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法科大学院の人材養成機能と就職支援 Career Support Services for
法科大学院の人材養成機能と就職支援
─組織廃止を強要する政策提言への反論─
21世紀教育フォーラム 第10号
(2015年 3 月)
21st CenturyEducationForum.Vol.10(Mar.2015)
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法科大学院の人材養成機能と就職支援
─組織廃止を強要する政策提言への反論─
Career Support Services for Japanese Law Schools:
A Counterargument against Policies Forcing Institutional Abolishment
田 中 正 弘*
Masahiro TANAKA
要 旨
本稿は、法科大学院の定員削減・組織再編が政府主導で始まった理由を、法曹人口の問題および法曹
の就活状況などの描写を通して探求してみたい。そして、法科大学院の定員削減・統廃合を推進するた
めに、政府が望む評価基準に沿って人的物的支援の内容を改める問題や、認証評価の評価基準を政府の
意向に従って改変する危うさを議論する。また、組織廃止を強要する政策提言への反論として、法科大
学院の就職支援制度の充実と法曹養成に特化しない法科大学院のあり方を提案したい。なお、本稿は、
これらの論証を目的として、独自に実施した質問紙調査や訪問調査の結果を活用する。
キーワード:法科大学院、人材養成、就職支援、組織廃止、認証評価
はじめに
法曹(裁判官、検察官、弁護士)を養成する専門職大学院として誕生した法科大学院は現在未曾有の
危機に晒され、その存立は風前の灯火となった。事実、最大時に法科大学院全体(74校)で志願者数
72,800(2004年度)、入学定員5,825(2005~ 7 年度)、入学者数5,767(2006年度)をそれぞれ数えたも
のが、2014年度には、法科大学院全体(67校に減少)で志願者数11,450(最大時の15.7%)、入学定員
3,809(最大時の65.4%)
、入学者数2,272(最大時の39.4%)へと激減した。また、入学定員充足率も、
2010年度に84% だったものが、2014年度には60% へと下がっている。特に、充足率が30% 以下の機関が
67校中22校(2014年度)も存在するなど、非選抜的な法科大学院の苦しい現状が明らかとなった(中央
教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会 2014)。
学生を集められなくなった法科大学院の中には学生募集を停止する機関も出てきた。最初の 1 校が
2011年 4 月に募集を停止すると、その後に続いて、 4 校が2013年 4 月に、 2 校が2014年 4 月に、それぞ
れ学生募集を停止している。しかし、法科大学院の校数・学生定員は未だに過大であると判断した日本
政府は、法科大学院の組織見直しを論じる法曹養成制度関係閣僚会議の設置を、2012年 8 月21日に閣議
決定したのである。そして、この閣僚会議の下に、多様な有識者で構成される法曹養成制度検討会議が
置かれている。この検討会議の第 1 回会議は2012年 8 月28日に開かれ、その10ヶ月後の第16回会議
(2013年 6 月26日)で締めくくられた。その成果は「取りまとめ」(2013年 6 月26日)として公表されて
いる。
*弘前大学21世紀教育センター
Centre for 21st Century Education, Hirosaki University
12
田 中 正 弘
法曹養成制度検討会議の「取りまとめ」は、法科大学院にとって、存続に関わる厳しい提言内容を含
んでいる。その提言とは、①法科大学院の定員を大きく削減する、②法科大学院が自主的に組織を見直
す(統廃合を進める)
、③それらを実行しない法科大学院に法的措置をとる(政府の制裁を加える)こ
とである(法曹養成制度検討会議 2013 : 13)。ここで法的措置が具体的に何を意味するのかは不確定で
あったが、法的措置の施行を法曹養成制度関係閣僚会議が2013年 7 月16日に正式に決定したことの影響
は甚大であった。2015年 4 月の学生募集を断念した機関が13校(2014年 7 月 1 日現在)も現れたからで
ある。その結果、最大時74校存在した法科大学院は、20校が脱落し、(2015年 4 月以降も学生を受け入
れる機関は)54校となった。
本稿は、法科大学院の定員削減・組織再編が政府主導で始まった理由を、法曹人口の問題および法曹
の就活状況などの描写を通して探求してみたい。そして、法科大学院の定員削減・統廃合を推進するた
めに、政府が望む評価基準に沿って人的物的支援の内容を改める問題や、認証評価の評価基準を政府の
