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生石灰から生成した消石灰粉末の比表面積に及ぼす

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生石灰から生成した消石灰粉末の比表面積に及ぼす
Akita University
8
研 究 論 文
生石灰か ら生成 した消石灰粉末の比表面積 に及ぼす
カルボ ン酸添加効果 に関する実験的検討
中 山 勝 洋,
* 昌
子
智
由,
* 牧
野
和
孝 *
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1
. 緒言
近年 ゴ ミ焼却場か らのダイオキシン発生が問題 となっている。
現在, ゴ ミ焼却場でのダイオキ シン発生防止策の 1つ として,
表面積増大 に及ぼすアル コ-ルのアルキル基鎖長及び原料の調
整法 の影響 につ いて検討 し,
両因子が重要 な役割 を果 たす こと
並 びに水 に難溶性および不溶性 アルコール も有効 に用 いること
がで きることを示 した。
消石灰 Ca(
OH)2を用 いて燃焼排 ガス中の塩素 と反応 させて除
つ ぎに本報では, アルコールとは別 の添加剤 として,従来比
去す る方法がよ く使用 されている。消石灰の塩素化反応が消石
表面積を逆 に減少す ると考え られて きたギ酸,酢酸等のアルキ
灰表面 にて起 こると考え られ るため,消石灰の比表面積 を増大
ル基鎖長 の短 いカルボ ン酸 に注 目 し5
)
, さ らにアルキル基鎖長
させ ることは,消石灰単位質量当た りの塩素吸収量を増加 させ
の範囲を広 げて,そのアルキル基 と添加量が生成 した消石灰の
ることになる。本研究 は,消石灰の反応効率向上 のために消石
比表面積 に与える影響を実験的に検討 した。
灰の比表面積を増大 させ ることが 目的である。
そ して原料調整法 としては,①生石灰 とモノカルボ ン酸水溶
また燃焼排 ガス中の塩素や二酸化硫黄 と瞬時に効率的な反応
液を作用 させて消石灰を反応生成 させ る場合 (
以下,水溶液調
をさせ るには,消石灰 は比表面積が大 きな細粒であることが好
整法 と表記す る。) と② モノカルボ ン酸を直接生石灰 と混合 し
ま しいとされているl)2)0
既報 3)4) にお いて, アル コールを添加剤 と した生石灰 Ca
O
段調整法 と表記す る。)の 2種類 について検討 した。
か ら消石灰 を反応 ・生成 させ る場合 の消石灰の比表面積増大 に
その結果,モノカルボン酸の種類 によっては,比表面積を増
ついて実験的に検討 して きた。 その結果,生成 した消石灰の比
加 させ るという興味深 い知見を得 た。 また,原料調整法 として
は, カルボ ン酸 一水二段調整法 はカルボ ン酸水溶液調整法 より
平成1
4年 1月2
4日受付
*秋田大学工学資源学部環境物質工学科
〒01
08502 秋田市手形学園町 1-1
千De
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素材物性学雑誌
優れていることを示 した。以下,その結果を報告す る。
2
. 実験方法
2.1 供託原料
供試原料 は,前報 3) において用 いた生石灰 (
和光純薬社製 1
第1
5巻
第 1号 (
2
002
年 6月)
Akita University
生石灰か ら生成 した消石灰粉末 の比表面積 に及 ぼす カル ボ ン酸添加効果 に関す る実験 的検討
の カル ボ ン酸 に対 して も, 添 加量 0
.
0
01
-0.
1
0
0
mol
/
mol
CaO
級試薬。以下,生石灰 と表記 す る。) であ り, これを消石灰生
成反応実験 に供 した。一方,各種供試 カルボ ン酸 と しては, ギ
と して水 を加 えて混合 してか ら生石灰 に反応 させて消石灰 を生
酸 (
HCOOH),酢酸 (
CH3
COOH)
, プ ロ ピオ ン酸 (
CH3
CH2
成 した。 こうして得 られた消石灰中の未反応 の生石灰及 びカル
COOH), ヘキサ ン酸 (
CH3(
CH2)
4
COOH)
, オ クタ ン酸 (
CH3
(
CH2
)6
COOH) デカ ン酸 (
CH3
(
CH2)
8
COOH) (
和光純薬社
製特級試薬) の6
種類 を用 いた。
線 回折測定 を行 った。代表例 と して0
.
