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産業技術総合研究所 臨海副都心センター別館 バイオ・IT融合研究棟

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産業技術総合研究所 臨海副都心センター別館 バイオ・IT融合研究棟
FLASH
①
空調 衛生 電気
産業技術総合研究所 臨海副都心センター別館
バイオ・IT融合研究棟
大 湯 満 晴
野 村 康 典
原 田 良 平
MITSUHARU OHYU
(㈱山下設計 第一環境設計部 主管)
YASUNORI NOMURA
(㈱山下設計 第二環境設計部 主管)
RYOHEI HARADA
(㈱山下設計 監理・コスト部 主任)
はじめに
2.計画概要
当施設は,国際研究交流大学村の一角を担う産
建物の1・2階には精密質量分析室,RI実験
業技術総合研究所臨海副都心センターの機能を拡
施設,層流式大型クリーンルームなどの特殊実
充する目的で建設された。ライフサイエンス研究
験・分析スペース,3∼6階はGMP対応実験室,
の戦略拠点施設として「バイオテクノロジーと情
遺伝子発現頻度解析室等のバイオ系ウェットラボ
報技術の融合」という観点から,バイオ系と情報
スペース,7∼10階は並列計算機室等を有する情
系の実験・研究機能を1つの建物の中に組込み,
報系ドライラボスペースを配置し,性格の異なる
都市型という立地条件のもと高層化を図っている。
実験・研究空間を縦に積層している。
1.建物概要
建物名称
産業技術総合研究所 臨海副都心セン
所 在 地
東京都江東区青海二丁目42番(青海B
各実験室は,各室ごとに異なる実験環境の最適
化を図り,クロスコンタミネーションを防止する
ために,各スパン単位の専用空調機を設置し,建
ター別館 バイオ・IT融合研究棟
−1街区)
建 築 主
独立行政法人 産業技術総合研究所
設計監理
㈱山下設計
施 工
〔建築〕 清水・前田・東亜特定建設工事共同企
業体
〔電力〕 トーエネック・北海・大栄特定建設工
事共同企業体
〔通信〕 ㈱東電通
〔特高〕 ㈱東芝
〔空調〕 新菱・日比谷・富士総特定建設工事共
同企業体
〔衛生〕 三機・一設特定建設工事共同企業体
〔昇降機〕 フジテック㈱
敷 地 面
7,103.76m2
延床面積
20,506.51m2
構 造
S+RC造
階 数
地上12階,塔屋1階
施工期間
2004年10月∼2005年1月
写真−1 建物全景
2
建築設備士・2005・9
物中央部に設けた「メカニカルウェル」から新鮮
表−1 電気設備概要
空気を供給し,外壁側に排気している。また,各
設備項目
設備内容
電力引込
方式:22kV高圧SNW(共同溝より供給)
特別高圧受変電設 受変電形式:屋内型(2階に設置)
備
特高変圧器:モールド型Tr2,500kVA×3
受電用遮断器:24kV-VCB
コンデンサー:ガス絶縁型(高圧)
リアクトル:モールド型
高圧副変電設備
形式:屋内型(2階および12階に設置)
変圧器形式:F種モールド(JEM1483)
変圧器容量:1φ4,950kVA/3φ3,750kVA
非常用自家発電設 形式:屋内ガスタービン型(2階に設置)
備
容量:1,000kVA
燃料種別:軽油(950㍑+5,000㍑)
直流電源設備
形式・容量:MSE300(2階)/MSE150(12階)
幹線・動力設備
電源種別:1φ3W210-105V/3φ210V
ケーブル種別:EM-CE/CET
照明・コンセント 実験室器具種別:Hf型32W-2灯用/下面開放型
設備
実験室照度:700ルクス
2
実験用電源設備
標準実験室面積:約80m (基本ユニット)
標準実験室AC1φ電源容量:30kVA
標準実験室AC3φ電源容量:15kW
標準実験室AC-GC1φ電源容量:15kVA
標準実験室AC-GC3φ電源容量:30kW(フロア
共用)
標準研究室面積:約60m2(基本ユニット)
