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ガスパビリオン 炎のマジックシアター
愛知万博 特集 ガスパビリオン 炎のマジックシアター 二 宮 勉 TSUTOMU NINOMIYA ㈱大林組 名古屋支店 ああああああ 建築設計部 設備設計グループ 主査 規 模 地上3階,塔屋1階 はじめに 工 期 2004年3月∼2004年12月 日本ガス協会が,「愛・地球博」(2005年3月 25日∼9月25日まで開催)に出展しているガスパ ビリオンは,2004年12月に竣工した。 パビリオンの正式名称は「ガスパビリオン 炎 のマジックシアター」,基本テーマを「ゆめエナ 特殊設備 ガスコージェネレーション デシカント空調 2.設備概要 ・電気設備 ジー 人へ,地球へ」とし「人にやさしい」「地 受電方式 3相3線 6.6kV 1回線 球にやさしい」クリーンエネルギーとして世界的 契約電力 260kW(想定) に普及拡大が期待されている天然ガスの多様性・ トランス容量 単相 300kVA,3相 150kVA 可能性を演出している。 電灯コンセント負荷 250kVA 建物の特徴は外壁を中心とした木材の利用,建 動力負荷 120kVA 設・運用・解体における3Rの徹底,ガスコージ 予備電源 − ェネレーションをはじめとする省エネルギー手法 中央監視 40点 の多用と愛・地球博のテーマである 「自然の叡智」 にふさわしいパビリオンとなっている(写真−1)。 1.建築概要 名 称 ガスパビリオン 所 在 地 愛知県愛知郡長久手町 建 築 主 社団法人 日本ガス協会 ・昇降機設備 乗用 11人乗り 60m/min 2台 エスカレーター 1200型 1台 ・特殊設備 コージェネレーション 50kWマイクロガスタ ービン デシカント空調 湿式 設計・監理 基本設計:㈱電通,㈱SD 実施設計:㈱大林組 名古屋支店 施 工 建築・設備 ㈱大林組 〔電気〕トーエネック・日本電設・ダイダン・住 友電設共同企業体 〔空調〕三機工業㈱ 〔衛生〕三機工業㈱ 〔昇降機〕㈱東芝 敷地面積 2,000m2 建築面積 1,195m2 延床面積 2,385m2 構 造 S造 写真−1 建物全景 2005・8・建築設備士 31 図−1 受変電結線図 図−2 空調配管系統図 32 建築設備士・2005・8 写真−4 プレショー 写真−2 事務室 写真−5 展示ホール 写真−3 コージェネレーション実機 屋根散水設備 70L/min ミスト設備 5L/min 5.0MPa ・空調設備 辺環境との調和を醸し出している。 1階は約半分が事務室,応接室等の管理諸室, 残りは来館者の待ちスペースとしてのエントラン 空調方式 AHU方式,外調機+FCU ス。2階は1階と同様,スタッフ控室等の管理諸 熱源容量 博覧会協会冷水:155USRT 室および3階はプレショー,メインショーおよび 排熱回収冷温水発生機:40USRT 換気方式 第一種,第三種換気 展示ホール,そして屋上は展望広場として来館者 に開放している(写真−2,写真−3) 。 排煙方式 自然排煙,告示免除 来館者は1階ピロティエントランスより上り専 自動制御方式 電気,電子方式 用エスカレーターで3階に上がり,プレショーで ・衛生設備 プロローグショーを観覧後,シアタースタイルの 給水方式 博覧会協会直圧給水 メインショーに移動,本物の炎およびアクターに 受水槽 − よるライブショーを観覧,展示ホールにてメタン 高架水槽 − ハイドレートの燃焼デモや家庭用燃料電池,ガス 貯湯槽 − 冷房等の展示を観覧する。