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ボ ン酸 カル シウム化合物 の存在 の有無 を確認 す るために,Ⅹ
mol
CaO の場合 を生石灰 とヘキサ ン酸 カル シウム化合物 の測
定結果 と合 わせて Fi
gur
elに示 す。 ただ し, ヘキサ ン酸 カル
シウム化合 物 は POWDER DI
FFRACTI
ON FI
LE (
JCPDS)
2.2 消石灰の生成反応実験
2.2.1 水溶液調整法
にデータが記載 されていなか ったため, ヘキサ ン酸 と生石灰 を
供試 カルボ ン酸 をイオ ン交換水 に溶解 させた後 に生石灰 と反
mo
l比 2:1で作製 したサ ンプルを -キサ ン酸 カル シウム化合
応 させ た水溶液調整法 につ いて は,既報 3) のアル コールの場合
物 と して用 いた。測定 の結果, いずれの ピークも消石灰 とヘキ
と同様 に実験 を行 った。 また供試試料 の保存方 法 は,JI
S氏
サ ン酸 カル シウム化合物 に帰属で きるので,混合 サ ンプル中に
9
0
01に基づ いて保存 した。
2.2.2 カルボ ン酸 一水二段調整法
は未反応 の生石灰 はほとん ど存在 しない と考え られ る。 この こ
gur
e2には
とは,他 のサ ンプル につ いて も同様 で あ った。Fi
供試 カルボ ン酸 を生石灰 と混合 した後 にイオ ン交換水 を加 え
得 られた生成消石灰比表面積 の測定結果 を示 してあ る。 これに
て反応 させたカルボ ン酸 一水二段調整法 については,既報 4) の
よれば, カルボ ン酸 の種類 によ り傾 向が異 なることが分 か る。
アル コールー水二段 と同様 に実験 を行 った。 また供試試料 の保
ギ酸,酢酸, プロ ピオ ン酸 は, カル ボ ン酸添加量 (
mol
-カル
存方法 は水溶液調整法 と同様 に行 った。
ボ ン酸/
mol
-CaO)(
以下,カルボ ン酸添加 モル量 と表記す る。
)
2,3 測定方法
の増大 に伴 って,生成消石灰の比表面積 は減少 していることが,
本報 においては,生成消石灰粉末 の比表面積 はB.
E.
T法 を適
ヘキサ ン酸,オクタ ン酸, デカ ン酸 は, カルボ ン酸添加 モル量
用 した湯浅 アイオニクス社製 モノソープ1
6
型 を用 いた 1点法で,
の増大 に伴 って生成消石灰 の比表面積 は増大 し, カルボ ン酸 の
粒子表面 の形態観察 はSEM (日立製作所社製電界放 出形走査
添加量 0
.
0
5
mo
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mo1
CaO で極大値 を とること,及 び添加 した
電子顕微鏡 S4
5
0
0
),EDX (堀場製作所製 ,EMAX5
7
7
0
W)
カルボ ン酸 の種類 によ り,その傾 向 は相違す ることがわか る。
を 用 い , Ⅹ 線 回 折 は 日 本 電 子 社 製 JDX3
5
3
0 ⅩRAY
一例 と して, 添加量 0
.
0
5
mol
/
moLCaO で眺 め るとヘキサ ン酸
DI
FFRACTOMETERSYSTEM を用 いてそれぞれ測定 した。
4.
6
m2
/
gであ るo またギ酸 の場合 には4.
6
m2/
ど,酢酸 の場
で,3
合 には6
.
2
m2/
g, プ ロピオ ン酸 の場合 には1
3.
4m2/
g, オ ク タン
3
. 実 験結果 及 び考察
酸 の場合 には2
5.
8
m2/
g, デカ ン酸 の場合 には1
9.
1
m2/
gとな る
3.1 生成消石灰 の比表面積 に及 ぼすカルボ ン酸水溶液諏整
ことが わか る。 また Fi
gur
e2か らカル ボ ン酸 の種類 によ る生
成消石灰 の比表面積増大 に効果 のあ った 3種類 のカルボ ン酸 を
法の場合
前述 の方法 にて反応 によ り消石灰 を生成 させた。 その生成消
比較す るとヘキサ ン酸> デカ ン酸> オ クタン酸 の順 とな った。
石灰粉末 の比表面積 を測定 し,影響 について検討 した。 いずれ
したが って用 いたカルボ ン酸の うち-キサ ン酸 が生成消石灰 の
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CaO).
