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横河電機 金沢事業所 - 建築設備技術者協会
空調 衛生 電気 FLASH ② 横河電機 金沢事業所 加 藤 美 好 三 宅 伸 幸 MIYOSHI KATO 大成建設㈱設計本部 設備グループ グループリーダー あああああああ SHINKO MIYAKE 大成建設㈱設計本部 設備グループ シニアエンジニア あああああああ はじめに 加賀百万石の時代に培われた,ものづくりの町 福 田 建 築 主 横河電機㈱ 設計監理 大成建設㈱一級建築士事務所 敷地面積 42,656.51m2 金沢。建物は,金沢市の北東に位置する金沢テク 建築面積 8,175.60m2 ノパーク工業団地に横河電機金沢事業所として完 延床面積 12,464.23m2 成した(写真−1)。これは高度な技術研究を行 階 数 地上2階 う大学や企業が集中しているこの地に,産官学の 構 造 鉄骨造(一部SUS構造) 共同施設を含む研究開発から生産,サービスに至 施 工 大成建設㈱北信越支店 るまで,ものづくり「一気通貫」できる施設と位 工 期 2005年4月∼2005年11月 置づけられた。 当施設における研究は,最先端医療技術等に関 するものであり,高度医療をはじめとするさまざ まな分野への発展が期待されている。 1.建築概要 2.建築計画 本計画では4つのコンセプトに基づき計画を行 った。 ① フレキシビリティー ② コミュニケーション 建物名称 横河電機 金沢事業所 ③ 環境共生 所 在 地 ④ セーフティー 石川県金沢市 浩 HIROSHI FUKUDA 大成建設㈱設計本部 設備グループ シニアエンジニア あああああああ 建築用途 研究所 写真−1 建物全景 2006・6・建築設備士 11 図−1 建物配置 図−2 冷熱源システムフロー図 つシンプルな分棟構成とし,それらを繋ぐ移動空 間に水や緑を貫入させ,研究者同士のみならず官 学を含む他部門の人々が集い,語らい,休憩し, 交流できる空間を提供している。 写真−2 建物外観 2.1 建物配置 東西に長い敷地に対し4つの建物(サイト)を 3.空調設備概要 3.1 ¸ 熱源設備 冷熱源 機能ごとに配置した。事務室,食堂などからなる エネルギーゾーン屋上に,空冷チラーおよび電 コミュニケーションサイト(以降,CS棟),産官 力平準化のための氷蓄熱ユニットを設置し,空調 学の共同研究を行うリサーチセンター(RC棟), 冷却用と生産冷水用に利用している(図−2) 。 試作・開発を行うテクニカルサイト(TS棟),生 ○ 高効率空冷チラー100RT×3台 産工場であるファクトリーサイト(FS棟)を構 ○ 高効率空冷チラー60RT×1台 成した(図−1)。また,各サイトを繋ぐ渡り廊 ○ 氷蓄熱空冷チラー95RT×1台 下を設け,周囲には池を配置した。施設全体のエ ネルギーゾーンは,ファクトリーサイトに隣接設 (最大蓄熱量3,160MJ) ○ 冷水二次ポンプ (空調用)1,020L/min×3台 置した。各サイトへのエネルギーの供給は,渡り ○ 冷水二次ポンプ (生産冷水用)610L/min×2台 廊下の下に床下トレンチピットを設け,配管,配 ¹ 線などのインフラのメインルートとした。 2.2 建物計画 温熱源 エネルギーゾーン1階のボイラー室に,ガス焚 小型貫流ボイラーを設置し,空調加熱用,空調加 今回の施設の特徴は,約800m3の大きな容量の 湿用,融雪用に利用している。空調加湿用以外は 池を建物周りに配置し,建物外装は多くの部分を 蒸気―水プレート熱交換機により温水をつくり, ガラスでデザインしていることである(写真−2) 。 空調機,ファンコイルユニットなどへ供給してい プランニングでは,年間の晴天率の低い地方で る(図−3) 。 あることから自然光や敷地周辺の豊かな緑を積極 ○ ガス焚小型貫流ボイラー2,000kg/h×2台 的に取り込むことで,施設利用者が生き生きと活 ○ 空調用熱交換器×2台 動できる場の創出を目指した。