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極値理論と金融・資本市場におけるリスク管理
論 文 論 文 極値理論と金融・資本市場におけるリスク管理 キャピタスコンサルティング株式会社 代表取締役 森 本 祐 司 (日本証券アナリスト協会検定会員) 目 1.はじめに 2.極値理論について 3.TOPIXデータによる簡易試算結果 次 4.実務への適用に向けて 5.終わりに 定量的なリスク計測手法はリスク管理の中で広く認知され、標準的な手法なども根付いている。また、資本配 賦やパフォーマンス評価等、リスク量の活用範囲も広まってきている。ただしリスク量の推定において、この方 法こそが絶対に真となる推定手法は存在しない。したがって、手法の妥当性を常に検証しておくことが重要であ る。本稿では、そうした課題への問題提起を行うべく、分布の裾に着目した極値理論を紹介し、標準的な手法と の比較検証結果等を紹介する。 いう用語自体も、単に計測してリスクの度合いを 1.はじめに 認識し、ある基準を超過していないかどうかを確 定量的なリスク管理手法が導入され、一般に広 認するといった健全性の観点にとどまらず、希少 まってから既に10年以上の月日が経過している。 な資源である資本に対してどのリスクをどのよう VaR(バリュー・アット・リスク)といった名称 に取ることで企業価値の拡大に挑むべきか、とい は金融機関のリスク管理では一般的に用いられる う効率性の観点が加わるようになってきた。それ ようになり、分散共分散法やヒストリカル法とい に伴い、計測されたリスク量の活用範囲も、単に った手法も標準的な手法として広く認知され、用 基準以下に収まっているかどうかのチェック項目 いられるようになっている。また、リスク管理と のみならず、資本配賦、経済資本的考え方の導入 森本 祐司(もりもと ゆうじ) 1989年東京大学理学部数学科卒業。96年マサチューセッツ工科大学経営大学院修了。89 年4月、東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)入社。その後、日本銀行金融研 究所、モルガン・スタンレー証券等を経て、2007年1月より現在の会社を立ち上げ、代 表取締役に就任。現在、東京大学大学院数理科学研究科非常勤講師、東京工業大学大学院 イノベーションマネジメント研究科客員教授も務める。 52 証券アナリストジャーナル 2007.12