...

増える腰痛、 椎間板ヘルニア。 体に負担の少ない 「レーザー治療」。

by user

on
Category: Documents
18

views

Report

Comments

Transcript

増える腰痛、 椎間板ヘルニア。 体に負担の少ない 「レーザー治療」。
「切らない
痛くない治療」
は、
ここまで進化している。
私たちは病気やケガをすると、病院で治療を受ける。症状が重ければ、手術を受けることもある。
そのときに願うのは「できるだけ痛みを感じることなく、早く回復したい」ということだ。誰だって手術はこわい。
精神的にも身体的にも大きなストレスを強いられる。
しかし近年は、体の負担をできるだけ少なく抑える低侵襲(ていしんしゅう)手術の技術が急速に進んでいる。
たとえば、整形外科の分野では、
レーザー治療
(自費診療※)
や内視鏡を使った手術が開発され、
全国的に広がりつつある。
そこには、「治療を受ける人の痛みやつらさを、できるだけ減らしたい」という外科医たちの情熱がある。
『LINKED』創刊号では、「椎間板ヘルニア」の治療を例に、低侵襲手術の最前線を紹介していきたい。
取材・協力は、低侵襲手術に先駆的に取り組む「はちや整形外科病院」にお願いした。
※記事中に紹介する治療法のうち、レーザー治療のみ自費診療。その他は保険適用。
増える腰痛、
椎間板ヘルニア。
の腰痛もあります。でも、もっとも多いのは、
骨や椎間板の障害によるものでしょう」。立っ
体に負担が少ない治療法として、レーザー
みが治まらないときは、 入院していただき、
治療(PLDD)がある。レーザー治療とは、
痛みや 炎 症を抑えるための 注 射 療 法( 硬
簡単に言うと、 椎間板の髄核(ゼリー状の水
膜外や神経根ブロック療法)などを行いま
分たっぷりのやわらかい部分)にレーザーを
す。 め や すとして、 約 8 割 の 人 はこうし
当て、 水分の一部を蒸散させることにより、
た 保 存 療 法により痛みが 改 善 すると学 会
椎間板の内圧を下げる治療法。内圧を下げる
ではいわれ て います。 早 期 診 断・早 期 治
ことにより、 飛び出していたヘルニアを引っ
療がとても重要です」 と蜂谷院長は言う。
込ませ、 神経への圧迫を解除する。 治療時
間は、わずか 30 分ほど。準備などを含めて
体に負担の少ない
「レーザー治療」。
ざまです。骨や筋肉、椎間板などの障害によ
る腰痛のほか、 内臓や血管の病気、 心因性
定させる装具療法を行います。 それで、 痛
多くの場合、「保存療法」で
痛みが改善
も、 1 時間ほどで終了する。
万能ではないレーザー治療
はちや整形外科病院は、 世界で初めて椎
たり歩いたり、 体をひねったりするとき、 私
椎間板ヘルニアは、 激しいスポーツだけで
間板ヘルニアに対するレーザー治療を開発し
たちの腰には大きな負担がかかる。その負担
なく、 前かがみで重い物を持ち上げたり、 体
た米澤卓実医師を迎え、 今日に至るまで豊富
が腰に障害を与える原因となる。
をねじるなどの日常動作でも発症する。「線
な治療実績を重ねている。
維輪に徐々に入っていた亀裂が、 何かのきっ
しかし、「レーザー治療はけっして万能では
かけで一気に広がり、 中の髄核が飛び出し
ありません」と蜂谷院長は釘をさす。たとえ
てしまう」というイメージだ。 症状としては、
ば、はちや整形外科病院には、「過去にレー
腰だけでなく、 臀部に沿って走るような痛み
ザー治療を受けたが、 腰痛が治らない」とい
腰痛を引き起こす病気の一つに、「椎間板
があったり、足先にかけてしびれを感じること
う悩みを抱える人がしばしば訪れる。
