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蛋白質核酸酵素:細胞壁が植物の成長をコントロールしている

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蛋白質核酸酵素:細胞壁が植物の成長をコントロールしている
細 胞 壁 が植 物 の 成 長 をコン トロール して いる
林 隆久
「成 長 」 を広 辞 苑 で 調 べ る と, “育 って 大 き くな る こ と” と記 され て い る。 セ サ ミス トリ
ー トの 英 語 の 辞 書 を開 くと, “grow”
の ペ ー ジに は,
「ジ ャ ック と豆 の 木 」 の 話 が 引 用 さ
れ, 豆 の 木 が どん どん 成 長 して 大 き くな る話 が さ し絵 入 りで 載 って い る。 あ っ とい う間 に
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豆 の 木 が 大 き くな るの は 多少 誇 張 で も, ま ん ざ らで もな い と思 わ れ る。 た とえ ば, タケ ノ コ
が 土 の 中 か ら顔 をみ せ た と きに は, す べ ての 細 胞 は す で に で きあ が って い る。 お の お の の
細 胞 が 水 を 吸 って,
容 積 を大 き く して い くだ け の こ とで あ るか ら, 成 長 は け っ こ う速 い。
植 物 の 成 長 の 巧 妙 さは, 吸 水 で き る よ うに, 強 固 な 細 胞 壁 を“ ゆ るま せ る” こ とに あ る。
は じめ に
成 長 して い る植 物 組 織 は, 先 端 に生 長 点 と
よば れ る細 胞 分 裂 して い る部 分
果, 細 胞 内 に イ オ ンや 分 子 を 濃 縮 させ, 原 形 質 膜 を 細 胞
が あ り,
壁 に 押 しつ け る圧 力 (膨圧) を も つ。 この圧 力 は, 細 胞
1つ が 再
の浸 透 圧 に 由 来 して お り, 細 胞 伸 長 の 原動 力 とな る。 こ
び 分 裂 を く り返 し, も う1つ が 伸 長 ・肥 大 して い く。 植
の圧 力 に基 づ く吸水 力 が植 物 成 長 の速 度 を 決 め て い る。
物 細胞 の成 長 は, 生 長 点 で あ る茎 頂 ・根 端 の頂 端 分 裂 組
成 長 して い る植 物 細 胞 は, 自動 車 の タイ ヤに た とえ ら
細 胞 分 裂 に よ って 生 じた2つ
(20∼50μm)
の娘 細 胞 の うち,
織 (apical meristem)
お よび茎 や根 の 幹 の側 部 分 裂 組
れ る。 す なわ ち, 原 形 質 を 包 む 脂 質 二 重 層 の膜 す な わ ち
織 (lateral meristem)
で の細 胞 分 裂 と, 細 胞 壁 が 拡 大 す
チ ュ ー ブ と, そ れ を 押 さえ つ つ み 込 ん だ 壁 す な わ ち タイ
る速 度 に よ っ て制 限 され る。 一 般 に, 細 胞 が 伸 長 して 成
ヤ と の関 係 の よ うな も の であ る。 タイ ヤ とチ ュ ー ブは 空
長 が 止 ま る ま でに, そ の長 さ は10∼100倍
ぐら いに な
気 圧 に よ っ て平 衡 が 保 た れ て い るが, 植 物 細胞 と壁 は 浸
る。 これ は ま た, 細 胞 壁 が 薄 くな った り, 弱 くな る こ と
透 圧 に よ っ てそ れ を 調 節 して い る。 す な わ ち, 浸透 圧 と
な く, 強 さ を維 持 す るた め に 新 た に 糖鎖 を 補 填 して い く
膨 圧 (=壁 圧) と の僅 差 に よ って, 細 胞 の成 長 が起 こ る
作 業 を 含 ん で い る。 細 胞 壁 は い わ ゆ る高 層 マ ン シ ョンの
の であ る。
個 々の部 屋 が仕 切 られ て い る よ うに 各 細 胞 を 区 分 し つ
二 次 壁 は, 一 次 壁 の修 飾 のあ とに 細 胞 壁 を さ らに 強 固
つ, 互 い に つ な が りあ って, 組 織 を 支 え な が ら拡 大 して
に す るた め に 形成 され る壁 で, もは や 二 次 壁 が形 成 され
い くの で あ る。 植 物 細胞 壁 は, 一 次 壁 と二次 壁 とい う2
る と細 胞 は 伸 長 も肥 大 もで きな くな る。 二 次 壁 は, 大 半
つ の タ イ プに定 義 さ れ て い る。
が セ ル ロ ース か らな り, そ の 他,
一 次 壁 は, 伸 長 ・肥 大 す る こ との で き る細 胞 壁 の こ と
リグ ニ ン と少 量 の ヘ ミ
セ ル ロ ース に よ って 架 橋 さ れ る こ とに な る。 細 胞 が死 ん
を示 す 。 一 次 壁 に お お わ れ た 細 胞 は, 成 長 が さか ん で,
だ あ と も, こ の細 胞 壁 は 存続 し, 植 物 の形 を 保 っ て い
師管 ・導 管 か らの有 機 物, 水 の 出 入 りが 多 い。 た い て い
る。 わ れ わ れ が 通 常, 生 活 す る うえ で 利 用 し て い る 繊
の分 子 は細 胞 壁 を透 過 す る こ とが で き る が, 細 胞 を包 ん
維, パ ル プ, 木材 はす べ て二 次 壁 に 由来 す る。
で い る原 形 質 膜 は, 分 子 を選 択 的 に透 過 させ る。 そ の結
Takahisa
Gokasho,
Hayashi,
Uji,
京 都 大 学 木 質 科 学 研 究 所
Kyoto
611,
(〒611京
都 府 宇 治 市 五 ケ 庄)
Japan]The Primary Wall Controls Plant Cell Growth
Key【オ
word
ー キ シ ン】 【キ シ ログ ル カ ン】 【壁 の ゆ るみ 】
2968
成 長 す る植 物 の細 胞 壁 糖 鎖 の生 合 成 ・生 分 解 に つ い
[Wood
Research
Institute,
Kyoto
University,
45
細 胞壁 が植 物 の 成 長 を コ ン トロー ル して い る
