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子育てに困っている
<平成24年度 第4号>平成24年7月24日 校長室たより の中にキラキラと輝く黄金の卵を見つけた。最初 は誰かのいたずらに違いないと思い、捨てようと したが、思い直して市場に持って行くことにした。 すると卵は本物の純金だった。農夫はこの幸運 平成26年6月25日 が信じられなかった。翌日も同じことが起き、ま すます驚いた。農夫は来る日も来る日も目を覚ま すと巣に走っていき、黄金の卵を見つけた。彼は 大金持ちになった。まるで夢のようだった。 しかし、そのうち欲が出て、せっかちになって いった。一日一個しか手に入らないのがじれった く、ガチョウを殺して腹の中にある卵を全部一度 に手に入れようとした。ところが腹をさいてみる と空っぽだった。黄金の卵は一つもなかった。し かも黄金の卵を産むガチョウを殺してしまったの (3年生 心肺蘇生実習の様子) だから、もう二度と卵は手に入ることはなかった。 子育てに困っている 皆様に… (私も含めて大人の方に) 黄金の卵だけに目を向け、ガチョウを無視する 先日のPTAの会合の中で、「子どもは、私たち の小さいころとは全く違った生活や習慣で暮らし ている。どう育てていけばいいか困っている。」 「家 に帰っても学校のことを何も言わない。」というご 意見をいただきました。 何か参考になる書物はないか、とさがしていた ら、『七つの習慣』(スティーブン・R・コヴィー)を偶然 見つけ読みました。これはマンガにもなっている ので、書店でぜひ手にとってみてください。その 中から、親子関係や子育てにかかわるものを取り 出してみました。やや難しいところもありますが、 ご容赦ください。 【子育てはバランスが大切です】 ような生活を送っていたら、黄金の卵を産む資産 はたちまちなくなってしまいます。逆にガチョウ の世話ばかりして黄金の卵のことなど眼中になけ れば、自分もガチョウも食い詰めることになりま す。 この二つのバランスがとれて初めて効果的なの です。このバランスを私はP/PCバランスと 名づけています。 Pは成果、望む結果…子の成長、望ましい変化、 PCは成果を生み出す能力…子どもの能力を意味 します。 【親と子の関係はどうでしょうか?】 幼い子どもは他の者に頼らなけれなばならず、 非常に弱い存在です。 ところが親は、しつけ、親子のコミュニケーシ 貧しい農夫がある日、飼っていたガチョウの巣 ョン、子どもの話に耳を傾けるなど、子どもの能 力(PC)を育てる努力をややもするといい加減 【部屋も掃除しない子に、なんと言えば】 にしてしまいます。 親が優位に立って子どもを操り、自分の思い通 りにやらせる方が簡単だからです。親である自分 たとえば、あなたは散らかり放題の娘の部屋が 気になっているとしましょう。 の方が身体は大きいし、何でも知っているし、そ 娘の部屋がきれいになることがP(成果)すな もそも正しいのだから。子どもに指図して当然な わち黄金の卵です。そしてあなたとしては、本人 のだという態度です。必要ならば怒鳴りつけ、脅 が自身で掃除することを望んでいます。 してでもやらせればよいと考えてしまいます。 となれば、娘が自分で掃除することがPC(成 果を生み出す能力)です。あなたの娘は、ガチョ それとは逆に甘やかすこともできます。何でも ウと同じように黄金の卵を産む資産なのです。対 思い通りにさせたり、欲しがる物をどんどん買っ 応次第でまさに「生きる力」素晴らしい大人へと てあげる親もいます。しかしそれでは規則や規範 変わっていきます。 を守る意識が育たず、目標に向かって努力するこ とができず、我慢する心や責任感のない大人にな ってしまうでしょう。 P(成果)とPC(能力)のバランスがとれて いれば、娘は掃除することを約束し、約束を守る 自制心があるのだから、いちいちあなたに言われ 厳しくするにせよ、甘やかすにしろ、親は頭の 中で黄金の卵(結果や成果)を求めています。 なくても機嫌よく部屋を掃除します。 しかし、あなたがP(きれいな部屋という成果) 子どもを自分の思い通りにするという黄金の卵、 だけしか考えていなければ、部屋を掃除しろと口 あるいは子どもに好かれたいという黄金の卵です。 やかましく言って娘をうんざりさせるでしょう。 だが、その結果、ガチョウ…子ども自身はどう 娘がすぐに言うことを聞かないと、怒鳴り、しか なるのでしょう? りつけることでしょう。こうして、きれいな部屋 この先、責任感、自制心、正しい選択をする判 (黄金の卵)がほしいばっかりに、娘の健全な成 断力や重要な目標を達成できる自信は育つのでし 長(ガチョウの健康)を損ねる結果となってしま ょうか? うのです。 親子関係はどうなるのでしょうか?子どもが十 代になり、大人になる過渡期(中学生、高校生) を迎えた時、それまでの親子関係から、自分を一 私が自分の子どもの行動に過剰に反応している としましょう。 人前の人間として扱い、真剣に話を聴いてくれる 子どもたちが私の気に障ることをし始めると、 親だと思うでしょうか?何があっても信頼できる 胃がきりきりし、すぐに身構え、闘う態勢になり 親だと思うでしょうか? ます。(将来立派な人間にする)長期的な成長や理 あなたはそれまでに、子どもと心を通わせて真 のコミュニケーションをとり、子どもに良い今日 を与えられる親子関係を築いているでしょうか? 解に焦点を当てず、今この瞬間の子どもの行動が 気に食わず、目先の闘いに勝とうとします。 