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本質的な衝突

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本質的な衝突
エネルギー機能材料学特論
第5回目
担当:西野信博
A3-012号室
[email protected]
1
プラズマ実験装置NSTX(Princeton)
授業の内容
•
プラズマを記述する基礎方程式(支配方程式)を求める
– 背景
– アボガドロ数程度の多数の粒子の運動方程式を一つ一つ解いて、
プラズマの挙動を予測することは不可能。
•
こうした場合、以下の二通りのアプローチがよく使用される。
– 運動学的(微視的, 統計的)方法
• ==>分布関数を使用する
あくまでも詳細に記述
– 流体的(巨視的, 連続体近似)方法
• ==>流体モデルといわれるもの
•
平均操作により、滑らかに
両者を概説します
– 注意:本日も式が多い
2
統計的手法のBoltzmann方程式、および、流体の式
• Boltzmann方程式とは、基本的には粒子の保存則で、6次元位相
空間の分布関数
f (r, v, t ) で粒子の移流、拡散を表した式となっ
ていて、Plasmaの方程式の基礎を与える。
• Boltzmann方程式は、以下の式
f
 v f  a  v f  S
t
  ( x,  y,  z )
 v  (  v x ,   v y ,   v z )
• 左辺第1項は,分布関数fの局所時間変化
• 左辺第2項は,分布関数fの実空間での移流,第3項は速度空
間での移流を表す
• 右辺は,分布関数fの源(ソース)項で,本質的な源が無くて
も,衝突などがある場合は,以下のように記述し,Sが0でない
 f 
S 


t

coll
3
物理的な考察
• 前ページのボルツマン方程式の意味を考える。
• 粒子はその座標,速度及び時刻tによって指定される。
• より一般的には,正準変数q1,q2,q3,p1,p2,p3及び時刻tで記
述しても良い。後者の場合, 運動方程式に従う粒子の位相空間
における微小体積Δ(= δq1δq2δq3δp1δp2δp3)は,以下
のように保存される。
4
解析力学を思い出しましょう
ラグランジュ形式を使えば、 デカルト座標をだろうが、極座標だろうが、 他の
どんな座標系であろうが、方程式の形が変わらないことを思い出そう。
運動エネルギーT、ポテンシャルVとして、ラグランジアンLは L  T  V
運動方程式は
d L L

0
dt xi xi
上のドットは時間微分を表していた。
特に、デカルト座標にこだわらないため、一般に座標をqで書き、一般化座標と呼ぶ。
d L L

0
dt qi qi
一般化運動量pは
L
pi 
qi
ラグランジュアンLをルジャンドル変換し、ハミルトニアンHを導入する
H   pi qi  L
i
座標の変換を行い、対称性をよくしている
5
ラグランジュ方程式からハミルトン形式へ
• すると、位相空間における粒子の運動はハミルトン方程式によ
って記述される。
dqi H (qi , pi , t )

pi
dt
dpi
H (qi , pi , t )

qi
dt
• この時,位相空間における粒子群の占める微小体積Δ
•
   q1 q2 q3 p1 p2 p3 の時間変化は
d ( p1 )
d   d ( q1 )

 p1 
 q1   q2 p2 q3 p3  

dt  dt
dt

d ( p3 )
 d ( q3 )

 p3 
 q3   q1  p1 q2 p2

dt
 dt

6
リューヴィユの定理
ここで、
 H
d
 qi    
dt
 pi
 2 H
 qi

 pi qi
 H 
2 H
d
 pi
 pi       
dt
qi pi
 qi 
 2 H
d
2 H
 

dt
qi pi
i  pi qi

  0

•
よって,
•
•
•
•
これで,位相空間における体積保存(リューヴィユの定理)が証明された
位相空間の微小体積中の粒子数を f (qi , pi , t ) qi pi
で表した時, f (qi , pi , t ) を位相空間における分布関数と定義する
もし,衝突などによる粒子の散乱がなく,粒子群が運動方程式に従って,移
動するとすれば,微小体積Δも保存されるから,粒子数保存の法則より粒子
密度である分布関数も保存される
7
ボルツマン方程式
•
よって, f の満たすべき方程式は、
 dqi f dpi f 
df
f
0
 

0
dt
t
dt pi 
i  dt qi
•
さらに,粒子の衝突を考慮すれば,
 dqi f dpi f    f 
f
 




dt
q
dt
p
t
t



coll
i 
i
i 
•
これを,実空間と速度座標で表すとボルツマン方程式となる
f
F
 f 
 v f   v f  
F  q (E  v  B )

t
m
  t coll
ボルツマン方程式はプラズマを記述する出発点となる基礎方程式である。
粒子群(ここでは、プラズマ)を表す分布関数 f の時間変化を与える式
である。
8
忘れた人は、思い出しましょう
ポテンシャルV中の質量mの粒子の2次元での運動方程式は、デカルト座
標をx、yとして、x成分のみ表記すると
V
mx  F  
x
座標変換が必要
x  r cos  , y  r sin 
例えば、これを極座標で書くと?
真面目に式変形すれば、
mx  m 
r cos   2r sin   r 2 cos   rsin 