算 す る と約5μmと
な る。 これ は, 細 胞 の全 周 囲 をお お
うには 短 い。
成 長 してい る細 胞 壁 中 で は, セ ル ロー ス ミ ク ロフ ィブ
リル に キ シ ログ ル カ ンが 水 素 結 合 して, フ ィブ リル ど う
しの結 び つ きを 強 固 に して い る。 キ シ ロ グル カ ンは, セ
ル ロー ス と同 じ β-1,4-グ ル カ ンの骨 格 構 造 を 有 し,
グル コー ス残 基4個
あた り, 3残 基 の キ シ ロ ー ス が α
(1→6)
で結 合 して ヘ プ タサ ッカ ラ イ ド単 位 を構 成 す る
(図2お
よび 図7参 照)。 エ ン ドウ の キ シ ロ グ ル カ ンで
は, こ の ヘ プ タサ ッカ ライ ド に α-ブコシ ル-(1→2) -βガ ラ ク トシ ル残 基 が つ い た ノナ サ ッ カ ライ ドが, ヘ プ タ
サ ッカ ライ ド と同量 ぐ らい 存 在 す る。 エ ン ドウー 次 壁 の
キ シ ロ グル カ ンの平 均 分 子 量 は3.3×105で,
さ に 換 算 す る と約0.5μmと,
実 際 の長
セ ル ロ7ス 分 子 の1/10
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で あ る^<2)>。
単 子葉 植 物 中 の キ シ ロ グ ル カ ンは, フ コ ース を もた な
い うえ, ガ ラ ク トー ス残 基 や キ シ ロ ース 残 基 も少 な く,
セ ル ロ ース に 近 い β-1,4-グ ル カ ンで あ る。 単 子 葉 植 物
に お け るキ シ ロ グル カ ン含 量 が きわ め て 少 ない と考 え ら
図1.
伸 長 してい るエ ン ドウ細 胞 の セ ル ロ ー ス ミク ロ
フ ィブ リル
中央 の 細 胞 の 長 さ は 約20μm。
れ てい るの は, 全 細 胞 壁 標 品 を メチ ル化 分 析 す る と4, 6
結 合 の グル コ ー スが 少 量 しか 検 出 され な い か ら で あ る。
こ の多 糖 は 水 に 不 溶 性 で あ るた め, 精 製 が 困 難 で, 正 確
て, 酵 素 化 学 的 な 内容 の総 説^<1)>を
最 近 の農 芸 化 学 会 誌 に
な キ シ ロ ー ス残 基 数 を 知 る こ ともむ ず か しい。 イ ネ細 胞
記 した 。 あわ せ て読 ん で いた だ け る と幸 い で あ る。
の キ シ ロ グ ル カ ン につ い て は, 4, 6結 合 の グ ル コー スを
4.1倍
I.
一 次 壁 の 基 本 構 造 と機 能
した もの が 実 際 の存 在 量 にな る^<3)>。
キ シ ロ グル カ ンは, in vitro
で セ ル ロー ス に水 素 結 合
させ る こ とが で き る。 そ の結 合 反 応 は酸 性pHで
成 長 して い る植 物 の細 胞 壁 ・一 次 壁 は, 多 種 の複 雑 な
糖 鎖 (約90%)
と蛋 白質 (約10%)
に よ っ て 形成 さ
れ, 細 胞 の成 長 と とも に, 相 互 に作 用 して細 胞 壁 を 柔 軟
で, pH6以
安 定
上 で は結 合 反 応 が 阻害 さ れ る。 キ シ ロ グル
カ ン とセ ル ロ ー スが 結 合 す る条 件 下 に各 種 多 糖 を キ シ ロ
グ ル カ ン の10倍
量 過 剰 に加 え て, そ の阻 害 効 果 を み た
に して い る。 そ の主 た る糖 鎖 は セ ル ロー ス で あ る。 セ ル
と ころ, 他 の多 糖 の存 在 に よ っ て反 応 が 阻 害 され な か っ
ロ ー スは, 単一 分 子 と して は 存 在 せ ず, 30∼50の
分子
た^<4)>。
キ シ ログ ル カ ン とセ ル ロー ス の水 素 結 合 は in vitr
が 互 い の 強 固 な 水 素結 合 の も とで, 平 行 に束 とな っ て繊
で は特 異 的 に生 じて い る と考 え られ る。 こ の反 応 の 効果
維 を 形成 して い る 。 これ は通 常, セ ル ロー ス ミク ロフ ィ
を 知 るた め に, セ ル ロー ス を合 成 す る酢 酸 菌 の 培 養 液 中
ブ リル と よば れ て い る。 伸 長 して い る エ ン ドウ上 胚 軸 細
に キ シ ロ グル カ ンを0.1%加
胞 か ら, ア ル カ リ溶液 に よっ て細 胞 質 を は じめ とす る各
か りの セ ル ロー ス分 子 の集 合反 応 が 阻害 さ れ る 。 キ シ ロ
種 成 分 を す べ て 除 き, セ ル ロー スだ け か らな る細 胞 壁 ゴ
ー ス トを シ ャ ドウイ ン グ した も の を 図1に 示 す 。 植 物 細
グル カ ンが セ ル ロー ス の表 層 に結 合 す る こ とに よ って,
各 々 の セ ル ロー ス分 子 が互 い に 水素 結 合 で きず, 結 果 的
胞 は, セ ル ロ ース ミク ロ フ ィ ブ リル の 薄 い ネ ッ トに包 ま
に細 い セ ル ロー ス ミク ロ フ ィ ブ リル が形 成 され た の で あ
れ て い る とい え る。細 胞 が伸 長 ・肥 大 す る こ とは, こ の
る^<4)>。
この こ とか ら, 植 物 細 胞 壁 中 で は, キ シ ロ グル カ
ネ ッ トが ゆ るむ とい う こ とで あ る。 伸 長 して い る細 胞 で
ンが フ ィブ リル を細 く して, 細 胞全 体 を 薄 くお お い, フ
は, 図1の
レキ シ ブ ル な ネ ッ トを つ く る よ うに機 能 して い る こ とが
よ うに, フ ィ ブ リル は細 胞 の伸 長 方 向 に直 角
に 配 向 して い る。 細 胞 の成 長 を通 じて, 一 次 壁 の セ ル ロ
ース の平均 分 子量 は1 .6×10^6で あ り, 実 際 の長 さに 換
え て お く と, 合 成 され た ば
推 察された。
β-1,4-グ ル カ ンの 骨 格 構 造 を 有 す る糖鎖 は, す べ て β
2969
46
蛋 白 質
図2.