意向に従って改変する危うさを議論する。また、組織廃止を強要する政策提言への反論として、法科大
学院の就職支援制度の充実と、法曹養成に特化しない法科大学院のあり方を提案したい。なお本稿は、
これらの論証を目的として、独自に実施した質問紙調査や訪問調査の結果を活用する。
本稿は、右記の 5 節で構成される。(1)先行研究の検討と課題の設定、(2)法曹人口の問題と法曹の
就活状況、
(3)公的支援の見直し、(4)就職支援の認識と試行、(5)まとめである。第 1 節で、日本の
法科大学院に関する先行研究を検討し、本稿の独自性や意義を明確にする。
(1)先行研究の検討と課題の設定
法科大学院も含めた専門職大学院の発足過程の包括的な研究成果として、例えば、天野(2002)は、
専門職大学院の制度化が、司法制度改革の一環である法科大学院構想との擦り合わせで進められたと論
じた。山田(2003)は、日本の専門職大学院(特に法科大学院)は、アメリカをモデルに発足したと述
べた。橋本(2009)は、法曹も含めた専門職養成の日本的構造を、養成の量を管理するアクター間のパ
ワーバランスの視点で、記述している。吉田・橋本(2010)は、インプット、スループット、アウト
プットという 3 側面で、法科大学院など専門職大学院の実態を分析した。
法科大学院の現状と課題を考察した研究成果には、司法試験の合格者数の問題や、法科大学院の教育
内容を分析したものなどが多い。例えば、前者の研究成果の一例として、小林(2010)は、司法試験合
格者が急増していった背景を、日本弁護士連合会の政治的駆け引きの描写を通して説明している。同様
に、石井(2006)は、司法試験の合格者数をめぐる法曹三者の力関係を歴史的に分析することで、法科
大学院の設立経緯を論じた。それから、後者の研究成果として、椎名ほか(2010)は、司法試験の合格
率を予測する統計モデルを提示した。
法科大学院の教育内容を論じている先行研究は、数多く蓄積されてきた。例えば、山野目(2012)は
研究者教員の立場で、梓澤(2005)は実務家教員の立場で、谷屋(2011)は学生の立場で、それぞれ法
科大学院の教育内容のあるべき姿を論じている。岡田・齋藤(2013)は、弁護士の国際化の観点で、法
科大学院の教育のあり方を議論した。
上記のように、法科大学院に関する先行研究は多様に存在するが、本稿が着目する二つの論点(法科
大学院の組織廃止を強要する政策提言の問題や、法曹以外の人材養成・就職支援制度のあり方)を検討
した研究成果は管見の限り見当たらない。その理由として、組織廃止を強要する政策提言は近年に公表
されたもので、未確定の新しい課題であること、および多くの司法試験不合格者が就職難に直面してい
るものの、法曹以外の人材養成・就職支援に法科大学院が積極的でなかったことなどが挙げられる。
法科大学院の組織廃止を強要する政策は、法科大学院の校数・学生定員を過大とみなし、司法試験不
合格者を大量生産している現状を改善する狙いで策定されたものである。しかし、不合格という結果の
みで高度な法的素養を修得した多様な人材の存在(活躍の場)を否定するのは、短慮であると主張した
法科大学院の人材養成機能と就職支援 ─組織廃止を強要する政策提言への反論─
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い。そこで本稿は、法科大学院の定員削減・統廃合を推し進める目的で認証評価などの制度を政府が利
用する問題を分析し、かつ法科大学院の就職支援制度のあり方を提案する。そして、その成果が法務博
士という高学歴の就職浪人を減らす一助となることを目指す。なお、この本題を論じる前に、法科大学
院認証評価制度を概説しておく。というのも、他の専門職大学院の認証評価とは異なる特徴を有してい
るからである。
法科大学院は、大学全体で 7 年ごとに受審する機関別認証評価とは別に、専門分野別認証評価を 5 年
ごとに受審しなければならない。この分野別認証評価は「法科大学院の教育と司法試験等との連携等に
関する法律」第 5 条に従い、当該機関の適格認定が行われる(野田ほか 2011)ことに他と異なる特徴
がある。そして、この適格認定の判定が厳しいことも、特徴といえる。事実、2009年度までに全74校が
1 巡目の評価を受審し、24校(32.4%)が不適格となった。さらに、文部科学省は2010年に省令を改め
て、認証評価基準に「法科大学院の課程を修了した者の進路(司法試験の合格状況を含む)に関するこ
と」を加えている(舘 2012)。
司法試験の結果を評価基準に加えることは、問題を孕んでいる。例えば、舘(2012 : 53)は、「評価
基準に『司法試験の合格状況』を加えなければならないとしたことは、法科大学院教育を司法試験の準
備教育とはしないための防波堤の決壊を意味する」と論じた。なお、司法試験の合格状況について、近
年の合格者数は年2,000名程度で、その合格率は約25% に留まっている。よって、修了生の大半は法曹
の道を断念せざるを得ない状況となっている。そこで、次節において、望ましい合格者数という法曹人