V
V sin  V
 cos 

x
r
r 
よって、以下のような式を得る(x成分のみ分表記)
V sin  V
m 
r cos   2r sin   r 2 cos   rsin    cos 

r 
r
これではとても解けないから、y成分も合わせて式変形した後
V
V
m 
r  r 2  
,
m 2rr  r 2  
を得る
r







9
デカルト座標から極座標へ
結局
mx  
V
,
x
my  
V
V
2
2 




m r  r  
, m 2rr  r   
r

V
y




見た目がずいぶん変わってしまった!
しかし、ラグランジュ方程式を使うと
d L L
d L L

 0,

0
dt xi xi
dt yi yi
d L L
d L L

 0,

0

dt ri ri
dt i i
なんと、解り易いことか!
各自、確認してください。但し、以下の変換は最低必要ですが…
1
1
2
2
L
m r 2  r 2 2  V

L  T  V  m x  y  V
2
2




10
運動論から巨視的方程式へ
•
プラズマの挙動を,運動論的な方程式で追うには,前のボルツマン
方程式を解けばよい。しかし,分布関数は6次元空間の関数であり,
これを解く事は数値的にも容易ではない。
•
•
そこで,変数が少ない巨視量の方程式を導入する。
まず, f  v f  F  f    f 
v


t
m
  t coll
•
に,r,v,tの関数g(r,v,t)を掛けてvで積分する。
– これを,速度モーメントという。
•
•
g=1,mv,mv2/2でそれぞれ密度,運動量,エネルギーに関する方程
式を得ることができる。
この時,分布関数で平均した量を<>で表す。
g (r, v, t ) f (r, v, t )dv

g (r, t ) 
 f (r, v, t )dv
11
平均量での操作
•
分布関数fは粒子数を表すので,
n(r, t )   f (r, v, t )dv
•
すると,前ページの式は,以下となる
n(r, t ) g (r, t )   g (r, v, t ) f (r, v, t )dv
•
部分積分を用いると,以下の式を得る
f


 g t dv  t n g  n t g
 g vi
f


dv 
n vi g  n
vi g
xi
xi
xi
Fi f
n 
v
g
d


g Fi
 m  vi
m  vi
12
プラズマでは
•
•
•
前ページ最後の式は,力Fがローレンツ力だから,
 Fi
0
F  q E  v  B
 vi
よって,
Fi f
n

v
F
g
d
g


i
 m  vi
m
 vi
従って,ボルツマン方程式の速度による積分から

g
n
F  v g
n g n
   n vg  n   vg 

t
t
m
 f 
 g

  t coll
13
具体的な式を得る
•
g=1とすると,
– 密度
•
n
 f 
n v  
 dv
t
  t coll
n  n(r, t ) に関する連続の方程式を得る
g=mvとし,いくつかの式変形の後に
 ij
d
mn
v  n F  p  
R
dt
j x j
– 運動方程式を得る。ここに、Fは外力、pは圧力(p=nT)、Πは応力テンソ
ル、Rは衝突による運動量の増加
•
g=mv2/2とし,いくつかの式変形の後に

3 p
3

    p v   p  v    ij
vi    q  Q
x j
2 t
2

ij
– エネルギーの輸送方程式,ここに、qは熱伝導項,Qは発熱項
14
速度モーメントの考え方
前項のような速度vをかけて積分することを、速度のモーメントを取るという。そして、
速度をランダムな速度(熱運動)と平均的な運動速度(流体的な速度)に分ける。
v  v  vr
vr  0
すると、圧力テンソルPは
Pij  nm v ri v rj  ij
等方的である場合、
Pij  nm v ri 2  ij  nm v r 2  ij / 3  p ij
一般的に、
Pij  p ij   ij
 ij  nm v ri v rj  ( v r 2 / 3) ij
また、他粒子との衝突の効果を表す衝突項は
 f 
R   mv r 
 dv
  t coll
熱伝導項と発熱項は、それぞれ
m vr 2
m vr 2   f 
q
v r f ( r , v , t ) dv , Q  

 dv
2
2   t coll
分かりやすい記号で書きなおす
•
分布関数による平均の記号
を、見慣れた表現に変えて、イオン
と電子の平均速度であらわすと、
v e  Ve
v i  Vi ,
ni
   ni Vi  0 ,
t
ne
   ne Ve  0
t
流体の連続の式
運動方程式
dVi

 pi  
 i  eZni  E  Vi  B   R
mn
dt
 x
エネルギーの方程式
dVe

 pe  
 e  eni  E  Ve  B   R
mn
dt
 x
V
3  Te

 Ve Te   peVe    q e    e e  Qe
ne 
x
2  t


V
3  Ti

 Vi Ti   pi Vi    qi    i i  Qi
ni 
x
2  t


16
電磁流体力学方程式
•
•
前頁までで、イオンと電子それぞれの巨視的方程式を導いたが、こ
れらの方程式をつないで、プラズマを一流体として考察する。
プラズマの質量密度ρm、平均速度V、電荷分密度ρ,電流密度jを次
式で定義する
 m  ne me  ni mi  ni mi
(質量)密度
V
ne me Ve  ni mi Vi
m
 Vi 
  ene  Zeni  ene
me Z
 Ve  Vi   Vi
mi
電荷密度