核 酸
酵 素
Vol. 37
No. 15
(1992)
キ シ ロ グル カ ン と セル ロ ー ス の水 素 結 合
Database Center for Life Science Online Service
共 有 結 合 は 実 線 で, 水 素 結 合 は 点 線 で 示 した 。
を 占 め る ア ラ ビ ノ ガ ラ ク タ ン や ペ ク チ ン,
10%を
占 め
る エ ク ス テ ン シ ン と い う塩 基 性 蛋 白 質 が 存 在 し, 単 子 葉
植 物 に お い て は,
(1→3,
30%を
占めるア ラビ ノ キ シ ラ ンや
1→4) -β-グ ル カ ン が 存 在 す る が,
これ ら マ トリ ッ
ク ス成 分 が ど の よ う に キ シ ロ グ ル カ ン と セ ル ロ ー ス か ら
な る 複 合 体 と結 び つ い て い る の か,
現 在 の とこ ろ ま った
く不 明 で あ る。
II.
図3.
オ ー キ シ ンに よ る 細胞 の伸 長 ・肥 大
キ シ ロ グル カ ン と セル ロ ース と の架 橋 モデ ル^<6)>
オ ー キ シ ンに よる細 胞 壁 のゆ るみ は, Heyn,
Bonner,
結 合 を した グル コ ース が2残 基 で1回 転 し準 らせ ん構 造
そ して増 田 らに つづ く, 力 学 的 性 質 の変 化 を 測 定 す る研
を と り, 分 子 内 に水 素 結 合 を 形成 して安 定 な長 い シ ー ト
究 に よ って 明 らか に され た とい え る。 と くに 増 田 の 研
上 の分 子 とな る^<5)>。
キ シ ロ グル カ ンは,
究^<7)>に
よ る貢 献 は 大 きい 。 これ を 分 子 レベ ル で 解 明 す る
キ シ ロー ス残 基
を枝 に もつ た め, 分 子 内 に1側 面 だ け セ ル ロー ス分 子 と
に あ た っ て, 植 物 切 片 に オ ーキ シ ンを 与 え て 変 化 す る成
水 素 結 合 で き る部 位 を もつ 。 図2に 示 す よ うに, キ シ ロ
分 (糖鎖) を 追 う研 究 が さか ん に な った 。 研 究 者 の 間 で
グル カ ンの β (1→4)
ス の6番
グル コ シ ドの酸 素 原 子 とセ ル ロー
目の 炭 素 原 子 のOH基
(06-H)
は, デ ー タが 出 るた び に, ゆ るみ の 主 役, 糖 鎖 が ころ ころ
が 引 き合 う形
変 わ り,「あ あ で もな い, こ うで もな い …」の 論 議 が続 く場
を とる と考 え られ る。 キ シ ロ グノ
レカ ンは, セ ル ロー ス生
面 も あ った 。 当時, 筆 者 は 「キ シ ロ グル カ ンの 生 合成 に
合 成 の場 で結 合 して い くた め, フ ィ ブ リル の非 結 晶部 分
お け る研 究 」 で学 位 を 得 た ぼ か りで あ り, 生化 学的 ・細
な どに も編 み 込 まれ て い く。 この複 合 体 の モ デ ル を組 み
胞 生 物 学 的 に キ シ ログル カ ン とオ ーキ シ ン との 関 係 を 研
立 て る と, キ シ ロ グル カ ンは セ ル ロー ス ミク ロ フ ィブ リ
究 し よ う と考 えた 。 そ こ で, 第I節
ル を ク ロス リ ンキ ン グ (架橋) す る よ うな形 で存 在 す る
壁 の基 本 構 造 と, そ れ に 関 与 す る酵 素 系 を 明 らか に す る
こ とが推 察 さ れ た (図3)^<6)>。
横 と横 で平 行 な フ ィブ リル
研 究 に着 手 した わ け であ る。現 在, 双 子葉 植 物 に お い て
や, 垂 直 に交 わ った フ ィ ブ リル ど う しを架 橋 す る こ とに
は, キ シ ロ グル カ ン の分 解 に よ って 壁 の ゆ るみ が もた ら
よ っ て,
ミク ロ フ ィ ブ リル を 固定 して細 胞 壁 に強 さを 与
され る こ とは, 疑 う余 地 が な い とい え る ほ ど, 多 くの結
え て い る の で あ る。 す なわ ち, キ シ ロ グル カ ンは架 橋 糖
果 が これ を 裏 づ けて い る。 セ ル ロー ス とキ シ ロ グル カ ン
鎖 で あ る とい え る。
は, 双 子 葉 ・単 子 葉 と もに 存在 し, ゆ るみ の メカ ニズ ム
双 子 葉 植 物 の 一 次 壁 に お い て は, そ れ ぞ れ20∼30%
2970
で述 べ た よ うな一 次