口の問題と、法曹の就活状況を描写してみよう。
(2)法曹人口の問題と法曹の就活状況
法科大学院が誕生し、新しい法曹養成制度が始動する前の日本において、法曹の資格を得るために
は、旧司法試験に合格し、かつ司法修習所の研修を修了する必要があった(Tanaka 2007)。旧司法試
験の合格者数は、1990年まで、毎年500人程度で推移していた。その後徐々に増え続け、1999年に1,000
名に達した。そして、2004年には(最大値となる)1,483名に達した。2006年には、旧司法試験の合格
者549名に加えて、法科大学院の修了生に受験資格が与えられる新司法試験が始まり、1,009名が合格し
た。その後、新司法試験の合格者は2007年に1,851名、2008年に2,065名へ増えたが、2009年以降は約
2,000人で停滞することになる。ちなみに、旧司法試験は2012年に廃止された。
新司法試験合格者数が2,000人程度で停滞した主な理由として、法曹人口全体の急激な増加に対する
法曹界(特に弁護士)の強い懸念が考えられる。その懸念は二つある。一つは、合格者の急増による法
曹の質の低下(および法科大学院の教育効果への疑念)であろう。例えば、司法修習所の管轄組織であ
る最高裁判所は、司法修習修了試験である司法修習生考試(二回試験)の不合格者数の増加を根拠とし
て、修習生(特に学力下位層)の質の低下を懸念する文章「最近の司法修習生の状況について」(2008
年 5 月23日)を公表している。
しかしながら、稲田(2010 : 26)が指摘しているように、
「合格者数が増加することは、かつて不合格
であった者が合格することであり、全体的な『質』の低下は当然」の結果といえる。よって、ここで重
要なことは、
「観察される『質』の低下が、合格者の増加では統計的に説明できる範囲を超えるもので
あるならば(中略)
、合格者数の問題以外の理由、つまり法科大学院入学者の質、あるいは法科大学院
の教育の当否の問題が疑われる」
(稲田 2010 : 27)ことである。仮に、法科大学院の教育の質が低けれ
ば、合格者を増やすのは危険である。実際、弁護士である和田(2013 : 29)は、以下の指摘をした。
法科大学院における教育は、現状では残念ながらその多くが司法試験にも実務にもあまり役に立た
ないものである(中略)。優秀な法曹になった者たちの存在は、主に、法科大学院に入学する前に旧
司法試験を目指して続けてきた学習に加えて、法科大学院在学中や終了後に自らの努力で学習を続
けたことによるもの、と言うべきである。
14
田 中 正 弘
和田(2013 : 40–1)は、法科大学院が法曹養成機関として機能しないのは、「教員の多くを占める学者
(研究者)教員のほとんどが、司法試験に合格しておらず、司法修習も経験していないからである」と
主張している。実務を知らない教員に実務は教えられないという考え方である。
とはいえ、法科大学院修了後に新司法試験に合格した者が、法科大学院を経ずに旧司法試験に合格し
た者よりも質的に劣っているという確かな証拠は存在しない。逆に、小山(2014 : 226)は、弁護士へ
の質問紙調査の分析から、
「司法試験の種類によって能力アイデンティティ(自己評価)に差が」見ら
れないことを実証している。言い換えれば、「法科大学院によって法曹の質が低下したという俗説が必
ずしも適切ではない」ことが検証されたのである。
新司法試験合格者数が2,000人程度で停滞したもう一つの理由に、弁護士就職難がある。日本弁護士
連合会が毎年実施している「司法修習生に対する生活実態アンケート」(2007,2008,2009,2010,
2011)の調査結果によると、各年の 7 月までに採用内定を得られなかった修習生の割合は、2007年
8 %、2008年17%、2009年24%、2010年35%、2011年43% であり、就職難の悪化傾向が見られた。なお、
2001年から2011年までの10年間において、裁判官は2,243人から2,850人(27% 増)、検察官は1,443人から
1,816人(26% 増)
、弁護士は18,243人から30,485人(67% 増)へ、それぞれ増加している(鈴木 2012:
23)
。
上記のように、大多数の新人の受け入れ先となった弁護士業界で、新人の職場環境の悪化が問題視さ
れるようになった。事実、弁護士事務所の内定を得られなかったため、司法修習修了後に即時独立した
「即独弁護士」(即独)、事務所の軒先を借りて独立採算の経営をする「軒先弁護士」(ノキ弁)など、先
輩弁護士の OJT を期待できない新人弁護士が増加した(鈴木 2013: 21)。ただし、専修大学の「法科大
学院附属弁護士事務所が、司法試験に合格した修了生を少なくとも 1 年雇用することで、彼らに OJT
の機会を与えている」
(専修大学法科大学院訪問調査:2014年10月15日)ことを、就職難への法科大学
院側の対応策として、ここに表記しておきたい。
