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集団意思決定場面における下位集団葛藤が集団内における 情報の共有
岡山大学大学院教育学研究科研究集録 第1 3 9号 ( 2 0 08) 1-6 集団意思決定場面 における下位集団葛藤が集団内における 情報の共有 に及ぼす影響 一下位集団間の課題志向型葛藤,初期選好の一致が情報の共有,情報判断及び認知に及ぼす影響一 淵上 克義 Thepur pos eoft hi ss t udywa st oe xa mi net hee f f e c t soft a s kor i e nt e dc onf li c tofi nt e r s ubg r oupso npool i ngofuns ha r e di nf or ma t i ona n di nf or ma t i o ne xc ha ng ebe t we e nme mbe r s ,on c og ni t i onofi nf or ma t i on,a ndonpe r c c L pt i oni ng r oupde c i s i onma ki ng.Thes ub j e c t swe r e30 f e ma lenur s i ngs c hools t ude nt s . The ydi s c us s e dt hef i c t i t i ouss e l e c t i onofas ubC hi e f nur s ei n ag r ou pc ons i s t i ngoff i veme mbe r s . I nf or nt a t i ona boutf i c t i t i ousc a ndi da t e s( c a ndi da t eAa nd c a ndi da t eB)wa sgi ve nt ot hegr oupme mbe r sbe f or edi s c us s i ona ndc ons i s t e dofs ha r e L d i nf or ma t i ona nduns ha r e di nf or ma t i o l l .I nf or ma t i onwe r epos i t i ve ,ne g a t i vea ndne ut r a la S L ・ l a s s f i e dbypr e l i mi r t a r ys t ud y.l na dv a nc eo neg r oupswe r ec ons i s t e do ft wof ol l owe r swho bcL i e ve dt ha tc ndi a da t eAwa sq ua li f i e d, a ndt heo t he rt wowhobe l i e ve dt ha tc n di a da t eBwa s q ua l i f i e d( he nc e f or t ht a s kor i e nt e dc onni c tc ondi t i on)a ndt heot he rwe r ec ons i s t e dofa l l l l f ourf ol l owe r swhobe l i e ve dt ha tC a n di da t eAwa sq ua li f i e d.Ther e s ul t swe r ea sf ol l ows :( Uns ha r e di nf or ma t i onwa smor ec o nve ye da ndne ut r a li nf or ma t i onwa sl e s si nt e r pr e t e da nd ( ・ onve ye di nt a s kor ie nt e dc o nf li c tL ・ O ndi t i on.