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地方銀行の連携強化による収益性の向上

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地方銀行の連携強化による収益性の向上
地方銀行の連携強化による収益性の向上
金融研究部 間接金融班 飯野 石山 奥井 小山
フローチャート
導入
• 銀行が抱える様々な問題
問題意識
• 地方銀行の低収益
現状分析
• 国内の資金需要の伸び悩み
• 都市銀行と地方銀行の規模の差
政策提言
• 地方銀行同士の連携
• 持ち株会社の設立
~1~
ハン
導入
銀行が抱える様々な問題
貸出金利
の低下
資金需要の
伸び悩み
国債等有価
証券への依
存
産業の
人口減少
空洞化
こうした状況の中で
銀行の収益性が比較的低いという問題がある
図 1 過去10年の銀行平均利益率(H15~H24)
みずほ
三菱UFJ
三井住友
りそな
都市銀行平均
北海道
みちのく
東北
群馬
常陽
武蔵野
千葉
東京都民
横浜
山梨中央
北越
北陸
富山
静岡
大垣共立
三重
スルガ
滋賀
南都
紀陽
鳥取
広島
四国
福岡
筑邦
十八
鹿児島
琉球
地方銀行平均
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
出典:全国銀行協会 財務諸表より作成
平成 14 年度からの平均利益率1は都市銀行:43.6%>地方銀行:25.0%2と特に地方銀行
の収益が低い
地方銀行の自己資本の増加が鈍い
地方銀行はリスクに弱い
1
2
利益率=当期純利益×365÷当期日数÷資本金×100
地方銀行には第2地方銀行も含む
~2~
問題意識
不測の事態が起こったという想定で考察する。
地方銀行の資金繰り悪化
自己資本の維持
・新規融資の減少(貸し渋り)
・融資の返済催促(貸しはがし)
中小企業の運転資金が不足
・他行の融資案件への移行
(激しい融資競争)
・貸出金元本の償還が困難
地方銀行の収益さらに悪化
主な利益である利鞘が減少
~3~
つまり、地方銀行は
r(企業として当然追求すべき)利益を失う
顧客である中小企業を失う
地域密着型という存在意義が迷走する
という不利益を被る可能性がある。
そして、収益率の低さはこうした事態の原因である
不測の事態への対応を鈍らせ悪化させる。
問題意識
地方銀行の収益性が低い
としてこの問題を解決するべきである。
~4~
現状分析
《地方銀行の低収益の要因》
・国内市場の狭さ
図 2 企業の資金需要動向
国内において企業の資金需要が伸び悩んでいる
・オーバーバンキング
間接金融サービスを営む銀行などの預金取り扱い金融機関の数が多すぎることをいう。
国内の貸出・融資市場の競争状況(過当競争)に関連して、しばしば邦銀の低収益性がオ
-バーバンキングに起因すると考えられている。
(地銀の客が都市銀に奪われるなど)
また、融資競争が激しくなって、利鞘が縮小している。
(新規融資策には低金利で開拓
するため。
)
図 3 地方銀行の貸出利鞘3の推移
2.5
2
1.5
1
0.5
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
貸出利鞘(%)
出典:NTT データ経営研究所より作成
3
預金と貸金の金利差から得られる金額で銀行の主な収益となる
~5~
・その他
都市への人々の流出よる地方の人口減少、高齢化によって預金量が減少し、収益が悪化
する。また、ゆうちょ銀行の地方進出4、金融緩和5なども地方銀行の収益悪化につながる
・このような状況において都市銀行と地方銀行の収益率には差がある理由は?