素材物性学雑誌
第1
5
巻
第 1号 (
2
0
02
年 6月)
Akita University
1
0
中山勝洋 ・昌子智 由 ・牧野和孝
比表面積 を最 も増大す ることか ら, カルボ ン酸 のアルキル基鎖
長 に最適鎖長が存在す ることが推測 され る。
3.2 生成消石灰 の比表面積 に及ぼすカルボ ン酸 一水二段調
Fi
gur
e3に示 す。 これ に よれ ば生 石 灰 は, 酸 化 カル シウ ム
(
CaO) と水酸化 カル シウム (
Ca(
OH)
2
) の ピー クが確認で き
た。 この水酸化 カル シウムは,原料 の生石灰 にすでに混入 して
いた ものであ る4
)
。 混合 サ ンプルには, 酸化 カル シウム, - 辛
整法の場合
前述 の方法 にて混合 サ ンプルを作成 し,消石灰 を反応 によ り
サ ン酸 Caと水酸化 カル シウムの ピー クが確認 で きた。 この水
生成 させ た。 その生成消石灰粉末 の比表面積 を測定 し,影響 に
酸化 カル シウムは,上述 のよ うに原料 の生石灰 にすで に混入 し
ついて検討 した。いずれのカルボ ン酸 に対 して も,添加量 0
.
0
01
-0.
1
0
0
mol
/
moLCaO と して生石灰 と混合 した混合 サ ンプルに
ていた もの と混合 サ ンプル作製時 に,下記 の式反応 によ り生 じ
た ことが考 え られ る。
水 を加 えて反応 させて消石灰 を生成 した。 こうして得 られた混
2(
CH3(
CH2
)
4
COOH)+CaO
合 サ ンプルの状態 を確認す るために,Ⅹ 線 回折測定 を行 った。
0
-(
CH。
(
CH2
)
4
COO)
2Ca+H2
CaO+H2
0- Ca(
OH)
2
代 表例 と して 0
.
0
5
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mo1
CaO の場 合 の混 合
サ ンプル並 びに この混合 サ ンプルよ り生成 した消石灰及 び生石
灰 とヘ キ サ ン酸 カ ル シ ウ ム化 合 物 の測 定 結 果 を合 わ せ て
(
1
)
(
2
)
しか し原料 の生石灰 とチ ャー トを比較す ると水酸化 カル シウ
ムの ピーク強度 の変化 は,わずかに増加が見 られ るだけである。
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CaO).
素材物性学雑誌
第1
5巻
第 1号 (
2
0
02
年 6月)
Akita University
l
l
生石灰 か ら生成 した消石灰粉末 の比表面積 に及 ぼす カル ボ ン酸 添加 効果 に関 す る実験 的検討
また酸化 カル シウムのメイ ンピーク (
2∂-37.
3
40
) と水酸化
水溶液調整法 と同様 に用 いたカルボン酸の うちヘキサ ン酸が生
カル シウムのメイ ンピーク (
20 -3
4.
0
90
) の検 出強度 の比較
成消石灰の比表面積を最 も増大す ることか ら, カルボ ン酸のア
か ら,水酸化 カル シウムは微量 しか含有 されていないと推定で
ルキル基鎖長 に最適鎖長が存在す ることが推測 され る。
きる。 さらに上記 の反応で生成 した水酸化 カル シウムは,添加
した-キサ ン酸添加量 (
0.
0
5
m01
he
xanoi
cac
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d/
moLCaO)か
3.4 生成消石灰の粒子形状 に及ぼす添加カルボ ン酸の影響
ら最大で も0
.
0
2
5
molであ り,原料 の生石灰 に対 して2.
5
m01
%
生成消石灰の粒子形状 に及ぼす添加 カルボ ン酸の影響を検討
となるため,混合サ ンプルの大部分を酸化 カル シウムであると
す るために,各々調整法の 2種類のカルボ ン酸を添加 して生成
考え られ る。生成 した消石灰 は,Fi
gur
elと同様 にいずれの
させた消石灰のそれぞれの粒子表面形態 について SEM を用 い
ピークも消石灰 とヘキサ ン酸 カル シウムに帰属できるので,莱
て観察 した。Fi
gur
e
s5-8の カルボ ン酸 を添加 して生成 させ
反応の生石灰 はほとんど存在 しないと考え られる。 このことは,
た消 石 灰 の SEM 写 真 を比 較 す る と, 水 溶 液 調 整 法 で の
他 のサ ンプルにつ いて も同様 であ った。Fi
gur
e4には得 られ
Fi
gur
e5(
0.
0
5
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or
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CaO)とFi
gur
e6(
0.
