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今回の国際的な金融混乱を踏まえた バーゼル銀行監督委員会の取り組み
金融規制・監督はどう変わる? 今回の国際的な金融混乱を踏まえた バーゼル銀行監督委員会の取り組み 神 津 多可思 目 はじめに 1.バーゼル銀行監督委員会の認識 2.バーゼル銀行監督委員会の作業の具体化 次 3.バーゼル銀行監督委員会のこれまでの作業結 果 4.今後の展望 昨年夏以降の国際的な金融市場の混乱では、銀行のリスク管理についてさまざまな問題点が浮かび上がった。 バーゼル銀行監督委員会では、金融ショックに対する銀行システムの強靭性を強化するための具体策として、① バーゼルIIの枠組みの強化、②リスク管理実務、③流動性リスクの管理の強化、④情報開示と価格評価実務の改 善、を列挙し、現在、検討作業を進めている。そのうち幾つかでは、既に具体的なアウトプットが出されている。 に置かれている。 はじめに これら一連の出来事の中で、欧米先進国の主要 昨年夏以降、米国サブプライム住宅ローン問題 金融機関を中心に、リスク管理面でのさまざまな に端を発した今回の金融混乱は、幾つかの局面を 弱点が浮かび上がってきた。例を挙げれば、まず 経て、米国の大手投資銀行の破綻・合併、国際的 今次混乱の当初では、流動化商品への運用を行う に活動する主要な欧米商業銀行への公的資金投入 関連会社の資金繰りが悪化し、そこから銀行本体 という事態にも至った。それでも金融市場の不安 の流動性リスク管理のあり方および重要情報の開 定な状態は続いており、地域的に見ても動揺はグ 示のあり方が注目されるようになった。さらに、 ローバルなものとなっている。まさに今日、世界 証券化商品全般の市場流動性が低下する中で、在 の金融市場は近年経験したことのない厳しい環境 庫として積み上がった商品に見合った資金の調達 神津 多可思(こうづ たかし) 日本銀行金融機構局審議役(国際関係) 。1980年東京大学経済学部卒業。同年4月、日本銀 行入行。調査統計局参事役、 考査局参事役、 政策委員会室審議役を経て、 2006年8月より現職。 証券アナリストジャーナル 2008.11・12 5