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USD/JPY見通し上方修正 最後はプラザ合意だったが

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USD/JPY見通し上方修正 最後はプラザ合意だったが
Global Market Outlook
USD/JPY見通し上方修正
最後はプラザ合意だったが、はじめは円安だった
2016年11月18日(金)
第一生命経済研究所 経済調査部
藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
USD/JPY の見通し(先行き 12 ヶ月)を上方修正する。新たな見通しは 113 円と従来から 13 円切り上
げる。周知のとおりトランプ共和党政権が誕生し、同時に議会のねじれも解消したため、大型減税、規
制緩和を中心とする景気刺激策が現実味を帯び、米経済が息を吹き返す可能性が高くなった。「強い米
国、強いドル」というテーマの下、投資家のリスク選好度が強まり、調達通貨の JPY は売りが膨らむと
予想する。
筆者はこれまで、米失業率が5%近傍まで低下した状況に鑑み、米景気の伸びシロが少ない点を重視。
2018 年頃には米景気がピークアウトするとの基本シナリオを念頭に置いてきた。実際、失業率に先行性
を有する銀行貸出態度は 2016 年初めに厳格化に転じ、このことはクレジット市場が景気後退を察知した
シグナルに思えた。諸点に鑑み、筆者は早ければ 2017 年 12 月 FOMC で示されるドットチャートの中央値
がフラット化(あるいは逆イールド)することで市場に利上げ打ち止め感が浮上すると予想し、USD/JPY
に慎重な見通しを貫いてきた。
(%)
12
11
10
9
8
7
6
5
4
3
2
失業率
80
85
90
95
00
(備考)Thomson Reutersにより作成
銀行融資担当者調査・失業率
(%)
80
60
5
厳格・失業率上昇
4
3
40
緩和・失業率低下
20
銀行貸出態度
2
1
0
0
-20
-40
05
10
-1
失業率前年差(右)
-2
92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16
(備考)Thomson Reutersにより作成 貸出態度は小企業向け
15
しかしながら、今やそうした見通しは2018年の米景気拡大モメンタムを過小評価している。また、トラ
ンプ共和党が掲げる法人税減税、規制緩和は企業収益の拡大を通じて「強い米国」を作りあげようと試み
たレーガン政権と共通する部分があるため、当時の相場が再現されると考える市場参加者も多いだろう。
トランプ共和党政権がレーガノミクスと類似した軌跡を辿ると仮定し、今次局面のUSD/JPYに応用すると
2017年頃までUSD高傾向になる可能性が高まったように思える。完全雇用に近い段階での大型減税はインフ
レ圧力を高め、FEDをインフレタカ派方向に傾斜させる可能性が高い。実際、イエレン議長は17日の議
会証言で「利上げを先送りし過ぎると引き締めペースが早まる恐れがある」として、インフレ対応が後手
に回るリスクを指摘した。そうした下では米金利上昇による日米金利差拡大が意識され、USD/JPYは上昇し
易い。
レーガノミクスは再現されるのか。USD/JPYを予想する上ではマンデル・フレミングモデルに基づいた当
時との比較が役立つ。マンデル・フレミングモデルによると変動相場制下における財政出動は、第一段階
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
としては景気刺激的となり実際に経済成長率を加速させるが、国内金利上昇(米金利)が通貨高(USD)を
もたらす結果、次第に純輸出が減少(輸出減・輸入増)するため、最終的には財政出動の効果が減殺され
ることになる。実際、当時の米国はそれに近い状況となり「経常赤字・財政赤字」が問題化し、最後は
「プラザ合意」だった。今回も向こう2年程度にわたってUSD高となった後、米経済の打撃が深刻化するこ
とでUSD安方向に推移する可能性がある。トランプ共和党の保護主義的な姿勢も意識されるだろう。
一方、当時との相違点は、レーガン政権発足時の1980年代前半は失業率が高水準にあり景気の伸びシロ
はかなり大きかったが、それに対して今次局面は完全雇用に近く伸びシロが小さい。USD実効レートもレー
ガノミクス発動段階では低水準にあったが、今次局面では13年半ぶり高値が始発点になっている。市場参
加者がそこに注目すれば、そもそもUSD高が進まない可能性もあるだろう。また、今次局面ではUSD高が進
むと原油安が誘発され、新興国懸念が惹起される点も重要。USDの上値抑制要因として認識しておきたい。
以上を踏まえ、USD/JPY(先行き12ヶ月)の見通しを113に引き上げるが、2018年後半頃には再びUSD/JPY
が下落基調に転じる可能性があるとみている。また、トランプ共和党が大幅な路線変更を打ち出した際、
この予想に適宜修正を加える可能性がある。
160
(㌦/バレル)
120
ドルインデックス(DXY)
140
100
120
80
(DXY) 70
75
80
DXY(右)
2016/11/17
100
60
80
40
85
90
95
1981年1Q
60
70
75
80
85
90
95
(備考)Thomson Reutersにより作成
00
140
05
10
100
WTI
20
105
10
11
12
13
14
15
16
(備考)Thomson Reutersにより作成 DXY:ドルインデックス
15
USD/JPY
130
120
110
100
90
予想(先行き12ヵ月)
80
70
10
11
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
15
16
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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