( 2 )Fol l owe r sha dmor ene g a t i vee va lua t i onsof t hpl e ade r ,t hef ol l owe r s ,a ndt hedi s ( . us s i ol li nt a s kor i e nt edc of li c tc ondi t i on.Ther e s ul t s l,and we r edi s c us s e df r omt hepoi ntofv ie woft hena t u r eoft a s kor i e nt e dc onf li c t ,g r oupg oa q ua l i t yofi nf or ma t i one xc ha ng e . Keywor ds: i nt e r g r o upc o nf li c t , t a skor i e nt e dc on f l i c t , g r oupde c i s i onma ki ng, i nf or ma t i o n e xc ha ng e, g r oupg oa l 問題 と目的 集団意思決定 は,各成員が多様 な視点か ら自由に意 集団や組織 内における成員が参加す ることによっ て,経営事項等 に関す る事柄 を決定す る場 である集 見を交換 し,偏 りのない全負の意思 を反映 させ ると いう長所 をもつ。 団意思決定は,社会心理学 において も主要 な研究テ けれ ども,現実 には決定 に参加する各成員に とっ ーマ として研究 されて きた。集はl 意思決定では,可 て,億川内における既存の組織風土や 人間関係が存 能な限 り参加 している成員の多様 な意見 を採 り上げ 在 してお り, この ような要因が意思決定のプロセス なが ら十分に議論 を重ねる局面 と,多様 な意見の中 か ら最 も適 した結論へ と収赦 させ てい く局面が あ に影響 を もた らす ことは十分 に考 え られ る。 また, 各成員の もつ価値観や考 え方が意思決定のプロセス る。前者の局面では,集団の成員が議論の場 におい に影響 をもた らす ことも十分考え られるし. て多様 な意見 を採 り上げなが ら,腹蔵 な く話 し合う うことが,効果的な集団決定 を左右す る要因である この ことに関連 して Br oome& Ful br i g ht(1995) は, これ まで行われて きた数多 くの集団研究 を概観 他方,後者の局面は一一 つの結論へ と収赦 してい くプ した上で,集団において協働的で効果的な意思決定 ロセスであ り,成員が合意の上で納得 しなが ら j ' 解 してい くことが必要であ る。 この ように考 える と, や問題解決 を妨げる要 因 として,集団その ものが持 つ システム上 の問題点 や手続 き的 な問題点 ととも . , 岡山大学大学 院教 育学研 究科 700-8530 岡山 市 車島中 3- i- 1 Ef f e c t so f t a s kor i en t e dc on f l i c to fi n t er s u bgr ou p soni n f or ma t i one x c h an gei ngr oupd e c i s i onmak i n g. Ka l s u y o s h i FUCI I T I GAMI Gr a d u a t eS c ho ol o fEd uc a t i o n, Ok a y m aUr a L i v e r s i t y, 31 1Ts us h i ma n a k a , Ok a y a ma70085 30 - 1- 淵上 に,集 団にお け る人 間関係 や風 土 の在 り方 と成 員 個 々の態度や文化的な多様性 に基づ く価値観の相違 t i l を重要 な点 と して指摘 してい る∪ 関連 して Gas ( 1 99 3) ち,集団 による成員 同士 に よる効果的なコ ミュニケー シ ョンを妨害す る要因 として,皮) 長す ぎ る会合,②成員 による不均衡 な関与 とコ ミ、 ソトメン トの存在,③派閥 とその中での コンセ ンサ スの難 し さ,④成員間の コ ミュニケー ションの差異 ( 不均衡 なコミュニケーシ ョンスキル,異 なるコ ミュニケー シ ョンスキル),⑤他者 に対す る信頼感の欠如 な ど 個人内での心理的な葛藤, とい う五つの要因を取 り 上げている。 この ように集団意思決定は,成員個 々人の有す る 情報 を十分 に加味す ることが望 ましいが,現実 には 極めて難 しいことが理論的にも実証的に も確かめ ら 克義 自分の所属す る下位集団の 目標 にとって有利 となる ように解釈 ・加 工す る傾 向が あ る こ とが兄 いだ さ れ,( 亘 ) 集団内で客観的かつ十分 な情報が共有 されな いまま決定が なされるとい う問題点が明 らかにな) た。