にそ ん な に大 差 はな い と考 え た い が, 単 子葉 植 物 の壁 の
細 胞壁 が植 物 の成 長 を コ ン トロー ル して い る
ゆ る み に つ い て は,(1→3,1→4)一
β一グ ル カ ン の 分 解 が 関
表1.細
47
胞壁 の 代 謝 に お け る オ ー キ シ ン の生 理 作 用
与 し て い る と い う こ と に な っ て い る 。 こ の β一グ ル カ ン は
双 子 葉 植 物 に は ま っ た く存 在 せ ず,セ
ル ロ ース ミク ロ フ
ィ ブ リ ル と の 関 係 が い ま だ に 明 確 で な い こ と,未
分化 の
カ ル ス に は 生 成 しな い 場 合 が あ る こ と な ど に 一 抹 の 不 安
を感 じる。
1.植
物 細 胞 に 対 す るオ ー キ シ ンの 作 用
細 胞 の伸 長 ・肥 大 には,頂 芽 で つ く られ る植 物 ホ ル モ
ン,オ ー キ シ ンが 必 要 であ る。 この 芽 の 部 分 を 切 り取 っ
て しま う と,も や しは 伸 び な くな る。 オ ーキ シ ンは細 胞
の浸 透 圧 を 変 化 させ な い で,細 胞 壁 圧 の低 下,す
なわ ち
壁 の ゆ るみ を 導 く。 細 胞 壁 が植 物 細 胞 の成 長 を コ ン トロ
ー ル して い るゆ え ん であ る
。 壁 が ゆ るん で 伸 び る と,結
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果 的 に 吸水 が 生 じる。 こ の水 は液 胞 中(vacuole)に
蓄え
られ,液 胞 の増 大 と と もに 細 胞 が 大 き くな る。
オ ー キ シ ンは まず 原 形 質 膜 の透 過 性 を 高 め,原 形 質 膜
の プ ロ トンポ ンプを 活 性 化 す る。 生 成 したH:+に
よ って
細 胞 壁 の 内表 面 が 酸 性 にな る(オ ーキ シ ン 自体 も酸 で あ
る)。 細 胞 壁 が 酸 性 にな る こ と に よ って 細 胞 壁 構成 糖 鎖
間 の結 びつ き が弱 ま り,細 胞 壁 の拡 張 が 生 じる。 オ ーキ
シ ンは また,遅
い反 応 と して糖 鎖 分 解 酵 素 や 合成 酵 素 の
発 現 を誘 導 す る。 た とえ ば,エ
ン ドウ胚 軸 の 伸 長 速 度 の
キ ネ テ ィ クス を オ ー キ シ ン1μM存
5分 間 の ラ グの あ と,30分
て120分
在 下 で と る と,ま ず
体 を 組 織 切 片 に与 え る と,伸 長 は 阻害 され,糖 鎖 の低 分
子 化 も抑 え られ た13)。この よ うに,キ
性pHや
シ ログ ル カ ンは 酸
オ ーキ シ ン処 理 に よ り潜 在 期 な しに,す ぼ や く
後 に最 大 とな り,少 し減 少 し
直 接 分 解 され る こ とが 認 め られ て い る。 こ の 早 い 応 答
後 に再 び最 大 値 を示 し,長 時 間 にわ た って 細 胞
は,一 次 壁 の 内 表 面 に 存 在 す る エ ン ドー1,4一
β一グル カ ナ
ー ゼ が 酸 性 側 に あ る至 適pHに
近 づ くこ とに よ る
,活 性
伸 長 を促 進 す る。 最 初 の最 大 値 は 酸 生 長 と よば れ,そ
し
て次 の最 大 値 は オ ー キ シ ン の遺 伝 子 発 現 に基 づ く壁 の ゆ
るみ で あ る と考 え られ て い る8}。表1は,オ
ーキ シ ンに
化 に 基 づ い て い る と考 え られ る。
オ ーキ シ ンは エ ン ドー1,4一
β一グル カナ ーゼ の遺 伝 子 を
よる細 胞 壁 で の糖 鎖 や そ れ に 関 連 す る酵 素 活 性 お よび 種
発 現 し(図4),誘
種 雑 多 な変 化 が 起 こ る ま で の潜 在 期 を 示 した も の で あ
に 分 泌 され る14・15》
。 この グル カナ ーゼ 活 性 の 増 大 は,オ
る9)。
ー キ シ ンで ス プ レ ー した エ ン ドウ にお い て6時 間 程 度 の
導 さ れ た 酵 素 蛋 白質 は 細 胞 壁 の 内表 面
潜 在 期 を 示 す が,グ
2.酸
成 長 ・オ ー キ シ ンに よる 壁 の ゆ るみ
ロ グル カ ン の分 解 を 伴 って い る。 エ ン ドウ胚 軸 に お い
た は オ ーキ シ ン処 理 後15分
以内にキ シ
ロ グル カ ンの分 解 が起 こ る こ とが 示 され て い る10・11)。
こ
の効 果 は,オ