室内展示観覧後は屋上 排水方式 建屋内分流,屋外合流 展望広場にて会場を展望することが可能となって 消火設備 屋内消火栓(博覧会協会直圧) いる(写真−4,写真ー5)。 3.建築計画 敷地は,愛・地球博長久手会場内の北ゲートに 隣接しており,企業パビリオンゾーンBに位置し ている。 外観は外壁に木材を使用し,その外周部に階段, 更にそれらを囲む様に列柱を配置し,ひときわ周 また,パビリオン敷地内の屋外にはガスコージ ェネレーション,燃料電池(SOFC),デシカン ト空調機の実機稼動展示を行っている。 4.環境配慮 ¸ 3Rの徹底 ・リデュース 2005・8・建築設備士 33 図−3 3階平面図 図−4 屋上階平面図 図−5 断面図 34 建築設備士・2005・8 図−6 空調フロー図 写真−6 メインショー 温度(℃) 18.0 23.0 風速(m/s) 28.0 33.0 38.0 (a)温度分布 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 (b)風向風速分布 図−7 シミュレーション ①杭なし工法の採用。 コンクリート使用を極力抑え建物重量を軽くす メインショーの大空間空調に床吹き出し居住域 空調を採用。メインショー下階設置の空調機より ることによって杭なし工法を採用。 客席段床下部空間に給気を行い,客席椅子下部よ ②PC直接基礎方式の採用。 り吹出しを行っている。段床下部は木パネルによ PC(プレキャストコンクリート)を用いた直 接基礎を採用し,現場打設コンクリート量を減ら し,型枠材の使用も抑制。 ・リユース ①簡易結合金物の採用。 鉄骨の接合に溶接ではなく簡易結合金物を使用 り仕切をすることにより給気ルートを形成,全体 チャンバーとして空間の有効利用を行っている (写真−6) 。 空調給気速度は極力遅くし(0.5m/s以下), 観客の足元快適性およびステージ上の演出炎への 気流影響を小さくし,炎の揺らぎを低減している。 することにより解体・リユースを容易にした。 空調機への還気は客席最後部より行い,排気はス ②設備等のリユース。 テージ上部と客席上部に設け,演出炎の燃焼熱気 エレベーター,ガスコージェネレーションシス テム,客席椅子,客席段床等の解体後のリユース。 を屋外に排気している。 空調計画に際し,シミュレーション検討を行い, ・リサイクル 還気口の位置,風量および炎による上昇気流影響 ①廃棄物の分別回収徹底。 等について確認を行っている。また,試運転時に 建築中および会期中の廃棄物の分別回収の徹底 はスモークによる気流可視化実験を行い,炎着火 による再資源化。 時等の空調気流,ステージ上の気流等の確認を行 ②リユース材以外の解体材の再資源化。 った(図−7) 。 ¹ 省エネルギー ・居住域空調 ・空調空気の再利用 展示ホールおよびプレショーの空調は外気処理 2005・8・建築設備士 35 図−8 衛生配管系統図 空調機+FCUで行っているが,導入外気は通常 余剰空気として排出されるが,直接ガラリ排気と はせず,屋外ピロティエントランスの待合いスペ ースに吹出すことにより夏期の待合い時の暑熱緩 和を行っている(図−6)。 ・屋根散水設備 メインシアター折板屋根には散水設備を設置し, 日射による折板面温度上昇を蒸発潜熱により下げ, 結果としてメインショーへの入熱減少,空調エネ 写真−7 展望広場 ルギーの低減を行っている。 計画時計算では折板表面温度を56℃から34℃程 度まで下げ,屋根面のみのピーク負荷を70%程度 が雨水桝に直接放流され,貯留槽でのオーバーフ 低減可能となっている。なお,水源は雨水,屋根 ローを防止している(図−8)。 