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第8章 業界の展望と就職事情態

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第8章 業界の展望と就職事情態
第
8
章
業界の展望と就職事情
LECでは司法書士受験指導28年、
15カ月合格講座をスタートさせて26年になります。当初は、
修行後独立を目指す方がほとんどでしたが、近時「どんな事務所に勤務可能なのか?」という
お問合せも増えてきました。実際、2002(平成14)年の司法書士法改正により、二人以上の司
法書士が社員となる司法書士法人の形態も可能となりました。
この状況を踏まえ、2011(平成23)年7月16日にLEC水道橋本校にて「司法書士就職なん
でも座談会」というイベントを実施いたしました。
司法書士法人・土地家屋調査法人の代表のみならず全国サービサー協会の副理事長でもある
山田晃久先生、日本司法書士政治連盟会長・名誉会長、日本司法書士会連合会副会長等多数の
会務にも就任されていた山口達夫先生、司法書士法人のみならず弁護士法人もグループでお持
ちの東雲グループ代表の星野大記先生、司法書士業界のことなら何でも知っているといっても
過言ではない船井総合研究所士業コンサルグループのシニアコンサルタント真貝大介先生をお
招きし、司法書士業界の展望や就職事情についてお話いただきました。
❶ 事務所は「より顧客が集まる場所へシフト」
●
真貝先生に司法書士事務所の開業場所の変化について伺いました。
「従来は、司法書士事務所といえば法務局周辺に多数ありましたが、5~6年ほど前からオフ
ィス街・駅前といった、より顧客が集まる場所へとシフトしています。これにはやはり、登記を
はじめとしてオンラインによる業務の増加があげられると思います。
10年前と比較しても登記案件は3割ほど減少、債務整理もピークの3~4割は減少していま
す。これとは逆に司法書士の数は増加しています。事務所の数は横ばい傾向の状況で、独立で
はなく勤務の形態をとる合格者が増加しています。業界が厳しくなると、上下が生き残り真ん
中がいなくなる傾向がどの業種にもありますが、司法書士業界はまさにそのような状況がくると
考えられます。都市部においてはこの現象が先行してスタートし、債務整理中心の事務所にお
いては、リストラがスタートしているようです。地方においては、競争がまだまだ行われている
状況です。
不動産登記においては、住宅着工数減少に伴い、新規ローンも減少していますが、借り替え
案件はまだまだ多い状況です。しかし、受託する事務所の寡占化現象がはじまっています。
」
2012 士業最前線レポート 司法書士編
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司法書士
❷ 「登記」をベースにビジネスモデルを展開
●
司法書士業界最大手の事務所経営されると同時に、サービサー等新しい分野にも率先して取
り組まれている山田先生に、業務内容と新人の方がどのような業務を行っているのか伺いまし
た。
「私たちは、登記をベースにしたビジネスモデルを展開する登記事務所です。サービサー業務
から登記業務という業務展開をとったのも、登記記録を読み取る力に長けている司法書士が、
担保評価のお手伝いができると思ったからです。法改正によって参加できるようになりました
が、相続(遺言信託)やM&Aビジネスを、全国の提携した税理士と一緒に展開しております。
これも最終的には登記です。純粋な登記数は減少しましたが、サービサー・信託からの登記、
また、金融機関とタイアップをしてローンの借り換えによる登記で事務所の登記件数減少を補
っています。
入所した新人には登記所への申請・回収などに出向いてもらい、登記の流れを数ヵ月で身に
つけてもらいます。そこから先輩司法書士に就いて業務を覚え、共同で業務をしてもらうように
なります。
」
ちなみに、採用ポイントは『前向き』
『明るい』
『謙虚』
『吸収力』をキーワードとして挙げら
れました。
❸ やりたいことをやるために
●
政治連盟会長、名誉会長、連合会副会長などのお立場を経験され、会を牽引なさっていらっ
しゃいました山口先生に、立川市で開業された経緯や会務と事務所経営の両立について伺いま
した。
「私はもともと立川市とは近隣の日野市で、30年ほど合同事務所形態で経営しておりました。
共同事務所では、当然経営方針を決定するのも共同のため、ある程度の拘束感を抱いていました。
そこで、
『やりたいことをやるために』3年前に立川市に個人事務所形態での開業にいたりまし
た。立川は商業都市への変換期だったこともあり選んだのですが、開業しても仕事はその地に
根付いた司法書士へ受託され、黙っていてもなかなか自分のところにはまわってきませんでし
た。
ホームページ、CM、タウン誌、タウンページと考えられる告知は全てやりました。今、悩み
を解決する手段を持たない方が多くいらっしゃって、無料相談にのることからスタートし、その
3~4が仕事になっていきました。
会務のメリットは業界の先を感じることが出来るという点です。事務所経営との両立は厳し
いですが、このメリットはお勧めしたいです。
」
「司法書士の事務所経営は、資格がないとできない世界です。しかし、司法書士という資格が
仕事を作るのではなく、資格と経営は別ものです。
