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トレンドで見るフォルムの症例 - Arterial Stiffness
この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 第 12 回 臨床血圧脈波研究会 企画セッション 2 - ① トレンドで見るフォルムの症例 内場 廉(長野市大岡診療所所長) 30 動脈硬化の評価方法としてさまざまなデバイスが市場 認められた(図 1) 。また、行き倒れ状態で発見、保護され に登場したが、われわれは約 10 年前から (form PWV/ABI た男性(76 歳)では、栄養状態の改善とともに血圧の上昇 (オムロンコーリン社製) ;以下、フォルム)を導入し、受 がみられ、カルシウム拮抗薬(calcium chanel blocker; 診時に毎回フォルム測定を行い、そのトレンドを活用して CCB)単剤により治療を開始したが、順調な血圧の下降を い る。 上 腕 − 足 首 脈 波 伝 播 速 度(brachial - ankle pulse 示し、PWV は年齢相当のノモグラム上を低下した。その wave velocity;baPWV)は通常血圧に大きく依存し、そ 後、さらに全身状態が改善され、適切な降圧が進むに従い、 の評価を難しくしているが、トレンドを観察することで、 血圧の変化を伴わない、PWV の下降が認められた。これ 個々の圧-弾性特性は明らかになる。同時に、トレンド らの症例では、PWV が必ずしも血圧の変動だけではなく、 にはいくつかのパターンがあり、さまざまな全身状態の 症状をきたす前のさまざまな交感神経の変化をつかまえ パラメーターを反映することが多くの症例から示唆さ る可能性、血圧とは相関せず PWV だけが上昇する病態の れる。 可能性が推測された。このようなときわれわれは、輸液 例えば、降圧治療により順調にコントロールされた女 によって PWV がしばしば下降することを経験している。 性(76 歳)では、PWV のトレンドは血圧低下ときれいな相 また、baPWV は血圧により変化することが知られてい 関を示し、年齢相当のノモグラム上を推移した。こうし るが、血圧に対するその変化率は一定ではない。同時に、 た症例は、全体の症例の3割程度である。外来血圧、家 PWV を適正に保ち、下降させるには、家庭血圧を含め適 庭血圧ともに良好な経過を示した女性(66 歳)では、ノモ 切に血圧を管理することはいうまでもない。しかし、そ グラムより低い年齢層のところ(40 ~ 50 歳代)で推移する れ以外にも脱水症状の回避、適切な栄養状態の維持、喘 パターンもみられた。 息など基礎疾患の管理、身体を取り巻く環境の整備や精 一方、喘息をもつ女性(87 歳)の症例では、外来時に喘 神的ケアの管理などが求められると考えられる。また、 息の発作をきたした場合、発作はないものの吸入を怠っ PWV に対しては、硬さの指標というよりは、病態の総合 た時期に、いずれも血圧の上昇を伴わない PWV の上昇が 的なリスクと捉える観点をもち、診療に活用している。 この論文は、「Arterial Stiffness」WEBサイトに掲載されています。その他の論文はこちら Click "Arterial Stiffness" web site for more articles. 企画セッション 2 - ① 図1 ● 血 圧の上昇を伴わないPWVの上昇が認められた症例 87 歳、女性。 診断:喘息、高血圧。 経過を通して、血圧は 120 〜 140、PWV は 2 ,400 前後で推移するが、喘息の発作時と吸入を怠った時期に一致して 血圧の上昇を伴わない PWV の上昇を認めた。 31