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悪質商法被害の防止に補助制度の活用を!

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悪質商法被害の防止に補助制度の活用を!
新人司法書士のみなさん、
悪質商法被害の防止に補助制度の活用を!
社団法人
成年後見センター・リーガルサポート
理
事
高
橋
弘
“悪質商法被害の防止には、成年後見制度の!補助"の活用が効果的です。ご存知
でしたか。
”
1 基礎知識の復習
成年後見制度には、ご存知のとおり、判断能力に問題のない元気なうちに将来後見人になって
もらう人を自分で選び、その人と契約を取り交わしておく!任意後見"と、すでに今現在、精神
上の障害により判断能力の不十分な方々を支援するため、家庭裁判所が職権で適任者を選び、後
見人等に就任してもらう!法定後見"の2種類があります。そして、法定後見には、さらに、
!補
助"
、
!保佐"
、
!後見"の3類型があり、本人の判断能力の低下の程度に応じて使い分けます。
このうち、補助は、軽度の認知症など、能力低下の程度が軽い単に不十分な方々にも制度を開
放し、暮らしの安心を手に入れていただくための制度です。これらの方々は、経験則上悪質商法
等の被害に遭う確率が高いとされながらも、従来の禁治産・準禁治産の下では、制度の対象外と
されていました。補助は、これらの軽度の方々を被害から護り支援するために新設されたもので、
新しい成年後見制度の目玉とされたものです。
補助では、その開始とともに本人(被補助人)に補助人が付され(民法16条)
、同時に本人の
。
選択した重要な行為(同13条①)の一部について、補助人に同意権が付与されます(同17条①)
そうして、万一、補助人の同意なしに本人が行為をした結果、本人の不利益になるときは、本人
。また、
からでも補助人からでも立証なくしてその行為を取消すことができるのです(同17条④)
本人の選択した特定の法律行為について、補助人に代理権を付与することも可能です(同876条
の9)
。代理権は、前述の重要な行為以外の行為についても付与することができますが、代理権
のみが付与された行為は取消すことはできないことに注意を要します(同20条①括弧書き、同12
0条①)
。
2 リフォーム被害や高次脳機能障害をもつ方にも有効
例えば、重要な行為の中から、家の!新築、改築、増築、大修繕"を選択し、家庭裁判所に申
立て、補助人に同意権を付与してもらったとしましょう。こうしておけば、本人が悪質業者に騙
されリフォーム契約を結んでも、立証なくして取消し無効にしてしまうことができるわけです。
詐欺や強迫を理由にその行為を取消す(同96条)には、その事実を立証しなければならないのに
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司法書士
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比べ、効果はてき面です。また、この取消権は、時効(同125条)にかからない限り行使できる
ため、同様の取消権が付与されるクーリングオフ等の諸制度と比べても、本人保護に手厚い使い
勝手の良い制度といえます。同様の手法は、目に見えない障害として、PTSD(心的外傷後ス
トレス障害)やRSD(反射性交感神経性ジストロフィー)とともに注目されつつある高次脳機
能障害をもつ方々にも有効です。去る2月4日に開催された日本成年後見法学会の高次脳機能障
害シンポにおいても、そのことが指摘されました。
3 誤解による活用不振
にもかかわらず、その活用状況は、後見開始審判の申立件数が14,
532件なのに対して、わずか
に784件(対前年比3%減)(注)と極めて低迷です。なぜなのでしょか。
その理由として、一般には、軽度とはいえ認知症といったレッテルを貼られるのを嫌がるため
とか、多額の費用がかかるためといった事実が指摘されています。しかし、これらの指摘には多
分に誤解にもとづく要素も含まれているようです。というのは、補助の利用には、何らの資格制
限もともなわず、また、費用も低廉な場合が多いからです。確かに後見が開始すると、選挙権(被
、会社の取締役・監査役の欠格事由に該当する(商法254
選挙権)を失ったり(公職選挙法11条)
条の2、同280条)など、資格制限が生じます。しかし、補助ではこうした資格制限は全くなく
暮らしへの影響がありません。また、補助の申立てでは、原則として、最高裁の定めた診断書の
提出でよく、後見や保佐のように精神鑑定をする必要がありません。そのため、費用も低廉で、
本人申立であれば2万円程度あれば十分です。補助人に対する報酬についても、日常の財産管理
を代理するのでない限り、後見人とは異なり、必要な場合にのみ、同意権・代理権を行使すれば
よいので、低廉な場合がほとんどです。加えて補助の事務では、本人の親族が行える場合も多く、
費用負担が利用のネックとなっているとは考え難いところです。これらの事実を総合すると、ど
うやら活用が低迷な真の理由は、補助の名が後見の名に隠れ、制度そのものが知られていないた
めではないかと考えられるようになりました。
4 おわりに
日本成年後見法学会では、こうした状況の解消に向けて、今後全国的に補助の普及啓発に取組
み、その活用の推進を図るべく検討中です。その第1弾として、本年3月から4月にかけて、埼
玉県において、弁護士、司法書士、社会福祉士等と連携を図り、実際に地域に暮らす高齢者や障
害者の方々を対象とする説明会、相談会を開始する予定です。リーガルサポートとしても、同様
の実践的活動を全国各地で行うべきであると考えております。新人司法書士のみなさん、補助制
度について興味を持ってください。そして、仲間を作り勉強し、身近な暮らしのサポート役とし
て、地域で頼りになる法律家を目指してください。リーガルサポートには、そうした仲間が大勢
います。これからも、手を取り合いながら制度を必要とする方々の力になれるようがんばりまし
ょう。
(注)成年後見関係事件の概況平成16年4月から平成17年3月(最高裁事務総局)
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