潜在
期 な しに直 線的 に増 加 す る。
酸 や オ ーキ シ ン に よ り誘 導 され た成 長 は,つ ね に キ シ
て,酸 性pHま
ル カ ナ ー ゼ に対 す るmRNAは
ーキ シ ンの濃 度 だ け で な く,伸 長 した植 物
エ ン ドウの胚 軸 に オ ーキ シ ンを ス プ レー して 誘 導 され
た エ ン ドー1,4一β一グル カ ナ ーゼ を 精 製 し,こ
れをキ シロ
グル ヵ ン とセ ル ロー ス か らな る複 合 体 に 与 え て 糖 鎖 の 分
子 量 の低 下 をみ た の が表2で
ど変 化 しな い が,キ
あ る。 セ ル ロ ース は ほ とん
シ ロ グル カ ン の分 子量 は 著 しく低 下
組 織 の長 さに 比 例 して,分 解 され るキ シ ロ グル カ ン量 が
す る。 同様 に,オ ー キ シ ン処 理 した エ ン ドウ胚 軸 組 織 中
多 くな る。 若 林 ら12)は,カ ボチ ャ の胚 軸 を 外 片 組 織 と内
に お い て も,キ シ ロ グル カ ンの 分 子 量 は1/5に
片 組 織 に 丹 念 に 分 け,オ
いた 。 こ の こ とか ら,オ ー キ シ ンに よ り誘 導 され るエ ン
ーキ シ ンに よ り低 分 子 化 を受 け
低下 して
るキ シ ロ グル カ ンは と くに 外 片 組織 の壁 に存 在 す る も の
ドー1,4一
β一グル カナ ー ゼ に対 す る真 の 基 質 は,セ
であ る こ とを 認 め た 。逆 に,キ
ー ス で は な く,キ シ ロ グル カ ンで あ る こ とが 明 らか とな
シ ロ グル カ ンに対 す る抗
ルロ
2971
48
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 37
表2.
a)
No. 15
(1992)
一 次壁 複 合 体 に 対 す る エ ン ド-1,4-β-グ ル カ ナ ー
ゼ の効 果 と植 物 組 織 に 対 す るオ ー キ シ ンの 効 果
一 次壁 複 合 体 は, エ ン ドウ上 胚 軸 成 長 部 分 か ら キ シ ロ グ
ル カ ン と セル ロー スだ けか らな る複 合 体 を 調 製 し, とれ
に 精 製 し た エ ン ド-1,4-β-グ ル カ ナ ー ゼを1,000U与
b)
時 間 成 育 させ た 。 対 照 の 値 は48時
る各 糖 鎖 の分 子 量 。
図4.
間 後 の細 胞 壁 に お け
オ ー キ シ ン処 理 に伴 うエ ン ド-1,4-β-グ ル カ ナ ー ゼ
活 性 とそ のmRNAの
イ ブ リル 表 面 の キ シ ロ グ ル カ ン の 分 布 を み た の が 図5で
増加^<14)>
あ る 。 キ シ ロ グ ル カ ン は セ ル ロ ー ス に 結 合 す る が,
Database Center for Life Science Online Service
え
て, 48時 間 イ ン キ ュベ ー トした 。
エ ン ドウ上 胚 軸 成 長 部 分 に オ ー キ シ ンを ス プ レー して48
キ シ
った^<16)>。
この よ うに, キ シ ロ グル カ ンが分 解 され やす い
ロ グ ル カ ン ど う し で は 結 合 し な い の で,
の は セ ル ロー ス ミク ロ フ ィ ブ リル の表 面 を キ シ ロ グル カ
に フル オ レセ イ ンア ミンを結 合 させ て セ ル ロー スに 対 す
ンが お お っ て い る か らで あ る と考 え られ る。
る 特 異 的 な 蛍 光 色 素 と し て 用 い た^<4)>。
キ シ ロ グル カ ン と
植 物 細 胞 の成 長 と とも に キ シ ロ グル カ ンの合 成 能 は低
セ ル ロ ー ス か ら な る 複 合 体 か ら強 ア ル カ リ溶 液 に よ っ て
下 して い くが, セ ル ロー ス の合 成 は さ か ん に な り, そ の
キ シ ロ グ ル カ ン を 除 き,
含 量 は エ ン ドウ胚 軸 の場 合 で は2日
ゴ ー ス トに す る と, 染 色 さ れ る
間 で 約12倍
にな
る^<2)>。
伸 長 ま た は 肥 大 した 植 物 細 胞 に お け る, ミク ロ フ
な が ら,
セ ル ロー スだ けか らな る細 胞 壁
(図5A,
した組 織 か ら調 製 した 。D∼Fは,
り, A∼Cは
2972
B, C)。
しか し
キ シ ロ グ ル カ ンが 存 在 す る と, 細 胞 壁 ゴ ー ス ト
図5.