」とおっしゃられた先生は、採用ポイントと
して『行動力』
『アイディア』を挙げられました。
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2012 士業最前線レポート 司法書士編
第
8 章 業界の展望と就職事情
❹ 積極的に意思決定に近づく
●
司法書士法人だけではなく、行政書士、弁護士法人、コンサル会社東雲アドバイザーズを含
めた東雲グループの代表でいらっしゃる星野先生に、司法書士事務所が行政書士、弁護士事務所、
コンサル会社を持つメリットとその過程を伺いました。
「学生時代は司法試験の勉強をしていましたが、司法書士をしていた父の病気をきっかけに司
法書士を志しました。合格後の平成17年に承継し、登記業務・裁判業務をはじめ、行政書士の
許認可業務・在留外国人サービス業務、弁護士の裁判業務や公益社団・財団法人への移行など
のコンサルティング業務を展開しております。
私がこの業界に入ったのはバブル崩壊時で、信託登記が流行った平成15年です。2年後には
会社法が改正され、この時期をチャンスと捉え積極的に動きました。登記業務は川で例えると
一番の川下であり、いわば意思決定が終わったあとの手続をする下請けです。私はこの川を上
ってお客さんの意思決定に近づくことを目指し、コンサル業務を開発しました。
」
エンドの登記のみではなくなるので、当然専門分野以外の情勢や周辺知識は必要となります
が、グループとしてカバーできるので利点も多いと語っていただきました。
❺ まだまだ開発可能な業務はある
●
司法書士業界については、バブル後の登記件数の減少、弁護士の増加、登記申請電子化・登
記所統廃合、過払いバブル終息など、あまり明るいとはいえない話が多数あります。その中で
先生方に注目されている業務について伺いました。
山口先生は、
『成年後見分野』は引続き増加傾向にあること、また『相続財産管理人の受託な
どの財産管理分野』を注目し、財産に関する素養が必要とのお話をいただきました。逆に、法
人設立に伴う公証人への定款認証は司法書士からが3割ほどで、行政書士のほうが多いことを
問題提起されていました。この分野の司法書士の活躍にも期待したいところです。
星野先生は、
「登記法改正で登記所に出向くことの減少・行政サービスの質の向上による本人
申請の増加という現状があり、今後は法律専門職として専門分野の知識のみならず、周辺知識
を取得することはもちろん、地域による司法書士のニーズを的確に把握してサービス業として
付加価値をつける必要性があるだろう」と指摘されました。個人法務部問では、
「高齢者社会の
現在においてはやはり相続へのニーズがあり、
司法書士の積極的な介入が期待できる」分野です。
山田先生は、星野先生同様「これから50年~60年は継続するといわれる相続は大きなマーケ
ットだ」と指摘されました。加えて「60歳ではその1%、70歳では10%は認知症というデータ
があり、財産管理のニーズもある」点をあげられました。また、
「リート(不動産投資信託)は
不動産と金融が一緒になった金融商品であり、現状は限られた事務所しかやっていないのでビ
ジネスチャンス」と教えていただきました。過日話題になったサブプライムは、審査などがルー
ズで大変ずさんな商品でしたが、発注は証券会社からであり、前提から受託できれば、登記の
リサイクルとして将来性があるというお話でした。
真貝先生には以下のようにまとめていただきました。
「司法書士の業務は、申請・回収・相続のような誰でもできることを代わりに行う代行(アウ
トソーシング)と遺言・財産管理のように誰彼できないことをやる代理・コンサルティングに二
分されます。アウトソーシングは、大量案件をローコストでできるところ=限定的な事務所だが
2012 士業最前線レポート 司法書士編
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司法書士
伸びる分野だろうと思います。コンサルティングは、アドバイスやスキームの提案など個別対応
を要するところ=開業即アタック可能な分野といえるでしょう。
」
「また、他士業との関係で言え
ば、コアとなるのはやはり司法書士に有利である“登記”になりますが、競合する分野については
弁護士や公認会計士がやりたがらないものを司法書士が引き受けていくなど積極的に展開して
いけばまだまだ開発できる分野はあると思います。
」
先生方が採用したいのは
❻ 「謙虚」「顧客サービスの意識」「経営意識」
●
最後に現事務所においてどのような人材を求めるのか伺いました。
・自分自身をどう商品にできるかを知っている方、開発ができる方(星野先生)
・登記事務所なので土地家屋調査士に興味がある方、コンサルティングに興味がある方(山田
先生)
・明るく、勉強したのはまだ一部だという謙虚な方(山口先生)
真貝先生も「志は高く腰は低い方、やりたいことをやる前に顧客のニーズに応える意識を持
った方、経営意識を高くお持ちの方が事務所の先生方のニーズといえると思います。
」とまとめ
ていただきました。
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2012 士業最前線レポート 司法書士編
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