けれ どもこの ような問題点 は,集団全体の 目標 導入 による集 団内における成員の協働性認知の高 ま りによって,低減 され ることも実証的に明 らか にさ Fuc hi g a mi , 2 0 06 )0 れている ( 本研究 は,集団内における下位集団間の課題志向 型葛藤 に焦点 を当てて,異 なる選好 をもつ下位集団 間の葛廉が集団内における情報の出 し合いや コミュ ニケー シ ョン,認知等 に及ぼす影響 を,その ような 葛藤のない場 合 ( 討議の初期 よ り選好が一致 してい る場合) と比 較す る こ とに よって検 討す る。池 内 れている r St as s er ,1 992)O そ してその原 因の一つ が ,Br oome&Ful br i g ht( 1 995) や Gas t i l( 1 9 93) も指摘 しているように集団内における人間関係や集 団の持つ雰囲気 な どが挙げ られ よう。一般 に集団や 組織 は,一定の 目標の下 に協力 ・協働す る成員の集 合体 である反面,様 々な下位集団に分かれている場 合が多い ( 淵上 ,1 9 97)。そ してそれ ら下位集団 ご とに目標が形成 され,お互いに対立すれば,集団内 においで情報伝達が分断 され,判断の材料が不足 し, 実 りある決定が なさず,決定に対す る成員の満足度 も低下すると予想 される。 したが って,集 団内での 下位集団同士が互いに相容れない 目標 をもつ ような ( 1 971) は集 団間葛藤 を整理 しなが ら,課題解決場 面 における各人の考 え方の相違 も集団内葛藤の原関 とな りうることを指摘 し, これを課題志 向型葛藤 と 呼んでいる。一定の考 えない し選好 を もつ し 下位 ) 集団間の葛藤 は, 日常 において もしば しばみ られる 光景であ り,実証的に検討 されるべ き重要な問題で ある。 この課題指向型葛藤 はその原因が,対立 して いる課題の本質に根 ざした ものであ り, 目標や利害 の対立か ら生 じた葛藤や対人関係の情緒的 ・感情的 な側面か ら生 じた情緒的葛藤 とは本質的に異 な)て いる ( Li ker t& Li ke r t ,1 9 76) 。つ ま り既存の利害関 係や 目標の対立が原因で十分 な情報交換が阻害 され 集団間葛藤状況下 における,成員の情報伝達行動や る場合 と異 な り,課題指向型葛藤の場合 は,議論の 前提 となる課 題 の本 質 に根 ざ した葛藤 であ るため 認知に)いて明 らかにす ることは,極めて重要な問 題である〕 情報交換 による活発 な議論 は,む しろ促進 される可 に, この ような葛藤低減のために成員同士の多様 な これ まで も (下位)集団間葛藤場面 における,( 重 ) 内集団成員の 自集団や外集団に対する情緒的認知や コ ミュニケー シ ョン態度の偏好 ( Tur ner& Gi l e s, 1 9 81:H( J g g,1 99 2他),壇) 成員同士の競争的 ・排他 的行動の顕在化 ( she if& She r if r ,1 9 6 6 ) などが明 ら かにされて きたG しか しなが ら.下位集団間の 目標 葛藤場面 における成員の情報伝達 プロセスその もの の特徴 については,実証的に検討 されてこなかった。 そ こで淵 上 ( 1 9 9 7)及 び Fuc hi g a mi( 2 0 0 6)は,集 団意思決定場面 において,下位集団間同士 による排 能性がある。 さらに成月間の意識 も,正 しい解決方 法を模索 しようとす る態度 をもつ もの と思われる。 そ こで本研究 は集団意思決定場面 において,課題 志向型葛藤のない成員間の初期の選好が一致 してい る場 合と,初期 の選好が相対立 している二つの下位 集団 ( す なわち課題志向型葛藤)が存在 している状 況 を比較検討す ることによって,課題志 向型葛藤の 特徴 について実験 的に明 らかに しようとす るもので ある。 方 法 他 的な目標葛藤や競争的な利害葛藤の存在が,成 員 同士の情報伝達や コミュニケー シ ョンにいかなる影 1.本実験の方法 と手続 き 響 を及ぼすかについて実験的に検討 した。その結果, その ような葛藤がある場合 には,( L D成員 は自分 しか 0名 ( 全 被験者は看護師資格 を持つ保健看護学校生 3 員女性)。