(ついかんばん) ヘルニア」 がある。 比較
がある。これは、ヘルニアが神経を圧迫して
働き盛りに多い
「椎間板ヘルニア」
レーザー治療とは
「問診や検査をすれば、この患者さんには
的若い人から中年に多くみられ、 腰に負担を
いるためである。
かけるような仕事やスポーツをしている人に
椎間板ヘルニアと診断がついたら、どんな
多く見られる病気だ。
治療が行われるか。
保存療法で治らない人は、より積極的な治
る治療です。したがって、もともと髄核の水
椎間板ヘルニアとは、どんな病気だろう。
「重症の場合を除いて、まず最初に、 保
療を受けることになる。ここから、 いよいよ
分が少なく、 椎間板の内圧が低い人に治療し
朝目覚めると、 突然キリキリと腰が痛む。
少し専門的になるが、 蜂谷院長に解説しても
存 療 法を行 います。 腰 椎 の牽 引(けんい
本題である「切らない痛くない治療法」 へと
ても、まったく効果はありません」 と蜂谷院
前かがみで洗顔するのもままならず、 靴下を
らった。
ん) 療法や、 コルセットを装着して腰を安
話を進めていこう。
長は手厳しい。さらに、「髄核の水分は加齢
履くのもつらい。 笑っても、くしゃみをしても
「人間の背骨は、 椎骨(ついこつ)という
痛い。さらには、 床を這って移動しなければ
骨が縦に積み重なった構造をしています。 椎
耐えられなくなる。
骨と椎骨の間にあるのが椎間板で、 衝撃を吸
程度の差こそあれ、こういう腰痛のつらさ
収するクッションの役目を果たしています。椎
を経験したことのある人は、 多いのではない
間板の中心部には “ 髄核(ずいかく)” とい
だろうか。
うどろどろのゼリー状の軟骨があり、 その周
「腰痛を訴えて来院される方が、 増えてい
囲を “ 線維輪(せんいりん)” が取り囲んで
ますね」 と語るのは、 はちや整形外科病院
います。 椎間板ヘルニアは、 何らかの原因
の蜂谷裕道(はちや ゆうどう)院長である。
でその線維輪に亀裂が入って、 髄核や線維
その言葉を、 実際にデータも裏付けている。
輪が飛び出し、 神経を圧迫する状態をいいま
平成19 年・厚生労働省の国民生活基礎調査
す」。
によると、男性が訴える症状の第 1 位は 「腰
ちなみに、椎間板ヘルニアは頚椎や胸椎に
痛」、 第 2 位は 「肩こり」。 女性が訴える症
も発生するが、もっとも多いのは腰椎の椎間
状の第 1 位は 「肩こり」、第 2 位は 「腰痛」
板ヘルニアだという(以下、ここでは腰椎の
となっている。しかも、 過去の推移を見ると、
椎間板ヘルニアについて語っていく)。
腰痛は、国民病
腰痛を訴える人は確実に増えている状況だ。
蜂谷院長は言う。「腰痛の原因は実にさま
効果がなくて当然、ということがすぐわかりま
す。レーザー治療は、 椎間板の内圧を下げ
板の内圧が高ければ、 薬液が入りにくい感触
が指先に伝わります。 反対に、 内圧が低い
状態では、薬液が抵抗感なく容易に注入できま
す。それはつまり、レーザー治療をしても効果
がないことを示しています」。ハイテク設備を用
いて行われる画像診断検査。しかし、 最終的
にそれを使いこなして、活かしているのは、医
師という人間の経験や長年の勘なのである。
レーザー治療は自費診療
「椎間板造影検査の必要性は、レーザー治
療を開発した米澤先生も指摘されています。
また、レーザー治療はヘルニア以外の椎間
板の病気にはまったく効果がありません。 そ
のため当院では、 適応の有無をしっかりと調
べます。そうやって慎重を期しても、レーザー
治療の効果が不十分の場合もあります。けっ
してパーフェクトではないことを知っておいて
レーザー治療の紙面見学会
わずか 30 分で、
治療完了