規模の違い
都市銀行総資産ランキングベスト5(平成25年度3月)
1位 三菱 UFJ フィナンシャルグループ
234兆4,987億円
2位 みずほフィナンシャルグループ
177兆4,110億円
3位 三井住友フィナンシャルグループ
148兆6,968億円
4位 りそなホールディングス
43兆1,106億円
5位 三井住友トラストホールディングス
37兆7,040億円
地方銀行総資産ランキングベスト5(平成25年度3月)
1位 横浜銀行
13兆2,388億円
2位 千葉銀行
11兆3,124億円
3位 静岡銀行
10兆2,502億円
4位 福岡銀行
9兆6,559億円
5位 常陽銀行
8兆2,408億円
都市銀行の規模>地方銀行の規模
地方銀行総資産ランキングワースト5(平成25年度3月)
1位 富山銀行
4,419億円
2位 筑邦銀行
6,673億円
3位 東北銀行
7,819億円
4位 北九州銀行
8,565億円
5位 但馬銀行
8,823億円
地方銀行の中でも規模の違いが見られる
規模が大きい方が競争に勝てる
=規模の経済性(低コスト等)
4
ゆうちょ銀行は総預金残高177兆円を誇る日本最大の金融機関である。今年2月のゆうちょ銀行を
含む日本郵政グループが中期経営計画を発表したがその中に新規業務(個人向け貸し付けや法人向け貸
付)に乗り出すことを盛り込んでいる。現在は政府内で議論をしているところだが、認められない方向。
5
金融緩和によって、融資競争が激しくなり貸出金利が下がって資金利鞘が減少する。
~6~
図 4 銀行総資産と利益率の相関関係
100.0
90.0
利益率
(過去10
年平均)
80.0
70.0
y = 6.9514x - 75.101
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
12
13
14
15
16
17
18
19
20
総資産(対数化)
出典:全国銀行協会 財務諸表より作成
規模が大きい方が利益率が高くなる
都市銀行は規模が大きいため取引先企業とともに海外にも支店を展開できる(規模の大き
い地方銀行も同様)
規模の大きさが新たな資金需要の創出を可能にする
・地方銀行の海外進出について
図 5 中小企業の国際化の希望
行う予定はない
条件が合えば
行いたい
出典:www.chusho.meti.go.jp より作成
行う予定がない理由
・国内業務で手がいっぱい
海外支援が十分ではない
・国際業務の知識がない
・資金繰りが不十分で資金調達が困難
~7~
対策として、金融庁が中小企業の海外進出を支援するために海外に地銀の『共同銀行6』
を設立することを検討している
地方銀行単独で海外進出は難しい
地方銀行同士の協力による規模の拡大の必要がある
・現状分析のまとめ
国内資金需要の伸び悩みによる低収益
同じ状況下で地方銀行に比べて都市銀行の方が収益率が高い
都市銀行との収益の差は規模の違いによるところが大きい
地方銀行は地銀同士で連携して規模を拡大する必要がある
6現地通貨の決済や貸出を行う、複数の地銀の共同出資の銀行。増加する中小企業の海外展開を支援する
目的。
~8~
政策提言
全国の地方銀行同士の連携強化
現状分析より銀行の規模拡大が必要
規模拡大の一つとして、銀行の合併にした場合
デメリット
① 大手地方銀行には、零細地方銀行を吸収したことによる収益率アップが見込まれないた
め、大手銀行と地方銀行の合併は難しい。
② 仮に、地方銀行の合併がなされた場合
銀行の規模が拡大
地方銀行の経営理念である
「地域密着」が達成されない
中小企業の資金不足
そこで吸収・合併ではなく、持ち株会社7という形を考える。
7
持ち株会社 ほかの会社を支配する目的でほかの会社の株式を保有する会社のこと。持
ち株会社(親会社)はグループ全体の経営戦略に専念し、子会社はそれぞれの事業に専念
できる。
~9~
具体的な業務
国内
コスト削減・地方銀行同士の
情報交換
•従来通りの「地域密着型」融資
•地銀共同センターの活用
•取引先紹介・合同商談会
•EBMなどのビッグデータを用いたマーケティングモデルの共同開発
•事業拡大に伴う企業の国内進出に対する、全国の地方銀行同士の情報
交換をもとにした新規融資獲得
海外
地方銀行規模拡大を生かした
中小企業の海外進出支援
•持ち株会社をもとにした合同海外事業所の設置
地銀共同センター…2004 年にサービス提供が開始された地方銀行向けの勘定系システム銀
行などの金融機関で入出金や資金の決済、口座の管理などを行なうもの。
勘定系システム…金融機関における勘定系システムは業務の中核を担う重要なシステム
で、顧客の口座の残高の管理や利息計算、入出金や振込、送金の処理、為替取引、他の金
融機関との資金決済などを実行する。
EBM(Event Based Marketing)…就職、結婚、住宅購入といった顧客にとって重要かつ大
きな出来事であり、企業にとっては商品やサービスの販売機会となるもの
~ 10 ~
参考文献
・日経コンピュータ 2008 年 10 月 1 日号 pp.114-115
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20081111/318964/
・日経情報ストラテジー3 月号 EBM とは
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20080731/311890/
・e-Words 勘定系システム
http://e-words.jp/w/E58B98E5AE9AE7B3BBE382B7E382B9E38386E383A0.html
・
「最強という名の地方銀行」 著 高橋 克英 中央経済社 ・週刊東洋経済 6月28日版
・黒川和美、木村恒弐『地域金融と地域づくり』東京:ぎょうせい、2006年
・多胡秀人 『地域金融論』東京:金融財政事情研究会、2007年
・南地伸晃 『地域金融機関の社会貢献』東京:八千代出版2012年
・新井美江子、岡田悟、中村正毅、山口圭介 「地銀の瀬戸際 メガバンクの憂鬱 過去最高
益なのに地銀は再編 メガは逆ザヤ」『週刊ダイヤモンド』2014年5月31日号p
26-p49
~ 11 ~
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