課などの所管課から「災害時区民行動マニュアル」等を学
習するとともに、フォローアップ研修等で最新の情報を効果的に伝える手法を
学ぶなど、講師のレベルアップを図る研修をより充実させていくことが求めら
れる。
さらに、出前講座、消費者あんしん講座では、震災対策を消費生活の視点で
伝えていくため、外部の専門家による講評・助言を加えるなど、完成度の高い
講座を構築できるように検討を重ねていく必要がある。
あわせて、自主的な活動を行っている団体や区民が情報共有できる取り組み
12
を検討することが求められる。
(4) 地域での取り組みに対する支援・・・[共助]
【課
題】
大規模な地震が発生した場合、同時多発する火災や倒壊建物に道を阻まれるな
ど、火災現場に消防隊がすぐに到着できるとは限らない。震災の被害を軽減する
ため、地域住民が協力して初期消火や応急救護活動にあたらなければならない。
身近な地域で区民同士が支えあう活動「共助」が不可欠である。
また、震災に関連した消費者被害の未然・拡大防止を含む震災対策は、町会や
自治会の回覧板だけではなく、区民にとって身近なところで情報提供するべきで
ある。
【取り組み】
区は、これらの課題を踏まえ、区民が日頃から地域活動への関心を深め、持続
的な地域活動への参加を促すための支援や環境整備を行う必要がある。
自らが被災者とならないために、各地域で行われる防災訓練や避難所運営訓練
等への参加を出前講座などで区民に呼びかけていくことが求められる。
また、震災対策や震災に関連した消費者問題等の情報提供、注意喚起は、区民
が日常生活で利用している商店街や金融機関、病院、事業所等で幅広く行ってい
く必要がある。
特に、地域ニーズにきめ細かく対応できる商店街での情報提供等を検討するこ
とが求められる。
(5) 行政内部の連携強化・・・[公助]
【課
題】
震災被害にあわないために、また、震災被害の影響を軽減するためには、日常
的に震災に備えた区民意識の向上と行動力を高める行政の支援が必須である。
行政の支援においては、行政内部が相互に連携を密にし、情報の共有化を図り、
震災に備えた啓発に取り組んでいかなければならない。例えば、断水時の衛生管
理や避難生活での栄養管理、季節によっては熱中対策や寒冷対策について、保健
所等と連携した取り組みが求められる。
特に、高齢者や障害者、乳幼児がいる世帯等に配慮した支援や取り組みが重要
であり、保健福祉関連の所管課との連携をより一層強化するべきである。
また、震災対策の普及啓発は幼年期から行う必要があるため、教育委員会との
連携も強化しなければならない。
13
【取り組み】
区の震災に備えた対策は、災害対策課を中心に各所管課と連携して実施してい
るところであるが、よりきめ細かい対策の実現を図るためには、各対策に消費者
の視点を導入し、災害対策課等と協働で取り組むことが重要である。
具体的には、ライフラインが復旧するまでの衛生管理や食生活の知識の啓発や
支援を、保健所と連携して取り組んでいく必要がある。震災時に支給される支援
物資の弁当やおにぎり等の賞味期限などの表示の見方や知識、炊き出しの配給品
を長時間保存して食した場合、食中毒の原因につながる可能性があるため、食品
衛生知識の啓発や避難生活の食生活を支援する取り組みを、保健所と連携して構
築していくことが求められる。
また、あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)、災害対策課等と幅
広く地域の実情を共有し、協働で高齢者や障害者、乳幼児がいる世帯等の見守り
や啓発を行うなど、震災対策や震災に関連した消費者被害の未然・拡大防止に向
けた連携を強化していく必要がある。
さらに、震災の備えは幼年期から身につけることが重要であるため、教育委員
会と連携し、教員講座や親子講座の機会に、防災教育副読本の活用を提案し、情
報の共有を図っていくことが求められる。
こうした各所管課の専門性や特性を踏まえた連携を強化することによる新たな
取り組みを構築していくべきである。
(6) 行政外部との連携強化の必要性・・・[共助・公助]
【課
題】
震災対策や震災に関連した消費者被害の未然・拡大防止を図り、消費者啓発を
強化するには、防災関係機関や民間団体等との連携・協働が不可欠である。
特に、震災後に孤立しがちな高齢者や障害者の被害を防止するには、災害時要
援護者である高齢者や障害者の支援活動を行う民間協力団体と連携し、消費者被