キ シ ロ グル カ ン蛍 光 色 素 に よる 細 胞 壁 ゴー ス トの 観 察^<4)>
ゴ ー ス トは エ ン ドウ胚 軸 の成 長 し てい る (AとB),
2目 後 に 伸 長 (BとE)
お よび 肥 大
(CとF)
キ シ ログ ル カ ン
キ シ ロ グル カ ン と セル ロ ー ス の複 合 体 で あ
セ ル ロー ス だ け か らな る。 ス ケ ール は20μm。
49
細 胞 壁 が 植 物 の成 長 を コ ン トロー ル して い る
は染 色 され な い (図5D,
E, F)。 こ の こ とは, 成 長 と と
も に セ ル ロ ー ス ミク ロ フ ィ ブ リル が合 成 され て蓄 積 しな
ッジに よ り強 固 な ペ クチ ン ゲ ルが 生 成 す る。 図5参 照)
を形 成 す る よ うに 働 く^<17)>。
この酵 素 の 至 適pHは7で
あ
が らも, そ の表 面 は 継 続 的 に キ シ ロ グル カ ンに お お わ れ
るた め, 酸 性pHで
カ
て い る こ とを 示 して い る。
ル シ ウム ブ リッジ に よ る細 胞 壁 の架 橋 形 成 を 阻 害 して,
活 性 が 阻 害 され る。酸 性pHが,
壁 の伸 展 性 を保 って い る と考 え られ る。
3.
壁 の ゆ るみ を 止 め る 反 応
双 子 葉植 物 の 一 次 壁 の10%は,
ペ クチ ンは, 双 子葉 植 物 に お い て は一 次 壁 の20∼30
%を 占め, 単 子 葉 に お い て は2∼3%し
か な い が, ペ ク
チ ンの構成 単 糖 であ る ガ ラ クチ ュ ロ ン酸 の カル ボ キ シ ル
塩 基 性 蛋 白質 エ ク ス
テ ン シ ンか らな って い る。 そ の チ ロ シ ン残 基 は, ペ ル オ
キ シ ダー ゼ に よっ て チ ロ シ ン ど う しが 共 有 結 合 して イ ソ
ジチ ロ シ ン架橋 を 生 じ る (図6)。 ペ ル オ キ シ ダ ーゼ は,
また ア ラ ビ ノキ シ ラ ン, ア ラ ビ ノ ガ ラ ク タ ン, キ シ ロ グ
チ ンエ ステ ラ ーゼ は, この メチ ル エ ス テ ル基 を外 し, 生
ル カ ンに結 合 した フ ェル ラ酸 ど う しを 結 合 させ て ジ フ ェ
成 した カ ルボ キ シル基 がCa^<2+>と ゲル (カ ル シ ウム ブ リ
ル ラ酸 架 橋 を 生 じさ せ る こ とが で き る (図6)。 ペ ル オ キ
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基 は 通 常 メチ ル エ ス テ ル化 され て い る。 細 胞 壁 中 のペ ク
図6.
伸長を止め ると考え られてい る一次壁 の架橋反応
2973
50
蛋 白 質
シ ダ ー ゼ の至 適pHは9で
核 酸
あ り, 酸 性pHに
酵 素
Vol. 37
No. 15
(1992)
よ って阻 害
て 決 定 され るが, そ の 配 向 を 微小 管 が コ ン トロー ル して
され る の で, 酸 性 状 態 で あ る と 壁 の 伸 展 性 が 保 た れ
い る と考 え られ て い る。 エ チ レ ンの効 果 す なわ ち 箸 ン ド
る^<18)>。
た だ し, イ ソジ チ ロシ ン架 橋 や ジ フ ェル ラ酸 架 橋
ウ細 胞 の 肥大 化 は, 微小 管 の再 配 列 化 に伴 うセ ル ロー ス
が, 異 な った 分 子 の間 の架 橋 と して 存 在 す る証 拠 は ま だ
ミク ロ フ ィブ リル の配 向 に基 づ い た 結 果 であ る と推 察 し
得 られ て い な い 。
た。 ミク ロフ ィブ リルが 縦 に配 向 して 伸 長 が で きに く く
細 胞 壁 を 強 固 な もの に す るた め に働 い て い る ペ クチ ン
エ ス テ ラー ゼ や ペ ル オ キ シ ダー ゼ活 性 は 酸 性pHで
な るた め, 細 胞 は 横 方 向 に 成 長 す る こ と に な る。Ro
阻
bertsら^<19)>は,エ チ レン処 理 をす る と, 数 分 の うち に 微
害 され る が, これ は む しろ細 胞 壁 に伸 展 性 を 保 つ た め の
小 管 の配 向が 細 胞 の伸 長 方 向 に 縦方 向 に 並 び, そ の結 果,
条 件 で あ り, 酸 性pHに
よる阻 害 反 応 が 能 動 的 に細 胞 の
伸 長 を 誘 導 す る とは考 え に くい。 あ くま で一 次 壁 にお け
ミ ク ロフ ィブ リル の配 向 が 縦 方 向 に な る こ とを 示 して い
る。
る壁 のゆ るみ を 止 め る役 割 を 担 っ て い る と考 え た い 。
III.
4.