新人弁護士の就職難や弁護士事務所間の過当競争が顕在化したことから、各地域の弁護士団体が新司
法試験の合格者数を削減すべきだという意見書を提出するようになった。例えば、2007年に愛知県弁護
士会などが3,000人増員計画の見直しを要求した。この要求に同調して、2008年に仙台弁護士会などが
3,000人の撤回を求めた。さらに、千葉県弁護士会などは合格者数を年1,500人に削減すべきだと主張し
ている。弁護士の就職難が益々悪化した2009年には、埼玉弁護士会などが合格者を年1,000人に減らす
ように要望した。2011年以降は、合格者の数を年1,000~1,500人に削減すべきという意見が、全国各地
の弁護士会に広く支持されることとなる(鈴木 2012)。それらの要望に応えた法務省は、「法曹人口及
び法曹養成制度の改革に関する政策評価」(2012年 4 月20日)を公表して、合格者数の年間数値目標
(3,000人)の再検討を勧告したのである。
さらに法務省(2012)は、合格者数を減らしていくのであれば必然的に、法科大学院の入学定員の削
減や、他校との統廃合も検討すべきだと勧告している。この勧告を受けて、同年 8 月に、内閣に法曹養
成制度関係閣僚会議が設置され、そしてこの閣僚会議の下に有識者による法曹養成制度検討会議が置か
れたこと、この検討会議の「取りまとめ」が法科大学院の存続に関わる厳しい提言を示したことは、本
稿の冒頭で触れた通りである。同じく、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(2013a)で
は、法科大学院の組織見直しを促し、かつ入学定員を適正化させるために、公的支援見直しの強化策を
早く立案すべきだという提言が出された。これらの提言を受けて、文部科学省は公的支援見直しの一層
の強化を2013年11月11日に発表した。次節では、この見直しの内容と、その問題点を議論してみよう。
(3)公的支援の見直し
文部科学省は、法科大学院の公的支援のあり方を、計 3 回(2014年 9 月 1 日現在)見直している。最
初の見直しの内容は、文部科学省「法科大学院の組織見直しを促進するための公的支援の見直しについ
法科大学院の人材養成機能と就職支援 ─組織廃止を強要する政策提言への反論─
15
て」
(2010年 9 月16日)に記載された。その概要は、「深刻な課題を抱える法科大学院の自主的・自律的
な組織見直しを促進するために、公的支援の在り方を見直す」ことで、見直しの対象は、下記の指標の
両方に該当する法科大学院である。
指標 1 「前年度の入学者選抜における競争倍率(受験者数/合格者数)が 2 倍未満」
指標 2 「前年度までに①②のいずれかに該当する状況が 3 年以上継続」
①新司法試験の合格率(合格者数/修了年度を問わない全受験者数)が全国平均の半分未満
②直近修了者(新司法試験の直前の 3 月が含まれる年度に修了した者)のうち新司法試験を受験
した者の数が半数未満、かつ直近修了者の合格率が全国平均の半分未満
見直しの対象となる法科大学院への具体的措置として、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費
補助金の減額が決まり、2012年度予算から適用(文部科学省 2010)された。ちなみに、2012年度に減
額対象となった法科大学院は 6 校であった。
1 回目の見直しから 2 年後の2012年 9 月 7 日に、文部科学省は 2 回目の見直しとして、指標 3 「前年
度までに入学定員の充足率(実入学者数/入学定員)50% 未満の状況が 2 年以上継続」の追加を発表す
る(文部科学省 2012)。その結果、2014年度に減額対象となった法科大学院は18校に増加した。
3 回目の見直しは、 2 回目の見直しから 1 年後の2013年11月11日に、文部科学省「法科大学院の組織
見直しを促進するための公的支援の見直しの更なる強化について」で示された。前回からの変更点は、
指標を多様化し、指標ごとに点数化することで、法科大学院を類型化することである。その指標とは、
下記の 4 つである。
・司法試験の累積合格率(累積合格者数/累積受験者数)、12点満点
・法学未修者の直近の司法試験合格率(法学未修者の合格者数/法学未修者の全受験者数)、 8 点満点
・直近の入学定員の充足率(実入学者数/入学定員)、 8 点満点
・法学系以外の課程出身者の直近の入学者数・割合(法学系以外の課程出身者の入学者数/全入学者
数)または社会人の直近の入学者数・割合(社会人の入学者数/全入学者数)、 4 点満点
加えて、先導的な教育システムを構築したり、法科大学院間の連携・連合を実施したりした場合に、点
数を加算する制度も取り入れられた。なお、この新しい見直しは、2016年度予算から適用される予定で
ある。
公的支援の再三の見直しにより、多くの法科大学院(特に司法試験の合格率の低い機関)が、政府の
補助金を減額されるという罰則を科されることとなる。とはいえ、金銭的な損害より、削減の対象とし