課題 は人事課題 ( 架空の 2名の候補 者か 知 らない情報 ( 非共有情報)の うち, 自分の下位集 団に有利 な情事 鋸まよく伝達す るが,不利 な情報 を伝 達することは少 ない という伝達情報の質的偏 りがみ ら,5人集団で討議 して, よりふ さわ しい人物 を副 師長 として選 びだす )U候補者 A ・Bにつ いては架 空の情報 ( それぞれポジ イティサ情報 1 2個, ネガテ られ,② 成員 は中立的 ( ニュー トラル) な情報 を, ィヴ情報 1 2個 ,ニ ュー トラル情報 1 6個)が設定 さ 実験 の方法 は これ までの淵上の実験 を踏襲 した。 - 2- 集団意思決定場面における下位集団葛藤が集団内における情報の共有に及ぼす影響 ( l l ) 討議全般 に関す る質問紙は,( む討論その ものに 参照の こと). .その うち 2 4個 は共有情報 と して全員 ついて,@ _ )5人グループ"について,③ 内下位集団 に知 らされ,残 りの 1 6個 はフォロワー 4人 に 「自分 の成 貝について,④外下位集団の成員について,⑤ しか知 らない情報 ( 非共有情 報)」 と して 4個ずつ リー ダー につ いて問 うものであ り合計 6 8項 目 ( ① 分配 される。討議 において フ ォロワー全員が非共有 ② :全員回答,( 宣) ( かS):フォロワーのみ回答)か ら 情報 をすべて伝達すれば,Aについて 2 0個 ,Bにつ 構成 されてお り, 各項 目につ いて ( 7) 大変そ う思 う い ての 20個 すべ て の情 報 が 集 団 内 で共 有 され る -( 1)全 くそ う思わないの 7段 階で評定を求めた。 ' れてお り,討議前 に各成員 に与 え られる ( Ta bl elを 30人の被験者 に対 しラ ンダムに配布 し, フ すロワ ーに初期の選好 ; li l の情報が記述 されている) あわせて 5種 の質問紙 を ・ ・ i ・ ・ ① 柵の正好 i F好の強さ 初 5人グループ での討1 . 亡 栗岡 鞍 ・ i ; 質問紙), フ ォロワー( 主) ∼( 亘) 用 ( それぞれの A ・B 什報付与 暗記 ( 1 ) 実験 の前 日, リー ダー用 ( 実験 に関係 の ない 2人グループでの討計 ( Tabl e2を参照の こと)。 支 間 我② 討ま稜の選好 ; 票好の挺 討3 L O )済足度 支間七 ③ 等 討9E 唖の丑好 立好の強さ 討挙の手足度 r A・Bか ら強制選択 )及 び選好の Fi gur el 実験の流れ 強 さ (3段階評定) をたずねた ( 質問紙r i) )∩ ( 2) 次 に リー ダー とフ ォロ ワー① -@ が揃 うよう Tabl el グループ内で分配 された情報 グループ分けを行 い,後述 の ような条件 の操作がお こなわれた。 I.ポジティブ情報 1.人の話をよく聞く ( 3) 実験 当 日,「 5人集 団で討議 して (20分) 1つ 2.磨れていても明らく振る舞うことかできる 3,患者l こ言 寸 して唱かい態度で揺する 4.きれい好きで整理・ 翌年 軌' 1 上手である 5. 自分の 意見をはっきりと述べる 6.後輩の 悩みや相喜 炎をよく受けている 了.鞭喜 吾を適切に使い分けることかできる B.落ち着いて物事を判断できる 9. 後輩の面倒をよくみる 1 0.患者によく乱 かけられる l l.医者からの1 号絹か1 厚い 1 2.人の話を聞くのかi 上手である の意思決定 ( 副 師長選 び) を行 う」 よう教示 され, リー ダー は絵 師長 の役 割 ,他 の 4名が フ ォロワー ( 副師長)の役割 を とる よう求め られた。 リー ダー は,討議の進行 と共 に最終的意思決定 を行 うこと。 ( 4)フ ォロワー 4人 は, 2人ずつ の下位 集 団に分 け られ ,5人集 団討議の前に下位集 団 (2名) ごと に話 し合 う時間 ( 1 0分) が与 え られ たo この話 し 合いは録音 された。 Ⅰ. ネhテイブ情報 ( 5) 前述 の ように, リー ダー は共 有情 報 のみ,副 1.電話の対応か雑である 師長役の 4人は共有情報の他 に自分 だけ しか知 らな 2.鼻者と必要以外のことはあまり話さない 3.些細なことですぐ軌指する 4.上司に不必要なことまで幸 同 書する 5.人の話を最後まで聞かない 6. 人の好き嫌いh' 1 激しい 7.人の噂話か絹子声である 8. 自分の意見をはっきり伝えられないときか1 ある 9. 面倒な仕事を後回しにする 1 0.ミスを指摘されたときしばしば弁醍する l l.人と意見nL i 異なるときl =感情的1 =なる 1 2.