0
5
m01
he
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cac
i
d/
mol
CaO)及 びカルボ ン酸 一水二段調整法での
た生成消石灰比表面積の測定結果を示 してある。 これによれば,
なること並 びに生成消石灰比表面積が推移す ることが分か る。
Fi
gur
e7(
0.
0
5
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or
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moLCaO)とFi
gur
e8(
0.
0
5
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xano
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cac
i
d/
mo1
CaO) を比較 した場合 に,両調整法 とも前
この結果か らも用 いたカルボ ン酸 の うちヘキサ ン酸が生成消石
者の方 にのみ大 きな六角板状の微細結晶が,後者の方 は小 さな
灰の比表面積 を最 も増大す ることか ら, カルボン酸のアルキル
1次粒子形態 を呈 している。一方 Fi
gur
e6と Fi
gur
e8のヘキ
基鎖長 に最適鎖長が存在す ることが考え られ る。一例 として,
サ ン酸同士 を比較す ると Fi
gur
e8の方がよ りポーラスな形状
水溶液調整法の場合 と同様 にカルボ ン酸 の種類 により傾向が異
添加量 0
.
0
5
mol
/
moトCaO で眺めると-キサ ン酸で, カルボ ン
であると指摘で きる。 この ことよりヘキサ ン酸の場合 に比表面
積がギ酸の場合 よりも増大す ること及 び混合調整法が水溶液調
整法 で は3
4.
6
m2/gで あ る。 またギ酸 の場合 にはそれぞれ 5.
5
整法 より増大 していることを説明で きる。
m2/
ど (カルボン酸 一水二段調整法),4
.
6
m2
/
g(
水溶液調整法),
酢酸の場合 にはそれぞれ6
.
7
m2/
g
.(
カルボ ン酸 一水二段調整法)
,
たが, カルボ ン酸 Caの存在状態 を確認す るために,EDX を
つ ぎに,SEM を用 いて生成 した消石灰の表面形状 を確認 し
6.
2
m2/
ど(
水溶液調整法), プ ロ ピオ ン酸 の場合 にはそれぞれ
1
5.
6
m2
/
g (カルボ ン酸 一水二段調整法),1
3Am2
/
g(
水溶液調
整法),オクタン酸の場合 にはそれぞれ2
5.
9
m2/
g (カルボン酸 一
用 いたカル シウムと炭素 の特性 Ⅹ 線 の測定結果 を SEM 写真
水二段調整法),2
5.
8
m2/
g(
水溶液調整法), デカ ン酸 の場合
の Kα 線像 の分布 は, ほぼ SEM 写真 の消石灰の形状 に一致
と合わせて Fi
gur
e9に示す。カル シウムの Kα線像の分布 は,
ほぼ SEM 写真の消石灰の形状 に一致 している。 しか し,炭素
にはそれぞれ 2
6.
8
m2/ど (カル ボ ン酸 一水二段調整法), 1
9.
1
せず,分散 に偏 りが観 られる。 ここで,生成 した消石灰 に含 ま
m2/
g(水溶液調整法) となることがわか る。 この ことか ら同
れ る炭素の大部分 は, -キサ ン酸 Caに由来す る。消石灰の微
一 のカルボ ン酸添加モル量では, いずれの場合 も生成消石灰の
細 な一次粒子上でのヘキサ ン酸 Caの分散が偏 る理 由は,生成
比表面積 はカルボ ン酸 一水二段調整法の方が,水溶液調整法 よ
した消石灰 の比表面積 (
4
0.
1
m2
/g) が原料 の生石灰や混合 サ
り0
.
4%か ら4
0%程度大 き くな っていることが指摘で きる。 ま
ンプルの比表面積 (
前者 2
.
4
m2
/
ど,後者 2
.