て機関名が公表されることのほうが、より深刻な実害(入学志願者の減少)を、その法科大学院に与え
ることになるだろう。なぜなら、志願者が減れば質の高い学生が減り、司法試験合格率が下がるためで
ある。この負のスパイラルに巻き込まれれば、その先にあるのは法的措置の執行、そして募集停止・機
関廃止である。
法的措置の具体的な内容は、中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会で審議(2014年 8 月 1
日現在)されていて、2015年 7 月15日までに全容が明らかになる予定である。なお、現在確定している
法的措置は、前記した 4 つの指標に基づいて下位の類型に位置づけられ、かつ直近入学者数が10名に満
たない法科大学院には、国家公務員である裁判官や検察官を実務家教員として派遣しない、という取り
決めである(中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会 2013c)
。そして現在審議中ではあるが、
法的措置に対象機関修了者の司法試験受験資格を認めないことが含まれる可能性がある(中央教育審議
会大学分科会法科大学院特別委員会 2013b)。仮に、修了者の受験資格を認めないのであれば、その法
科大学院への進学希望者はいなくなるだろう。よって、この法的措置は機関廃止の強要と同義である。
さらに中央教育審議会大学分科会法科大学院特別委員会(2013b : 3)は、「組織見直し促進に関する
16
田 中 正 弘
調査検討経過報告」(2013年11月22日)の中で、「司法試験の合格率を認証評価の基準の中に組み込むこ
と、あるいは、司法試験の合格率が全国平均の半分未満の法科大学院を対象として特に厳格な評価を行
うことなどを含め、客観的な基準と認証評価の関連性の整理に向けた検討が必要」だと主張している。
2014年の司法試験において、合格率が全国平均(22.6%)の半分未満の法科大学院の数は(74校中)34
校であった。34校中15校は既に募集停止を公表しているが、司法試験合格率が認証評価基準に組み込ま
れれば、残りの19校の募集停止も時間の問題だといえる。例えこれらの機関が全て閉校しても、全国平
均の半分を下回る機関が新たに現れるはずなので、それらもやがて淘汰されていくことになる。
上記のように法科大学院の淘汰をもたらす政策が次々と打ち出されたが、それらの政策の実現に歯止
めをかける役割を演じてきた法科大学院協会は、理事が入れ替わった2011年 6 月を最後に、その役割を
放棄したかのように強い反意を示さなくなった。この変化の時期が司法試験合格率の高い機関の代表に
よって理事ポストが埋められた時期と重なることは偶然でなかろう。つまり、合格率の低い機関を廃止
に追い込みたいという利害が、関係省庁と一致したと推察できる。
法科大学院の廃止は、これまでの資本投下が無駄になり、かつ人員整理も必要となることから、痛み
を伴う決定である。避けられる限り、避けるべき決定といえる。しかし、何の対処も施さずに問題を放
置したままでは、法科大学院の制度自体が社会の信頼を失ってしまう。その上、司法試験の各年の合格
者数が削減されていくことが予想される中で、法科大学院の現状規模を維持しようとすると、司法試験
不合格者を大量生産することになってしまう。そこで本稿は、法科大学院修了生の就職(特に法曹以外
の就職)支援制度の充実を、法科大学院の生き残り策として提案したい。そのため、就職支援の現状
(認識)を分析する目的で、独自の質問紙調査と訪問調査を実施した。これらの調査の成果を土台に、
就職支援の望ましいあり方を次節で論じる。
(4)就職支援の認識と試行
質問紙調査「法科大学院の就職支援制度に関する現状調査」を2014年 4 ~ 5 月に実施した。調査の対
象は、同年 4 月までに募集停止を公表した法科大学院15校を除いた、全59校で、回答した機関は29校、
回収率は49.2% となった。なお、回答機関の設置主体分布は、国立(20校中)10校、公立( 2 校中) 0
校、私立(37校中)19校である。地域分布は、北海道・東北( 3 校中) 1 校、関東(26校中)12校、中
部( 9 校中) 6 校、近畿(11校中) 6 校、中国・四国・九州(10校中) 4 校で、入学定員分布は、40人
以下(32校中)15校、41人以上100人以下(20校中)11校、101人以上( 7 校中) 3 校である。これらの
分布に大きな偏りがないことから、概ね母集団を代表していると思われる。質問紙調査はサンプル数が
少ないために定量的な実証性を確保することができない。ただし、これを補うために訪問調査による定
性的分析を組み合わせた。その結果、ある程度の説明力は得られたと考えられる。
就職支援の課題について 4 件法で尋ねたところ、表 1 の結果となった。
表 1 :就職支援の課題(n=29)
法科大学院の人材養成機能と就職支援 ─組織廃止を強要する政策提言への反論─
17
表 1 に示したように、質問「司法試験の合格率で評価されるため法曹以外の進路を勧められない」に、