人見知L Jをする方である い情報 をもって,話合いに臨んだO ( 6) 教示 と同時 に前 日示 され た と同 じ情 報が各被 験 者 に知 らされ (リー ダーのみ初見),被験者が情 報 を暗記す るために時間 (5分)が与 え られたn 被 験者は以後下位 集団討議 も 5人集 団討議 も何 も見ず におこなった。 ( 7 )5人集団ごとに討議の様子 も録音 された。 Ⅲ. ニュートラル情報 ( 8) 条件の操作 【 初期選好一致群 】 フ ォロワーは,前 日の質問紙 に 「 A候補の万がふ さわ しい」 と回答 した者のみで 1,父視は 会宇 土員である 2.-月生まれの山羊座である 3.クラシック音楽を聞くのh. 1 好きである 4.鹿児島市内で生まれた 5,よくあさ 酷 飲みl =いく 6.1 ] ラオケで歌うのか1 好きである 7.独身である 日.背の 乱 1美人である 9. 最近テニスを始めた 1 0.ダイエットに気を配っている 1 l.三人姉妹の) 大女である 1 2.あせ喜 幸力■ 1 うまい 1 3.近視なのでめかねをかけている 1 4.血涌聖はA型である 1 5.子供hl i 二人いる 1 6.歴史小≡ 兄を喜 売むのh1 好きである あ り, 2グループつ くられた。 【 課題志向型葛藤群 】 フ ォロ ワー は初期選好 Aが 2名, l iが 2名であた。 3グループつ くられた。残 りの 1グループは初期選好 B3名 ,A l名であ り, 本研究では分析対象か ら除外 された。 ( 9) 最 終 決定 を行 った後 に, 選 好 ,選 好 の強 さ, 葛藤指標等 にか んす る質 問紙② に回答 が 求 め られ た。 ( 1 0 ) 最後 に,各候補 にか んす る全情報 を示 した後, 選好,選好の強 さ等 ( 質問紙( お)がたずね られた。 - 3 - 等 淵上 なお,実験の流れ と両グループの構 成 については, 果 成 1.情報数量化の規準 員 の テープに録 音 した討議 中の成員の発言 は,逐語的 有情 T abl e2 各成員へ分配 された情報数 数 の 平均 1 1 1 1 言 値 Nk 2 8 2 2 フォロワー① フォロワー( 診 フォロワー③ フォロワー④ pa ) ポジティブ情報 Net) ネガティ ブ情報 票訂雫 鷲 0 00 1110 1 228 111 111 11 鼎 報 発 l\II r ) T u 鼎 3 非 共 に掘 り起 こされ,前 もって付与 していた情報が カウ リーダー テ イヴ化 ・ネガテ ィヴ化ののべ回数は初期選好一致 群 の万が多い傾 向にあった ( i( 8)-1. 89,p<. 1 0). その内容は,両群 とも,初期選好候補のニュー トラ ル情報 をポ ジティブに解釈す ることが多かった。 Fi gur elとFl gur e2を参照の こと。 結 克義 初期 選好 一致群 ニュートラル情報 課 王喜志 向 型 葛 藤 群 Fi gur e3 5人 グループ討議 におけるメンバ ーの非 共有情報発言数の 1人あたりの平均値 国A候補 についての発言 ( 秒) 口8候補 についての発言 ( 珍) 初期選好一致群 討 議 中 の 成 員 の発 言 5 人クループ 5 人クループ 課題志向型葛藤 群 リーダー ④ ⑧ 候補者Aを選 好するフォロワー (珍 ● ) 候補者 Bを選 好するフォロワー く 二二 )2人クル ープ Fi gur e2 クループの構成 初期選好一致群 課冠志向型首藤群 Fi gur e4 5人グループ討議における成員の各候補 に ついての発言時間の 1人あたりの平均値 ン トされた。その際の規準 は,淵上 ( 1 997他)が用 い られたoすなわち,( 主 ) 完全 に正確 で な くとも,少 しの省略 など,ほぼ同 じ内容 を表 し元 々の意味 を損 4.討議時間 なわない と判断 される ものは当該情報 としてカウン 「 ( 享 ) A候補 にかんす る発 ② B候補 にかんす る発言」,「 それ以外の発言」 言」,「 の発言 中に,複 数回,同 じ情 トす る。② 1人が 1bl さらに,討議中の発 言を 報 を述べて も トー タルで 1回 と数 える。( 釘個 人の考 に分けて時間を計測 し,分析 した結果.方法で述べ えや一般論 などは,緊密 に関連す る付与情報があっ たように メンバーの初期選好が全員 Aであった初期 た として もカウ ン トしない。 尚,情報 の解利 ・加T 選好一致群では W の時間が( 参よ り有意 に長か った の分析 においてのみ,その性質上,③が除外 された。 