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Title クーロン強相関現象としての電荷反転現象の物理(基研研 究会

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クーロン強相関現象としての電荷反転現象の物理(基研研
究会「ソフトマターの物理学」,研究会報告)
田中, 基彦
物性研究 (2002), 79(2): 201-202
2002-11-20
http://hdl.handle.net/2433/97360
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
「ソフ トマ ターの物理学」
クーロン強相関現象 としての電荷反転現象の物理
田中基彦 (
核融合研)
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e【
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1
)や塩イオンを含むコロイ ド溶液はクー
電荷をもつ高分子 (
ロン静電相互作用が強 く効 く 「
イオン性ソフ トマター」であ り、物理化学的に興味深 く、さまざ
まの応用をもっている。
通常の電解質溶液では、デバイ遮蔽のためにすべての電荷は単調に遮蔽される。ところが、(
多
価)塩を含む溶液中では、室温で (
原子 に比べて大きいサイズをもつ)マクロイオンは、それ 自
身を上回る量の逆符号電荷 (
対イオン)の凝縮を受け、正味に電荷符号が反転 した複合体 を形成
2
,
3
]
。この現象は 「
電荷反転」(
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する 【
実験では古 くか ら知 られていた。遺伝子 DNAは自然界では屈指の強い電荷密度をもつ物質であ
り、電荷反転を応用 した細胞への効率的送達が試されているC
この電荷反転現象は、イオンと電子のような流体プラズマではな く、サイズをもつ粒子 と粒子
のあいだの強いクー ロン相互作用か ら生じる非デバイ遮蔽現象であ り、系の特性長 αがデバイ長
入D よ り大きい a>入D ときに顕著である.その発現は、(
i
)構造化を促すクーロンエネルギーが拡
散を起 こす熱エネルギーよ り大きい、(
i
i
)対イオンが多価イオンである、の 2つが必要条件であ
る。式で表せば、
/
e
ak
BT> 1,Z _
>2
r-e
2
(
1
)
である。電荷が反転するためには、当然なが らマクロイオンの電荷 Q を中和 して余 りある量の対
イオンN+zeが存在することが必要だが、このとき電荷中性を保つために (
多くは 1価 の)共イ
オンⅣ (
-e
)が共存する。共イオンは対イオンと合体 してその働きを弱めることが、対イオンが
よ り大きな価数 Z をもつ必要性 に理由である.
Fi
gur
e1.は、分子動力学シミュレーションで得 られた、マクロイオンの表面に多数の対イオン
3
]
。 この複合体外側
が凝縮 して電荷反転が起きた状態を示 している (
左 :全体図、右 :拡大図) 【
Bj
e
r
r
um pai
r
i
ng)が、これを考慮 してもマクロイオン
の対イオン上には共イオンが凝縮 している (
に束縛されたイオンの総電荷量は、符号が逆でマクロイオンの電荷を上回っている。実際、マク
5
0%にも達する。
ロイオンの中心か ら電荷密度を積分 していくと、電荷量は反転 して最大で Qの 1
それでは、複合体 としてマクロイオンと一体 となっているイオン群の正味の電荷はどれ程度で
あろうか ? ひとつの測定法は、静電ポテ ンシャルを計算 して、その束縛エネルギーが熱エネル
ギー kBT程度よ り深い部分に凝縮 しているイオン数を数えると良いOよ り直接的な測定は、系に
直流電場をかけてマクロイオンと一緒に運動するイオン数を数えればよい 【
4
]
。また、マクロイオ
ンの ドリフ ト方向が、電荷反転の発生を教えて くれる。 もし、マクロイオンの電荷が負 Q <0、
電場が正 E >0であれば、 ドリフ ト速度が正 V >0となることが電荷反転の直接の証拠である。
Fi
gur
e2
・は時間発展を示 し、(
a)複合体の (
積分 した)最大電荷量、(
b)マクロイオンの ドリフ ト
速度である。 ここに示された ドリフ ト速度は正であり、電荷反転状態にあることがわかる。ここ
で、パ ラメタは r-5,Q--8
0
e、Z-3であり、単位時間 Tは 1ps程度である。ランダムな初
期状態か らシミュレーションを始めても、荷電中性は 10ps程度の時間で、電荷反転は 50ps程
-2
0 1
-
研究会報告
度の時間で発生する。 ドリフ ト速度の大きな変動は、対イオン (と共イオン)の凝縮が動的であ
り、時間的に入れ替わっているためである。 ビデオムー ビーでは、対イオンと共イオンがマクロ
イオンの表面で滑っていることが確認できる。
Fi
gur
e3.は、 ドリフ ト速度の電場強度への依存性 を示す。 ドリフ ト速度は正であ り、小さな
L- V/
E は一定であ
電場に対 して ドリフ ト速度 は電場に比例 している。すなわち、電気移動度 F
り、マクロイオ ン電荷複合体 は電場によ り (
時間平均では)乱されていない。電場強度を強 くす
ると、電気移動度が減少 しは じめ、ついには負の電気移動度をもつにいたる。 これは、電場によ
り対イオ ンがはぎとられてマクロイオンと逆方向に運動す るためである。 これが起 きる臨界電場
値0
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5
Q/
E
R2は、ほぼマクロイオンが表面につ くる電場であ り、直観的に理解できる。
参考文献
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