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生石灰から生成した消石灰粉末の比表面積に及ぼす

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生石灰から生成した消石灰粉末の比表面積に及ぼす
Akita University
8
2
研 究 論 文
生石灰か ら生成 した消石灰粉末の比表面積 に及ぼすアルコール添加の影響
中 山 勝 洋,
*昌 子 智
由,
*牧 野 和 孝 *
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ohol
1. 緒
言
近年, ゴ ミ焼却場か らの ダイオキシン発生が問題 となって い
粒径4
5〟m 以下 となるように調整 して消石灰生成 反応実験 に
供 した。(
以下,生石灰 と表記す る。
)一方,供試各 種 アル コー
ルは,メタノール (
CH3
0H)
,エタノール (
CH3
CH2
0H)及び 1
る。現在のゴ ミ焼却場での,ダイオキシン発生防止策の 1つ と
-プロパ ノール (
CH。
CH2
CH2
0H)の 3種類 (
和光純薬社製特
して,消石灰 (
Ca(
OH)
2
)を用いて,燃焼排 ガス中の塩素 を反
級試薬)を用 いて消石灰生成反応実験 に供 した。
応 させて,除去す る方法がある。 この反応 は,消石灰表面 で塩
素 との反応が起 こると考え られ るため,消石灰の比表面積 を増
大 させ ることにより,反応効率向上 と消石灰単位重量当たりの
塩素吸収量を増加 させ られると考え られ る。また,燃焼排 ガス
中の塩素,二酸化硫黄 と瞬時に効率的な反応をさせ るには,潤
石灰 は比表面積が大 きな細粒であることが好 ま しいとされてい
2.2 消石灰の生成反応
Fi
gur
elに反応装置の概略図を示 す。 図 中の5
0
0
dm3
の ビー
カーに,生石灰5
6
gを分取 した。 この ビーカーを2
9
8
K の水浴
槽中に設置 して,所定量のイオ ン交換水 (
以下,水 と表記する。
)
またはアルコール水溶液を加えて,よ く撹拝 しなが ら消石灰粉
る1
)
2
)
。 また,生石灰 の消石灰生成反応 で, アル コールを添加
Sc
r
at
c
hS
t
i
c
k
剤 として用 いた特許が,すでに 2
,3報告 されている3ト6
)
。 しか
し,生成 した消石灰 の比表面積 と添加剤 との関係及 び添加剤官
Ther
momet
e
能基の効果 につ いての系統的な らびに基礎的な検討が未だされ
ていない。そ こで,本研究 においては,生石灰の消石灰生成反
応 に関 して系統的な実験を行 い,生成 した消石灰の比表面積 と
(
添加 したアルコールとの関係及 びアルコール官能基 との関係 に
I
ついて検討 し,興味深 い知見を得たので報告す る。
ii
i
i
i
i
i
i
i
i
ii
ii
2. 実験方法
2
.1 供書
式原料
供試原料の酸化 カルシウム (
和光純薬社製 1級試薬) を ロー
ラー ミルにより,粉砕助剤を使用 しないで粉砕 し,粒度 を平均
平成 1
2年 1
2月 5日受付
*秋 田大学工学資源学部環境物質工学科
〒01
00
852 秋 田市手形学園町 1
-1
秋 田大学工学資源学部環境物質工学科環
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素材物性学雑誌
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第1
3巻
第 2号 (
2
00
0年 1
2月)
Akita University
8
3
生石灰か ら生成 した消石灰粉末の比表面積 に及 はす アル コ-ル添加 の影響
Tabe
末生成反応 を行 った。生成 した消石灰粉末 は,反応後ただちに,
1
l
0×1
0 3m 一定 に堆積 さ
ステ ンレス製 のバ ッ ト底面上 に厚 さ1
Sp
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Anal
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せて, さ らにバ ッ ト容器上面 に3.
2× 10 2m2中 に等 間隔 (
4×
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Sp
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m2/
g]
1
02
m) に直径 1× 1
02
m の穴 を格子状 に開 けた アル ミ箔 で フ
Upperpa
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Mi
ddl
e
8
3
K の乾燥器 に入れて,熟成 に引 き続 きそ の まま
タを して,3
乾燥 をお こな った。熟成 を含 めた乾燥処理 時 間 は合計 4時 間一
Lowerpar
t
5
0〟m で,乾 式 ふ るい分 け
定 と した。乾燥後 の消石灰粉末 を1
を した。ふ るい上 の消石灰粉末 は, 乳鉢 で粉 砕 して,再 度 1
5
0
5%以上 と した。 た と
〃m でふ るい分 けをお こな い回収量 を9
1
1
.