2.非共有情朝の出 し合 い (リー ダー -込み ;i( 9)-1. 98,p<. 05)。課題志 向型 葛藤群ではその ような差はみ られなかった。 よ り詳 , フォロワーが 5人討議中発言 した非共有情報数は しく分析 した結果,初期選好一致群では,メ ンバ ー 「課題志 向型葛膝群」 の 方が 「 初期 選好一致 併」 よ が初期 ・ 非選好候補 について発言す る時間が,課題 志 向型 葛藤群 よ り短 い傾 向 にあ った (メ ンバ ーの り有意 に多か った ( (( 16)-2. 69,p <. 02)U なお, 選好候補 に有利 ・不利で比較 を行 った結果,両群 と も伝達非共有情報の偏 りはほ とん どみ られ なかった ( ng ur e3を参照)。 3.情報の解釈 ・加工 み ;( i ( 1 7)-i . 6 0,p< . 1 0) ( Fi g ur e4を参照)0 5.選好変容及び選好の強 さ 質問紙Q ,旬 ,③ について分析 をお こなった結果, 課題志向型葛藤群 においては比較的選好変容がみ ら 次 にフォロワーの行 うニ ュー トラル情報 のポジ イ れるのに対 し,初期選好一致群 においてははは一貫 - 4- 集団意思決定場面における下位集団葛藤が集団内における情報の共有に及ぼす影響 Tabl e3 成員認知の比較 して選好変容がみ られなか った。 さらにその選好の 強 さは,初期選好一致群 の方が,' p T l間紙② ( 集団討 議後)及 び質問紙Ql( 全情報示 した後) において課 平均 t 仲 野 # ( 珊 瑚 如 翫 窯 . t 他 柵 P T ■慧 阿 ■ Fi gur e5を参照) 〕 題志 向型葛藤群 よ り強か った ( = 初期選好 一致群 ・▲ 一課立志向型 葛藤 群 2 選 好 の強 さ の 平 均値 55. 号のメンバー( 連)軌 質問 紙( D 質問 紙② 葺問 抵③ 1 と 患 う 賢: 昌= 菩 提 ㌢ⅧZ u、 と 5 5 7 4 . あ な た I 3 硯 符 のリ ー ダ ー 】 こ 服ノ T L l る Fi gur e5 成 員の選好の強 さの プロセス 阜 &57 649 色7 1 51 4 5飴 6 0 0 適 した正 しい決 定 をお こな う」 こ とに移 行 した り, あ るいは 「 皆 で合意 ( 互 い に納得 )jして決定 しよ 6.討譲 にお ける目標 集団討議 にお ける 目標 につ いての質問紙 回答 につ うとした ことの効果 である と考 え られる( ,これは事 いて分析 の結果,初期選好一致群 において は 「 正し 後の質問紙 における 「 討論 での 目標」 に対す る回答 い選択が行 われ ること」 を目標 とした成員が,課題 か らもうかが うことがで きるO 志 向型葛藤群 よ り少 ない傾 向 にあ ー )た ( Ta bl e4を 参照)。 意」 を 目標 と してお り,討議のは じめに選好が一・ 致 しているため.非 共有情報 の出 し合いが喚起 されな T abl e4 五人 クループ討議 にお ける成員の 目標 ばれること ( 2) Bさんが遷 ぼれること ( 3)正しい選択が行われること ( 4)5名全長が合意すること ( 5)その他 初期選 好一致群 I 0 = 1 7 1 一方,初期選好一致群 では大抵の成員が 「 皆の合 謙撞志向型葛藤群 I 0 8 か った ことを示す もの と思 われ る。つ ま り,成員全 員の初期選好が一致 している場合 は,非共有情報 な どの新 た な情 報 を引 き出 して議論す る こ とよ りも, 6 0 全員が共有 してい る情報 を元に,初期選好が正 しい ことを再確認す るような議論が進行 した ことが窺 え 7.質問紙項 目 る。 この ような傾 向は,初期選好群が A候補 に関す 葛藤指標,討議 における心理的ス トレス, クルー る発言時間が B候補 に関す る発言時間 よ りも有意 に 長 い とい う結 果か らも裏づ け られる。以上の結果 は, 項 目において両群 間で差がみ られた.初 期選好 . 致 初期選好群 は 下位集 団間の成 員同士の葛藤 はない も 群で は,課題志 向型葛藤群 に比較 して, 下位 粂川間 のの, これ まで淵 Lが検討 して きた 目標 葛藤や利害 の葛藤 は小 さく, グループの まとま りが よ く リ ー-ダ 葛藤条件 にお ける成員の情報交換 の行動 に類似 して ー に対 す る満足 度 もよ り高 か っ た し Ta bl e: ' ,を参 いる。 