害の情報を提供するとともに消費者トラブルの解決に向けて消費生活相談へ迅速
につなぐ取り組みが重要である。
また、震災に関連して発生する消費者問題等について、行政外部の団体と情報
の共有化を継続して図るべきである。
【取り組み】
区は、これらの課題に取り組むためには、行政の啓発等だけではなく、それぞ
れの地域で高齢者や障害者を支援する町会・自治会、民生委員協議会、地区社会
福祉協議会、NPO、事業者、産業団体等の民間協力団体と連携した見守りや啓
発活動を行うなど、効果的・効率的な対策を図る必要がある。
また、震災後の食料品や生活物資不足に対処するためには、商店街や事業者団
14
体等の協力が必要となると想定される。区では、現在、災害時の応急対策として
物資供給等について商店街連合会、農業協同組合等の団体と協力協定を締結して
いるところである。震災時に迅速かつ適切に対策が講じられるために、こうした
外部の団体との情報連絡会等の開催を検討していくことが求められる。
2
震災に備えた相談体制の整備
消費生活相談は消費者問題に精通している消費生活相談員と、行政判断を持ち情
報収集や他の機関との連携が図られる職員が協議して対応するのが原則である。
しかし、震災直後は通常の相談体制で臨むことが困難であると考えられる。
震災に備え、消費生活センターの相談体制をどのように整えておくか、その課題
と取り組みについて以下に示す。
(1) 震災関連相談の適切な対応に備えたマニュアルの作成
【課
題】
震災直後は、区民は生活上の不安を抱えることとなる。消費生活相談だけでな
く、行政サービスなど生活に必要な情報や支援窓口に関する問い合わせなど広範
囲な相談が寄せられることが予想されるため、消費生活相談員及び職員が協力し
て適切に対応できるように準備をするべきである。
【取り組み】
区は、消費生活相談員及び職員が過去の震災の実態を知り、震災時にどのよう
に対応するべきかにつき、災害対策課等の協力による学習会を実施する必要があ
る。
また、過去の被災地における相談事例や取り組みの記録等を参考にして、想定
される相談内容を整理することが必要である。
さらに、消費生活講座や出前講座で啓発していく非常用物品や備蓄品などの震
災の備えに関する情報を取り入れる。
これらを踏まえ、想定される相談内容や被災者に必要な生活情報の相談先、生
活支援の窓口などを整備した「震災時相談対応マニュアル」を作成して、震災時
の相談業務に資するよう体制を整えることが求められる。また、
「震災時相談対応
マニュアル」は、あんしんすこやかセンター(地域包括支援センター)などの日
頃から連携している福祉関連機関にも配付し、情報を共有することが重要である。
(2) 消費生活相談の初動体制のあり方
【課
題】
震災直後は、消費生活相談窓口の機能が失われる恐れがある。そのため、従来
の相談窓口を早期再開し、迅速に対応するために、震災直後における消費生活相
15
談員及び職員の人員配置や勤務体制をあらかじめ整備しておくべきである。
【取り組み】
区は、震災直後の人員配置や勤務体制を「震災時相談対応マニュアル」に整備
し、相談窓口の早期再開を図り、区民の消費生活の安定を確保することが求めら
れる。
(3) 震災に便乗した悪質商法への相談対応のあり方
【課
題】
悪質商法に関する相談は、日々寄せられているところであるが、東日本大震災
後は、震災を口実とした悪質な投資話の被害など、新たな手口が発生した。
震災発生の一定期間経過後に増加すると思われる、震災に便乗した悪質商法に
関する相談に対しての対策を講じるべきである。
【取り組み】
消費生活相談業務においては、消費生活相談員及び職員が適切な対応ができる
ように、日頃から知識を深め、情報収集や相互に情報を共有することが重要であ
る。このため、震災関連の悪質商法に係る相談対応について職場内研修を実施す
るなど、相談業務の充実・強化を図る必要がある。
(4) 相談対応におけるメンタルケアの取り組み
【課
題】
震災後の情報の混乱時には、精神的ショックや生活の様々な不安を抱える相談
者が多くなることや、相談対応をする消費生活相談員や職員も被災者となること
が考えられる。そのため、相談者や消費生活相談員等のメンタルケアを考えるべ
きである。
【取り組み】
メンタルケアの取り組みとして、消費生活相談員や職員が相談者の不安を解消
