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保証債務の相続はどこまで?[PDF形式]
Q 法 律 知 識 暮らしの法律 保証債務の 相続はどこまで? Q &A 第 7 相談者の気持ち 亡くなった父が親戚の住宅購入のため借金の保 証人になっていたことが分かりました。父親の 財産を相続すると、保証債務もそのまま相続す るのでしょうか? 回 山村 行弘 Yamamura Yukihiro 弁護士。第一東京弁護士会所属。東京・千代 田区にある萩谷法律事務所にて、一般民事・ 刑事事件、知的財産、法律相談などを手がける。 協力:萩谷雅和(萩谷法律事務所) A 相続人(子ども)は、被相続 不特定の債務を保証する信用保証があります。 人(亡父)の一身に専属するも この信用保証も、責任の及ぶ範囲が極めて広 こう はん のを除いて、被相続人が相続開 汎になることや、人的信頼関係を基礎としてい 始時に有していた一切の権利義務を承継します ることに鑑み、相続の対象にならないものとさ (民法896条)。したがって、亡父のプラスの財 れています(最高裁昭和37年11月9日判決)。 産だけでなく、借金等のマイナスの財産も子ど なお、一定の期間に生じる不特定の債務を担 もに引き継がれることになります。 このことは、 保するものとして、アパート等の不動産賃貸借 子どもが当該権利義務の存在を知っていたか否 から生じる借主の債務の保証がありますが、こ かということに左右されません。 れについては、保証人の債務が予期せぬほど巨 保証債務についても、連帯保証を含む通常の保 額になることはまずないことから、保証債務は 証債務は、借金等と同様に原則として相続人に 相続されます(大審院昭和9年1月30日判決) 。 引き継がれます(大審院昭和9年1月30日判決) 。 本件では、亡父が親戚の借金の保証人になっ もっとも、保証債務には、個人的な信頼関係 ていたということですので、通常の保証債務で に基づくものや、内容が不確定で相続人にとっ あったと考えられます。したがって、子どもは て過大な負担になるものもあることから、相続 保証債務を相続することになります。 の対象とならないものもあります。 このように相続によって予期せぬ債務を引き 例えば、使用者が被用者を雇い入れる際、当 継いでしまう場合、子どもは、相続放棄によっ 該被用者が使用者に損害を与えた場合に、その てこれを避けることができます。 損害賠償債務を保証する身元保証があります。 相続放棄とは、相続財産のすべて(プラスの これは、保証人と被用者の人的信頼関係を基礎 財産もマイナスの財産も全部)を相続しないと にしているものなので、相続されないと考えら いう手続きです。借金等のマイナス財産がプラ れています(大審院昭和18年9月10日判決) 。 スの財産より多い場合には、相続放棄をするこ 次に、継続的な売買取引・銀行取引から生じる とで、債務の相続を避けることができます。 32 2012 12 国 民 生 活