私は、身体の大きさや父親としての権威など持 きになってしまい、するとその子は親に言いなり てる武器を総動員し、怒鳴りつけ、脅し、お仕置 になり無気力になるか、逆に対立し反抗的になっ きをします。当然、勝つのは私です。 てしまうのです。 しかし、勝者たる私は、ぼろぼろになった親子 の絆の残骸の中に立ちすくむことになります。子 【共感によるコミュニケーションの練習】 どもたちはうわべでは私に服従しますが、力で抑 圧された恨みは残るのです。その気持ちはいずれ、 人間の心には理性では分からない理屈がありま もっとひどい形(反抗や非行、家族への暴力)で す。相手を診断せずに処方箋を出すような危険な 噴出することになるでしょう。 医者の真似を親として何気なくしていませんか? 【家族・子育て中心の生き方はいい?】 「ねえ、どうしたの?悩み事があるのならお母さ んに話してごらんなさい。話しにくいかも知れな 家族や子育てを人生の中心に置いている人も大 勢います。 家族の関係や評判から心の安定や自分の存在価 値を得ることです。私も近いところがあります。 いけれど、お母さんね、あなたのことを分かって あげたいのよ。」 「どうかな? お母さんはきっとバカみたいな話 だって言うにきまってる。」 でも、家族の状態や関係に変化があると、ある 「そんなことないわよ。話してちょうだい。お母 いは家族の評判に傷がつくようなことが起こると さんほどあなたのことを大切に思っている人はい 過剰に反応しがちです。 ないんだから。本当にあなたのことを心配してる 家族中心だけの親は、子どもの最終的な幸福を のよ。なぜ、そんなに落ち込んでいるの?」 考える感情的な余裕と力を持っていない場合が多 「別に…」 いです。子どもたちの成長を長い目で見ることの 「いいから、お母さんに話してごらんなさい。」 大切さよりも、子どもより先回りしてその場その 「本当のことを言うと、もう学校が嫌になったん 場で子どもに好かれたい欲求を優先してしまうか だ。」 もしれません。 「何ですって!」そこで母親は急に声を荒げる。 あるいは子どもの行動に絶えず目を光らせる親 「学校が嫌って、どういうことなの? あなたの は、子どもが少しでも悪さをすると、たちまち心 教育のためにどれだけ犠牲を払ってきたかわかっ の安定が崩れてしまいます。腹を立て感情のまま てるの?教育はあなたの将来の土台を築くのよ。 子どもに接してしまいます。わが子の長期的な成 前にも身を入れなさいと言ったでしょ。お姉ちゃ 長よりも目の前の問題に反応し、怒鳴りしかりつ んのように勉強すれば成績も上がるし、そうすれ ける。虫の居所が悪ければ、ささいないたずらに ば学校だって好きになるわ。何回言えば分かるの、 も大げさに反応し、罰を与えるかもしれません。 あなたはね、やればできる子なの。やらないだけ このような親は、子どもに対する愛情が条件つ なの。もっとがんばりなさい。前向きにならなく ちゃ。」 少し間をおいて、母親がまた言う。「さあ、お母 さんに話してごらんなさい。」 人は誰でも、自分のことを分かってもらいたい と思っています。だから、相手を理解することに どんなに長い時間を投資したとしても、必ず大き 私たちはえてして、問題が起きるとあわててし まい、その場で何か良いアドバイスをしてすぐに 解決しようとします。 な成果となって戻ってくるのです。 【今すぐにでも実行に移す】 今度誰かと話をするとき、その人を本気で理解 しかし、その際私たちはしばしば診断するのを する努力をしてみましょう。その人が心を開いて 怠ってしまうのです。まず、問題をきちんと理解 悩みを打ち明けなくても、その人の身になり共感 せずに解決しようとする傾向があります。 することはできるのです。その人の気持ちを察し、 私がこれまで人間関係について学んだ最も重要 心の痛みを感じ取って、「今日は元気がないね」と な原則を一言で言うなら 言ってあげましょう。その人は何も言わないかも 「まず理解に徹し、そして理解される」 しれない。それでもいい。あなたの方から、その ということです。この原則が効果的なコミュニケ 人を理解しようとし、その人を思いやる気持ちを ーションの鍵なのです。 表したのだから。 人が本当に傷つき、深い痛みを抱えている時、 早速、子どもと一対一で話す時間を作ってみま 心から理解したいという純粋な気持ちで話を聴い しょう。子どもを本気で理解するつもりで、真剣 てやれば、驚くほどすぐに相手は心を開きます。 に耳を傾ける。家庭のこと、学校のこと、あるい とりわけ、子どもは、心を開いて自分の思いを打 は子どもが直面している人生の試練や問題を、子 ち明けたい気持ちでいっぱいなのです。そして、 どもの目を通して見る。信頼関係という空気を子 その切実な思いは、友達よりも、実は親に対して どもの心に送り込むのです。 向けられているのです。 親は自分を無条件で愛している。悩みを打ち明 愛する人たちを深く理解するために投資した時 けたら必ず味方になってくれる、自分の悩みをバ 間は、開かれた心と心のコミュニケーションとい カにしたり批判したりしない。そう確信できれば、 う大きな配当になって返ってきます。家庭生活や 子どもは親に何でも包み隠さず話すものです。 結婚生活に影を落とす問題の多くは、深刻な問題 に発展する前に解決できるものです。家庭の中に しかしあなたに誠意がなかったら、相手を傷つ けるだけです。相手が心を開いて傷つきやすい心 の中を見せてから、実はあなたに誠意がないとわ かったら、その人は弱い部分をさらけ出したまま 放りだされ、傷はいっそう深くなるばかりです。 何でも話し合えるオープンな雰囲気があれば、問 題になりそうな芽はすぐに摘み取れるのです。