し、適切な対応を行うための知識を習得するとともに、消費生活相談員や職員の
心理的ストレスや不安を軽減することが重要である。そのためには、臨床心理士
等の専門家を講師として招き、講座を実施する必要がある。
16
第3章
震災後における消費生活行政の課題と取り組み
震災後の混乱の中で、区民の消費生活の安定を一日も早く確保し、活力ある消費生
活行政を実現するためには、消費生活センター単独の取り組みだけでなく、災害対策
課を中心とした庁内の各所管課、国、東京都、区民、各関係団体など行政内外との平
常時からの連携や協働による取り組みが不可欠である。また、過去の事例からも震災
後は消費者被害の増加が予想されるため、被害救済や被害拡大防止への迅速な対応が
重要な課題である。
本章では、第2章で提言した事前の備え、取り組みを踏まえて、震災後の混乱時に
区民が必要とする情報を効果的に伝達・発信する取り組み及び区民が安心して相談で
きる体制について提言する。
1
情報伝達・発信の課題と取り組み
東日本大震災の直後は、電力の供給停止や電話情報網の寸断などで消費者が手にす
る情報が制限された。その中で、通信方式が異なるインターネットは比較的震災に強
いため、メールやSNSの利用が多く広がり、安否情報や生活支援物資のニーズなど
の情報が発信され、状況把握の助けとなった。
ここでは、区民に必要とされる情報をどのような手段・手法で効果的に伝達・発信
していくか、その課題と取り組みについて以下に示す。
(1) 伝達・発信する情報
【課
題】
東日本大震災の発生後、義援金詐欺などの迷惑メールや消費者の不安をあおる
チェーンメールによる不確実な情報が広域的に拡散し、消費者の混乱を招いた。
震災時には、不正確な情報が広がることがないように、区民にとって有用で正確
な情報を収集し、伝達・発信するべきである。
【取り組み】
区は、区民が不正確な情報に惑わされず、冷静な判断と行動をとることができ
るように正しい情報を発信していくことが求められる。
そのためには、庁内の各所管課、関係省庁や相談機関と連携して、生活関連物
資の供給状況などの消費生活関連情報をはじめとして、行政サービスの情報、生
活再建や住宅に関する情報、各機関の支援窓口や相談窓口の開設状況などの、区
民が必要としている情報を分析・把握し、正確かつ迅速に発信することが重要で
ある。
さらに、消費者被害が広がる恐れのある悪質商法等の最新の手口や事例を広く
区民に発信し、被害の未然防止、拡大防止に努め、区民生活の安定が図られるよ
17
う呼びかけを行うことが求められる。
(2) 情報伝達・発信の方法
【課
題】
区民が求める情報や悪質商法をはじめとする消費者被害の情報などを、幅広い
世代の区民に提供できるよう対策を講じることが必要である。
そのためには、正確で迅速に伝達・発信するための有効な手段について考えな
ければならない。
【取り組み】
震災時の情報伝達手段として、災害対策課や広報広聴課等と連携し、区のホー
ムページや、災害・防犯情報メール、SNS等を活用した情報発信が考えられる。
ホームページには、消費生活関連情報のページを設け、随時更新しながら区民の
消費生活に密着した新しい情報を提供していくことが必要である。
また、携帯電話やスマートフォンからの情報発信や情報共有が容易にできるメ
リットを生かし、ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)といったソー
シャルメディアも活用していくべきである。
同時に、これらの新たな情報通信手段だけでなく、ケーブルテレビやエフエム
世田谷により同様の情報を発信するとともに、
「区のおしらせ」、
「消費生活センタ
ーだより臨時号」などの情報紙を利用して情報提供を行う。
あわせて、これらの情報を区民講師やあんしんサポーター等の区民ボランティ
アや事業者団体にも提供し、それぞれのネットワークによる情報紙の配布や掲示
の協力を依頼して、広く情報を発信する必要がある。
このように多様な手法を活用して情報の発信・提供をすることにより、区民に
広く浸透させる必要がある。
2
震災後の相談対応への取り組み
東日本大震災の被災地域では、震災直後は停電等により消費生活相談を受け付ける
状況ではなかったセンターが多く、また、臨時の相談窓口を設けて仮設電話による対
応をしたセンターもあった。
震災後の混乱時には相談窓口が一時中断することが考えられるが、区民の消費生活