① 背中に、 局所麻酔の注射をする。
② 患部にレーザーファイバーを
入れるための針を、
椎間板髄核中央に挿入する。
③ 2 方向からのX線透視で、
位置を確認する。
④ 針からレーザーファイバーを挿入し、
約 1 〜 2 分間レーザー照射を行う。
レーザーの熱で組織を蒸散させ、
内圧を減らすことにより、
ヘルニアを引っ込ませる。
⑤ 起き上がって OK。
神経への圧迫を取り除くと、
痛みは一気に治まる。
とともに失われるので、 50 代以上の方には
断において絶対に省略できないのが、椎間板
ほしいのです」と蜂谷院長は強調する。
レーザー治療をしても良くなるケースは少な
造影検査です」。 椎間板造影検査とは、 造
さらに、レーザー治療にはリスクもある。
いでしょう」と直言する。
影剤を椎間板の内部に注入して X 線で撮影
「レーザーの照射量によっては、 髄核の水
50 代以上は、 椎間板ヘルニアのレーザー
するもの。 造影剤の流れ、 貯留部位、 造影
分を蒸散し過ぎてしまい、 椎間板の変性(老
治療への期待は禁物。むろん例外はあるだろ
像などから、 椎間板の変性やヘルニアの大き
化したような状態)を促し、 症状がさらに悪
う。しかし、めやすとなるこの基準はしっかり
さなどを推定する。
化してしまうことがあります。また、 適切な位
覚えておきたい。
なぜ、この検査がそれほど重要なのか。「ま
置にレーザーの針が入っていないと、 骨を部
ず、椎間板の状態を知る基本的な検査である
分的に壊死させる危険性もあります」。
こと。もう一つは、 造影剤を注射で注入する
リスクをともなうレーザー治療は、ともすれ
ときに感じる、 私たち自身の指の感触なんで
ば悪者扱いされることもある。背景には、
レー
レーザー治療
1泊2日
約 30 分
なし
なし
すね。造影剤を椎間板に注入したとき、 椎間
ザー治療が保険適用で認められた治療法で
PELD
1泊2日
約1時間
ほとんどなし
6mm 程度
MED
2〜4日
約1時間
ほとんどなし
16mm
MIS-TLIF
5 〜 14 日
約 2 時間
少量
30mm 前後
椎間板造影検査の必要性
では、どんな人にレーザー治療が適応され
るのか。はちや整形外科では診断の根拠とな
る検査を非常に重視している。 問診に続き、
背骨の様子や痛みの程度などを調べる理学的
目はモニターを凝視し、手指は小刻みに動き続ける。モニターに映し出されているの
は、内視鏡のレンズから光ファイバーを通して送られてきた椎間板ヘルニアの患部の
はちや整形外科病院における腰椎椎間板ヘルニアに対する主な治療
治療法
入院期間
治療時間
出血量
傷口
映像。モニターでは大きな画像だが、実際のワーキングスペースはわずか直径 16㎜
検査を行い、ヘルニアの症状を想定した上で、
の領域(PELD は直径 6㎜)しかない。蜂谷院長はモニターを見つめたまま、手の
手術法を決めるための画像検査が行われる。
先にある鉗子に意識を集中する。鉗子が神経根に触れることは許されない。慎重に
はなく、自費診療であることがあげられるだろ
メリット・デメリットを理解し、安易にレーザー
検査には、 脊髄造影検査、 脊髄造影検査
神経を除きながら、突き出たヘルニアにアプローチし、小鳥がついばむように少しず
う。自費診療ゆえに、レーザー治療には正し
治療を受けない、という姿勢が重要だろう。
い治療法のガイドラインが整備されていない。
「治療前には必ず、 MRI 検査だけでなく、
治療方法も治療費も、 医療機関の自主的な
椎間板造影検査を受けること。面倒がらずに
判断に委ねられている。となると、 頼りにな
検査を受けてほしいと思います」と蜂谷院長
るのは、 私たち患者自身の判断である。 治