エ ン ドウ上 胚 軸 の伸 長 して い る組 織 に 過 剰 量 の オ ーキ
シ ンを ス プ レーす る と, 細 胞 は伸 長 せ ず に逆 に肥 大 し組
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オ リ ゴ 糖 に よ る フ ィ ー ドバ ッ ク 制 御
オ ー キ シ ンの 誘 導 に よ るエ チ レ ン生 成
オ ー キ シ ン は,
幼 植 物 胚 軸 の伸 長 を促 進 させ る。 キ シ
ロ グ ル カ ン部 分 分 解 物 で あ る オ リ ゴ 糖
(図7)
の う ち,
織 全体 が 丸 く太 くな る。 これ は, 植 物 ホ ル モ ンで あ る エ
ノ ナ サ ッ カ ラ イ ドは 合 成 オ ー キ シ ン, 2, 4-ジ
チ レンを与 え た と き とま った く同 じ形 態 変 化 を示 して い
ノ キ シ 酢 酸 で 誘 導 さ れ る エ ン ドウ 胚 軸 の 伸 長 を 阻 害 す
る。 そ こで, オ ーキ シ ン溶液 に エ チ レ ン生 合 成 の阻 害 剤
る^<2)>。
単 糖 の ラ コ ー ス や メ チ ル フ コ ー ス は,
で あ るAVG
ン効 果 を 示 さ な い が,
(aminoethoxyvinylglycine)
を加え てスプ レ
ーす る と細 胞 が肥 大 せず に伸 長 す る。AVGは
, キ シロ
ク ロ ロフ ェ
抗 オ ーキ シ
フ コ シ ル ラ ク トー ス は 伸 長 阻 害 を
示 した 。α-フ コ シ ル- (1→2)-β-ガ
ラ ク トシル残 基 を もつ
グ ル カ ンや セ ル ロー ス の生 成 量 を 変 え ず, そ の合成 速 度
オ リ ゴ糖 に 阻 害 効 果 が 認 め ら れ た が,
もほ とん ど 同 じで あ った^<9)>。
オ ー キ シ ンに よ り誘 導 され
は 効 果 を 示 さ な か っ た^<21)>。
エ ン ド ウ胚 軸 を 伸 長 さ せ る た
た エ ン ド-1,4-β-グ ル カナ ーゼ 活 性 の レベ ル も同 じで,
め,
細 胞 壁 に結 合 した キ シ ログル カ ン の低 分 子化 まで もが 同
で あ る 。 こ れ に 対 し て,
じで あ った 。 こ の こ とは, キ シ ロ グル カ ンの 代謝 は 細胞
糖 は,
の伸 長 ・肥 大 に関 与 して い るが, 細 胞 の 形 や組 織 の形 態
を 決 定 して い な い こ とを 示 して い る。
クロ ロ フ ェ ン キ シ酢 酸 の 濃 度 は10^<-6>M必
要
抗 オ ー キ シ ン効 果 を もつ オ リ ゴ
10^<-9>Mの レ ベ ル で 伸 長 を 阻 害 す る 。
Fryら^<22,23)>は最 近,
キ シ ロ グル カ ンに特 異 的 な エ ン ド
ト ラ ン ス グ リ コ シ ラ ー ゼ 活 性 の 存 在 を 発 見 した 。 こ の 酵
細 胞 の形 は セ ル ロー ス ミク 目 フ ィブ リル の配 向 に よ っ
図7.
2974
2, 4-ジ
デ カサ ッ カ ライ ド
素 は,
オ ー キ シ ン に よ り誘 導 さ れ ず,
キ シ ロ グ ル カ ン オ リ
ゴ 糖
エ ン ド-1, 4-β-グ
細 胞 壁 が 植 物 の成 長 を コ ン トロ ール してい る
ル カナ ーゼ の 活 性 を 示 さな い が, キ シ ロ グル カ ン分 子 を
の 速 い形 質 の もの を選 抜 す る こ とに よ って 行 な わ れ て き
切 断 して, そ の 非 還 元 末 端側 の フ ラ グ メ ン ト (酵 素 の活
た 。遺 伝 子 レベ ル で の林 木 育 種 は まだ 行 な わ れ て い な
性 中 心 のな か で, 糖 鎖 の 還 元 末端 が遷 移 状 態 とな って い
い。
る) を 別 の キ シ ロ グル カ ンの 非還 元 末 端 に結 合 さ せ る。
わ が 国 の林 野 庁 育種 基 本 区 (北 海 道 か ら九 州 まで) の
こ の反 応 は, キ シ ロ グル カ ン分 子 の 間 で つ な ぎ換 え を行
育 種 目標 は, 主 と して (1)
成 長 が 速 い こ と, (2)幹 が 通 直 で
な うもの で あ り, 糖 鎖 の架 橋 を ひ き起 こす 。 糖 鎖 の架 橋
真 円 であ る こ と, の2点 が あげ られ る。 また, 東 南 ア ジ
へ と反応 が進 む と壁 のゆ るみ を止 め る こ と にな るが , キ
ア では, わ が 国 の木 材 の需 要 に よ る伐 採 の結 果, 砂 漠 化
シ ロ グル カ ンオ リゴ糖 を ア クセ プ タ ー と して利 用 す る と
現 象 が 生 じ, 成 長 の 速 い 林 木 の植 林 が 望 まれ て い る。成
きは, 結 果 的 に キ シ ロ グル カ ンを分 解 す る こ とに な る。
長 が速 い こ とに よる メ リッ トは, バ イ オ マ ス と して の 木
壁 のゆ るみ は, ア ポ プ ラス トに存 在 す る オ リゴ糖 の濃 度
材 や セ ル ロー ス の生 産 の 向上 だ け で な く, 植 林 され た 苗
に 依 存 して い る とい え る。 さ らに, 彼 ら^<24)>は,
オ リゴ糖
木 が下 刈 りを 必 要 とす る 時期 (6∼9年
が 高 濃 度 (10^<-7>∼10^<-5>M)
に な る と, オ ー キ シ ン な しで
を短 縮 で き るた め, 造 林 管理 上 の メ リ ッ トが あ る。
目ま で 毎 年1回)
もエ ン ドウ胚 軸切 片 の伸 長 を促 進 す る と報 告 した 。 この