の安定を図るためは、消費生活センターの相談業務を早期に再開し、必要な情報を提
供することが重要である。
これらを踏まえて、震災後に寄せられる相談への対応について、その課題と取り組
みを以下に示す。
18
(1) 相談窓口の再開
【課
題】
震災発生後は、多くの問い合わせや相談が消費生活相談の窓口に寄せられるこ
とが考えられるが、区民の不安を和らげ、生活の安定を図るために、相談窓口を
早期に再開することが求められる。
【取り組み】
震災発生直後、消費生活センターの平常時の相談体制が整うまで、災害対策課
を中心とした各所管課と連携して、速やかに電話相談を開始するなどの環境を整
えるべきである。人員配置などの初動体制については、
「震災時相談対応マニュア
ル」により消費生活相談員と職員が相互に協力して相談窓口の運営に取り組む必
要がある。
さらに、相談の急増など状況によっては、高齢者相談電話の増設や消費生活相
談員の配置を強化するなどの相談体制をとることも必要である。
このように、早期に相談窓口を再開、運営する取り組みは、区民の不安解消や
安定した区民生活の確保のために重要である。
(2) 震災関連の相談対応
【課
題】
震災直後の情報不足や流通遮断等の混乱により、消費生活相談や震災関連の行
政サービスに関する相談が集中することが考えられるが、それらに迅速に対応す
るための対策を講じなければならない。
【取り組み】
区は、
「震災時相談対応マニュアル」をもとに、災害対策課、保健福祉関連の所
管課等と相互に協力し、多様な相談内容に迅速に対応することが必要である。
また、専門の相談機関の開設状況を把握し、速やかに案内するとともに各省庁
や東京都から震災関連の情報収集をして相談業務の参考とすることが必要である。
(3) 悪質商法への迅速な対応
【課
題】
震災後は、被災者の不安に付け込んだ震災に便乗した悪質商法に関する相談が
増加することが懸念される。消費生活相談員や職員の適切な対応や、消費者被害
の未然防止、拡大防止のための対策が求められる。
【取り組み】
区は、悪質商法の相談に対して、消費生活相談員や職員が適切に対応し、被害
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の救済に努めるとともに、相談者からの聞き取りから、その手口などを把握し、
消費者庁、国民生活センター、東京都等と相互に情報交換し、被害の救済や拡大
防止を図ることが必要である。
また、状況に応じて、庁内の各所管課、あんしんすこやかセンター(地域包括
支援センター)等の福祉関連機関、警察等に情報提供をして、被害の未然防止を
図ることが必要である。
20
おわりに
東日本大震災以降、震災に備えた消費生活と行政の役割が、喫緊の課題として顕在
化した。本審議会において、震災に備えた消費生活行政の課題と取り組みについての
提言をまとめた。
平成24年5月からの4回にわたる審議では、首都直下地震等の震災に備える取り
組みとして、啓発活動や相談体制の整備にどのように取り組んでいくべきか、また、
震災発生後の混乱時において、必要な情報提供を行う仕組みや相談体制の構築にどの
ように取り組んでいくのかを中心に議論が交わされた。
特に、震災に備える取り組みとしては、区民啓発に関する課題と取り組みにおいて、
「自助」「共助」「公助」の3つのキーワードを意識して、また、震災発生後の混乱
の中においては、問題が区民生活全般に及ぶことから、消費生活部門のみならず、災
害対策部門を中心とした関連部署との連携をとった取り組みが不可欠であることを
強調した。
そして、本答申の中には、現在の世田谷区の消費生活行政の各施策の見直し・充実
についてだけでなく、新たに重点的に取り組むべき施策についての提言を盛り込んだ。
さらに、答申(素案)に対して、区のホームページ等を活用した区民意見の募集を
行い、審議会の意見に加えて、区民意見を生かした答申とした。
なお、「消費者教育推進法」が平成24年12月13日に施行され、その基本理念
の中に、災害時においても合理的に行動できるための知識や理解を深める教育の必要
性が明示されており、本諮問・答申は、これらの動きを先駆的に捉えたものである。
この答申が世田谷区の消費生活行政の施策に反映され、震災に備えた消費生活に役
立つことを期待する。
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