はアドバイスする。
後の CT 検査、 椎間板造影検査、 神経根造
影検査、 造影 MRI 検査などがある。 症状に
より、 適切な検査を組み合わせて、 総合的
に椎間板の状態を把握し、正確な診断を行う。
蜂谷院長は言う。「レーザー治療の適応判
つヘルニアを引っ張り出していく。その作業を根気よく何回か繰り返すと、やがて奥
から白いヘルニアがすべて引っ張り上げられた。ヘルニアによる神経の圧迫が取り
除かれたことをモニターでしっかり見て、蜂谷院長は手術の成功を確認した。
Operation MED
療を受ける前に、しっかり情報を収集する。
内視鏡が、
手術のイメージを
塗り替えていく。
適応が広がる、
身体に負担の少ない
内視鏡下手術。
ニターを見ながら、 神経根に触れることなく、
ヘルニアを取り除く。内視鏡下では直接手術
部位を見ることができず、 内視鏡を通して見
る。 内視鏡は斜視鏡なので、 目視下とは感
覚が異なる。目と手を別々に機能させるのは、
まさしく “ 離れ技 ” であり、 高度な技術が要
求される。
「内視鏡下で難しいことは、 視野が非常に
小さく、 ワーキングスペースも限られること
ですね。MED 法という手法では直径 16㎜、
さらに PELD 法では視野が直径 6㎜に絞られ
ます。その視野の中で、 “ 今自分がどこにい
傷跡の小さい内視鏡治療
レーザー治療が飛び出したヘルニアを引っ
Diagnostic Imaging
て、 何をしているのか ” という感覚をつかめ
椎間板ヘルニアの治療法選択に
るようになるには、かなりのトレーニングを要
欠かせない画像診断。そのうちの
します」と蜂谷院長は言う。
新世代の低侵襲手術、PELD
込ませる治療法とすると、 飛び出したヘルニ
一つ、MRI 検査は、磁石と電波
の力で体の中を調べるもの。 近年
は性能が格段に向上し、3 テスラ
MRI では、写真のように鮮明で詳
細な画像が得られる。また、検査
時間も短縮されるので、検査を受
断して、もっとも効果のでる治療法を患者さ
方進入椎体間固定術(MIS- TLIF)という
んに提案するよう努めています。さらに手術
低侵襲手術もある。これも PELD などと同
にあたっては、 ナビゲーションシステムなど
様、 内視鏡下で、 症状側の椎間関節を切除
アを取り除くのが、 手術である。手術の適応
内 視 鏡を使った ヘ ル ニ ア 摘 出 術 には、
となるのは、 椎間板ヘルニアの 20%程度だ
MED と PELD がある。 国内ではもともと一
という。
般的だったのが MED で、 そこに新たに登場
高度な医療機器を組み合わせ、より精密で安
して椎間板そのものを摘出し、 そこに自家
従来は、 背中側を 5cm ほど切開し、 神経
したのが、 PELD である。MED と PELD、
全確実な手術を行うよう最大限の配慮をして
骨や同種骨(骨バンク)を挿入し、 固定す
根とヘルニアを肉眼で確認しながら、 ヘルニ
その違いはどこにあるか。
います」。
る。MIS- TLIF は椎間板ヘルニアだけではな
アを取り除く方法(LOVE 法)が行われてき
「簡単に言うと、 アプローチ法の違いです
はちや整形外科病院では、 脊椎の内視鏡
く、 背骨がずれているような症状にも適応さ
た。しかし、 10 年ほど前から内視鏡を使っ
ね。MED は背部から入り、 骨を少し削り、
下手術に関して豊富な治療実績を重ねてき
れる。
た低侵襲手術が登場し、 全国の医療機関で
ヘルニアを摘出します。 傷口は約 16㎜、 入
た。 手術数は昨年までに 570 件を超える。
「この手術も、 従来、目視下で行っていた
広がりつつある。