標準研究室AC1φ電源容量:20kVA
標準研究室AC3φ電源容量:12kW
標準研究室AC-GC1φ電源容量:4kVA
中央監視設備
中央監視部(電力HIM部)
:Ethernet(TCP/IP)
電力監視・計量・計測部:Lon works(Lon talk)
他システムリンク:BAC-net(IEIEJ/P)
電話設備
仕様:IP-PBX
電話機種別:IP多機能・一般アナログ・PHS
電話機台数:IP多機能400/PHS400/アナログ126
LAN設備
CoreSW−FloorSW間:SM-16C/SM-8C+MM8C(複合)
FloorSW−端末間:UTP-5e・6
アンプ容量:960W
放送設備
電気時計設備
子時計11ヵ所
インターホン設備 用途:時間外・ELV・身障者・駐車管制(各1
セット)
監視カメラ設備
仕様:アナログカメラ+デジタルレコーダ
防犯用:(カメラ16台/モニター4台)
映像配信用webサーバ:1台
入退室管理設備
方式:ICカード(1,000枚)
カードリーダ台数:140台
他システムリンク:照明(一般・誘導灯)連動
入出庫:ICカード(入退室管理用)・駐車券併用
駐車場管制設備
時間貸し対応:無し
自動火災報知設備 仕様:GR型(824点)
主要感知器:アナログ型煙感知器
避雷・接地設備
受雷部:棟上導体
立下導体:躯体鉄骨利用
接地極:銅板
接地方式:統合+単独(常時単独・落雷時等電位)
会議室AV設備
固定型プロジェクター:天井吊下型(12,000ルー
メン)×1
移動式プロジェクター:ワゴン(3,600ルーメン)
×3
補助モニター:LCD(42インチ)×8
TV会議システム ISDN I/F:INS64
IP I/F:Ethernet 10/100Base-TX
モニター:PDP(50インチ)×3セット
方式:Felicaカード
訪問者受付設備
カードリーダ台数:12台
訪問者受付機(カード発行機):1台
太陽光発電設備
パネル仕様:アモルファス型8kW
その他
非常コンセント設備
緊急救助スペース照明設備
種ユーティリティについても各スパン単位で供給
することで,実験内容の変化に伴う設備の拡張・
更新にも柔軟に対応できる計画としている。
情報交流機能として,東京駅や羽田空港,国際
展示場にも近いことから,学会などでの利用も想
定して,最上階の11階に共用会議室,産学官連携
センターなどを配置し,所内の研究者間の情報交
流空間としては,3∼10階に開放的なリフレッシ
ュコーナーとミーティングスペースを設けている。
また,見学者や一般の方への情報発信機能として,
エントランスホールには,3Dドームシアターな
ど映像主体の展示装置を設け,隣接する本館と連
携して産業技術総合研究所の最新技術の展示を行
うとともに,ウェストプロムナードを行き交う
人々にも,1階の実験室の様子が垣間見える工夫
や大型映像装置の設置により,科学技術に親しん
でもらうことと,街並みの賑わい創出に寄与する
ことを重視している。
産業技術総合研究所の技術の建物への活用とい
う点では,汚れ防止効果と脱臭作用を持つフッ化
アパタイト被覆二酸化チタン光触媒塗装を内外装
に使用し,生産過程でのCO2発生量を抑えたアモ
ルファス型太陽光発電装置を屋上に設置している
(写真−1)
。
3.電気・機械設備の基本方針
最先端の研究施設として相応しい設備内容とす
るため,下記の基本方針を設定した。
① 充実した情報通信技術の導入
② 省エネ・省資源型の施設
③ 実験内容の変更に柔軟に対応できる設備シス
テム
④ 将来性に配慮した空調システム
⑤ 特殊環境への適正な対応システム
⑥ 施設利用者に配慮した環境づくり
4.電気設備計画
4.1 設計のポイント
基本方針に従い,構内情報通信設備の充実,各
内情報通信網,構内交換機およびセキュリティ設
種省エネ型機器の導入およびゆとりを持たせた実
備について概要を述べる。
験室ユーティリティの確保(表−1)を図ってい
4.2 構内情報通信網