二 次 壁 の合 成 そ して木 質 化 が材 質 を 決 め るわ け で あ る
効 果 は, エ ン ド トラ ンス グ リコ シ ラー ゼ の活 性 化 に基 づ
が, 一 次 壁 の代 謝 変 化 は 細胞 の サ イ ズや 強 さ を 決 定す る
い てい る と考 察 して い る 。
の で あ ろ う。 成 長 と材 質 とは逆 相 関 の 関係 に あ る と考 え
伸 長 阻 害 また は促 進 効 果 を もつ オ リ ゴ 糖 は, Alber
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51
sheimと
Darvill^<25)>ら
に よ っ て オ リ ゴサ ッカ リ ン と よば
られ て い る が, 木 質 と して の 評 価 に どの よ うに 関 係 す る
の
か, 興 味深 い。
れ, 新 しい 生理 活 性 物 質 と して注 目され て い る。 しか し
細 胞 壁 の代 謝 を 改 変 し, 植 物 細 胞 の 構造 や成 長 ・生理
な が ら, 伸 長 阻害 が, 天 然 オ ー キ シ ンで あ る イ ン ド ー
を コ ン トロー ルす る手 法 は, 新 しい 学 際 領域 で あ る 「糖
ル-3-酢 酸 で効 果 を示 さ な い こ とや,
鎖 工 学 」 と定 義 され る^<29)>。
外 来 遺 伝 子 (ポ リガ ラ クチ ュ
エ ン ドウ 以 外 の植
物 では 認 め られ な い こ とか ら^<26)>,
特 殊 な効 果 な の か も し
ロナ ー ゼ の ア ンチ セ ンスRNA遺
れ な い。 ま た, 生 成 物 (オ リ ゴ糖) に よる フ ィー ドバ ッ
入 す る こ とに よ っ て, 壁 の代 謝 を コ ン トロー ル した例 と
伝 子) を植 物 細 胞 に導
ク制 御 は, 高 濃 度 に な る と阻 害 す る はず で あ るが, 低 濃
して は, Calgene
度 で 阻害 して高 濃 度 で促 進 す る効 果 は, 広 い意 味 で の生
い トマ トを 得 た ケ ー スが 有 名 で あ る^<30)>。
た とえ ば, 壁 の
物 の 代謝 制 御 の仕 組 み と矛 盾 す る。 これ らキ シ ログ ル カ
ゆ るみ に関 与 して い る遺 伝 子 を ク ロー ニ ン グ して, ア ン
ンオ リゴ糖 の効 果 に対 す る追 試 が い くつ か の研 究 室 で試
チ セ ンスRNAの
み られた が, 実 験 結 果 に再 現 性 が な い とい う声 も多 い 。
成 長 性 が 示 され れ ば, 壁 のゆ るみ が直 接 証 明 で き る で あ
生理 学 的 な現 象 では な く, 酵 素 化 学 的 にキ シ ログル カ
ろ う。 さ ら に, 高 等 植 物 の成 長 が コ ン トロー ル で き る よ
ンの フ ラ グ メ ン トが オ ー キ シ ンで 誘 導 され た エ ン ド-1,
社 に よ る, ペ クチ ンの分 解 を抑 え て赤
導 入 に よる矮 性, 遺 伝 子 増 強 に よ る高
うに な るか も しれ な い 。
4β-グル カナ ー ゼ を 活性 化 す る こ と が 報 告 さ れ て い
る^<27)>。5×10^<-6>∼2×10^<-4>Mの
速 度 で, テ トラサ ッ カ ライ
ド以下 の オ リゴ糖 では 効 果 が な く, 分 子 量 の 高 い もの ほ
お わ りに
植 物 細 胞 の伸 長 に関 す る研 究 が 生 理 的 な実
ど効 果 が大 きか った 。 キ ネテ ィ ク スの 結 果 か ら, 酵 素 に
験 レベ ル か ら, 生 化 学 的 な レベ ル, そ して分 子 生 物 学 的
対 す る基 質 とオ リゴ糖 の 結 合 は, 互 い に 干 渉 しな い, 非
な レベ ル へ 変 わ りつ つ あ る。 西 谷 ら^<31)>は,
アズキのアポ
拮 抗 的活 性 化 であ る こ とが 認 め られ た^<28)>。
プ ラ ス トか らエ ン ド トラ ン ス グル コシ ラー ゼ の精 製 に成
キ シ ロ グル カ ンオ リゴ糖 が, オ ーキ シ ンに よ る植 物 細
功 した と報 告 して い る。 壁 のゆ るみ に関 す る キ シ ロ グル
胞 の成 長 を フ ィ ー ドバ ック ・コ ン トロ ール して い る証 拠
カ ンの機 能 が よ り明 確 に な る で あ ろ う。 また, 酢 酸 菌 で
は得 られ てい な い が, 今後 の 研 究 の 進 展 を 期待 した い。
セ ル ロ ー ス合成 酵 素 の 遺 伝 子 が ク ロー ニ ング され た^<32)>。
これ を プ ロ ー ブ と して 高 等 植 物 の遺 伝 子 が ク ロー ニ ン グ
VI.
樹 木 の成 長 は変 え られ るか?
され るで あろ う。 分 子 生 物 学 的 な ア プ ロー チか ら, 植 物
細 胞 壁 の ゆ るみ の 仕 組 み が 明 らか に な るか も しれ な い。
一般に
, 木 本植 物 は 草 本植 物 に比 べ て, 著 し く成 長 が
遅 い こ とに な って い る。 した が っ て, これ ま で の林 木 の
育 種 は, 2∼5年
「あ あ で もな い,
こ うで もな い … 」 に 明け 暮 れ た 植 物 生
理 学 の ま どろ み か ら 目覚 め る と きが き てい る。
の短 期 的 な集 団育 種 の なか か ら, 成 長
2975
52
蛋 白 質
核 酸
酵 素
Vol. 37
23)
文
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