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作家
元国際線乗務員
黒木安馬
【プロフィール】高校時に米国留学後、早稲田大学を経てJAL国際線客室乗務員として30年勤務。世
界初の「カラオケ・フライト」や「1万メートル上空・北島三郎機上コンサート」などを実現させる。千葉の自
宅は1300坪の山林を開墾してプール、
テニスコート、
コンサートホール等を手作りする。現在、1日本成功
学会社長として自己啓発や社員教育で講演中。著書に『成「幸」学』
(講談社)、
『あなたの人格以上は
売れない!』
(プレジデント社)、
『出過ぎる杭は打ちにくい!』
(サンマーク出版)、
『面白くなくちゃ人生じゃ
ない!』
(ロングセラーズ)、
『リセット人生・再起動マニュアル』
(ワニブックス)、
『小説・球磨川』
(上下巻・
ワニブックス)などがある。
E-mail:[email protected] URL:http://www.3percent-club.com
21世紀だ!
人生・農業リセット再出発 102
今よみがえる、インカ帝国の秘薬
ご ふう じゅう う
―― 5日に一度は風が吹き、
五風十雨 10日に一度は雨が降るくら
ロが連れてきた馬は薄い空気で死んでしまう危機
いが農作物には好ましい、という意味である。転
的にインカ帝国の征服につながったという記録も
じて、天下泰平をいう。
ある。朝鮮人参と同様、収穫後の土地では10年近
南米大陸を太平洋プレートが押し上げて隆起させ、
く作物ができないといわれるほどエネルギーの吸
南北に7500dも続くアンデス山脈。6000c以上の
収率が高く、必須栄養素を大量に含んでいるため、
山が20座もあり、この地では「どのくらいの標高
NASAの宇宙食にも採用されている。
の所で生まれたの?」が初対面での挨拶である。
大手商社のペルー駐在員時代にこのマカの魅力
ジャガイモ、トマト、トウモロコシを始め、世界
に取りつかれた片桐賢二さんは、現地の生産農家
中の食卓に欠かせない農産物の7割近くがここで
と「マカ生産者連合会」を設立し、独立。首都リ
発祥した。欧州の大飢饉を救ったのがジャガイモ
マから250d、山道を車で登るだけでも7時間も
だったことは、周知のことである。 かかるボンボン高原に、自社プラントを建設した。
空中の楼閣と呼ばれるマチュ・ピチュ遺跡で有
安易に平地で化学肥料を使用して栽培すると、大
名なインカ帝国。高度な文明を残すが、スペイン
きくなりすぎるだけでなく、似て非なるマカにな
で豚の飼育人だったピサロが、たった13丁の火縄
るので、それを避けたかったと片桐さんは言う。
銃と馬37頭に180人を連れて、この天下泰平の文
その真摯な取り組みから、今では日本のJASや米
明を壊滅させ、植民地にしてしまう。金銀財宝は
国のUSDAなどの認証を獲得し、世界中に商品を
奪われ、先住民は鉱山発掘で酷使されて激減する。
輸出している。マカには即効性の血流増強作用が
食事をしなくても一日中元気で労働ができると、
あり、不妊症や肥満に効果がある一方、天然バイ
インカ時代から知られていたコカの葉。空腹感や
アグラと呼ばれるほど強精力作用がある。バイア
恐怖心をなくすとしてお茶として飲まれるが、石
グラが頭皮の血流増強剤、ハゲの特効薬として開
灰などを混ぜて精製すると麻薬のコカインになる。
発されたにも関わらず、下半身の増強に役立った
北京オリンピックの100c陸上で世界記録を出し
ことを思えば、うなずける話である。
たジャマイカのウサイン・ボルトは、同僚選手と
無酸素・単独による世界初の七大陸最高峰登頂
ともに薬物使用ではないかと疑われたが、実は彼
を目指し、最終目標のエベレストに挑戦中の栗城
らはマカの愛用者だったのである。
史多さんから、マカが欲しいと頼まれた。片桐さ
マカは、ペルーのフジモリ元大統領が外貨獲得
んから本人に送ってもらったが、彼が制覇した暁
資源として宣伝するようになって知られるように
には、さほどの効能を証明し、これはマカ不思議
なった。加工品以外はペルー国外に持ち出すこと
な現代の妙薬ということになるだろう。アンデス
は法律で禁止されている。アンデスの標高4000c
の地元民がそろって子沢山で元気が良いのになら
以上の高原で採れるアブラナ科の根菜で、現地で
って、我ら男性も七大陸世界最高女性登頂!と意
は滋養食として古くから重宝がられてきた。ピサ
気込みたいものである。
に直面したが、マカを食べて繁殖に成功し、結果
くりき
のぶかず
農業経営者 2009年 7月号
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