各機能は,明快か ○ 融雪用熱交換器×1台 12 建築設備士・2006・6 º 排煙設備 各棟共,避難安全検証法により排煙の免除を行 っている。 » 中央監視設備 横河製VECTASにより各設備機器,受変電, 照明器具などの発停,監視,計測を行っている。 中央監視室はFS棟,CS棟の2ヵ所に設置した。 ¼ その他の空調設備 ・配管/ダクト設備 ・自動制御設備 4.衛生設備概要 4.1 給水設備 給水系統は,上水および工業用水とし,2系統 の受水槽,加圧給水ポンプにて供給した。工業用 水の主なユースポイントは,生産用,研究用給水, トイレ洗浄水,池の補給水とした。 図−3 温熱源システムフロー図 4.2 給湯設備 給湯方式は,局所式とし,給湯室に貯湯式電気 給湯器を分散設置した。 4.3 消火設備 3.2 空調設備 ¸ 空調方式 消火設備は,屋内消火栓設備を設置した。情報 サーバ室には不活性ガス(窒素)消火設備を設置 ○CS棟 外調機+空冷ヒートポンプPAC した。 ○FS棟 外調機+空冷ヒートポンプPAC 4.4 ○RC棟 空調機,外調機+FCU ・排水通気設備 ○TS棟 空調機,外調機+FCU ・衛生器具設備 その他の衛生設備 ・ガス設備 外調機は基本的に各階ごとに1台設けた。空調 機はペリメーター,インテリアによるゾーニング, 5.ユーティリティー設備概要 および方位によるゾーニングを行った。ゾーンご 試作研究,生産用に,各ユーティリティー設備 とに冷温水管を4管式とすることにより,ゾーン を設置した。メイン機器はエネルギーゾーンに配 ごとの冷暖房切替を可能とした。 置し,各サイトへの供給ルートは地下トレンチピ シールドルーム(RC棟)に対し,空調機器 (モーターなど回転機器)による磁場の発生を減 ットとした。 ・局所排気設備 らすため,空調機は別建物(CS棟)の地下機械 ・給水設備 室に設置し,地下トレンチピットのダクトを介し ・生産冷水設備 て空調空気を供給した。 ・圧縮空気設備 ペリメーターのガラス部分は,コールドドラフ ト防止を行うため,電気式ベースボードヒーター を設置した。 ¹ 換気設備 機械室,ボイラー室,トラックヤードは第一種 換気を行っている。 ・特殊ガス設備(Ar,He,N2,O2) 6.電気設備概要 6.1 受変電設備 エネルギーゾーン屋上に屋外キュービクル式設 備を設置し,各サイトへ低圧配電を行っている。 2006・6・建築設備士 13 :機能性・効率を優先し,白色蛍光灯を中 受電電圧:3φ6.6kV 変圧器 :3φ210V 6.2 心として照度・視認性を確保 500kVA ×4 3φ210V 150kVA ×1 ○ コミュニケーションエリア(多部門の人が 3φ210V 175kVA ×1 ふれ合い・安らぎ・知的生産性を向上す 1φ210/105V 500kVA ×1 る) 1φ210/105V 300kVA ×2 :暖色系のダウンライト・アッパーライト 等電位接地設備 を中心として安息感を演出 当該地区は多雷地区であり,誘導雷による研 究・生産への障害を最小限に留めるべく,強電 また,機械警備と連動して自動的に照明を全消 灯するシステムとした。 系・弱電系・通信系接地を共用化して各サイト間 6.5 に接地母線をループ状に布設し,さらに各サイト 施設のエリアごとにセキュリティレベルを設定 内で母線を複数箇所で躯体鉄骨に接合し,施設全 し,非接触カードリーダーによるゲート管理と 体を等電位化することにより,接地間や建屋間の ITVカメラ監視を主体としてセキュリティーを構 電位差を生じない構成とした。 築した。 6.3 周波数変換設備 セキュリティー設備 さらに,最重要エリアについてはセキュリティ 当該地区の電源周波数60Hzに対し,工場およ び研究用の海外製50Hzの設備の使用があり,60 グレードを上げるため虹彩認証システムを採用し た。 →50Hz電源周波数変換設備(50kVA)をエネル 6.6 ギーゾーン1階機械室に設置して必要個所に配電 ・電話設備 した。 ・LAN設備 装置から発生する電磁ノイズによる研究・製造 その他の電気設備 ・TV共同受信設備 への影響を防止するため,フライホイール式(フ ・機械警備設備 ライホイール(回転体)により運動エネルギーと ・自動火災報知設備,高感度煙感知設備 電気エネルギーを変換する方式)のシステムとし ・エレベータ設備,クレーン設備 た。 6.4 7.設備計画の特徴 照明設備 当施設は主として2つのエリアに大別でき,こ れに適合する照明計画を行った。 設備計画上,環境配慮,省エネルギー性,快適 性,実験研究の効率化に特に重点を置き計画した。 ○ コンセントレーションエリア(集中して研 以下に特徴的な技術項目について述べる (図−4) 。 究・生産を行う) 図−4 設備計画の概要 14 建築設備士・2006・6 RA OA 執務室 AHU SA OAフロア 通気性カーペット 図−5 床全面吹出し空調システム(T-Breeze Floor System)概念図 7.5 雨水利用計画 7.1 クールチューブ テクニカルサイトの外気処理は地中熱利用とし 雨水利用として,建屋の雨水を屋外の地下埋設 て地下ピットを通過した外気を導入した。導入外 貯水槽に一旦貯水し,池の補給水として有効利用 気は地中ピット内を通過し,地中熱により夏は外 する。 気を冷却,冬は加熱して空調機に供給する。また, ピット内の結露防止のため外気の湿度が高い場合 外気を外部から直接導入できるよう自動制御を行 7.6 自然換気システム 執務室の外壁に開閉可能な換気用スリットを設 け,中間期の自然換気を可能とした。 っている。設計時の検討では,夏季は外気より 7.7 2℃∼5℃低く,冬季は外気より2℃∼5℃高い 窓ガラスとブラインド間の空気を排気すること 温度として空調機へ導入し,これにより空調外気 によって,夏季の窓際の熱負荷を外部に排出し, 負荷を約5∼10%削減できる。 空調負荷削減を行う。 7.2 自然エネルギー利用冷却システム 7.8 簡易型エアーフローウィンドウ 電磁/磁気シールド室 池の循環系統に熱交換器を設置し,生産用冷却 試験・研究の必要性からいくつかの室を電磁シ 水の一次冷却を行う。池循環水と熱交換すること ールド化して外来電磁ノイズの影響を防止する室 により生産用冷凍機の稼働時間を減らし,ランニ を設けた。60dBシールド室1室,30dBシールド ングコストの軽減を行う。池温度によっては熱交 室2室(∼3GHz)を設置し,いずれも防振床を 換器をバイパスさせるモードに自動で切り替える。 設けて微振動による相対的な地磁気の変動を防止 7.3 通気性カーペットを用いた床吹出空調 (T-Breeze Floor System 特許出願中) テクニカルサイトの約25m×40mの執務空間に 対し床吹出空調を採用した(図−5)。 床下のOAフロア内に空調空気を供給し,通気 した。また,60dBシールド室においては室構成 部材や周辺の躯体・設備を全て非磁性体で構成し, 建物の微振動による地磁気の変動を抑制した。 また,MRI室は超電導コイルの発生する強磁場 を室外で5ガウス以下に抑制する磁気シールド室 性カーペットにより室内に空調を行う方式である。 とした。 微風速吹出により,居住者に気流を感じさせるこ となく,またOA負荷のすみやかな除去を行い, 快適な空調を行うシステムである。 おわりに 当該施設の計画・設計・施工にあたり,建築主 7.4 氷蓄熱システム である横河電機㈱の皆様をはじめ,当プロジェク 夜間の安価な電気代の時間帯に蓄熱し,昼間の ト関係者の皆様からたくさんのご指導をいただき, 負荷に有効に利用する。年間を通してベース負荷 この誌面をお借りして心より厚くお礼申し上げま 除去を行い,電力平準化を行う。 す。 (平成18年4月5日 原稿受理) 2006・6・建築設備士 15 □建築概要 項目 建築名称 建築主 建設場所 地域・地区 建築用途 防火対象物 敷地面積 建築面積 延床面積 高さ(最高部) 階 数 構 造 工 期 その他 設計者 監理者 発注方式 施工者 概要 横河電機 金沢事業所 横河電機㈱ 石川県金沢市 工業専用地域 横河電機㈱の最先端医療技術等に関する施設で あり,今後高度医療をはじめとするさまざまな 分野への発展が期待されている。産・学・官の 共同研究開発を行う機能も備える。事業所は下 記の4棟構成。 リサーチセンター:研究所(研究・実験) テクニカルサイト:研究開発・事務 ファクトリーサイト:生産・試験 コミュニケーションサイト:事務厚生 消防法 施行令 別表第一12(イ),15項 2 42,657m 8,176m2 2 12,465m SGL+ 11.825m 地下1/地上2/PH1 鉄骨造(一部SUS構造) 2005年4月∼2005年11月 乗用ELV15人乗×3基,荷物ELV2t×2基, 走行クレーン2.8t×1基 大成建設㈱一級建築士事務所 大成建設㈱一級建築士事務所 一括 建築工事 大成建設㈱北信越支店 電気工事 ㈱きんでん中部支社 空調工事 菱機工業㈱ 衛生工事 菱機工業㈱ その他 □電気設備概要 項目 受変電 電力引込 受変電形式 設備 変圧器容量 変圧器形式 発電設 発電機形式 発電機容量 備 燃料 常用・非 常用の別 計画運転 可能時間 用途 無停電 UPS容量 電源装 その他 置 幹線・ 動力設 備 照明設 備 □空調設備概要 項目 熱源設 熱源方式 備 主要熱源機 器 空調設 空調方式 備 配管方式 主要空調機 器 換気設 換気方式 備 排煙設 排煙方式 備 中央監 監視点数 視設備 監視項目 自動制 制御方式 御設備 配管のみ本工事 720W GR型 1,020アドレス回線 アナログ式スポット型 なし 共用接地方式 なし 来訪者用2セット カメラ34ヵ所(機器客先支給) 入退室(非接触カードリーダー,虹彩認証) (機器客先支給) なし 電磁/磁気シールド,機械警備,TV共同受信 概要 電気利用空冷チラー方式 355kW 3台 332kW 1台 236kW 1台 RC,TS系統 空調機方式 FS,CS系統 パッケージ方式 4管式 空調機,FCU多数台 PAC多数台 倉庫,機械室系統1種換気 なし 1,500点 発停,表示,計測 電子方式 kVA 研究用/情報用 50/80kVA 研究用:フライホイール式/情報用:UPS二 重化 動力負荷 3φ3W210V 電灯コンセ 3φ3W210/105V ント負荷 配線方式 ケーブル+ケーブルラック 研究・生産室 700 lx 照度 事務室 700 lx 照明制御 初期照度補正,人感センサー点滅 機械警備連動消灯制御 その他 監視点数 空調工事参照 中央監 視設備 情報通 電話設備 交換機方式 信設備 回線数 その他 LAN設備 基幹 支線 16 概要 6,600kV 1回線 屋外/一般キュービクル 3,325kVA 油入式 全ポート数 その他 拡声設備 アンプ容量 主受信機 自火報 感知器 ・防排 煙制御 設備 避雷・ 避雷方式 接地設 接地方式 ・性能 備 その他 電気時計設備 インターホ ン設備 ITV設備 セキュリテ ィー設備 コージェネ レーション 設備 その他 デジタル式(客先工事) 局線(回線) 内線(回線) IP電話,PHS導入(配管のみ本工事) 1Gイーサネット,光シングルモード 100Mイーサネット 建築設備士・2006・6 □衛生設備概要 項目 給水設 水源 備 系統 給水方式 受水槽概要 給湯方式 給湯設 備 排水設 排水方式 備 主な特記 衛生器 仕様 具設備 ガス設 ガ ス 種 備 別・圧力 設置設備 消火設 備 浄化槽設 その他 備 厨房器具 設備 厨房排水 処理設備 排水再利 用設備 その他 概要 上水,工業用水 上水系統,工業用水系統 加圧給水方式 3 FRP製 27m 電気利用 局所方式 建屋内:汚水雑排水 分流式 建屋外:汚水雑排水 合流式 節水型器具 LPGガス 低圧 屋内消火栓設備 CS1階 窒素消火設備 なし 電化厨房 なし なし なし