るが,ここでは本建物電気設備の特徴である,構
研究施設として充分な実験室ユーティリティを
2005・9・建築設備士 3
確保するにあたり,構内情報通信網においてもボ
トルネックのない運用が可能となるよう構築する
必要があった。
セキュリティ上の問題,運用上の問題から複数
のネットワークを整備し,物理的な区分を明確に
するとともに,各種スイッチ類を収納したラック
周囲にも充分なメンテナンススペース,将来スペ
ースを確保している。
¸
LANの種類とケーブル
建物内には2つのネットワークを構築している。
1つは独立行政法人産業技術総合研究所(以下,
図−1 LAN系統図
産総研とする)の先端情報計算センターを核に運
用しているネットワーク(以下AIST-LANとする)
であり,もう1つは建物独自の研究用LAN(以
下BIO・IT-LANとする)である。
AIST-LANは,Coreスイッチを起点にFloorス
イッチがスター状に接続された構成であり,
CoreスイッチからFloorスイッチ間の帯域は1
Gbpsを確保している。
BIO・IT-LANは,2台で冗長化されたCoreス
イッチ群を起点にStack接続されたEdgeスイッチ
(FloorSW)群とスター状に接続された構成であ
写真−2 情報コンセント
り,Coreスイッチ群からEdgeスイッチ群間の帯
域は,2∼4Gbpsを確保している。
AIST-LANのケーブルは,Coreスイッチから
グループごとのVLANを構成してネットワークを
論理的に分割している。
Floorスイッチ間にSMF-16Cの光ケーブル,Floor
BIO・IT-LANのCoreスイッチとFloorスイッチ
スイッチから情報コンセント間にCAT5e対応
間は2系統以上のギガビットイーサでそれぞれ接
UTPケーブルを布設している。
続されており,FloorSWではDMLT(Distribu-
BIO・IT-LANのケーブルは,Coreスイッチか
ted MultiLink Trunking)機能により,トランク
らFloorスイッチ間にSM-8C+GI-8C複合型光ケ
したポートをスタック内の複数のユニットに分散
ーブルを布設し,必要に応じて使用する光ケーブ
してCoreスイッチとの接続を確保している。ま
ルを選定(将来10Gbps移行時には,SMを利用し
た,Coreスイッチ側では,SMLT(Split Multi-
てCoreSWとFloorSW間を接続)可能としている。
Link Trunking)機能により,スイッチをまたい
また,Floorスイッチから情報コンセントまでは
だトランク接続をFloorスイッチ間で行なってい
CAT6対応UTPケーブルを採用している。なお,
る。そのため,通常のBack-Up・Stand-Byによる
CAT6は,専用EPSからケーブルラックを利用
片系運用の構成ではなく,両系統のルートを常時
し,各研究室にて床または壁取り付けの情報コン
使用してトラフィックをバランスさせて運用して
セントまで布設している(図−1)。
いる。
情報コンセントについては,それぞれを個別に
º
光無線
設置すると管理が煩雑となるため,原則として6
臨海副都心センター本館(既存棟)と別館は,
口(AIST-LAN用3口/BIO・IT-LAN2口/IP用
一体のネットワークを構成しており,その補完の
1口)をまとめて設置している(写真−2)。
1つとして,光無線を利用した接続を行っている。
¹
ネットワーク構成
同一フロアには複数のグループが存在するため,
4
建築設備士・2005・9
本システムの中心となる,送受光装置は,新棟の
3階屋上と既存棟の4階屋上に設置しているため,
写真−3 別館(新棟)側送受光装置
図−2 無線LAN系統図
写真−4 本館(既存棟)側送受光装置
写真−5 無線LANアクセスポイント
仰角として約10度の傾斜を有しており,朝夕の直
様より最大接続クライアント数が64と制限される
射日光が懸念されたが,方位的に回避できる位置