/
ぇば,再度 1
5
0〃m でふ るい分 けをお こな った試 料 の比 表面 積
で きたが,炭酸 カルシウムの ピークは確認 で きなか ったため,
3.
1
m2
/g,1
5
0〟m で乾式ふ るい分 けをお こな った試 料 の比
は2
原料生石灰中に炭酸 カル シウムはほとん ど含 まれていないと考
表面積 は2
3.
0
m2
/gで ほとん ど同一 で あ った。 この よ うに して
2∂-3
7.
3
40) と
え られ る。酸化 カル シウムのメイ ンピー ク (
5
0〟m 以下 の消石灰 を以下 の各測定 に用 いたo また
得 られた1
サ ンプルの保存方法 は,JI
SR 9
0
01に基づ いて保管 した。
水酸化 カル シウムのメイ ンピーク (
2∂ -3
4.
0
90) の検 出強度
の比較か ら,水酸化 カルシウムは微量 しか含有 されていない と
考 え られ る。以上 2つの ことか ら,原料 の生石灰中 カル シウム
2.3 測定方法
2.3.1 比表面積測定
2.2で生成 した消石灰粉末 の比表面積 は,B.
E.
T法を適用 し
た湯浅 アイオニ クス社製 モノソープ1
6
型 を用 いて 1点法で測定
した。
分 の大部分が酸化 カル シウムとして以後 の実験 をお こな った。
gur
e3に示 す 。
また原料 生石 灰 の粒 度 測定 を した結 果 を Fi
Fi
gur
e3か ら,平均粒子径 は,1
3.
2
9〟m で あ り, 粒子 径 6
0〟
m 以上 の粒子がない ことか ら,粉 砕時 の平均 粒 径 4
5〟m 以 下
と した調整条件 を満 た していることを確認 した。 さ らに原料 生
2
.3
.2 粒子表面観察
石灰の上部,中央部 および,下部か ら採取 したサ ンプルの比 表
生 成 した 消 石 灰 粉 末 の 粒 子 表 面 の 形 態 観 察 は , SEM
面積測定結果 を Tabl
elに示す。Tal
belか ら中央部 サ ンプル
NG ELECTRON MI
CROSCOPE
(
TOPCOM 社 製 SCANNI
の比表面積が,上部 サ ンプルや下郡 サ ンプルの比表面積 よ りわ
SM51
0
)を用 いて測定 した。
2.3.3 粒度測定
生 成 した消 石 灰 の粒 度 は, 島 津 製 作 所 製 LASER DI
F-
5
0〃m と して分散 溶媒 に和光純薬 社製
用 いて, レンジを 1-1
特級 エタノールを使用 して測定 した。
生成 した消石灰 の Ⅹ線回折 は, 日本電 子社 製 JDX3
5
3
0Ⅹ-
′
0
S
2.3.4 X 線回折測定
% 'V
)†
R.
・=
凪
FRACTI
ON PARTI
CLE SI
ZE ANALYSER SALD1
1
0
0を
RAY DI
FFRACTOMETER SYSTEM を用 いて測定 した。
3
. 実験 結 果 及 び考察
3.1 原料生石灰の分析
生石灰 は非常 に反応性があ り,空気中の二酸化炭素 と反応 し
′
て炭酸 カル シウムを生成 しやす い性質 を持 っている。 したが っ
3 4 ち B
2
て ロー ラー ミルでの粉砕等 によって調整 した生石灰 の一部が炭
→
酸 カル シウムにな って いる可能性が あるため,Ⅹ 線回折測定 を
した結果 を Fi
gur
e2に示す。Fi
gur
e2において, 酸化 カル シ
Fi
g u re
3
E
]18
2
3 4
X Pf
〕
RTI
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Parti
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CaO) と水酸化 カル シウム (
Ca(
OH)
2
)の ピークは確認
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素材物性学雑誌
第1
3巻
第 2号 (
2
000
年1
2月)
Akita University
84
中山勝洋 ・昌子智由 ・牧野和孝
ずかに大 きくなったが,測定器の誤差を考慮す るとほぼ差 はな
いと考え られるため,原料生石灰の比表面積 は2
.