院期間は 2 〜 4 日程度です。PELD は椎間
蜂谷院長のもとには、 その匠の技術を学ぼう
ものを、 内視鏡下で行うようになったもので
内視鏡と聞くと、 胃カメラを想像する人が
板の横から入り、 椎間板側からヘルニアを取
戻りたい」という患者の心からの要求に応え
と、 多くの若い医師が研修に訪れている。
す。“ 骨を埋め込む ” という大手術にもかか
多いかもしれない。しかし、 外科や整形外科
り除きます。傷口はわずか 6㎜ですみ、 入院
ていくのが、蜂谷院長のスタンスなのである。
手術で用いられる内視鏡は、より高性能な造
期間は 1 泊 2 日、 場合によっては日帰り手
「今はまだ、日帰り手術という概念があまり
りになっている。 内視鏡を使ったヘルニア摘
術も可能です。一刻も早い社会復帰を望まれ
認知されていません。でも、 今後、そういう
出術では、 先端にレンズの付いた内視鏡の
る方に適した治療法といえます」。
要求が高まることも考えられます。 そのとき
外筒管を挿入し、その管の中を通る鉗子(手
PELD は海外の一部の国では標準的に行
の選択肢として、 PELD は有効だと考えてい
重度の椎間板ヘルニアを患い、 椎間板そ
狭窄」にも適応される。脊椎の治療における
術器具)を操作し、モニターを見ながらヘル
われている治療法だが、 日本では約 2 年前
ます」。
のものが傷んでしまっている人には、 腰椎後
低侵襲化は確実に進化している。
ニアを摘出する。メリットはなんといっても、
から本格的に導入されたばかり。新世代の低
傷口が小さいことだ。 直径 6 〜 16㎜という
侵襲手術として、 大きな注目を集めている。
小さな傷口ですみ、 出血もほとんどない。傷
蜂谷院長はなぜ、 早い段階で PELD の導入
口が小さいので、 入院期間も非常に短い。
に踏み切ったのか。
その日のうちにトイレに行け、 1 週間以内に
「同じ効果が得られるとして、 大きな傷と小
退院して職場復帰できる。
さな傷とどちらがいいか、と聞かれれば、 誰
目視下で行う手術の場合、 術後、 寝返り
でも小さな傷の方がいいですよね。患者さん
のできない安静状態が続く。 手術そのものよ
は皆、 一日も早い回復を望まれます。その期
りも、 術後の痛みや身体を拘束される苦しみ
待に応え、 低侵襲化を進めていくことはある
を味わうものである。 そんな苦しみから解放
意味、 外科医に課せられた使命だと考えてい
されるのが、内視鏡下手術なのである。
ます」。
直径 6 〜 16㎜の視野で
手術する
低侵襲手術には、
入念な検査と解析が
大切。
帰できます」。
MIS- TLIF などの内視鏡を用いた手術は、
椎間板ヘルニアと同様に多い 「腰部脊柱管
CLOSE UP
医療
医療現場に広がる
「セカンドオピニオン」。
セカンドオピニオンとは、「第二の意見」を主治医
以外の医師に聞くこと。より納得のいく医療を受ける
ために、さまざまな医療現場でセカンドオピニオンを
活用するケースが増えているという。
医療が高度化するなか、どの治療法を選ぶかとい
であり、内視鏡下手術に対して安全性を疑問
う選択権は私たち患者自身にある。 理想の医療に出
視する声があるのも事実。しかし、 そのリス
つらさのない治療を受けて、 早く日常生活に
わらず、 皮膚の傷口は小さく、 早期に社会復
重い症状を治療する、
低侵襲手術「MIS- TLIF」
日本ではまだ、 目視下での手術法が主流
クを恐れて現状維持に留まるよりも「痛みや
内視鏡を使ったヘルニア摘出術では、 モ
ける人の負担も軽減している。
会うために、 複数の医師の意見を聞くことは有効な
手段のひとつ。 患者本人がより主体的に治療に取り
ヘルニアのタイプに応じた
