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スキーの指導方法論 - 愛知県スキー連盟
スキーの指導方法論 • 『教育本部 スキー指導と検定』 • 2012年度 PP.62~92 2011-2012 公・準指導員養成講習会 理論B・C 愛知県スキー連盟 1.スキー指導の基礎と原則 (1)スキー学習の構造 1) スキー指導の類別 志向性 目的 結果とし ての期待 健康志 向 斜面克 服志向 競技志 向 健康の維 持増進・ 気晴らし 行動範囲 の拡大・ 技術追求 競技力の 向上・勝 利追求 よりよく 生きる 何よりも 結果とそ の過程 よりよい 生活・行 動力 2) 生活文化としてのスキー指導 (生涯スキーの推進) スキーの特性に即した 楽しさを味あわせる スキーの「楽しさ」を体 得し自発的・主体的な 実践能力を高める 生涯スキーの普及・ 振興 生涯にわたって継続 的にスキーに参加す るスキーヤー 3) スキー指導のあり方 学習者の自発的・主体的な運動欲求が 満たされる学習指導 • 学習者自身の力で対象や課題を克服し目標達成 ×「教える」 • 全員対象、画一的 • 教え込み、与える ◎「支援する」 • 個々に目を向ける • 意欲の引き出し • 問題解決能力養成 4) スキー学習の構造 学習者 (スキーヤー) 服装,用具 学習集団 学習活動 学習指導 指導者 教材 (スキースポーツ) 自然環境, スキー場 1.スキー指導の基礎と原則 (2)スキー指導の構造と指導者の役割 指導者に求められる役割 マネージャー • 自律的学習の支援的役割 インストラクター • 技術学習に直結する指導的役割 2.スキー指導方法の基礎 (1)モチベーションの喚起と強化 強化機能 志向機能 • 「楽しそう!」 初発機能 • 「やってみよう!」 • 「奥深い!」 モチベーションを喚起・強化する指導 押す:自発的学 習の後押し 効果的に賞罰 を与える 3) 関係性に配慮 する +α 学習者 支える:自発的学習 の環境づくり 自己決定の場を 創る +α 引く:学習者を目 標へ向かわせる 目標・課題・方 法などを理解 させる 1) 能力に応じた課題 の設定 2) 見通しの重要性(意欲の仕組み) 成果の見通 し(確率) モチベー ション 成果の 魅力 (学習意欲) 能力レベルと課題の難易度 効果的賞罰の必要性 (同一化の意欲メカニズム) A 指導者の信 頼度・一体感 B 指導者の 課題志向 モチベー ション (学習意欲) 効果的な賞罰(特に称賛)は、学習者の承認欲 求を満たすと共に、Aの信頼度を強化する。 +α : 自己決定の必要性 「学習者自身に工夫させていますか?」 自己決定の機会をバラン ス良く与えていくことに よって、学習者が成熟 自己 有能 決定 感 感 成熟段階 (真の自律) 自己決定 感 有能感 未成熟段階 関係性の重要性 (学習者同士、学習者と指導者) 情報的相互作用 (能力の和以上の成果) 学習者A 予想外の成果、 斬新なアイデア 学習者B 指導者の持つ知識・ノウハウのみが万能ではない! 効果的に相互作用が発生する「場」を、いかに用意し てあげるか? (2)スキー技術の指導過程 1)楽しさを発展させる学習過程 楽しさの 深まり・広がり 今持っている力 (A)でスキーを楽 しむ 今持っている力で スキーを楽しむ 能力の 深まり・広がり 新しい力(B)を 身につけてス キーを楽しむ 新しい力(A)を 身につけてス キーを楽しむ 2)運動技能の習熟プロセスから捉えた指導過程 回れない 回れる • 動きが ばらばら • 左右不 均等 • 動きがま とまる • 荒削り 全体を行ってリズム を覚える うまく回れる 強くなる • リズミカ ルになる • 安定化・ 洗練化 全体→部分→全体 バランス・リズム・タ イミングの獲得 • ダイナ ミックに なる • 確実さ・ 正確さ 全体(課題発見)→ 部分→全体 繰り返し 緩斜面 急斜面 単純・易しい動き 複雑・難しい動き (3)対象に応じたスキー指導の原則 