「あてはまらない」と回答した機関が16校(55.1%)ある。また、質問「法曹以外の進路を勧めるのは法
科大学院の目的と異なる」でも、15校(51.7%)が「あてはまらない」と回答している。法科大学院は
法曹養成に特化した専門職大学院であることが法的に求められているものの、司法試験合格率が低迷し
続けている中で、法曹以外の人材養成への積極的な貢献を正当に評価することは、多様な法科大学院の
あり方を論じる上で重要である。ただし、
「在学生は法曹以外の進路に興味を持たない」という質問に
18校(62%)が「あてはまる」と回答している。実際に、「法科大学院での教育成果は法曹以外の法律
専門職にとって有用と考えるが、本人の志望との関連では、他の進路を勧める指導は行いにくい」
(A19)という意見が、自由記述欄に書き込まれていた。よって、在学生に法科大学院の教育が法曹以
外の就職にも役立つことを、示していく必要があると思われる。
「既卒者と就職支援の連絡がつきにくい」という質問に22校(78.6%)が「あてはまる」と回答してい
る。法科大学院に限らず、金子(2011 : 11)の指摘にあるように、日本全体の課題として、既卒者の就
職支援を怠ってきたことがある。法科大学院の修了者は卒業後に司法試験を受験し、その結果に応じて
就職活動を開始することになることから、法科大学院は既卒者の就職支援という、日本全体の課題を率
先して解決する努力をしていくべきだろう。その萌芽は散見されるようになってきた。例えば、同志社
大学は、就職支援チームという法科大学院独自の相談窓口を、全国に先がけて2009年11月に設置した。
同様に岡山大学は、2012年12月に「岡山大学法科大学院弁護士研修センター」を設置し、若手弁護士に
研修の機会を与えて、組織内弁護士として自治体や企業などに派遣する取組に着手した。青山学院大学
は、株式会社インテリジェンスと提携し、法曹以外の進路を望む在学生・修了生に、民間企業への就職
を斡旋している。
法科大学院は、修了生の官公庁や一般企業への就業を支援するようになりつつあるが、「官公庁は法
科大学院修了生を高く評価しない」という質問に、「あてはまる」と回答した機関が18校(66.7%)、同
じく「一般企業は法科大学院修了生を高く評価しない」という質問でも、「あてはまる」と回答した機
関が18校(66.7%)と、官公庁や一般企業の評価が高くないという意見が多数を占めた。自由記述欄に
おいても、
「企業も官庁も LS 卒業生を特に評価しておらず、社会的に認知されていないように見えま
す」
(A 9 )という記述を確認できた。それから、質問「法科大学院修了生が法学研究科に進むのは困
難である」では、
「あてはまる」が14校、
「あてはまらない」が15校と、意見が分かれた。ただし、「あ
てはまらない」と回答した法科大学院が 5 割程度あることは、次の質問で示されるように、それらの機
関で研究者養成を行っていることを必ずしも意味しない。
法科大学院の研究者養成機能を 4 件法で尋ねた結果は表 2 の通りである。
表 2 :法科大学院の研究者養成機能(n=29)
法科大学院で法学研究者(法学研究科への進学者)、法科大学院教員、法学部(学士課程)教員を養成
しているという 3 つの質問に対して、
「あてはまらない」と回答した機関は、それぞれ25校(89.3%)
、
23校(82.1%)、26校(92.9%)であった。法科大学院は法学分野の教員(研究者)養成を行っていない
と考えられていることになる。ただし、自由記述欄に「本学 LS でも、LS 出身の教員は増えている」
(A 2 )という意見があるように、法科大学院の教員という職域は法科大学院修了生にとって魅力的な
18
田 中 正 弘
就職先の一つになると思われる(田中 2014)。なお、東北大学の「法学研究科は、従来型の研究者養成
のための法政理論研究コースに加えて、法科大学院の教員養成のための後継者養成コースを設けてい
る。そしてこのコースを研究者型と実務家型に分けた」(東北大学法科大学院訪問調査:2014年10月20
日)点は興味深い。二つの型に分けた狙いは、研究者教員志望者には分野横断的な研究能力を、実務家
教員志望者には臨床的な研究能力をそれぞれ修得させることにある。幅広く法学を学ぶ法科大学院修了
生には、専門分化した従来の法学研究に、新たな風を送り込むことを期待したい。
司法試験や法科大学院の課題に関する項目をそれぞれ 4 件法で尋ねた結果、表 3 の通りとなった。
表 3 :司法試験や法科大学院の課題(n=29)
質問「司法試験の合格者数を増やすべき」に22校(78.6%)が「あてはまる」と回答している。この点
で、合格者数を減らすべきという法曹団体と意見の相違がある。また、質問「司法試験予備試験は廃止
すべき」に対して、24校(85.7%)が「あてはまる」、特にその24校中16校が「とてもあてはまる」と回
答していることは注目に値する。予備試験は経済的に恵まれない学生に対して、法科大学院を経ずに司
