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神病薬に対するアドヒアランス
5 2 2 新潟 医学 会 雑誌 第 1 2 4巻 第 9号 平成 22年 ( 2 01 0)9月 5 退院後 1年間における統合失調症患者の抗精 神病薬 に対するア ドヒアランス 根 本麻知子 再度邦 雄 灘 *・染 矢 か っ た くオ ッズ比 27A, 95%信 頼 区 間 4. 7- 1 5 8. 9) .SGA5割 (ア リピプラゾ-ル,オランザピ 俊幸 新潟 大学 大学 院 医商 学 総 合研 究 科 精神 医学 分野 新潟 大学保健管理 セ ンタ- * 【は じめ に 】 統 合 失 調 症 患 者 の 抗 精 神 病 薬 に 対 す る ア ドヒ ア ラ ン ス は 必 ず し も良 好 で は な く, ア ン,ペロスピロン,クエチアピン,リスペ リドン)の 治療継続期間には有意 な差 が認め られなかった. 【 考察】MP Rによるノンア ドヒアランスの検 出 力は低いにもかかわ らず,先行研究 と同 じく本研 究 において も MPR不良 は再入院 ・脱落 と関連 し ていた これ らの結 果は,簡便にア ドヒアランス ドヒ ア ラ ン ス 不 良 と 再 発 との 関 連 が 示 され ている を測定で きる MPRが臨床的有用性 を有す ること, こ と か ら, 統 合 失 調 症 の 再 発 予防 に お い て良好な ア ドヒアランス向上によ り再入院 ・脱落 を予防で ア ドヒ ア ラ ン ス を維 持 す る こ と は 重 要 な課題 であ きる可能性 を示唆 している. -一 方,治療継続性 に る . ア ドヒ ア ラ ン ス に は 服 薬 遵 守 性 と継続性 の 2 つ いては SGA間 に有意差 が認め られず,先行研 つ の 要 素 が あ る と され て い る .服薬遵守性の指標 究の結果 を再現で きなかった.ただ し,本研究の と して 処 方 目数 か ら服 薬 す べ き目数 を除 した値 で サ ンプル数は 卜分でな く今後の さらなる検討が必 あ る M edi eat i on Posses s i onRa t i o( MPR) を用い 要で ある, た 研 究 で は , M PR 良好群 ( 0. 8- 1. 1)の再入院 率 は 不 良 郡 よ り も有意に低いことが示 されてい る ( Val ens t ei neta1 . ,2 0 0 2) . また治療継続性につい ては,最近 の 大規 模なe 放融i v e n es s研究により第 t i 精神科長期入院患者の退院に関わる要因につ いて 二 酎 宅抗 精 神病薬 ( s ec ondgener a t i ona r 雨ps y- 阿部 俊幸 新潟 県精 神保健福祉 セ ンタ一 choも 豆 cs,SGA) の 中で もオ ランザ ピンが優れてい る 可能性 が示唆 され て い る ( Li eber maneta1 . , 2005;Har oeta l. ,2006).今回われわれは,統合失 調症患 者を対象 と し退 院 後 1年間 におけ る MPR 拍 的】平成 且 8年度の新潟県精神科病院入院患 者調査 について,退院 と関連す る要因 を分析す る. 【 方法 】2年後の転帰情報 が得 られた 4 45 3人の 不良 と再 入院 ・脱落 との関連および SGA5割の治 うち, 療継続性 につ いて後方視的な調査 を行 った. ①未成年者 E 対 象】2005年 4月- 20 08年 3月に新潟 大学医 ② 平成 1 8年度調査時点ですでに退院 していた可 術学総合病院 梢神村 を退院 し,同科での外 来治療 能性がある症状区分 5の者および症状区分の記 に移行 した統 合失調症患 者 ( のべ 1 22人)に以 打 載のなかった者 の選択基準 と除外基準 を適用 し,最終 的 に 89人 を対象 と した.選択基準 は抗精神病薬 については ③患 者数 が い ずれ も全体の 1 パ ーセン トに満 たな い疾患で ある F5生理的障害,F6人格障害,F8 単剤 を内服 してい る者,除外基準 は電気疫撃療法 発達障害,F9特定不能,その他の疾患 と診断 さ などの短期 入院,調査期間中の再入院, タロザ ピ れ た者 ン治験 の者 と した. 【 方法】後方視的に診療録 を調査 した.観察期間 ④入院形態 が措置 入院 またはその他の入院の者 ⑤死 亡または転院 した者 は退院後 1年間 と し,再 入院 用簸藩などが生 じた 以 上のいずれかに該 当す る 6 8 3人 ( 1 5 . 