面散水余剰水および市水を使用し,循環運転を行 ・屋上緑化,木デッキ い発停は天候状況確認による事務所遠方発停を行 プレショー,展示ホール屋上は展望広場として っている(図−8)。 企業パビリオンで唯一来館者に開放している。植 ・雨水利用設備 栽による屋上緑化,歩行部分は木製デッキ仕上げ 屋根面雨水を貯留槽に一時貯留を行い,屋根散 とすることにより,屋根面上温度上昇緩和,空調 水および屋上植栽の散水設備への給水を行ってい 負荷低減を行っている(写真−7)。 る。雨水は屋根からのルーフドレン竪管に雨水利 ・ミスト設備 用用分岐継手を設置,貯留槽に導水している。分 屋上展望広場中央部には緑化広場としての景観 岐継手により規定量以上の大雨時にはオーバー分 設備としてミスト設備を設置している。ミスト設 36 建築設備士・2005・8 都市ガス(天然ガス) マイクロガスタービン 電力 パビリオン電力 排熱 排熱回収吸収式冷温水機 冷水 排熱 デシカント空調機 パビリオン空調 除湿された空気 図−9 コージェネレーションフロー図 写真−9 屋外稼動展示 タービン排熱を排熱回収吸収式冷温水発生機へ投 入し,更に冷温水発生機からの排熱をデシカント 空調機に投入,排熱の二段利用を行っている (図−9)。 マイクロガスタービンによる発電電力はガスパ ビリオン内で使用し,排熱吸収式冷温水発生機に 写真−8 展示ホール よる冷水はパビリオン内管理諸室の空調に使用し ている(写真−9)。 備は景観設備としての機能と同時に細霧冷房効果 による冷涼感の演出としての機能も併せ持ってい る。 ・デシカント空調 ガスパビリオン設置デシカント空調機は塩化リ チウム溶液を使用した湿式型でシリカゲル等加工 ミスト設備はポンプ,ノズルおよび耐圧ホース の吸湿材ローターによる乾式型とは構造が異なっ から構成されシステムはシンプルである。ポンプ ている。冷温水発生機からの排熱は吸湿溶液の再 は5.0MPa 5.0L/min 0.75kWのプランジャーポン 生濃縮に利用されガスコージェネレーションシス プで貯留タンク内蔵一体型。ノズルは設置個数9 テムの総合効率を高めている。 個,噴霧量は310cc/min 噴霧粒径は46μm,発停 はタイマーおよび遠方スイッチにより行っている。 噴霧粒径が46μmのため噴霧ミストに触れると 若干の濡れ感があるが,盛夏時稼動および床面噴 デシカント空調機による除湿空気は各系統空調 機取入れ外気の一部と会議室に使用されている (写真−9) 。 ・固体高分子型燃料電池(PEFC) 霧により不快感の無いよう配慮している。計画時 固体高分子型燃料電池(PEFC)はパビリオン に上部噴霧および二流体方式についても検討を行 3階展示ホール内に稼動実機として展示されてい ったが,上部噴霧の場合噴霧粒径が20μm以下で る。PEFC型は家庭用燃料電池として2005年市場 ないと濡れ感が強く不快となってしまう,またポ 導入が予定されている1kW型のものである(写 ンプオフの場合,ノズル残圧滴下対策(スプリン 真−8) 。 グ弁等)が必要であること,二流体の場合コンプ ・固体酸化物型燃料電池(SOFC) レッサー等システムが複雑となる,また噴霧音が 固体酸化物型型燃料電池(SOFC)はパビリオ 大きい等の特性およびコストパフォーマンスによ ン屋外展示スペースに稼動実機として展示されて り現システムを採用している(写真−7) 。 いる。排熱はガスコージェネレーションシステム ・コージェネレーションシステム の排ガス管に放熱・回収を行い,デシカント空調 ガスパビリオンにおけるガスコージェネレーシ ョンシステムでは都市ガス(天然ガス)によりマ 機の再生熱源の一部として利用している(写真− 9)。 