法試験の受験資格を授与するバイパスコースとして設けられているが、法科大学院の在学生の多く( 2
年生の約半分)が予備試験を受けるなど、制度の趣旨と異なる状況が発生している(中央教育審議会大
学分科会法科大学院特別委員会 2014)。
予備試験制度の趣旨が法科大学院の学費を払えない学生への支援であれば、予備試験合格者の学費を
政府が助成する制度に改めるべきである。それが、プロセスとしての法曹養成を重視する政策と合致す
る適切な方向であろう。ちなみに、奨学金を拡充する法科大学院が増えている。例えば、専修大学は
「平成27年度から、スカラシップ入試奨学生に対して、入学金・授業料・施設費を無料とし、さらに月
8 万円の奨学金を支給する制度を開始する予定」(専修大学法科大学院訪問調査:2014年10月15日)で
ある。
質問「法科大学院の定員を削減すべき」に16校(59.3%)が「あてはまる」と回答している。法科大
学院全体の定員が過大だという認識は、多くの法科大学院の間で共有されていると考えられる。ただ
し、質問「入試倍率や司法試験合格率に課題のある法科大学院は閉鎖すべき」への回答は、「あてはま
らない」が16校(59.3%)と過半を占め、課題のある法科大学院の生き残り策への期待が伺える。また、
教育の国際化に関する質問「国際関係の授業科目を増やすべき」や「留学生を増やすべき」への回答
は、
「あてはまらない」が多数派を占めた。なお、「留学生を受け入れたくても、入学判定に用いられる
(法科大学院全国統一)適性試験がネックとなる」(明治大学法科大学院訪問調査:2014年10月14日)と
いう障害も存在する。
質問「実務家教員を増やすべき」に、17校(63.0%)が「あてはまらない」と回答した。日本の法科
大学院では、研究者教員が中心となるべきだという考え方が(恐らく研究者教員に)広く支持されてい
ると思われる。とはいえ、先述したように、研究者教員が多数派を占めることが、法科大学院の教育に
法科大学院の人材養成機能と就職支援 ─組織廃止を強要する政策提言への反論─
19
対する法曹の疑念を生む温床となっているので、再考が必要かもしれない。
「官公庁への就職者を増やすべき」や「一般企業への就職者を増やすべき」の質問に、それぞれ26校
(92.9%)
、24校(85.7%)という圧倒的多数が、「あてはまる」と答えた。官公庁や一般企業への就職は、
法曹の職域拡大、および司法試験不合格者の就職先確保という、二つの側面がある。一つ目の法曹の職
域拡大は、法科大学院の量の維持という観点で重要である。事実、自由記述欄にも下記の指摘があった。
今後の方向としては、司法試験合格者の官公庁・企業・教育研究機関等での活躍の場が広がり、そ
のこともふまえて司法試験の合格者数を増やすほうへ事態が進んでいく(法科大学院修了生就職支
援の問題がそのような状況のなかに位置づけられる)ことが望ましいと考えます(A17)。
法曹の職域拡大は、法科大学院だけの課題ではなく、国や自治体が法曹を積極的に雇用することで解
決すべき課題であろう。例えば、イギリスでは、ソリシター(solicitor)という弁護士の中の、9,500人
程度は、市役所などに勤める公務員である(Solicitors Regulation Authority 2014)。彼らは窓口で市民
に無料の法律相談を行政サービスとして提供している。このような行政サービスが日本にも導入されれ
ば、市民にとっては法曹がより身近になり、法曹にとっては安定した就職先の確保につながるだろう。
二つ目の不合格者の就職先確保は法科大学院の多様化の点で重要である。事実、不合格者の就職を組
織的に支援する工夫の一つとして、自由記述欄に右記の提案があった。「法科大学院を修了しても、合
格に至らない人数が圧倒的に多い現状において、修了生について、国又は大学院として、就職支援のた
めの組織的な対応を図ることが急務である。(中略)例えば、宅地建物取引主任の資格を(修了者に)
付与するなど、資格試験の面で有利な取り扱いをするようにすべきである」(A21)。また、成蹊大学
「法科大学院では、地元自治体との連携を強化する計画を立て、『自治体法務』担当という新しい職域の
開拓を試みている」
(成蹊大学法科大学院訪問調査:2014年10月21日)。なお、自治体法務の業務とは、
地域特有の法的問題への対処や、独自政策の立案への貢献など、高度な法的素養を持つ公務員が担当す
るものである。
司法試験不合格者の活躍の場は未開拓である。彼らの能力を不合格という事実のみで判断し、高度な
法的素養を持つ高学歴人材の活用を怠ることは、我が国にとって大いなる人材の損失であろう。自由記
述欄にも同様の意見が付されていた。
司法試験に合格できなかったという事のみをもって、新卒大学生に比べ就職活動が難しくなる、不
利に扱われるという事実は問題であると思う。勉強量、知識、働く意欲の高い者が、適切な場で働
ける社会になることを強く望む(A14)。
最後の質問「法科大学院は法曹養成に特化すべき」に、16校(57.1%)が「あてはまらない」と回答