3%) を除 際 はその時点で打 ち切 りと した. MPR良好群 と く 3770人 を分析 の対 象 と し,各要図 と退院率 と 不良群 の 間にお け る再 入院 ・脱 落 の割 合 お よび SGA間における治療継続期間 を比較 した. の 関連 について単変量及び 多変韻解析 を行 った. 【 結果 】再 入院 ・脱 落 の割 合 は不 良群 が 75% ( 6 / 8) と良好群の 9. 9% ( 8 / 81 ) よ りも有 意 に高 【 結果】 ( 1 )単変凝解析 退院率は性別では有意差 は認めない.年齢階級 学 嚢 会 記 事 523 関連要因別退院率,調整オ ッズ比 および 9 5%信頼区間 6 0歳未満 対象者 量率 退院 数 調整 オ 0. 57 年齢 ( 1 0歳 単位 ) 0. 71 有意 0. 46 * 2 ▲ 28 0+ 97 0◆ 1 2 上限 下限 女性 61 1 37 6. l Q b 1 , 00 男性 9 82 79 8 , 0 % 1 . 49 1 3 01 8 9 6. 8 % 1 . 00 認 知症 36 2 5 . 6 % 1 . 9 2 3一 . 37 ア ル コー ル ー 4 3 2一 . 4 % 3★ 42 5 9 . 1 8 0. 20 気分 63 1 5 , 9 % 3 . 9 0 . 24 51 0ー 30 0. 07 統合 失調症 1 0 1 4 1 7 . 1 % 1 ▲ 5 6 3 4. 2 0 11 帽 1 0 8. 6 ㌔ 1 ー 9 3 2 5. 0 4 0. 1 5 35 1 2. 9 q D 0. 5 8 1 2, 1 3 0. 03 大病 院 ( 4 0 8床 以 上) 63 4 33 5. 2 % 1 . 0 0 中小病 院( 40 0床 未満 ) 95 9 83 8. 7 % 2ー 4 4 4, 08 1 . 46 1 36 7 8ー 5. 9 % 一 . 0 0 神経 症 精神遅滞 てんかん 私 的病 院 公 的病 院 6 0歳目 上 2 2 6 対餐 者 3 5 1 5 . 5 % 翠 退院 数 3. 97 調整 オ 年齢 ( 柑 歳 単位 ) 1 , 2 4 女性 1 2 2 9 男性 94 8 1 3 8 l l . 2 鴇 2. 1 4 * 下限 i . 5 0 1 . 02 1 . 43 0, 78 有意 * 1 . 00 9. 3 % 1 . 05 1 2 03 7 7 6.4% 1 . 0 0 認 知症 591 1 09 ー 8. 4㌔ i . 81 2.66 1 . 23 * 器 質性 32 4 1 2. 5 q D 1 . 07 2. 8 5 0. 41 4 0. 31 統合 失調 症 ア′ レコ- ノ レ 気分 神 経症 5ー 7. 8 % 0. 81 2.1 0 1 3 6 1 9 1 4. 0% 1 . 3 4 2. 2 8 0.7 9 3 0 3 1 0. 0% 1 . 06 3.ー 了 0. 36 5 4. 8 % 0. 4 9 1 .1 3 0★ 21 5 1 7. 2 % 1 . 48 3. 7 0 0, 59 5. 5 2 2. 40 精神 遅 滞 1 05 てんかん 9 2 大病 院 絹8 0床 以上) 88 7 . 3 4 上限 辛 7 32 31 4. 2 % 1 , 00 中小病 院 ( 4 00床 束溝) 1 445 1 9 5 1 3. 5 % 3.6 4 私 的病 院 2 03 5 2 02 1 . 00 9ー 9q b * 別 では 50歳代 が最 も低 い.診断別で は認知症 が 体 ( 公的か否 か) ,病床数 ( 4 0 0床未満, 4 0 0床以 最 も高 く,以丁気分障害,アル コ-ル,てんかん, 上)以 L5要因 を説明変数 と して ロジステ 十ツタ 神経症,器質性,精神遅滞,統合失調症の順 で あ 回帰分析 を行 ない,調整 オ ッズ比 とその 9 5%信 る.病院規模 は小病院 ( 200床未満) ,中病院,大 病院 ( 4 0 0床以上) に分 け比較す ると大病院 が最 頼区間 を求めた.なお,診断 名は F2を,病床数 は 4 0 0床以 Lをそれぞれ参照 カテゴ リ-に設定 した. も低い.私的病院 は公的病院 に比べて有意に低 い. 分析 にあた っては統 計バ ッグ-ジ SPSS6 . 1を用 ( 2) 多変量解析 (ロジステ ィック回帰分析) いた.結果は表の とお りで あった. 年齢階級別退院率が 5 0歳代 を底 に U字 カ-ブ 【 考察】6 0歳 以上 と未満の両群 とも患者側の要 0歳 を域 に二群 に分 けで分析 し を描 くことか ら,6 因 として年齢,病院側の要因 と して病院規模,蕊 た.