4m 2/
gとした。
3.2 生成消石灰の比表面積 に及ぼす水量の影響
Tabl
e2 Sampl
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molCaO】
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K】
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1
.
00
生石灰 と水 は下記の反応 により消石灰 となる。
CaO +H2
0 - Ca(
OH)
2+6
5.
2
6
kJ/mol
(
1
)
式(
1
)
に示すように,生石灰 と水 は理論的には等モルで反応する。
このときの必要な水量を水比 1
と以下表記 す る。本実験 で は水
Sampl
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比を1
.
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0-3.
0
0まで変化 させて,生成 した消石灰粉末 の比表面
積 に及ぼす水比の影響 を検討 した。その反応中最高温度 (
通常
3
7
3
K,以下反応温度 と表記す る。),反応温度 までの到達時間
(
以下,反応時間 と表 記 す る。), 反 応 中 の サ ンプル状 態 を
1
Tabl
e2と比表面積測定を した結果を Fi
gur
e4に示す。Tabl
e
2か ら,反応温度 は水比 が変化 して もはぼ37
3
K を示 した。 こ
れは,用 いた水の顕熱量 (
2
9
8
K か ら3
7
3
K まで加熱す る場合)
したが って,用 いた水量が増加 したことによると考え られ る。
より式(
1
)
の反応の発熱量が過剰であるため考え られ る。たとえ
Fi
gur
e.4によれば比表面積 は水比 1.
7
5で極大値 2
0.
5
m2
/gを示
.
7
5での反応 が最適
し,比表面積を最大 にす る観点か ら,水比 1
ば,水比3.
0
0の場合では,用 いた水の顕熱量 は最大 で も11.
2
kJ
で,反応の発熱量6
5.
2
6
kJとなるか ら,反応系 内 の温度 が 3
7
3
K
であることを示 している。 したが って以後のアル コール水溶液
になるのに十分 な発熱量 と考え られ る。反応時間 は,水比 が増
系反応 において,基本的には水比を1
.
7
5
-定 として反応 をお こ
大す るに したが って長 くなった。また反応中のサンプル状態は,
な うが,1-プロパ ノールを添加 した反応 につ いて は水比 1
.
2
5
水比が増大す るに反 して固化 (
水比 1
.
0
0
),水 が生石灰 に含浸
について もお こなった。また,Fi
gur
e4の結果 は,水比 によ
された状態,スラリー状態,水中に生石灰が分散 した状態へ と
り消石灰 の生成 メカニズムが相違 していることを示唆 していて
サ ンプルの粘性が低下 した。 これ らのことは水比 の増大す るに
今後 の基礎的検討 に期待 され る。
3.3 生成消石灰の比表面積に対する7ルコールの影響
添加す るアルコールの種類 は,水 と任意の比率で溶解す るメ
タノール (
CH3
0H)
,エタノール (
CH3
CH2
0H)及 び 1-プ ロ
0
2
5
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1
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;
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二◆
◆
パ ノール (
CH3
CH2
CH2
0H)で,それぞれについて系統 的 に検
討す る。
3.3.1 生成 した消石灰の分析
生成 した消石灰 について,Ⅹ線回折測定をお こなった。一例
として1
6.
6
m011-プロパ ノール/dm3
H2
0 水溶液 を使用 して
生成 した消石灰の測定結果を Fi
gur
e5に示す。Fi
gur
e5にお
いて,確認 した ピークは水酸化 カルシウムのみだったことより,
!D
0
サ ンプル中に未反応の酸化 カルシウムがないと考え られ る。 こ
の ことは,他のサ ンプルについて も同様であった。
1.
5
2.
0
2.
5
Wa
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H2
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3.3.2 生成消石灰の比表面積 に対 す るアル コ-ル添加量
の影響
1.
6
7
mol(
水比 1
.
7
5
) の水 に,CaO l
molに対 して0.
0
5
mol
か ら0.
5
0
molまで 1-プロパ ノール添加量を変化 させて,生成
した消石灰の比表面積の変化を測定 した。 この反応の反応温度,
T(H O )t
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/dm3
H2
0)
素材物性学雑誌
第1
3巻
第 2号 (
2000年 1
2月)
Akita University
85
生石灰か ら生成 した消石灰粉末 の比表面積 に及 ぼす アル コール添加 の影響
反応時間および,反応 中のサ ンプル状態 を Tabl
e3に示 す。
Tabl
e3か ら,反応温度 はアルコール添加量が増大す るに反 し
て低下 した。反応時間 は,アルコール添加量が増大す るに した
Tabl
e3 Sampl
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Ca
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が って長 くな った。 ここで反応温度及 び反応時間を水のみの反
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35
9
1
05
0
1
3
0
応 (
Tabl
e2) の水比 1.