が,おおむね10端末程度の利用が現実的な台数と
を選定した。なお,既存棟側において,送受光装
なっている。
置前面にダブルスキン用ガラス(厚み5mm)を
無線LANの標準的な暗号化方式であるWEPに
介した通信となっているが,性能上問題ないこと
は破られない文字列選定が困難という弱点がある
を確認した。
ため,今回は通信の安全性を保つ点から採用を見
振動・風圧等による送受光装置のブレについて
送っている。通信の安全性は,WEPに頼らずに
は,レーザー光軸の照準を自動的に直径の中心に
個別に暗号化通信を行う手法を採用することで確
合わせる「自動追尾機能」を搭載しており,長期
保されている。
間無調整で高品質な通信が可能である(写真−3,
¼
写真−4)。
BIO・IT-LANにおいては,建物内から外部へ
»
無線LAN〈IEEE802.11a/b/g〉
外部接続
の接続用として,各階のFloorスイッチと同一ラ
BIO・IT-LANにおいては,各階10ヵ所程度ア
ックにブロードバンドルータ(BB-R)を設置し
クセスポイント用情報コンセント(POEアダプ
ている。BB-Rは,当該グループ単位で利用し,
タ経由)を設け,館内のほぼ全域において無線
BB-R経由インターネットなど外部接続が可能で
LANの使用を可能としている。ただし,隣接す
ある。
るアクセスポイントの干渉が発生するため,実際
½
施工上の考慮
に設置するアクセスポイントは1フロア当たり5
臨海副都心センター本館(既存棟)との中継用
ヵ所としている。なお,アクセスポイント用のケ
として2,000C光接続箱を設置しており,実際の
ーブルはCAT6を利用している(図−2,写
運用分のみを融着接続している。
真−5)
。
同一アクセスポイントへの接続数は,機器の仕
今回の工事おけるケーブルの布設に関しては,
短工期を考慮し,あらかじめ図面上でケーブル長
2005・9・建築設備士 5
写真−6 機器収容ラック
を拾い出し,ケーブルと情報コンセントをあらか
図−3 IPホンシステム系統図
はアナログ配線対応)。
じめ接続した上で,情報コンセントの口数分(1
また,PHS対応としてBS(ワイヤリングは
フロア)のケーブルを一束として台車上に乗せて
CAT5e)を設置しており,館内において,広域
搬入,布設を行った。事前加工費,運搬費等の増
内線の利用(電話番号は固定多機能電話と同一番
額となるが,工期や施工性を比較すると充分なメ
号に設定)が可能である。なお,SIPについては
リットが得られた。
現状,非対応としている。
また,検収前の事前試験については,伝送路の
IPホンネットワークは他の構内情報通信網と独
安定性を確認するため配線試験,機器工場出荷試
立させ,メインSWと各階のFloorSW間は1Gbit
験と機器設置後のシステム動作試験等の各種試験
イーサ対応のSM-8C光ケーブル,FloorSWから
を行った。システム動作試験では,伝送路に通常
各端末まではCAT-5eにて布設している。アウ
の運用よりはるかに高負荷なパケットを専用装置
トレットは原則として構内情報用と同一場所に設
にて強制的に流し正常に送受信されているかを全
置して,IPホン用の表記を行っている。
ての情報コンセントより実施した。
なお,運用性・管理性を考慮し,各EPSに設置
した機器収納ラック周辺は,充分なメンテナンス
スペースを確保している(写真−6)。
4.4
¸
セキュリティ設備
入退室管理・監視カメラ
本施設の利用者用入退室管理として,要所にカ
ードリーダを設置し,館内アクセスコントロール
4.3 IPホンシステム
および履歴管理を行っている。また省エネ対応と
本建物内において,館内全域においてIP多機能
して,各階の最終退室情報を管理し,共用部照明
電話が利用可能なようIPホンシステム(IP-PBX)
を導入している。よって,利用者の移動等に伴い
の一斉消灯を実施している。
防犯上の観点から共用部に監視カメラを設置し,
発生する内線番号等の変更は不要となり,電話機