したが ってた とえ成 員問が強い葛藤 を感 じな 鰭)0 くて も,初期 の選好が一致す るよ うな状 況下で は, 非共有情報 を含めた十分 な情報交換が な されず に意 考 察 思決定が下 され る可能性 のあることが明 らか になっ 初期選好 一致群 は課題志 向哩葛藤 はない ものの, 議論前か ら意見が 一 致 している者か ら構 成 されてお た。 ただ し,初期選好群 では元 々成員の選好が一致 り,その意味ではこれ まで淵上が検討 しして きた利 ーに対す る満 足度全般 につ いては,課題指向型葛藤 群 よ りも高か った。 害葛藤や 目標葛藤 における成員の意識 と類似 してい しているため に,討議全般 や成員 ない しは, リー ダ る と言 える。 対照的に,課題指 向型葛藤群 では,課題解決 に関 メンバーの初期選好が 下位集川間で異 なる課題志 心が集中 した結果,解 決のために成員 は非共有情報 向型葛藤群 においては,初期選好 一 致群 よ り,非共 有情報が よ り多 く伝達 されていた。 これは, グルー を引 き出 しなが ら議 論 を行 い, どちらの候補者が よ りふ さわ しいのか を検 討 していた もの と思 われ る。 プ内に異論があ ることに よ り,討議の 目標 が 「よ り この ことは,課題志 向型葛藤群 においては,両候補 - 5- 淵上 克義 者 に関す る発言時 間に差が見 られ なか った こ とか ら 響( 1 )-下位 集 団 間の 目標 葛 藤 が情 報 の共 有 及 び も裏付 け られ る。 認 知 に及 ぼす 影響 -.鹿 児 島大 学 教 育 学 部紀 要 9,1 7ト1 8 8. ( 人 文 ・社 会科 学編),4 さ らに,初期選好一致群 で は選好変容 が ほぼ一貫 淵上克義 してみ られず ,選好 の強 さ も集団討議以後 ,課題志 1 997 集 団意思 決定場面 にお ける下位集 向型葛藤群 よ り強か った。 また質 問紙 回答 にか んす 団間葛藤 が集 団内 にお け る情報 の共有 に及 ぼす影 る分析 の結 果,結論 に対す る満足度 や グルー プの凝 響( 2)-下 位 集 団 間の 目標 葛藤 場 面 にお い て リー 集性 も高 か った。 この こ とは, まず成 員 の選好 が , ダー に予備 知識 を与 えるこ との効果 -.鹿 児 島大 事前 よ りも討 議後 に よ り強 くな る とい う集 団極 化 学教 育学 部 紀 要 ( 人文 ・社 会科 学編 ),49,1 891 ( gr ouppul ar i z at i on) に類似 してい る。 そ して,全 2 0 9. 員一致 の選好 の強 さが事後 の質 問紙 にお け る集 団の 凝 集性 を高め る とい う結 果は,集 団性 脳 炎 ( gr oup hi t nk) に類似 して い る., この よ J )に本研 究 の結果 は,初期 選好 が一致 している状 況 卜での集 団意思決 定 において注意すべ き問題 点 を明 らか に した もの と いえ よう。 本研 究の結果 は,下位集 団間の課題志 向的 な選 好 Fuc hi g a miKa t s uyos hi2 0 06Efe c t sOfi nt e r s ubg r oup obj ect i veconf l i ctofi nt er es t soni nf or mat i on e xc ha ngei ngr oupdec i s i onmaki ng.Bul l et i nof Fat ・ ul i t , yofEducat i onOkayamaUni ver si t y. 1 32,1 03 11 4. 淵 上克義 ・迫 川裕子 2 007 集 団意思決定場面 にお け る政治 的影響 戦術 に関す る実験 的研 究. 岡山大 36,1 3 1 8. 学教育学部研 究集録 ,1 の葛藤が集団内の情報の 出 し合 い を促 進 し, こU) 場 ていた。