7
5での反応温度 37
3K と反応時間 45Sに
っいて比較す る。1-プロパ ノール添加 した系の反応温度 は,1
-プロパ ノール添加量が増加す るに したが って反応温度 が37
3
K か ら3
58K まで低下 した。また反応時間につ いて も21
0Sか ら
0
OA
,
_
2
3
0
O
1
40
0Sまで遅延 した。 これ らの理 由 と して は, 1-プ ロパ ノー
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S
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n
s
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i
t
)
y
1
ル添加 により消石灰の生成条件が変化 した こと,反応が徐々に
進行 したために発生 した熱が逐次的に水浴槽側に奪われたこと,
1-プロパ ノール添加量の増加 によって反応系 に対す る水溶液
の形状が丸みを帯 びたと考え られる。よって反応が速 くとも水
の割合が増加 したこと,共沸 により37
3K 以下 で蒸気 が発生 し
分量が多 いために,温度上昇が遅 くな り反応時間が長 くな り粒
て反応熱が消失 したことが考え られ る。
径が成長 した ことによるものと推定 され る。 ここで, グラフの
これ らの要因の検討 な らびにアルコールを添加 した反応 にお
傾向をとると水比 1.
25および水比 1.
7
5のいず れ の場合 も生成消
いて生成消石灰の比表面積 と反応温度の相関 について今後の基
石灰粉末の比表面積 は,1-プロパ ノールの増加 に したが って
礎的研究が期待 され る。
増加 していることがわかる。 したが って,1-プ ロパ ノール濃
反応中のサ ンプル状態 は,Tabl
e2と同様 にアル コール水溶
度の増大 に伴 って,生成 した消石灰の比表面積 も増大す ること
液量が増大す るに したが ってスラ リー状態のサ ンプル粘性が低
がわか る。 このことより,生成消石灰粉末 の比表面積の支配 因
下 した。 この ことは,アルコールの添加量の増加 によって反応
子 として考え られた水比 と 1-プロパ ノール濃度 の うち,1-
系に対す る水溶液の割合が増加 したためと考え られる。また同
プロパ ノール濃度が最 も重要な因子 と結論で きる。さらにアル
様の実験 について水比を1.
2
5に した もの もお こな った。反応温
コールの濃度 による生成 した消石灰比表面積の変化については,
皮,反応時間および,反応中のサ ンプル状態 は, Tabl
e3と同
今後の基礎的検討が期待 され る。
様の傾向を示 した。
水溶液中の 1-プロパ ノール濃度 の影響 として整理 して生成
消石灰粉末の比表面積 と比較 した。 その結果 を Fi
gur
e6に示
す。Fi
gure6の水比 1.
2
5及 び1.
7
5の条件の比表面積を Fi
gur
e4
と比較 して,1-プロパ ノール水溶液を反応 に用 いて生成 した
消石灰の比表面積 は,水を反応 に用 いて生成 した消石灰の比表
面積 よりも大 きくなっている。 これ らの ことか ら,1-プロパ
ノールの添加 は,消石灰粉末の比表面積 の増大 に寄与 してい る
と推論で きる。つ ぎに Fi
gur
e6中の同一 の プロパ ノール濃度
では,水比の大 きい方が比表面積減少を示 しているが, これ は
水分量が多 くな ったために,水和反応が促進 されて,結晶粒子
3.3.3 生成消石灰の比表面積 に対 す るアル コールの種類
の影響
アルコールとして,メタノール,エタノール及 び 1-プロパ
ノールの 3種類を用いて,生成消石灰粉末の比表面積 に及 ぼす
影響 について検討 した。すなわち,いずれのアルコールに対 し
て も,添加量0.
05molか ら0.
5
0molを予め1.
67
mol(
水比 1.
7
5
)
の水 に溶解 した。 これ ら各種 アルコール水溶液を生石灰 と反応
させて消石灰を生成 した。そ して,その生成消石灰粉末 の比表
面積を測定 した。その測定結果を Fi
gur
e7に示 す。 いずれ の
場合 もアルコール濃度の増大 とともに,生成 した消石灰の比表
6.