守衛室にてモニターするとともに,後述の専用
自体が利用者個人のPCと同等な扱いが可能であ
PCにおいてもライブ映像が確認可能である。
る(図−3)
。
¹
訪問者管理システム
多機能電話への電源供給については,VoIP用
本施設への訪問者管理の効率化を目的とした実
給電SW-HUBを利用することにより,給電対応
験研究として使用するシステムであり,訪問者情
端末(IP電話機・IP-BS)を自動認識して接続し
報を各人のPCから事前登録することで,受付業
ている。また,短時間の停電に対応するため,各
務の簡素化と来訪者の入退履歴管理を行っている。
階設置のVoIPスイッチについてはUPSを実装
カードとしてはFelicaを採用し,来訪者自身の
(LAN-SWと併用)しているが,長時間停電時を
Suica・ICOCA・EdyカードおよびFelica対応の
考慮し,アナログ電話機を要所に設置し,PBX
携帯などを入館カードとして登録できる。また,
からのバックアップ電源(3時間)により緊急時
等の対応を可能としている(G3-FAXについて
6
建築設備士・2005・9
カードを所有していない訪問者用に訪問者受付機
(カード発行機)を受付に配置している。
図−4 訪問者管理システムフロー図
写真−7 訪問者受付端末
研究者は来訪者からの連絡により,各人のPC
からインターネット経由で訪問者登録サーバに来
訪者データを登録。登録データに従い,Eメール
Y9
アドレス(携帯など)および受付機に受付番号を
送信する。来訪者は訪問者受付機で受付番号を入
実験室
Y8
研究室
力後,所有するFelicaカードをかざすことで入館
カードとして登録される。また,カードを所有し
ない訪問者には新規カードを発行する。
メカニカルウェル
Y7
メカニカルデッキ
実験室
ELV
Y6
Y5
される。訪問者は登録されたカードを要所に設置
64,600
上記の受付が完了すると,インターネットを介
して研究者の携帯などに到着の旨,メールが配信
研究室
実験室
Y4
された専用カードリーダにかざすことにより,許
研究室
されるゾーンまでアクセス可能である。
Y3
なお,専用カードリーダ部にはネットワークカ
メラが内蔵されており,カードリーダ操作時の静
研究室
実験室
Y2
止画像および随時ライブ映像(監視カメラ設備の
Y1
映像含む)が要所の専用PCで確認可能である
(図−4,写真−7)
。
5.機械設備計画
5.1 設計のポイント
27,400
X3
X4
X5
図−5 平面図
基本方針に従い,実験内容の変更に柔軟に対応
できる設備システムを構築しているが,ここでは, ルウェルは,ドラフト効果,通風力による外気の
バイオ系実験室,情報系実験室を融合して,建築
流入経路となり,メカニカルウェル内部に設置し
計画と一体となり高層建築の中に設置した実験施
た実験室,研究室系統の屋外型空調機への外気導
設を中心に概要を述べる。
入経路としている。各室の一般排気は各階外壁面
5.2
高層建築物における実験施設計画
へ排気を行い,特殊排気は屋上に排気して,ショ
建物平面の4ヵ所に約6m×9mの2階上部の
ートサーキットの防止を図っている(図−5∼
外気に開放された風洞スペースから,屋上まで繋
がるメカニカルウェルを設置している。メカニカ
図−7,写真−8)。
当施設地域は風が強い時期が多いが,メカニカ
2005・9・建築設備士 7
メカニカルウェル
PH2FL
屋外機スペース
EV塔屋
非常用EV
機械室
PH1FL
非常用EV
ホール
12FL
屋外機スペース
会議室・多目的室
会議室・多目的室
11FL
ドライラボ
ドライラボ
ドライラボ
ドライラボ
9FL
ドライラボスペース
ドライラボ
ドライラボ
8FL
(7F∼10F)
ドライラボ
ドライラボ
7FL
ウェットラボ
ウェットラボ
6FL
ウェットラボ
ウェットラボ
5FL
ウェットラボスペース
ウェットラボ
ウェットラボ
4FL
(3F∼6F)
ウェットラボ