治療法の選択
内視鏡下手術の治療効果は、 肉眼での手
術と変わらないのだろうか。
「当院の実績では、 MED は 98%に達してい
ます。自信をもって手術を行っています」。
組むためにも、 セカンドオピニオンを上手に活用して
いくことが求められている。
Interview
セカンドオピニオン(自費診療)は、
あなた自身が治療法を選ぶためのものです。
高い治療成績のベースには、レーザー治
治療法に疑問や不安がある場合、まず主治医と十
療と同様、 詳しい検査と正しい診断がある。
分に話し合うことが大切です。 それでも判断に迷う
たとえば、複数のヘルニアがある場合は、脊
場合には、 他の医師の意見を聞くことも、 大変意義
椎造影検査や神経根造影検査などを行い、
があると考えます。 たとえば、 主治医と他の医師の
どのヘルニアが神経を圧迫しているのか確か
意見が同じであれば、 安心感が高まります。反対に、
める。また、 造影 MRI 検査により、 椎間板
違う意見であれば、 治療法の選択肢が広がるでしょ
ヘルニアのタイプを診断する。グレードⅣの
う。 当院でも新たにセカンドオピニオン(自費診療)
状態になると、 PELD は適応できず、 MED
を実施し、 幅広い患者さんのご相談に応えていきた
の適応となる。
いと考えています。
「症例に応じて適切な検査を組み合わせ、
ヘルニアの場所やタイプを知り、 総合的に診
医療法人蜂友会理事長・はちや整形外科病院院長 蜂谷裕道
手術を受ける前に、
ズバリ聞きたい
医師の技量。
待ち望まれる、
医師教育の環境整備
医学・医療の進歩にともない、内視鏡下手
歴史が浅い。 そのせいもあって、 脊椎の内
願いしたいものである。その見極めは、「主
視鏡下手術の腕を磨く訓練施設は、 今のとこ
治医本人に聞くのが近道」と蜂谷院長は言う。
ろ国内にないのが実情だ。 医師は海外施設
「手術を受ける前に、 主治医に率直に聞けば
で訓練を受ける必要があり、 蜂谷院長も多忙
いいと思います。これまで、どの程度の症例
なスケジュールの合間を縫って、 米国、オラ
を行ってきたか。どこで、どういう勉強をし
ンダ、オーストラリア、 韓国など、 海外の施
てきたか。また、日本整形外科学会が認定し
設で何回となく訓練を受けてきた。
た “ 脊椎内視鏡下手術・技術認定医 ” の資格
「安全で確実な内視鏡下手術を普及してい
も一つのめやすとなります」。
くには、 国内で訓練できるような環境整備が
脊椎内視鏡下手術・技術認定医とは、 そ
一日も早く望まれます」と蜂谷院長は提言す
の名の通り、 内視鏡下の技術が一定の基準
る。現在、PELD を実施できる医師は、全国
をクリアしていることを示す資格。 試験は、
でも数名しかいない。内視鏡下手術に対する
実際の内視鏡下手術を撮影したビデオを見な
確かな技量をもった医師がもっと増えれば、や
がら、判定される。合格率は平均 50%弱と、
がては MED や PELD が椎間板ヘルニア手術
難易度は高い。 医療事故のない安全な内視
の第一選択肢となる日も来るかもしれない。
鏡下手術を推進するために、 日本整形外科
「脊椎内視鏡下手術・
技術認定医」を選ぶ
学会が定めている新しい整形外科医の基準
である。
なお、 全国の脊椎内視鏡下手術・技術認
定医の名簿は、 日本整形外科学会のホーム
術は周辺機器の発達とともに国内外で急速に
発展してきた。ただし日本では、内視鏡下手
いくら体に負担の少ない手術とは言え、 内
ページで検索することができる。(日本整形
術が保険適応となったのは 2006 年と、まだ
視鏡下手術を受けるなら信頼できる医師にお
外科学科ホームページ URL http://www.