6
面積 は増大 していることがわか る。具体例 を示す と,濃度 1
0
5
5
4
0
4
■1
p
r
o
pa
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1
5
3
0
3
5
2
23
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10
20
30
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素材物性学雑誌
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第1
3
巻
第
2号 (
2
0
0
0
年1
2
月)
Akita University
8
6
中山勝洋 ・昌子智 由 ・牧野和孝
mol
/dm3
H2
0の 1-プロパ ノール水溶液 と生石灰を反応 させ,
生成 した消石灰の比表面積4
3.
0
m2/
g,同濃度のメタノール水溶
液で,比表面積2
4.
8
m2
/
g,同濃度のエタノール水溶液で,比表
面積2
7
.
4m 2/
gとなることがわか る。 す なわ ち, メタノール,
エタノール及 び 1-プロパ ノールの 3種類の内で ,1-プ ロパ
ノールが,生成 した消石灰 の比表面積 を最 も増大 させ ることが
指摘で きる。また,Fl
gur
e7は,水比 1.
7
5としたアルコールの
同一濃度 において,生成 した消石灰の比表面積の増大効果 は,
1-プロパ ノール> ェタノール> メタノールの順 とな ること も
示 している。この順 は,メタノール (
CH3
0H)
,エタノ-ル (
C
H3
CH2
0H)
,1-プロパ ノール (
CH。
CH2
CH2
0H) の分子量増
大の順であ り,すなわちアルキル基の鎖長増大の順 に一致 して
いる。
3.3.4 生成 した消石灰粒子形状の比較
原料 の生石灰の粒子表面形態 について SEM を用いて観察 し
2〝m
た。その SEM 写真を Fi
gur
e8に示す。水比 1
.
7
5の水 と生石灰
を反応 させて,生成 した消石灰粒子 (
以下,水比 1
.
7
5の水 を用
Fi
gur
e8 SEM phot
ogr
aphoft
hequi
c
kl
i
me
いて生成 した消石灰 と表記す る。
)表面 の SEM 写真 を Fi
gur
e
9に示す。1
6.
6
m011-プロパ ノール/dm3
H2
0 の水溶液 と生
石灰 を反応 させて,生成 した消石灰 (
以下,1-プ ロパ ノール
水溶液を用いて生成 した消石灰 と表記す る。
)粒子表面の SEM
写真を Fi
gur
el
Oに示す。 これ らより,生石灰 の 1次粒子 は,
水比 1
.
7
5の水を用 いて生成 した消石灰の 1次粒子 や 1-プ ロパ
ノール水溶液を用 いて生成 した消石灰の 1次粒 子の輪郭 よ り,
丸みを帯 びているため,生石灰 の 1次粒子の表面積は,水や 1プロパ ノール水溶液を用 いて生成 した消石灰の 1次粒子の表面
積 よりも小 さいと考え られる。よって,生石灰の比表面積 が水
比1
.
7
5の水を用いて生成 した消石灰や 1-プロパ ノール水溶液
を用いて生成 した消石灰の比表面積 よ りも小 さくなったと推定
される。つ ぎに水比 1
.
7
5の水 を用いて生成 した消石灰 の 1次粒
子と 1-プロパ ノール水溶液 を用いて生成 した消石灰 1次粒子
の大 きさを輪郭か ら比較す ると 1-プロパ ノール水溶液を用 い
た Fi
gur
el
Oの方が,水比1.
7
5の水を用 いた Fi
gur
e9よ り 1次
粒子が微細で,凹凸がはげ しいことか ら比表面積が増大 した も
Fi
gur
e 9 SEM phot
ogr
aph oft
hes
l
ake
dl
i
me (
wat
e
r
r
at
i
o1
.
7
5
)
のと思われ る。
3.3.5 生成消石灰の比表 面積 に対 す るアル コールの官能
基の検討
以上の結果 より,生成消石灰粉末の比表面積がアルコールの
種類 に依存す ることより,アルコールの OH基が反応 に寄与 し
ない ものと予測で きる。なぜな らば,OH基 に依存す るので あ
れば,同一濃度 において,添加 アルコール中 の OH mol
/CaO
molの比 は一定 とな り,アル コールの種類 によ らずに,生成消
石灰粉末 の比表面積 は,互 いに一致 す る はず で あ る。 ま た
3.