ウェットラボ
10FL
3FL
風洞
質量分析室
ウェットラボ
(大型クリーンルーム)
ウェットラボ 外気
機械関係諸室
エントランスホール・展示コーナー
西ゾーン
2FL
特殊実験スペース
1FL
東ゾーン
図−6 断面概念図
写真−8 メカニカルウェル
ルウェルは室内へ影響しやすい強風を緩和する緩
衝空間となるほか,空調機のメンテナンススペー
ス,増設用空調機の予備スペース,竪配管スペー
スと多機能な役割を持っている。
5.3
バイオ系実験室と情報系実験室の融合
写真−9 西側メカニカルバルコニー
施設
実験室は,衛生設備配管,特殊ガス配管を設置
する実験室が主となるバイオ系実験室・研究室を
特殊排気ダクトは屋上まで立ち上げスクラバー
1階∼6階に,情報系を7階∼10階に配置してい
により処理した後,排気している。スクラバーに
る。
ついては,増設可能なスペースを確保している。
実験室ゾーンの外部にはメカニカルデッキを設
5.4
インフラ供給設備
け,ドラフトチャンバー系の特殊排気ダクト,特
当該地域は整備された共同溝より,上水,雑用
殊ガス,都市ガスの竪方向の経路として,メンテ
水,都市ガス(低圧),冷水,温水,通信,電力
ナンス可能なデッキとしている(写真−9)。
が供給され,地域ゴミ収集管も敷設されている。
8
建築設備士・2005・9
可変風量型スクラバー装置
SC
外気
メカニカルウェル
可変風量装置
一般排気用排風機
EA
メカニカルバルコニー
可変風量型
空調機
定変風量装置
AC
廊下
実験室
OA
ドラフトチャンバ−
外気
図−7 実験室空調フロー図
各ユーティリティは,共同溝より建物ピットへ導
入し,各機械室,電気室へ引き込んでいる。
5.5 空調設備
共同溝から引き込んだ冷水,温水は熱交換器を
介して2次側へ供給している。
実験室の空調方式は,1スパン1台の空調機,
排風機を設置して,実験室のクリーンルーム化や
将来の実験内容の変化に伴う施設の変更が容易で
あり,他の実験室へ影響を及ぼさない計画として
いる。
また,ドラフトチャンバー運転に伴う送風量コ
ントロールはVAVにより対応している(図−7)
。
情報系のコンピュータ室は床下送風方式による
空調を行っている。
5.6
実験室のユーティリティ設備
写真−10 組織培養実験室
バイオ系実験室には,給水,給湯,実験排水,
実験用冷却水,都市ガス,特殊ガスの配管設備が
設置されている。
配管は水損防止のため,PC床版によるピット
方式を採用している。
都市ガス,特殊ガス配管は天井から供給し,給
5.7
特殊実験室の設備
本施設では標準的実験室の他に特殊用途仕様の
実験室を有している。以下にその概要を記述する。
¸
GMP基準対応組織培養実験室
排水,給湯,冷却水配管はピットから供給してい
GMP(Good Manufacturing Practice)基準に
る。ピットサイズは,配管の更新,増設の対応が
則した実験を行うことを前提に建築平面計画,内
容易にできるよう幅,深さ共600mmとしている。
装仕上げ,空調設備,換気設備,実験機器,衛生
ピット中央部は,メカニカルウェルへ接続され,
設備,特殊ガス設備等についてバリデーションマ
ピット内配管は竪配管へ接続している。
スタープランを作成し,デザインバリデーション
実験排水は,多項目のモニタリング機能の付い
を実施した。また,IQ(据付時適格性の確認),
た排水水処理設備にて処理後,下水放流している。 OQ(稼働時性能的確性の確認),サニテーショ
2005・9・建築設備士 9
(100,000)とし,空調系統は5系統としている
・排水方式:単独排水方式,実験排水処理設備に
よりモニタリング,処理後放流
給湯設備
・中央方式(地域冷暖房供給温水利用)および局
所方式(電気式貯湯式)
消火設備
屋内消火栓設備
窒素ガス消火設備
消火器
予作動式スプリンクラー設備
連結送水管設備
都市ガス設備
・共同溝内本管より分岐供給,将来用分岐を設置
特殊ガス設備
供給ガス