退院 を目的変数 とし,患者側 の要因 としで 性 的病院 が退院 と有意 な関連 を認 めた.診断名 に関 別,年齢,診断名 を,病院側の要因 と して設置主 しては 6 0歳 以上の群 のみで認知症 が退院 と有意 5 2 1 新潟医学会雑誌 第五 2 4巻 第 9 号 平成 2 2年 ( 2 01 0)9月 な関連 を認めた 本人,家 族 ,地域等の さま ざま 援 体 制 の 構築 な要因が入院時の病院の選択 に関 与一 してい るもの 【新 潟県に おける高次 脳機能障害 支援の 現 況】 と考 えられ 患者側 と病院側の要因 を明確 に区分 す ることはで きない. しか し,結果 として病院の 規模や設立主体によ り退院率 が有意に異 なること は各病院関係者 が共通 し認識 してお くべ きことと 思われ る. ・高次脳機 能障害 宙の 発生率 :年間 273人/午 ( 推計) ( 6 4歳以 F人 目の 0 .01 40 / a) ・高次脳機能障害診断基 準の認知度 :臓 神 村病院 5 6%>その他の精神科 5 0% ・社会的行動障害への対応 :脳血管疾患 リハ医療 【まとめ】 新潟 県梢 砕料病院 入院患者調査結 果 で,年齢,病院規模,公的病院,60歳以上の認知 症が退院 と有意 な関連 を認 めた. 機関 3 10 / o>精神科病院 21% >その他の精神科 ま 90 / a ・精神症状の治療 :精神科病院 8 4%>その他 の 精神科 5 8%>脳血管疾患 リハ医療機 関 5 6% 【 文献】藤田利治,竹島 正 :精 神 障 害者の退院 曲線 と長期在院の リスク要因につ い ての患者調査 に基づ く検討.精神神経学雑誌 1 0 8:9,891-905, 2 0 06, ・相 談 支 援 の 実 施 :脳 血管 疾 患 リハ 医 療 機 関 47% -精 神 科 病 院 47% > そ の他 の 精 神 科 1 6% 【 今後の課題 とまとめ】支援 体制 を整 えてい く ための拠点の設置 と支援 ネ ッ トワークの構築,支 援者への研修,県民への普及啓発が今後の課題で 7 新潟県における高次脳機能障害支援普及事業 ある. 高次脳機能障害者 は増加 してお り,精神科 の治療対象とな る場合や精神障害 露の範噂で福祉 について 河 村 里絵 書宵 卜 裕 千 ・両岸 保科志質 f *・阿 部 里映 * 俊幸 新潟 県精神保健福祉 セ ンタ- サ-ビスを利用することか ら,蔓 束療福祉関係 者に 事業周知 を図 り,支援 の必要性 に対す る共通認識 の滴寮が重要 と考 えてい る. 新潟 県福祉保健部障害福祉課 * 【 は じめに】脳損傷の患 者の中で,記 憶障害,港 意障害,遂行機能障害,社会的行動障害 などの認 知障害 を 室たる要因 として生活 l 二 の困難 を有 しな 8 特定不能の認知障害 における脳形態変化 と臨 床特性 が ら∴ 湊断 をは じめ支援の手法 が確立 していない 新藤 雅延 *弓 に村 一群 が明 らかになって きた. この一群 に対す る支 染矢 後 事* -* * 秀明 *・横山 裕一 * 8年度 か ら障害 者自 援対 策 を進 め るため,平成 1 新潟 大学医歯学総合病院精神科 * 立支援法の都道府 県事業 と して高次脳機能障害支 新潟 大等∵ 大学院医歯学総 合研究科 援普 及事業 が始 まった.新潟 県では平成 1 9年度 か ら事業化 してお り,現況 と課題 を報告す る. 【 高次 脳機 能障害者 を取 り巻 く現状 】実態把握 が囲薙,普 及啓発の遅れ 高次脳機能障害 に対応 す るサービスの不足,提供体制の未整備が挙げ ら れ る. 【 高次脳機能障害支援 普及事業】 ・都道府 県 ごとに支援拠点機関 を設置. ( 平成 24年度 までに全国で設置 . 新潟 県は未 設置. ) 書事業内容 :個別支援,普 及啓 発,教育研修,支 精神医学 分野 ** 【は じめ に】特産 不能 の認 知障害 ( Cogni t i ve Di s or de rNotOt he r wi s eSp ec i f i ed;COG-NOS) の認知機能 は認知症 と健常の境界にあり,その認 知 障 害 は進 行 す る場 合 も回復 す る場 合 もあ る. 様 々な病態 が含 まれてお り,脳の形態変化 も多様 と考 え られ るが,実態 は明 らかで ない. そ こで 我 々は COGINOS患者 の脳萎縮 と脳 血管病変 に ついて調査 した.そ して臨床特徴 と併せて解析 し, 画像 による定義評価 は COG-NOSの有用 な客観 的指標 となるか検討 した.