joa.or.jp/jp/frame.asp?id1=34)
く意味合いがあると思います。 でも、ウォン
病気の治療法は、
患者本人が選ぶ時代。
ツというのは、 治療を受ける人の心からの要
求であり、 少し大げさに言うと “ 魂の声 ” だ
と思うんですね。その声に絶えず耳を傾ける
CLOSE UP
医療
のが私たちの役割ですし、これからも努力し
ていきたいと考えています」。
先端医療現場で求められる
専門性の高い看護師の存在。
患者の自己責任と、
医師の自己責任
医療の進化にともない、 看護師にも高い専門性が求められるようになってきた。ベッドサイドに
どの治療法を受けるべきか、どうしても判
おけるケアだけでなく、その医療分野に特化した深い知識をもち、 医師を支える能力や高度な医
断に迷う場合は、 セカンドオピニオンを使う
療機器を扱う専門技術なども必要とされている。
方法もある。セカンドオピニオンとは、 治療
看護師サイドからも「専門能力を活かし、やりがいをもって働きたい」という欲求は高い。近
年では、ある特定の看護分野で水準の高い看護実践のできる看護師を「認定看護師」 や 「専
門看護師」として資格認定する制度も生まれている。
また、 個々の看護師のキャリアアップを支援することは、 看護師の定着率向上につながる。深
刻な看護師不足が続くなか、 看護師のやりがい支援に力を入れる動きは医療界全体に広がりつつ
や手術について、 主治医以外の医師の意見
「患者さんの“魂の声”
を
聞く」こと
を求めること。治療や手術に関して複数の選
択肢があることを知り、 他の治療法と比較し
て判断するうえで、 有意義である。 整形外
椎間板ヘルニアの治療法は飛躍的に発展
科疾患で悩む人に幅広く応えるために、はち
し、さまざまな治療法が開発されている。こ
や整形外科病院でも「セカンドオピニオン」
れは椎間板ヘルニアに限らず、ほかの病気に
を実施する予定だという。
ついても言えることだろう。 医療の進歩にと
医師を前にすると、 私たちはつい遠慮して
もない、どの疾患分野でも治療法の選択肢は
しまいがちだ。医師の提案を否定すると、 互
どんどん増えている。では、 私たち患者は、
いの信頼関係を損ねるのではないか、と躊躇
キャリアアップを支援する
教育と環境整備の取り組み。
どうやってたくさんの選択肢からベストの治療
することもあるだろう。しかし、「これからは、
法を選べば良いのだろうか。
そういう時代ではない」 と蜂谷院長は説く。
「まずは、じっくり主治医と話し合うことで
「私たち医師からすると、 “ お任せします ” と
看護師のキャリアアップを支援するために、どうすべきか。はちや整形外科においても看護師
すね。私たち医師は、患者さんが正しい選択
いうのがいちばん困るんです。治療法の選択
ができるように、時間をかけてお話しするよう
は、 患者さんが主役です。 患者さん自身が
心がけています。たとえば、 PELD か MED
治療法を選択するところに、 患者さんの自己
を選択するときは、 それぞれのメリットとリス
責任が生まれます。患者さんの責任と医師の
クをきちんとお話しします。その上でどちらを
責任の上に、 医療は成り立っていると思うの
選ぶか尋ねるんです。たとえば、
トップアスリー
です」。
トをはじめとしたスポーツ選手の方は、 筋肉
「患者が主役」というと、どこか甘い響き
を傷めない PELD を選ばれることが多いよう
がある。しかし、その言葉は、 患者が主体と
です。 そこに、 患者さんのウォンツがあると
なり、 自己責任をもって治療に参画すること
思うんです」。
を前提としている。従来の侵襲の大きな手術
蜂谷院長は、 ニーズではなく、ウォンツと
から低侵襲へと変革する医療最前線を追うな
いう言葉を好んで使う。「ニーズはどちらかと
かで、 私たち患者サイドの意識変革の必要性
いうと、こちら側の提案を受け入れていただ
もあらためて教えられたような気がした。
ある。働きやすい職場環境や待遇条件を前提とし、 高いモチベーションをもって仕事に取り組む
ことができれば、より多くの看護師がいきいきと働くことができるだろう。
CASE STUDY
