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【優秀賞】旭川人権擁護委員連合会長賞 「未来は」 砂田 風花 人は誰も
【優秀賞】旭川人権擁護委員連合会長賞 「未来は」 砂田 風花 人は誰も、 「いじめはいけないことだ。」と思うだろう。大体の人の理由は「前からずっ と、そう教えられてきたから。」になる。だが、私はこう答える。「傷ついた人の未来が失 われるかもしれないから。 」 私は、いじめられていた。小学生の時から長い長い時間をかけて。 なぜ多くの人間から疎まれることとなったのかは定かではない。しかし、思いつくのは 周囲に合わせることができなかったから、だ。小学校低学年のときに、場違いな発言をし てしまったことがある。おそらくそれが、いじめられるきっかけになったのだろう。その 翌日から徐々に徐々に状況が変わっていった。 まず、はじめに友達に近づいていったら避けられるようになった。当時浅はかだった私 は、 「あれ?なんでだろう?」と思いつつ、特に気に留めはしなかった。それから二ヶ月が 経ち、新しいクラスになった。それが悪夢の始まりだった。強気な女子に早くもターゲッ トにされ、あっというまにクラスの人の殆どから嫌われた。それに気づいた自分はもう以 前のように明るく人と接することができなくなっていた。 その状態が変わらないまま季節が過ぎ、いつのまにか中学生になっていた。一年生の時 は小学生の時のことなんて気にしない、とても優しい人達と同じクラスになれた。しかし 二年生になり新しいクラスになると、また常に悪口を言われ続け物を隠される、そんな状 況に戻ってしまった。毎朝吐き気と戦いクラスの人達に怯えながら一日一日を過ごしてい たのは皮肉にも鮮明に記憶の中に残っている。そして三年生になって最後のクラス替えが 行われた。泣きそうになった。それはとても嬉しかったからだ。もうあんな目に遭わなく ていい、怯えなくていいクラスだった。実に穏やかに時は流れていった。 夏になったある日の朝、テレビからアナウンサーの明瞭な声で悲惨なニュースが告げら れた。その内容は「岩手県の中学二年生の男子生徒がいじめを苦に自殺した」というもの だった。私はそれを聞いたとき、とてつもない衝撃を受けた。そして、深いやるせなさも 味わった。 近年、いじめによる学生の自殺が多発している。そしてその多くは周囲にいる人達があ とほんの少しだけ優しかったのなら命の灯は消えなかっただろう、というものばかりだ。 しかも今回は生徒が「いじめられている」ことを訴えたのに担任の先生は無視をしたとい う。もし全国で同じように訴えても届かないのなら一体どれ程の尊い命が失われてゆくの だろうか。 周知の通り、この日本には基本的人権の尊重というものがある。おおまかに説明するの なら「誰もが自由に暮らすことができる」だろう。つまり、ある程度の制限はあるが自分 を表現することは許されるのだ。だがいじめはその自由を侵害することになる。しかも最 悪の場合死に至り、あるべきはずの未来が無くなる。私は、決してそんなことがあっては いけないと思う。 いじめられていると、息ができなくなるような錯覚に陥ることがあった。本当に全てが 怖くて何も信じることができなかった。自分に手を差し伸べている人のことでさえ。やが て全部がどうでもよくなって、 「こんな人間に価値なんてないんだから、努力なんてしなく ていい」と思うようになってしまった。だが、友達はそんな私を見捨てないでくれた。強 引なくらいにまっ暗なところから光のある世界へ連れ出してくれた。そのとき私はこんな 言葉を言った。 「ねえ、一人ぼっちになりたくない。はなれないで、そばにいて。」 友達は私を抱きしめながらこう言った。 「一人ぼっちにさせないから、大丈夫だよ。 」 あの時私は願った。最愛の友人からもらった言葉を返せるように強くなりたい、と。同 時に一つの夢ができた。それは、未来は誰にでも平等にあることを伝えるということだ。 少しずつ、少しずつでいい。前を向いて歩き続けたい。もう、誰かの未来を失わせないた めに。