3
m2/
g) と比較 して,
た Fi
gur
e4か らカルボ ン酸 の種類 による生成消石灰 の比表面
約1
7
倍 に増大 していることか ら,消石灰が生成す る際に新 たな
積増大 に効果あった 3種類のカルボ ン酸を比較す るとヘキサ ン
表面が生成 したことによるため と考え られる。 したが って,-
酸> デカン酸>オクタン酸の順 となっていることを指摘できる。
キサ ン酸 は,消石灰の微細一次粒子の形成 に寄与す るが,微細
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素材 物性 学雑誌
第1
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巻
第 1号 (
2
002
年 6月)
Akita University
1
2
中 山隣洋 ・昌子智 由 ・牧野和孝
粒 子がヘキサ ン酸 Caのみで形成 していない。 この ことは,比
表面積 の測定で, -キサ ン酸 の添加量 に伴 い生成 した消石灰が
極大 を持っ結果か らも推測 され る
3
.5 生成消石灰比表面積の極大 について
Fi
gur
e
s2,4において, モノカル ボ ン酸 (ギ酸 と酢酸) を添
加剤 と して使用 した場合 に,生成 した消石灰比表面積が減少す
ることを示 している。 これは従来指摘 されている事実 と一致 し
ているう
)
。 これよ りモノカルボ ン酸 のカルボニル基 (-COOH)
は,生成 した消石灰 の比表面積 を減少 させ る効果があると考 え
ることがで きる。
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gure4) の方 が水溶液調 整法 (
Fi
gure2) よ りも増大 して
成 した消石灰の比表面積 をよ り増大 した ことは,添加 したヘキ
サ ン酸等 のカルボ ン酸が, よ り効果 的 に生石灰粒子表面 に付着
し, その結果 と して生成 した消石灰 の比表面積 を増大 させ るも
の と考 え られ る。 ここで,生石灰表面 にお けるカルボ ン酸 の存
在状態 は, 式 (
1
)のよ うに生石灰 と化学結合 して カルボ ン酸
Caを形成 して い る もの と考 え られ る。 この ことは,Fi
gur
e3
の-キサ ン酸 一水二段調整法か らの, ヘキサ ン酸 と生石灰 の混
合 サ ンプルの ⅩRD 解析結果 にお いてヘキサ ン酸 Caの ピーク
を同定で きた ことか ら推定で きる。
Fi
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Akita University
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3
生 石灰 か ら生 成 した消石 灰粉 末 の比表面積 に及 ぼす カル ボ ン酸添加効 果 に関す る実験 的検討
5
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素材物性学雑誌
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中山勝洋 ・昌子智 由 ・牧野和孝
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gur
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s2,4においては,ギ酸か らヘキサ ン酸 とカルボ
ン酸のアルキル基鎖長が長 くなるに伴 って生成 した消石灰の比
表面積が大 きくことが指摘で きる。 この ことは生石灰がカルボ
ンスを示す係数 としてHLB値 を相対係数 として導入す る。
Tabl
elには,各供試 カルボ ン酸 の 3つの各因子及 びその 3
因子の積を具体的に示 してある。
ン酸 によって被覆 されているため,生石灰 と水の接触がカルボ
この数値を用 いて,供試 カルボ ン酸のアルキル基鎖長 と各因
ン酸 の アル キル基鎖 長 に よ って適度 に制御 され, その結 果
子及 び 3因子 の積 との関係 で整理す るとFi
gur
el
Oのよ うにな
Fi
gur
e6に示す消石灰 の微細 な結晶構造集合体 を形成 した も
る。 これによれば 3因子の積 は,カルボ ン酸 のアルキル基鎖長
のと考え られる。
が炭素数 5のヘキサ ン酸で極大を示 していることがわか る。 こ
さらに, ここで興味深 い ことは, デカ ン酸,オクタン酸及 び
の傾向は生成消石灰比表面積の実験結果 と定 性的に一致 してい
ヘキサ ン酸の場合 には,比表面積 の最大値が存在 していること
る。 そ こで Fi
gur
e4と Fi
gur
el
Oの デー タを用 いて生成 した
である。 この場合生成 した消石灰の比表面積 を最大 にす る添加
消石灰の比表面積 と 3因子の積 との関係 を求 め,それに対 して
モル量 は, アル コールの場合 (
一例 として,1-ブタノールの
最小二乗法 による近似直線 を描 くとFi
gur
ellのよ うになる。
場合0.
2
mol
/
mo1
CaO)
4
)と比較 してヘキサ ン酸等 を使用 した場
これによると低添加 モル量0.
00
01の場合を除いていずれの添加
合で, 1
/
4-1
/1
0以下 にな っている。 これは,消石灰が生成過
モル量 に対 して も 3因子の積の増加 に伴 って生成 した消石灰の
程で発生す る反応熱 によ って も, カルボ ン酸 Caとな っている
比表面積 は増加す ることがわか る。
ため,生石灰 と化学結合 しないアルコールに比べて,生石灰表
面か ら脱離 し難 いため と考 え られ る。
しか し, これだけではヘキサ ン艶
Fi
gur
el
lの各供試 カルボ ン酸添加 モル量 のプロ ッ トごとに
近似直線の勾配を求め,その勾配 を各供試 カルボ ン酸添加 モル
オクタン酸及びデカ ン酸
量 との関係 で整理すれば Fi
gur
e1
2を得 る。 これによれば, カ
でのカルボン酸添加 モル量 の増加 につれて,生成消石灰 の比表
ルボン酸添加モル量が0.