Zni 
j  ene  Ve 
Vi   ene  Ve  Vi 
ne


p  neTe  niTi
圧力
平均速度
電流密度
但し,温度Tの単位はJである
17
質量保存の式
•
•
全部は長くなるため,一部の式のみ式変形を導く
電子とイオンの連続の式から
ne
   ne Ve  0
t
 me
ni
   ni Vi  0
t
 mi
質量保存の式
me ne
   me ne Ve  0
t
加えると
mi ni
   mi ni Vi  0
t
 m
   mV  0
t
厳密に得られた
me mi  1 などの近似の下で,運動方程式など他の式が得
られる
18
+Maxwell方程式
•
いくばくかの式変形の後に,一流体の運動方程式とオームの法則が得ら
れる。それと、Maxwell方程式を合わせてMHD方程式ができる。
 m
質量保存の式
   m V  0
t

dV
運動方程式
 p  
 E  j  B
m
x
dt

p
   ( pu)  (  1) p  u  j  j       q 圧力の方程式
t
(エネルギー保存の変形)

電荷保存の式
 j  0
t
一般化したオームの法則
E  VB j
B
   E
t
B  0
1
  B  j  0
0
 0  E  
E
t
Maxwell方程式
ちなみに変数の数は14個である。
19
運動方程式の説明
•
運動方程式の各項は,

dV
 p  
 E  j  B
m
x
dt

質量密度と
加速度の積
圧力勾配
電流と磁場による力
電場による力
応力=粘性
粘性の影響が小さいとして,
dV

 p   E  j  B
m
無視できる場合
dt
参考 Navier-Stokes方程式

dV
 p  
m
x
dt

比較すると電磁力が付加されていること
がわかる
粘性項
20
電気抵抗について
•
•
•
•
•
•
•
•
•
プラズマは荷電粒子の集合体であるから,電場Eを加えると電流が流
れるが,衝突のために電気抵抗ηが存在する
j  ne e(Vi  Ve )
単位時間に単位体積当りの電子が電場によって受ける運動量の増
加は電気抵抗率をηとすると, E  j より(Bに平行方向)
 ene E  ne ej
であり,電子がイオンと一回衝突して受ける運動量の増加は
me (Ve  Vi ) 程度であるから,単位時間に単位体積当りの電子がの
受ける運動量の増加は
m j
 ne me (Ve  Vi ) ei //  e ei //
e
ここに,νeiは衝突頻度(衝突周波数)である。
両者は大きさが等しい(符号は逆)であるから,Te*をkeV単位として
m
Z ln 
 //  e 2ei  2.3 10 9
(m)
3/ 2
ne e
Te *
21
補足 温度緩和時間
式の導出は省略するが、温度T,T*でMaxwell分布をした粒子群のクーロ
ン衝突でのエネルギー移動による温度緩和時間は、温度Tの粒子群から
見て
式の導出には、例えば
1/2
3/2
2
2

3

*
mm
 
T T*
宮本健朗著
0
 



2
「核融合のためのプラ
n *ln   qq *  m m * 
ズマ物理」など
ここに、n*は温度T*の粒子数密度、m*、q*はそれぞれ、粒子の質量、
電荷である。
電子‐電子、イオン‐イオン、イオン‐電子間の緩和時間をそれぞれ、
  ee ,   ii ,   ie とすると
1/2
3/2
1  mi   Ti 
1 mi
ee
ii
ie
  :   :   1: 3     :
2Z me
Z  me   Te 
で、電子‐電子、イオン‐イオンの緩和時間よりイオン‐電子のそれが
かなり長いことがわかる。
22
補足 運動量緩和時間
•
前と同様に、運動量に関しても緩和時間があり、衝突前の速度方向
とそれに垂直方向の緩和時間は、以下で与えられる。
4 0 2 mmr v3
 //  2
q  ln q *2 n *
*
2 0 2 m 2 v3
  2
q  ln q *2 n *
*
•
テスト粒子を電子にとり、プラズマがZ価のイオンと電子からなるとす
ると、
2
3
2

m
v
Z
e e
0
 e   / / ee    ee   / / ei  Z  ei 
ne e 4 ln 
2
•
•
この逆数が前々ページの衝突周波数  ei となる。
この場合も、
23
演習とレポート
•
電子の電荷-e,イオンの電荷+Zeとして,電荷保存の式を導いてみよう。但
し、プラズマは全体で準中性とする。
ne
   ne Ve  0
t
?
ni
   ni Vi  0
t
 ??
加えると
何をかけるとよいでしょう?
•
•
•

 j  0
t
電荷保存の式
レポート
ケルビン‐ヘルムホルツ不安定性(Kelvin–Helmholtz instability)か
レーリー‐テイラー不安定性(Rayleigh-Taylor instability)のどちらかにつ
いて調べよ。
24
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