・窒素・二酸化炭素・高純度窒素・アルゴン・
圧縮空気・高純度ヘリウム・ヘリウム・真空・
高純度アルゴン・液体窒素供給装置
特殊ガス防災設備 ・O2センサー設置による酸素濃度監視
ゴミ処理装置設備 ・反転投入機・貯留排出ドラム・ゴミ輸送管
3
排水処理設備
・処理流量:60m /day
・処理水質:流入水質 SS 50mg/L以下・PH
3∼10
:処理水質 SS 20mg/L以下・PH
5∼9
・SS,PH,水温の他,8項目をモニタリング
実験器具設備
ドラフトチャンバー,クリーンベンチ,安全キャ
ビネット,クリーンブース,パスボックス,エア
シャワー,純水装置
(写真−10)。
熱源設備
写真−11 質量分析実験室
ン等に係る各バリデーションを実施した。清浄度
はEU-GMPグレードB(10,000),グレードC
¹
クリーンルーム(質量分析室)
JISクラス3を確保するクリーンルームを設置
している。実験室内は3層構造として実験室天井
部にFFU(ULPAフィルタ設置ファンフィルター
ユニット)を設置し全層流方式としている。実験
室陽圧の確保には実験室専用外調機を使用してお
り,実験室温度調整用にファン付きドライコイル
空調設備
を床下に設置している(写真−11)。
おわりに
最後に,研究内容が多様な研究諸室が設置され
る中で,非常に短期間に完成を迎えることができ
ましたことは,産業技術総合研究所の皆様のご指
自動制御設備
導をはじめ,工事関係皆様の御協力の成果と感謝
申し上げます。
(平成17年5月15日 原稿受理)
表−2 機械設備概要
設備項目
給水設備
設備内容
・上 水:重力(高置水槽)方式(共同溝内本管
より分岐供給)
・雑用水:重力(高置水槽)方式(共同溝内本管
より分岐供給)
・受水槽 上 水:40m3
雑用水:60m3(床下ピット利用)
3
・高置水槽 上 水:10m
3
雑用水:10m
実験用冷却水設備 ・実験冷却水:重力給水による循環方式
・受水槽 冷却水:20m3
3
・高置水槽 冷却水:10m
生活排水
排水設備
・放流先 :外部下水道本管に接続
・排水方式:汚水,雑排水分流方式(建物内),
合流方式(建物外敷地内)
研究排水
・放流先 :外部下水道本管に接続(単独接続と
して計測が可能)
10
建築設備士・2005・9
換気設備
排煙設備
中央熱源方式(冷水・温水同時供給)
地域冷暖房による温水,冷水供給
熱交換器容量
冷水容量
1,400kW×2台,700kW×2台
温水容量
1,000kW×2台,500kW×2台
蒸気加湿用および給湯バックアップ用ボイラー
627kW×3台
加湿蒸気供給用蒸気発生器
230kW×6台
空冷式チラー(熱源バックアップ用)
294kW×2台
各階実験室系統:77系統
スパン対応空調機による単一ダクト方式
ウエット系統実験室
ドラフトチャンバー対応可変風量方式
ドライ系統実験室
インテリア・ペリメータ個別対応可変風量方式
各階居室系統:15系統
共用スペース,会議室系統
専用空調機による単一ダクト方式
電気室・EPS系統 空冷パッケージ+第1種換気設備
主な制御項目
熱源制御:熱交換器,ボイラー,DHC受入
連動制御:スクラバー,外調機,換気機器
監視計量:水槽,フィルタ,温度,湿度,漏水,
水・ガス計量
実験室周り制御:温湿度制御,空調機運転制御,
ファン回転数制御,排気ファン連動制
御
ウエット系実験室
空調機連動制御 第1種換気方式
ドラフトチャンバー換気対応 スパン1台原則
ドライ系実験室
空調機連動制御 第1種換気方式
居室系統
外調機連動制御 第1種換気方式
発電機室,便所,倉庫
第3種換気方式
機械排煙
〔自己学習型(CPD)について〕
この原稿は,JABMEE
CPDの対象原稿です。37頁の設
問に解答してバーコードシールを「JABMEE CPD手帳」
に貼っていただくと自己学習型で「1単位」となります。
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