つ ま り,本研 究 の ように課題指 向型葛藤状 Gas t i l ,・ J .1 9 93I de nt i f yi ngobs t acl e st os nl al lgr ol l l ) de moぐr aC y. Smal lGr ol l pReseac l 1 ,26, 25 55. Hogs ,M.A.1 992TheSoc i alPs yc hol ogyofGr oL L l ) C( 二 ) he s i ve ne s s-Fr om at t r ac t i ont os oc i li a de nt i t y. Ne wYor k: Ha ve r s t erW h e a t s he a f . 況下では,成員 は 自分 たちに都 合 の良い よ うな情報 池内 合伝達情報の偏 りを生 じさせ ない こ とを示 う もので 1 997) や t ・ l uchi gamiL 2007) あ り, これ まで淵 上 ( で検討 して きた 目標 葛藤や利 害葛藤状況下 にお け る 成 員の情報交換 行動 や認 知様式 とは とは全 く異 なっ - 1 971 コ ンフ リク トの社 会心 理学 ,8 35. のみ を伝達す る ような情報 の選別 や 自分 た ちに都合 軍報社 会心 理 学 1 2 葛 藤 と紛 争 ,東 京 :頚 草 書 の良 い ように情 報 を加工す る ような行動 はあ ま り見 房. られなか った。 この こ とは,課題志 向型葛藤 の場合 者 が多 い こ とか らも,成員間 に正 しい選択 を行 うた Li ke r t , R. & Li ker t , JG.1 976Ne wWa yofMa nage me nt L " ・ onf l i c t .Ne w Yor k: McGr a wHi l l , I n°. 三隅二不 二 ( 監訳) 1 9 88 コ ンフ リク トの行動科学. ダイ ヤ モン ド社. め にはで きるだけ多 くの情報 とよ り正確 な情報 を引 Shc r i f ,M"Har ve y,O. I. ,W h y t e,B. I. ,Hood,W. R"& は成員 の 目標 が ,「全 員が合 意 す る こ と」 だけで な く,特 に 「 正 しい選択が行 われ るこ と」 と回答 した き出す必要が あ る とい う共通認識が生 じていた可能 She r i f ,L I J . W.1 9 61ht e 噌r OupC Onf li c ta ndc oope r at ion: ¶l er obber sc a vee xper imentUni ve r s i t yof Okl a homaPr e L S S . 性 が ある。 それ に対 して,初期 選好 一・ 致群 で は ,「正 しい選 択」よ りも 「 全 員が合意す る こ と」を重視 してお り, 淵上 ・迫 田 ( 2007) で見 出 した ような政治 的 な影響 戦術 な どを含 め た多 くの賛 同者 を得 るための情報 交 換 の方法 に全 員の関心 が集 まった もの と思 われ る。 文 献 Br oome,B. I. & Ful br i g ht , L.1 995Amul t i s t agei nf lu・ e nc emode lofbar r i er st ogr ouppr obl e mS Ol vi ng apar t i ci pant gener at edage ndaf ors mal lgr oup r e s e ach. Smal lGr ol l pRes eac l t ,26,25 5 5. 淵 上克義 1 997 集 団意思決定場面 にお け る下位集 i ngofuns har edi nf or nL atiull St as s er ,G.1992Pool dur nggr i oupdi s cus s i on. I nWor c he l , S. , Wood, W. . & Si nL PSOn,J.A.( Eds)GroupProcessand Prodl l Ct i vi t y・Newbur yPar k,Cal i f or ni a∴ Sage P p. 426 43 4. Publ i c at i ons , I ne. Tur l l e r ,I.C.& Gi l es,H.( Eds. )1 9Rll nt er group Behavi or.0Xf or d: Bl aCkwe l l . *本研 究 の一 一部 は,平 成 2 0年 度 日本学術 振興 会 科 学研 究 費基盤研 究 ( C)(課題番号 19530590 :研 究 代 表者淵上 克義) の補助 を受 けた。 団間葛藤 が集 団内 にお け る情報 の共 有に及 ぼす影 -6-