のやりがいを育て、 看護の質向上を図る取り組みに力を注いでいる。「整形外科の先端治療を実
践する当院では、 看護師の専門性向上は不可避のテーマです。以前にも増して看護師教育に力
を注ぎ、整形外科の “ エキスパートナース ” を育てていきたいと考えています」と蜂谷院長は言う。
整形外科領域では、日本看護協会の定める「認定看護師」「専門看護師」といった資格認定
制度はない。そこで、はちや整形外科では独自の<整形外科専門看護キャリア開発制度>を用意
し、 整形外科領域に特化した患者マネージメント能力、 最新の低侵襲手術に携わる能力をもった
看護師を育成し、 能力に見合った処遇制度も整える方針だ。同時に、 蜂谷院長は看護職員の指
導者として、 病院経営に携わるような “ マスターナース ” の育成にも意欲を燃やす。「看護師の
視点を病院運営に活かすことにより、 医療サービスの質をもっと高めていけるはずです。当院を
より良くしていくためには、 看護職員の経営参加が非常に重要だと考えています」。
低侵襲治療の技術、知識を開示し、
地域全体の看護師育成に貢献。
院内の看護師育成に力を注ぐ一方、 蜂谷院長は 「整形外科領域の看護について、もっと多く
の人に関心をもってほしい」と言う。そこで、 新たに創設されたのが<はちや整形外科専門看護
インターンシップ制度>である。これは、現職の看護師や看護学生を対象に、3 カ月の間で 6 日
間、 低侵襲手術を中心にした先端医療の実際を学び、 体験してもらうもの。これまで整形外科を
体験していない人にとって、新しい刺激を得て、自らのキャリアプランを考える機会になるだろう。
「私たちがもっている専門知識や技術をオープンにすることで、 一人でも多くの方に専門性の
2009 年 6 月 13 日発行
高い看護のやりがいを感じとってもらえれば。」と蜂谷院長は言葉に力を込める。このインターン
シップ制度は現在休職中の看護師にとって、 職場復帰への足がかりとなる。 地域の潜在看護師
※読者の皆さまへ
< LINKED >は生活者と医療を繋ぐ情報紙。
生活者と医療機関の新しい関係づくりへの貢献をめざし、
中日新聞社広告局医療プロジェクトチームと
HIP
(医療機関の広報企画専門会社)
の共同編集にてお届けします。
の復職を支援するシステムとしても、 今後の成果に注目していきたい。
発行
はちや整形外科は看護師を募集しています。
中日新聞社
編集協力
医療法人蜂友会 はちや整形外科病院
はちや整形外科
検索
http://www.hachiya.or.jp
募集
要項
勤務
条件
業種 /整形外科医療 募集職種 /看護師・准看護師(病棟・オペ室勤務) 応募資格/看護師・准看護師免許取得者及び取得予定者
編集
有限会社エイチ・アイ・ピー
Editor in Chief 黒江 仁
雇用形態 /常勤職員及びパートタイムも可 給与/月給制 255,000 円以上(夜勤手当 1 回 1 万円、 別途支給)
昇給・年 1 回、 賞与・年 2 回(昨年実績 4 ヶ月) 労働時間/病棟= 2 交代制・9:00 〜 17:25、 16:20 〜翌
9:40 オペ室= 7:30 〜 18:00 休日休暇/祝日、 夏季、 冬季、 有給、 慶弔、 週休 2 日(月 6 〜 7 日)
その他/社保完、 交通費・全支給、 退職金制度、 寮(費用月 4 万円)、 託児施設
Art Director 伊藤 孝
Copy Director 中島 英
Photographer Copywriter Editorial Staff Design Staff 加藤弘一
森平洋子 Web Director 鳥居雅樹
吉見昌之 / 増田洋介 / 大脇知史
平野 恵 / 小塚京子
古澤麻衣 / 山口沙絵
問い合わせ
お問
合せ
〒 464-0821 名古屋市千種区末盛通2−4 医療法人蜂友会 はちや整形外科病院
TEL 052-751-8188 http://www.hachiya.or.jp
担当・酒井
中日新聞社広告局医療プロジェクトチーム
Tel. 052-221-1079
(平日 9:30 〜 17:30 土日祝を除く)
次号以降の発行スケジュールは未定です。 
Fly UP