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血行動態からみた食道・胃静脈瘤治療

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血行動態からみた食道・胃静脈瘤治療
血行動態からみた食道・胃静脈瘤治療
国吉病院 消化器外科
近森文夫
根治性を損なうことなく低侵襲性を追求するという治療学の大きな流れを誘導してき
た食道・胃静脈瘤治療は、21 世紀に入り肝移植時代の到来と共に新たな局面を迎え
ている。
Ⅰ.門脈側副血行路基本解剖
門脈圧亢進症に伴って発達する門脈側副血行路は大きく二つの系に分類される。
一つは門脈-奇静脈系であり、主に食道静脈瘤、食道噴門部胃静脈瘤形成に関与す
る。もう一つは門脈-横隔静脈系であり、主に孤立性胃静脈瘤形成に関与する。
Ⅱ.食道静脈瘤・食道噴門部胃静脈瘤
東大2外科法による食道離断術や北大2外科法による選択的シャント手術などは今
日 で も 通用 す る 完 成度 の 高 い 術式 で あ る。 1980 年 代 に は内 視鏡 的 硬 化 療 法
(endoscopic injection sclerotherapy: EIS)が急速に普及し、手術療法にとって代わった。
1990 年には内視鏡的静脈瘤結紮術 (endoscopic variceal ligation: EVL)が本邦に導
入され、現時点では EIS と EVL を患者の状態に応じて使い分ける状況となっている。
Ⅲ.孤立性胃静脈瘤
出血例およびシャント脳症併存例を絶対的適応とし、発赤所見の存在や増大傾向
にある F2 以上の胃静脈瘤を相対的適応としている。孤立性胃静脈瘤は血流量が豊
富のため、5%EOI を用いた通常の硬化療法単独では効果を期待することはむずかしく、
針 穴 出 血 の 危 険 性 も 大 と な る 。 一 方 、 α -cyanoacrylate monomer や
n-butyl-2-cyanoacrylate は血液に接触すると瞬時に重合し血流を遮断する。このシア
ノアクリレート系薬剤を用いた硬化療法(EIS using cyanoacrylate:CA-EIS)は止血救命
が優先される緊急出血例に用いられる場合には威力を発揮する。単独あるいはリピオ
ドールで希釈して用いられるが、至適注入濃度は 60%以上とされる。孤立性胃静脈瘤
に対するカテーテル的逆行性塞栓術には経頚静脈アプローチの経頚静脈的逆行性
塞栓術(transjugular retrograde obliteration for gastric varices: TJO)や経大腿静脈ア
プ ロ ー チ の バ ル ー ン 下 逆 行 性 経 静 脈 的 塞 栓 術 (balloon-occluded retrograde
transvenous obliteration: B-RTO)の手技があり、胃静脈瘤消失効果においてすぐれ
る。手術療法の Hassab 手術は、脾摘、胃上部、下部食道血行廓清からなり、門脈血
行動態からみて最も合理的であり、同時に脾機能亢進症も解消できる。しかし侵襲度
の面から予防例、とくに ChildC症例には適用し難い。
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