した。自由記述欄の言葉を借りれば以下のように表現できる。
法曹それも法廷弁護士だけが法律専門家ではない。コンプライアンスの重要性が叫ばれている今日、
幅広い法律専門家の存在が必要である。マスコミ報道などでは、司法試験の合格ばかりが重視され
ており、法科大学院教育を狭い範囲に閉じ込めている感がある。幅広い法律専門家の養成機関であ
れば、就職問題にも展望が開ける(A19)。
本稿も、法科大学院は法曹養成に特化すべきではないと考える。なぜなら、法曹の需要が拡大するか縮
小するかは未知数であるし、景気にも左右されるために、需要に合わせて法科大学院の校数・定員を調
整することは難しいと推察できるからである。従って、法科大学院が修了生の法曹以外への就職を組織
的に支援していくことは不可避、かつ生き残り策としても重要である。そして、法科大学院が多様な人
材を養成すること(多様性)を否定する評価(認証評価を含む)制度は、法曹需要の増減によって混乱
(無用な淘汰)を招く恐れがあることから、再考すべきであろう。
20
田 中 正 弘
法科大学院の多様性は重要だと考える。多様性の一例として、明治大学は「日本初の女性弁護士を輩
出したという歴史を踏まえて、現在まで一貫して女性の法曹養成に注力してきた。このため、法科大学
院でもジェンダー法の教育・研究に人員を手厚く配分してきた」(明治大学法科大学院訪問調査:2014
年10月14日)。司法試験では出題されないジェンダー法などの教育を重視する機関は珍しいが、司法試
験の合格率向上の圧力が強まりすぎたり、定員充足率の低下を避けるために定員削減の動きが強まりす
ぎたりすれば、法科大学院の余力がなくなり、上記のような特色は失われる恐れがある。
(5)まとめ
法科大学院が制度計画時の構想を上回る計74校にふくれあがったこと、そしてその学生定員が最大
5,825名まで増加したことは、大学と関係省庁の両者の見通しの甘さに原因がある。とはいえ、その失
敗の責任を関係省庁が大学に押しつけることを正当化するため、独自に定めた評価基準を下回った「課
題のある」法科大学院の定員削減・組織廃止を、法的措置の施行で強要することは不合理であるといえ
る。なぜなら、課題のある法科大学院を特定するための厳しい評価基準(例えば、司法試験合格率の最
低基準など)を、関係省庁が中心になって独善的に定めようとしているからである。
法科大学院は法曹養成に特化した専門職大学院であるという認識下では、法曹の急激な需要拡大・職
域拡大が確実視できない限り、法科大学院の校数・定員は過大であると批判されても仕方がない。しか
し、法科大学院は高度な法的素養を備えた人材を養成する専門職大学院という定義が新たに成り立つの
であれば、現在の校数・定員は必ずしも過剰とはいえない。換言すれば、現在の規模を維持しようとす
ると、法曹以外の職域にも修了生を輩出できる就職支援制度の迅速な整備が欠かせない。例えば、在学
生・修了生の多様な就職活動・進路変更を支援する専門組織の設置、OB・OG との面談会実施、イン
ターンシップの拡充、法学関連の資格取得を後押しする各種セミナーの開催、および多様な法律専門職
業人に再教育の場を提供などが望まれる。
最後に、本稿の課題と限界に触れておきたい。第一に、多様な人材養成や就職支援のあり方に関する
分析は、質問紙調査の回答者の主観的認識を記述したものであり、訪問調査で確認された制度も実施試
行段階のものが多く、それらの効果を測定するのが現時点では難しいことを挙げられる。第二に、司法
試験に合格できなかった修了生が、就職活動の場面で、彼らの専門的な知識が高く評価され、他の院
卒・学卒と比べて優遇されることは、現時点でほとんどない(ジュリナビ 2014)ことから、彼らの受
け入れ側(官公庁や企業など)の定量調査を始められないことも、本稿の課題・限界といえる。
ただし、芽生え期の優れた取組として、ゆうちょ銀行が法科大学院修了生(法曹資格を問わない)を
対象とする特別採用枠の設置に取り組んだことを取り上げておきたい。ゆうちょ銀行(2014: 1 )が法
律の素養を有する人材を求める理由は、以下の通りである。
銀行業務は企業一般に適用される民法、商法、会社法や税制に関する法律のほか、業法である銀行
法、金融商品取引法、郵政事業として郵政民営化関連法など様々な法律のもと事業を行っています。
社員がそれぞれの法律に精通することが求められており、重要法令の改正等の理解力や活用力を必
要としています。
このような特別採用枠の普及が進んだ段階で、改めて、法科大学院修了生の受け入れ機関の定量調査を
開始したい。
謝 辞
本研究はカシオ科学振興財団研究助成金(H26)
「我が国の法科大学院における法曹以外の人材育成機
能および就職支援の在り方に関する研究」(研究代表:田中正弘)の助成を受けて実施した成果の一部
である。
法科大学院の人材養成機能と就職支援 ─組織廃止を強要する政策提言への反論─
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