05で最大値を示 していることがわかる。
面積が極大値を持っ ことを説明で きない。Fi
gur
e
s2,4でギ酸
この ことはカルボ ン酸添加の種類 による効果 は,添加 モル量 に
か らヘキサ ン酸を用 いて生成 した消石灰の比表面積 は, アルキ
大 き く依存す ることを意味 している。低添加 モル量では, カル
ル基鎖長が長 くなるにつれて減少傾向か ら極大を取 る傾向に変
ボ ン酸 の種類 による影響 はあまり見 られないが,添加 モル量が
化 している。 この ことか ら, カルボ ン酸のカルボニル基 は生成
0.
05ではその効果が最大 になることを意味 している。
した消石灰の比表面積減少 に作用 し,一方 カルボン酸のアルキ
ル基 はアルコールの場合 と同様 に生成 した消石灰の比表面積増
大 に作用 しているものと考 え られ る。
つぎにヘキサ ン酸か らデカ ン酸を見 ると生成 した比表面積 は,
以上 は,高比表面積消石灰の製造法 にとって,工学的に有益
な知見であると指摘で きる。
結論
いずれのカルボ ン酸 において も,極大 を取 っている。 しか し,
以上,本研究 において直鎖のカルボ ン酸を生石灰 と直接混合
生成 した消石灰の比表面積 の極大値 は減少傾向を示 し,ギ酸か
させ る直接 カルボ ン酸 一水二段調整法を用 いて生石灰か ら生成
らヘキサ ン酸 までの傾向 と異 なっている。
した消石灰粉末の比表面積増大機構 に関す る実験 を行 って検討
以上 の ことより, カルボ ン酸の種類 による生成 した消石灰の
比表面積増大 に寄与す る効果を評価す るために,以下の 3つの
した結果,以下 のような興味ある知見を得 た。
①本研究 においてカルボ ン酸を用いた消石灰生成反応で,ヘキ
因子の積を導入す る。
サ ン酸,オクタン酸, デカン酸 を添加 して生成 した消石灰粉
i)
添加 したカルボ ン酸 は生石灰 の表面 で反応 してカルボ ン酸
末 の比表面積増大 させ ることを示 した。
Caを形成 し,原料 の生石灰粒子 を被覆 していることが考 え
②本研究 において提出 したカルボ ン酸 一水二段調整法 は,水溶
られる。 この場合の生石灰 との反応性を示すために,[
pH7-
液調整法の ものよりも消石灰比表面積が増大す ることを明 ら
カルボン酸 の解離定数]を酸度の係数 として導入す る。
かに した。
②生石灰への水の接近が阻害 される効果 は, カルボ ン酸 のアル
③水溶液調整法並 びにカルボ ン酸 一水二段調整法 において, カ
キル基鎖長 に比例 して制御で きると仮定 して, アルキル基鎖
ルボ ン酸 の種類 によって生成 した消石灰粉末 の比表面積増加
長 を制御効果係数 として導入す る。
傾向が異 なること, また極大値が存在す ることを明 らかに し
③ カルボキ シル基 ((-COO)
2
Caを含む) が水 と引 き合 う親
和力 とカルボン酸 アルキル基鎖同士が引 き合 う親和力のバ ラ
素材物性学雑誌
た。
④添加 したカルボ ン酸が生成 した消石灰の比表面積 の増加 を予
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年 6月)
Akita University
測す るための因子 として,酸度 の係数,制御効果係数 および
相対係数 の積 を用 いることがで きる。
⑤消石灰比表面積 を最大 にす るカル ボ ン酸 は, ヘキサ ン 1酸
(アルキル鎖長
1
5
生石灰か ら生成 した消石灰粉末 の比表面積 に及 ぼす カル ボ ン酸添加効果 に関す る実験 的検討
5
) であることを示 した。
⑥ カルボ ン酸添加 の比表面積増大効果 は,低添加 モル量 では,
ほとん ど見 られず,添加 モル量0
.
0
5で最大 となる。
この知見 は,消石灰の比表面積増大処理操作 に とって有益 な情
報 を与えているもの と指摘 で きる。
文
献
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