イクロガスタービン発電機を稼動,発電を行い, 2005・8・建築設備士 37 □建築概要 項目 建築名称 建築主 建設場所 地域・地区 概要 ガスパビリオン 社団法人 日本ガス協会 愛知県愛知郡長久手町 防火・用途地域:指定なし。市街化調整地域 建築用途 博覧会施設 防火対象物 敷地面積 建築面積 延床面積 高さ(最高部) 階数 構造 工期 その他 設計者 監理者 発注方式 施工者 消防法 施行 展示場 4 項 令 別表第一 2 2,000 m 2 1,195 m 2 2,385 m SGL+ 22.8 m 地上3階,塔屋1階 鉄骨造 2004年3月∼2004年12月 エレベーター:乗用 11人乗,60m/min 2台 エスカレーター:1200型 1台 基本:㈱電通,㈱SD 実施:㈱大林組名古 屋支店 ㈱大林組名古屋支店 一括 ㈱大林組 建築工事 トーエネック・日本電設・ダイダ 電気工事 ン・住友電設共同企業体 三機工業㈱ 空調工事 三機工業㈱ 衛生工事 三菱電機㈱(昇降機設備) その他 □電気設備概要 項目 受変電 電力引込 設備 受変電形式 変圧器容量 変圧器形式 幹線・ 動力負荷 動力設 電灯コンセ ント負荷 備 配線方式 照明設 照度 備 中央監 監視点数 監視項目 視設備 情報通 電話設備 交換機方式 信設備 回線数 LAN設備 基幹 支線 全ポート数 拡声設備 アンプ容量 自火報・ 主受信機 防排煙制 感知器 御設備 避雷・ 避雷方式 接地方式 接地設 ・性能 備 その他 ITV設備 コージェネ レーション 設備 38 □空調設備概要 項目 熱源方式 熱源設 備 空調設 備 換気設 備 主要熱源機 器 博覧会 協会冷水 排熱回収吸 収式冷温水 発生機 その他 空調方式 配管方式 主要空調 機器 換気方式 その他 排煙設備 自動制 御設備 その他 排煙方式 制御方式 □衛生設備概要 項目 給水設 水源 備 系統 給水方式 給湯設備 給湯方式 排水方式 排水設 備 エコケーブル配線 事務 室 ピロティ 室 40 点 空調熱源,空調機,受変電 lx lx 衛生器 具設備 ガス設 備 内線 (回線) 24 消火設備 その他 ボタン電話用PBX 局線 (回線) 8 博覧会協会インフラ UTP cat5e 別途 120 W GP 型 煙および熱(差動,定温) 30 550 kW 140 kW 台 1 湿式デシカント空調機 AHU単一 方式 メインシ 系統 ダクト ョー 外調機+ 方式 プレショ FCU ー・展示 系統 ホール 方式 系統 FCU 事務室 冷水2管式,冷媒管 3 台 AHU 43 台 FCU 系統 1 種換気 応接室 系統 便所 3 種換気 プレショー・展示ホール系統空調排気をピロ ティ空調に再利用 自然排煙 方式 電気電子 方式 概要 博覧会協会インフラ 上水1系統 直結方式 ガス利用 個別方式 分流式 建屋内:汚水雑排水 合流式 建屋外:汚水雑排水 自然流下 小口径桝 その他 主な特記 節水型器具 仕様 中・低圧 ガス種別 都市ガス ・圧力 空調熱源(冷温水発生機),給湯器およびメイ その他 ンショー直火演出に使用 設置設備 屋内消火栓設備 排水再利 雨水利用(屋根・植栽散水) 用設備 回線 棟上導体方式 単独接地 カラーカメラ10台,モニター4台 マイクロガスタービン発電機50kW 燃料:都 市ガス熱回収:排ガス管にて熱回収 建築設備士・2005・8 台 屋根散水による空調負荷低減 記載欄 6.6 kV 1 回線 屋外設置 一般型キュービクル / 450 kVA 油入自冷式 3φ3W210V120kVA 1φ3W210/105V 250kVA 700 300 概要 方式 博覧会協 利用 会冷水 排熱回収吸収式冷温水発生機(コージェネレ ーション排熱回収) ◇ ◇ ◇