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14 自殺

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14 自殺
14 自殺(未遂)
事例
中学3年生のA子は、運動部のキャプテンとしてチームをまとめてがんばっていました。しかし、部内の人
間関係にトラブルが起き、長い間、調整に難航していました。気配りのできるA子は、問題を一人で抱え込
み、仲の良かった友人には、「疲れた」と漏らすようになりました。教室でも、「ボー」として考え込むA子の姿
が目撃されていました。そんなある日、小さい頃からA子をとても可愛がってくれていた祖母が急死しました。
数日後、A子は、母親に「少し調子が悪い」と言いながら家を出ました。A子の元気がない様子が気になっ
た母親が学校に連絡すると、A子はまだ登校していないとのことでした。母親が自宅を出てA子を探しに行こ
うとした矢先、同じマンションに住む人が、A子がマンション下に倒れていると教えに来ました。
原
原因
因・・背
背景
景
警察庁の統計によれば、我が国の自殺者は平成10年に3万人を超えてから、年間3万人台を持続し
ており、未成年者については、全体の約2%となっています。
一般に自殺が生じると、その直前に起きた出来事が自殺の原因であると解釈する傾向があります。し
かし、自殺を理解するには、「準備状態」と「直接の契機」の関係を捉えなければなりません。自殺に至る
までには長い道程があり、様々な問題が山積していきます。これが「準備状態」であり、自殺が起きる上
で重要な意味をなしています。自殺の背景には、環境因、心の病、問題を抱えた際に解決の幅の狭い性
格傾向、家庭の要因、衝動性のコントロールの悪さといった様々な要因が関与しています。このような複
雑な準備状態が長期にわたって固定化していき、自殺の引き金となる「直接の契機」は、むしろごく些細
なものである場合が圧倒的に多いといえます。
<「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」
児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する検討会(平成19年3月)より>
自殺の要因
精神疾患
環境因
自殺
生物学的要因
家族の要因
性格傾向
<「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」 (平成19年3月)より>
72
自殺の危険因子
自殺未遂
自殺未遂は最も重要な危険因子
→ 自殺未遂の状況、方法、意図、周囲からの反応などを検討
こころの病
うつ病、統合失調症、摂食障害、パーソナリティ障害、薬物乱用
サポート不足
親の離婚、家族の死、頻繁な転居
いじめ等の悩み とくに同世代の仲間からのいじめや疎外の及ぼす影響は強い
喪失体験
病気やケガ、学業不振、予想外の失敗
事故傾性
自己の安全や健康を守れない
性格傾向
未熟・依存的、衝動的、孤立・抑うつ的、極端な完全癖、反社会的傾向
他者の死の影響 精神的に重要なつながりのあった人が突然不幸な形で死亡
虐待
心理的・身体的・精神的虐待
その他
<「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」 (平成19年3月)より>
全国の児童生徒の自殺の状況
140
120
100
80
(人)
60
40
20
0
128
98
121
91
75
35
41
31
H15
34
25
4
5
2
3
H16
H17
小学生
中学生
高校生
3
H18
H19
<平成19年度文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より>
自殺した児童生徒が置かれていた状況【全国】(平成19年度:複数回答)
小学校
中学校
高等学校
計
人数
構成比
人数
構成比
人数
構成比
人数
構成比
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
(%)
家庭不和
0
0.0
5
14.7
11
9.1
16
10.1
父母等の叱責
0
0.0
5
14.7
7
5.8
12
7.6
学業不振
0
0.0
4
11.8
4
3.3
8
5.1
進路問題
0
0.0
1
2.9
8
6.6
9
5.7
職員との関係
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
友人関係
0
0.0
2
5.9
6
5.0
8
5.1
いじめの問題
0
0.0
1
2.9
4
3.3
5
3.2
病弱等による悲観
0
0.0
1
2.9
1
0.8
2
1.3
厭世
0
0.0
1
2.9
13
10.7
14
8.9
異性問題
0
0.0
2
5.9
4
3.3
6
3.8
精神障害
0
0.0
2
5.9
18
14.9
20
12.7
不明
3
100.0
21
61.8
64
52.9
88
55.7
その他
0
0
1
2.9
8
6.6
9
5.7
<平成19年度文部科学省「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」より>
73
対
対
応
応
学校から、しばしば、「リストカット」や深刻な悩みを抱えている児童生徒についての報告があります。実際には、自殺の危機に
