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英国ビッグバンの歴史的・文化的背景とその経済的・制度的影響
世界の金融センターとしての日本市場の課題と展望 英国ビッグバンの歴史的・文化的背景とその経済的・制度的影響 ―市場経済システムの多様性の実証― 法政大学 経済学部 教 授 渡 部 亮 (日本証券アナリスト協会検定会員) 目 1.はじめに 2.英国経済への影響 3.自由主義の伝統 4.ビッグバン前史 5.外資系金融業者による席巻 6.米系投資銀行の経営力 次 7.シティー speakとウォールストリートtalk 8.コーポレートガバナンス改革 9.原則重視の金融規制監督 10.金融資本市場のビジネスカルチャー 11.短期利益志向の弊害 12.終わりに 「英国ビッグバンの経済効果は何か」という問いに対する明白かつ簡単な答えは「英国の経済成長と雇用増に 貢献した」ということである。しかしそれよりも重要なことは、ロンドンの金融資本市場で開花した民間主導型 の分権的市場システムが、国家政府主導型の中央集権的システムよりも優れていることを実証したことである。 ビッグバンの延長線上には、コーポレートガバナンスや金融規制監督の改革も位置付けられ、それらは米国に逆 輸出されつつある。そうした意味で、英国の規制改革は市場経済システムの多様性を体現している。 ドン金融資本市場の勝利を宣言した(注1)。 1.はじめに 1986年に実施されたビッグバン以降、ロンド 2007年6月、ゴードン・ブラウン英国新首相 ンの金融資本市場(シティー)で開花した自由で は「今や、世界の外国株式取引の40 %、外国為 開放的な金融取引は、グローバルスタンダードと 替取引の30 %がロンドン市場で行われ、しかも なり、ひとり英国経済のみならず、世界経済全体 ビジネスの80 %は国際業務だ」と述べて、ロン の効率化にも貢献した。 渡部 亮(わたべ りょう) 1970年野村総合研究所入社。同社ニューヨーク事務所駐在員、ワシントン支店長、投資調 査部長、NRIヨーロッパ社長、研究理事。いちよし経済研究所社長を経て、2002年4月から 現職。主著は『ワシントン・ゲーム』 (TBSブリタニカ) 、 『英国の復活・日本の挫折』 (ダイ ヤモンド社) 、 『アングロサクソン・モデルの本質』 (ダイヤモンド社)など。 30 証券アナリストジャーナル 2008. 1