真説『松尾芭蕉・裏の顔』

作家
元国際線乗務員
黒木安馬
【プロフィール】高校時に米国留学後、早稲田大学を経てＪＡＬ国際線客室乗務員として３０年勤務。世
界初の「カラオケ・フライト」や「1万メートル上空・北島三郎機上コンサート」
などを実現させる。千葉の自
宅は1300坪の山林を開墾してプール、
テニスコート、
コンサートホール等を手作りする。現在、㈱日本成
功学会社長として自己啓発や社員教育で講演中。著書に『成「幸」学』
（講談社）、
『あなたの人格以上
は売れない！』
（プレジデント社）、
『 出過ぎる杭は打ちにくい！』
（サンマーク出版）、
『 面白くなくちゃ人生じゃ
ない！（
』ロングセラーズ）、
『リセット人生・再起動マニュアル』
（ワニブックス）、
『 小説・球磨川』
（上下巻・ワ
ニブックス）
などがある。
E-mail:[email protected] URL:http://www.3percent-club.com
21世紀だ！
人生・農業リセット再出発 152
真説『松尾芭蕉・裏の顔』
“旅 敲しながら50年の生涯を終えた芭蕉。奥の
秘密に個人所有にしてあるのは、国宝や重要文化財
細道――月日は百代の過客にして、行きかふ年もま
なるので、伝統ある料亭の仕事に支障があるとのこ
た旅人なり……は旅に生きた好き放題人生の達人と
とだった。その時に、曽良が書き残した本物の日記
もいえよう。
が保管してあるのを、この目でしかと読ませてもら
に病んで夢は枯野をかけ廻る”を病床で推
はくたい
か かく
に指定されると、草木一本すら許可なしに触れなく
彼が高めた俳諧は、日本文化の侘び寂びの極致と
った。
“芭蕉は夜な夜な茶屋色街に出かけて私は留守
して海外でも知られ、ウクライナの中学生教科書で
番ばかり”と愚痴がしたためてあった。癖のある跳
も紹介されている。欧米文化は足し算の装飾、日本
ねた筆跡の文章で、妙に記憶に残った。その後に伊
は引き算と削ぎ落としの美である。
賀上野から講演を依頼されて芭蕉の故郷にお邪魔す
時代は1680年江戸初期の元禄。今でも芸術家が豊
ることになった。戦国武将の藤堂高虎の美しい城下
かに生きていくのは難しいが、当時いくら風流とは
町、博物館にはたくさんの芭蕉直筆の句が展示して
いえ、数カ月も旅をしながら俳句だけで食べていけ
あった。
たのか？
関ヶ原後、まだ天下泰平ではない時節に「奥の細道」
で回ったのは５カ月で2,400kmの長距離旅行。徳川
私は、絶句した！ 直筆とされているすべての書
体が――秘密の茶室、加賀で目にした曽良の筆跡そ
のものだったからである。なぜ？
とて油断できない外様大名である大藩の伊達、米沢
とすれば、仮説はこうなる。忍者の芭蕉が本来課
藩、加賀百万石……を訪問している。同伴した河合
せられた任務は、隠密調査員スパイ。弟子であるは
曽良の日記に、その藩近辺ではかなりの長期滞在で
ずの曽良は、実は天才的俳諧の名手であり、芭蕉の
何か綿密な調査をしたと記録がある。
影武者としてすべて曽良が創作した作品である！と。
松尾芭蕉は伊賀上野の出身、忍者の服部一族であ
カモフラージュ隠密大作戦だったのではないか。
“夏
つわもの
る。家康は服部半蔵、柳生家忍者を江戸城270年の
草や兵どもが夢の跡”
など、さまざまな名句があるが、
警護にした。駐屯場所は今の警視庁、その地下鉄が“半
これらはすべて曽良の才能だった!?
蔵”門線である。伊賀上野の藤堂家の若殿を英才教
私の推理が当たっていれば、曽良みたことか！で、
育するにあたって芭蕉少年も傍で学友にさせられて
加賀の庵は大変なことになるかも♪ とんだ騒ぎに
一緒に俳句を手習いするが、若殿が早世して失業し、
でもなったら、そこは素人の推理だと、芭蕉を選ば
江戸に出る。かくして後に奥州へ覆面調査が始まっ
ず逃げ出すしかあるまい。俳人ならぬ廃人になった
た……とすれば、派遣主は言わずと知れた、江戸城
ふりをして、俳諧ならぬ徘徊老人になりすまして、
「ボ
本丸のボスからだったと解釈できる。外様の加賀百
クの細道」の旅に出るしかあるまい。ただ、曽良の
万石では前田の殿様に歓待され、長期滞在で茶室ま
才能は微塵も持ち合わせていないから、平泉の毛越
であつらえてもらっている。
寺あたりを訪ねて肥やしが効いて色濃く生い茂った
その国宝並みの茶室を保有している金沢の名門料
亭で主から芸者を挙げての饗宴を受けたことがある。
草むらを見ても、
“夏草や兵どもがクソの跡”
、みた
いな作品にしかならないかも知れないが。
農業経営者 2013 年 10 月号
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