瀕していたり、救いを求めるサインを出している児童生徒は、少なくないものと考えられます。ここでは「自殺の相談を受けた場
合」についての学校の対応について簡単に紹介しますが、児童生徒の成長にとって、家族とともに重要な役割を果たす教職員が、
「自殺予防」という観点から見識を深めることは大切です。
「自殺予防」等については
「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」 (平成19年3月)
に詳しく紹介し
てあります。
基本方針
□ 校内支援体制(対応チームの編成)を確立し、担任等(相談を受けている者)が孤立しない
ようにする。
□ 家庭や専門家と協働する。
□ 相談を受けた者は、徹底的に当該児童生徒の気持ちを受け止める。
□ 相談を受けた者は、どのよう理由があっても、当該児童生徒との関係を絶たない。
□ 状況を把握し、再発防止に向けた取組を徹底する。
*「自殺未遂は、次の自殺への最大の予告(危険因子)
」である。
校内体制
【初期対応】
□ 校内支援体制(対応チームの編成)を確立し、担任等(相談を受けている者)が孤立しない
ようにする。
□ 情報の管理に努め、プライバシーや人権に十分配慮して対応する。
□ 早い段階で、スクールカウンセラー等の心理専門家に助言を求め、状況によっては、直接、
当該児童生徒へ対応することを依頼する。
□
学校や家庭の環境を調整し、当該児童生徒の「安全な居場所」を確保する。
【中・長期的な対応】
□
教育相談体制を整備し、児童生徒が悩み事や相談事を打ちあけやすい校内環境を構築する。
*日常の児童生徒の変化に気づき、苦しんでいる児童生徒の「自殺のサイン」を察知できるように
する。
□
自殺予防にむけた研修の機会を設け、教職員が、苦しんでいる児童生徒の「救いを求めるサイ
ン」の察知の仕方や相談を受けたときの対応の仕方について資質を高める。
*
□
「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」 (平成19年3月)
等の活用
児童生徒が自己肯定感を高めることができるような環境を組織的に推進する。
*「横浜プログラム」の活用等
74
□
自治的な活動の充実を図るなど、児童生徒が主役の認め合い支え合う集団作りに取り組む。
□
各教科や道徳、学級活動などで、「命の大切さ」や「死をよく知ることにより生の価値を学ぶ教育」
に関連した授業を行い、自殺予防教育を推進する。
□
日頃から、専門機関(児童相談所、区福祉保健センター、精神保健福祉センター精神科、心療内
科、等)とのネットワーク作りに取り組む。
本人への対応
【初期対応】
□ 相談者は、被害児童生徒のありのままの感情をしっかり受け止めることに心がける。
*自殺をほのめかされたり、「自殺したい」と打ち明けられたりした場合は、叱ったり表面
的な激励をしたり、社会的な価値観を押しつけたりせず、徹底的に当該児童生徒の気持ち
を受け止める。
表面的な激励
社会的な価値観
「命を粗末にしてはいけない」
「家族のことも考え
て」
「気持ちを強く持って」
「馬鹿なことを考えるな」
「自殺は身勝手な行為だ」等
傾聴
「それは本当に大変だったね」
「とても辛かったろうね」
□ 保護者や専門家と適切な連携を図る。
*児童生徒が「誰にも知らせないでほしい」といってきた場合でも(本人の気持ちを尊重し
ながらも)、本人に対して、適切な援助(保護者と連絡を取り合ったり専門家に相談する
こと)が得られるよう真剣に語りかける。
□ 相談を受けていた者は、どのよう理由があっても、当該児童生徒との関係を絶たない。
*心から信頼していた大人から見捨てられる体験は、自殺の危険が高まっている子どもにと
っては、危機的である。
<「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」 (平成19年3月)より>
【中・長期的な対応】
□
当該児童生徒の「安全な居場所」を保証し、安心して学校生活が送れる環境を整える中で、継続
して支援を行う。
□ 必要に応じて、スクールカウンセラーや医療機関、相談機関等を紹介し長期的な展望をもっ
て取り組む。
保護者との協力
□ 保護者が安心して相談できるような信頼関係を築き、保護者への丁寧な支援を行う。
□
家庭が当該児童生徒にとって安心して過ごせる「居場所」となるよう、当該保護者と協働して家庭環
境を整備する。
□ 必要に応じて、スクールカウンセラーや相談機関等を紹介し長期的な展望をもって取り組む。
75
専門機関との連携
□ 相談機関や医療等と適切な連携を図る。(児童生徒、家庭へのアプローチ)
□
「協定書」の趣旨を踏まえ、健全育成などの観点から、警察との相互連携を行う。
自殺の直前のサイン
突然の態度の変化
・ これまで関心のあった事柄に対して興味を失う
・ 友人との交際をやめて、引きこもりがちになる
・ 身だしなみを気にしなくなる
等
自殺をほのめかす
・ 「遠くへ行ってしまいたい」「すっかり疲れてしまった」「誰も自分のことを知らない」等
別れの用意をする
・ 大切なものを友人にあげてしまう
・ 日記や手紙を処分
・ 長くあっていなかった友人に、突然、会いに行く
非常に危険な行為に及ぶ
実際に自傷行為に及ぶ
・ 手首を浅く切る
児童福祉法(第34条)
・ 薬を数錠服用する
<「子どもの自殺予防のための取組について(第1次報告)」 (平成19年3月)より>
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