1)年齢別によるスキー指導の原則 ①キッズ&チルドレンのスキー指導 発育・発達特性 • • • • • • • 神経系の発育・発達が大きい 動的バランス→小学校低学年 移動性能力→3,4歳 用具の操作→3歳 好奇心、集中力欠如(前期) 想像力、模倣傾向(3~5歳) 反応時間、判断、集中向上(6 ~12歳)『ゴールデン・エイジ』 • 家族集団準拠→遊技集団へ 指導のポイント • 3歳が開始適期 • 活動のゲーム化 →楽しさを主体に • 本格的スキー →幼児後期から • 急がず、焦らず • 示範 →模倣を利用 • 型にはめない • 状況変化を体験 ②ジュニア期のスキー指導 中学生期 高校生期 • 基礎的技能を幅広く • 滑走量の増加 • 束縛・制限をできる限 り少なく • 叱り方、ほめ方の工夫 • 耳を傾け、理解する指 導者 • 筋力、パワー向上→ 本格的技能習得へ • 論理的、批判的思考 →親和重視、時には 厳しく • 指導者の人間像への 共感 • 集団所属意識の高ま り ③シニア期のスキー指導 20~30代 • 総合的身体能力ピーク→専門的技能発揮 大学生期 • 目的の把握、多様化に対応したプログラム セカンドエイジ • ストレス解消、ニーズの尊重 • グループを単位とした指導→ゆったり、リラックス • スキーの魅力アピール、継続モチベーション ④エイジング期の特徴と原則 継続、夢、学び、成長進化の喜び・楽しさ • セカンドエイジ・・・・65歳までの有識者層 健康づくり、趣味づくり • サードエイジ・・・・・・65歳以上の退職者層 生きがい、仲間づくり (4) エイジング期指導上の要点 • • • • 基本姿勢、基本ポジションの保持 体幹部中心の全身運動、荷重感覚 強さよりも正確さ 段階目標の設定 →変容に喜び、自信、希望 • 個性重視、良い人間関係 誠実な指導態度、丁寧な言葉遣い (5)性差によるスキー指導 筋の特性の差 • 男性の筋量(40%)、女性の筋量(32%) • 男性の50%~80%の筋力、上肢に差 • 小筋群:女性優位、大筋群:男性優位 女性の性格特性 • 神経質、依存、防衛的、内向性、感受性、非暗示性、 • 優越性・自信・積極性・攻撃性・決断力が弱い 指導のポイント • 女性:指導に従順←→指導者の好き嫌い • 男性:自己感覚、指導者の専門性重視 3.スキー指導法の基本課題と指 導者の役割 (1)指導展開前の課題と指導者としての役割 1)指導の計画、準備 到達目標、段階目標の設定 学習内容、練習内容の設定 斜面選択、リフト活用設計 教材の準備 評価の方法、資料等準備 2)学習者一人ひとりの個性の把握 ①目的意識 動機、ニーズ、目標 ②体力要因 年齢、体力レベル、 運動能力、性格 ⑤装備用品 服装、スキー用具 ③運動歴 ④対人関係 運動経験、スキー歴、 学習グループ内の交友関係、 同行の仲間(家族、友人) スキー技能程度 3)学習形態を計画する グループ構成 • 7名程度が 原則 • 総人数・構 成内容・学 習内容など から判断 編成上の配慮 • 技能別グ ループ編成 が前提条件 • 学習者の指 向によるグ ループ編成 の配慮 (2)指導展開での課題と指導者としての役割 押す:学習活動 の推進 4) 効果的な フィードバック を与える。 学習者 支える: 学習環境の支援 2)学習環境や条件を 整備する 引く:学習活動 の牽引 1)めあてと経 路を理解させ る。 3)効果的な 説明、発問、示範 の適用 1)めあてと経路を理解させる わかり易いめあて(技術的課題)と学 習方法を提示し、理解させる 学習者が容易に理解できる 具体的な要点 達成度や到達の成否を判 断できる明確な筋道 2)学習環境や条件を整備する ゲレンデ状況 (斜面選択・整備) 学習時間 安全性の確保 用具条件 効率的学習展開 自然環境 学習者構成 3)効果的な説明や発問の方法、解りやすい示範(デ モンストレーション)を適用する ①示範による方法 • わかりやすい、容易に模倣できる、成否基準が理解しやすい • 動作特徴に注意が向く示範、言語説明が的確に加えられる ②言葉による方法 • 感覚的な複数の言葉、たとえや置き換えを有効に利用 • 発問等を利用し双方向で共通語を見いだす ③視覚機器による方法 • 技術のイメージを捉えさせる(コンセプト映像) • 自らの滑りの理解と修正のてがかり(VTR) 4)運動のできばえにつながるようなフィード バックを与える 目的と現実のギャップを認知し、技術修正の参 考になる(経験が少ないほど指導者に依存) ①動作の手がかりとなる明確な情報 ②正否の判別が感覚的にできる情報 ③肯定的フィードバックと矯正的フィードバック ④優先的矯正点の的確な指摘 ⑤効果的タイミングでの情報提供 5)現在進行中の学習活動をどこでやめ、次の 課題に移行するか的確な判断が必要である 飽き 没頭 つまずき 継続or課題の移行の判断 6)つねに良好な人間関係が保てるようにする ①学習者と指導者の人間関係 指導者との信頼関係から 生まれる学習意欲 指導者との信 頼関係の強さ 指導者の課題 達成への力 学 習 意 欲 人間関係への配慮 • • • • • • 個々への関わりを多く 指導者自身の情熱保持 明るい肯定的雰囲気 親しみを込め名前で 性格特徴を見極め考慮 偏らず差別ない公平性 (3)指導後の役割 学習・学習 • 達成度、成果 者に関して • 今後の課題 指導、指導 • 指導の自己点検 者に関して • 指導の自己反省 4.スキー指導の計画 (1)指導計画の必要性 (2)指導計画にあたって 周到な計画 長期的展望 を持った計画 合理的成果獲得 一環指導、育成 改善や適切な評 価 目的実現にむけ た長期ビジョン (3)指導計画立案の実際 全体計画 • 系統的構成 • 技能別計画 単元計画 • 学習者の実態 把握 • 明確な目標提 示 • 学習内容、学習 過程 自主的、自発的学習を促 進する立場での計画 • • • • 学習者が選択できる目標 学習内容や方法に選択の余地 指導者の予測と想定 安全への細心の注意 指導案(日案) • • • • • • • • • 当該時間の位置 対象者 指導場所 指導内容、要点 時間配分 留意点 斜面選択 資料用具 評価の観点 5.スキー指導における評価とその方法 (1)評価のねらいと活用 学習評価 • 診断的評価 • 形成的評価 • 学習後の成果評価 指導評価 • 指導改善のための自己評価 (2)学習効果に役立つ評価の分類 診断的評価 • 指導計画立案・修正のため、事前に行う • 学習者の実態や行動特性を評価 形成的評価 • 内容方法の調整、動機付けのため指導過程で行う • 変容を知り軌道修正を行う 総括的評価 • 一定の指導が一段落したら行う、成果の評価 • 次の段階の指導目標・計画や指導方法に反映 (3)基準による評価の分類 絶対評価 • 基準に基づいた絶対位置の評価 • 達成の合否、距離・時間・回数、質的な深さ 相対評価 • 他者との位置関係による評価 個人内評価 • 横断的評価:プロフィール的 • 縦断的評価:時系列的 (4)実施者による評価の分類 自己評価 • • • • • 現状の自力の正しい理解 力に合った目標の自己発見 活動の選択可能 できばえについてチェックできる 結果から次の課題が発見できる 他者評価 • 指導者による評価、第三者による評価 相互評価 • 学習者同士の評価、仲間づくりに有効 • 指導者の助言は欠かさない (5)評価の実際 1)指導のあり方についての評価 よいスキー 指導か? • 精一杯運動?、技や力の伸び? • 友人と仲良く学習?、新しい発見? 指導の成否 (態度測定) • 学習者の態度測定(調査) 指導者資質 (自己評価) • 出会いの演出、能力の引き出し • 人間関係配慮、チーム潜在能力開発 2)学習者及び学習指導についての評価 進歩度 到達度 動作の 気づき 認識 できる できない 動き・ 技 わからない わかる C A D B Work Hard and Good Luck! 読もう!:全体を把握しよう! 考えよう!:内容を理解しよう! まとめよう!:文脈と関係の理解 伝えよう!:理解の確認 END