3.
3で述べたが,メタノール,エタノール及 び 1-プロパノー
ルのアルキル基鎖長の増大 に したが って生成消石灰の比表面積
が増加 している。
ここで生石灰の消石灰生成反応 において添加 したアルコール
が,生石灰粒子表面 に付着 もしくは結合 して水溶液側 にアルキ
ル基をのば しているモデルを仮定す ると,アルコールのアルキ
ル基が長 くなるほどアルキル基 は疎水性が強 くなるため,生石
灰 と水 との反応を阻害 して消石灰生成反応を遅延 させたと推定
Fi
gur
e1
0 SEM phot
ogr
aphoft
hes
l
ake
dl
i
me (
1
6.
6
m01
1
pr
opanol
/dm3
H2
0)
素材物性学雑誌
で きる。
さらに Tabl
e2と Tabl
e3か ら生石灰 の消石灰生成反応 にお
第1
3巻
第 2号 (
2
00
0年 1
2月)
Akita University
8
7
生石灰 か ら生成 した消石灰粉末 の比表面積 に及 ぼす アル コール添加 の影響
いて,アル コール水溶液系 の反応 は,水 のみの反応 よ りも反応
関す る実験 を行 いて,検討 した結果以下 のよ うな興味 ある知 見
時間が遅延す ることやアル コール濃度が高 くな るほど反応時間
を得 た。
が長 くな ることを確認 した。
①生成 した消石灰 の比表面積 を決定す る支配的因子は,水溶 液
これ らの ことよ り,アルコールのアルキル基 の鎖長が,生 成
消石灰粉末 の表面 の形成機構 に重要 な役割 を果 た してい るもの
と推定で きる。
中のアル コール濃度である。
②添加す るアル コールのアルキル基 の疎水性が強 いはど生成 し
た消石灰 の比表面積 を増大 させ る効果が大 き くな る。
さらに,前述 の SEM 写真 よ り,生成 した消石灰結 晶 の 1次
③ アル コールを添加 した ことによ り,生成 した消石灰 の 1次 粒
粒子 は,1-プロパ ノールの添加で よ り粒 子表面 の凹 凸が顕著
子 の結晶成長 に影響 して粒子表面 の凹凸化 を促進 したために,
にな った ことを確認 した。 したが って添加 したアル コールの ア
消石灰 の比表面積 を増大 させ る効果が大 き くな る。
ルキル基が生石灰 と水 との反応 を阻害 したため反応が徐 々に進
④以上 よ り,生石灰か らの消石灰生成反応 において,消石 灰 の
行 して,生成 した消石灰 の 1次粒子 の結晶成長 に影響 して粒子
比表面積 を決定す る支配的因子 は,アルコール濃度 とアルコー
表面 の凹凸化 を促進 して,消石灰 の比表面積 を増大 させ る役 割
ルのアルキル基鋭長 の 2つであることが指摘で きる。 この知見
を示 していると考え られ る。 これに関連す るもの と して は森 た
は,消石灰 の比表面積 を増大 させ る化学処理 プ ロセスの決定 に
ちによって 7) ケイ フッ化 ソー ダを添加 した場合 に,消石灰生 成
おいて, きわめて有効 な もの と考え られ る。
反応 は遅延 して繊維状 の消石灰が生成 した ことをすでに報告 さ
文
献
れている。
以上 の ことか ら推測すれば,消石灰生成反応 において,
①反応 の支配因子 はアル コールの種類 によ り比表面積が異 な る
ことか ら,アル コールの OH基 で はな くアル コールのアルキル
基の鎖長であること
② アルキル基が反応 に及 ぼす作用 のなかで,アルキル基 の疎 水
性が特 に重要 な役割 を果 た して いると示唆で きること
以上 の 2点 を指摘で きる。 さ らにこれ らの メカニズムに関 し
て は,今後 の基礎的検討が期待 され る。
結
論
水 と任意 の比率で溶解す る直鎖 の 3種類 の第 1級 アル コール
を用 いて生石灰か ら生成 した消石灰粉末 の比表面積増大機構 に
素材物性学雑誌
1
)無機 マテ リアル学会,"セメント・セ ッコウ ・石灰- ンドブッ
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正雄,笠井
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電 子 顕微鏡 によ る
生石灰 の水和機構 の研究"石膏 と石灰 ,
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3巻
第 2号 (
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