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第1編・【生命】 生命について考えよう(p.006-009) ◆生命について考えよう(p.006-009) 人間:自然や動植物を使いやすいように改良 = 人間の生活の向上のために役立ててきた 21 世紀:人間の力は他の生命体までおよぶものに 例.これまで → 異なる品種の作物の花粉の受粉 現在 → 直接遺伝子の配列を変える(遺伝子組み換え) ⇒ ① 病気になりにくい品種の開発 ② 除草剤に耐性のある品種の開発 イヌと人間 ・ 「オオカミを家畜化=イヌ」という説 [最初] 狩猟のサポートのために ⇒ しだいに「愛玩用」として … 日本:飼育数の増加 ⇒ 人間の心を癒す役割 小型化を阻止!? ・プードルの小型化に歯止めを ⇒ 理由; 「遺伝子的に問題点があるのではないか?」 例.クローン技術の進展 「虚弱体質で病気になりやすいのでは?」 ⇒ 肉質のよい肉牛と同じ遺伝子の肉牛を量産できる …… 食料の安定供給に向けて ↓↑ 1.安全性の問題 虚弱なイヌの増加 ・虚弱体質のイヌの増加 例.珍しい毛色を作り出すために,無理な繁殖・交配 2.生命倫理の観点 … 問題があるのではないか? 紅茶カップにおさまるイヌ 「ティーカッププードル(手のひらサイズ)」の誕生 ⇒ 人間が望むように改造 … 「かわいい」 「飼育しやすい(人間の生活環境に合わせる)」 ⇒ 小型化が進む … 紅茶カップサイズに … 皮膚病や突然死などのトラブルの原因となっているのでは? ※ イヌが人間の心を癒す ←→ 人間がイヌに不幸をもたらす 人とイヌのあり方 「人間の幸福のためにイヌを利用することは正しい」 「イヌという生命を人間の都合で操作することには問題がある」 … 生命の商品化に問題があるのではないか? 人間の未来は!? *人間の能力を操作したり,人間の生命を商品化する未来 = 本当に幸福な未来なのか? p.006-009 第1編・【情報】 情報化のもたらすもの(p.010-013) ◆情報化のもたらすもの(p.010-013) 江戸時代の情報伝達 経済的な自立を支える情報 江戸時代の伝聞と想像だけで描かれたペリー = 未知の西洋人に対する情報不足と,人々の思い(不安) 情報技術の進化 … テレビ,インターネットで瞬時に世界中の情報を入手可能 ⇒ 時間的広がりもあわせもつ現代の情報 例.地球温暖化 ⇒ ボーリング調査:過去 1300 年間の気候変化 … 過去の事実から,約 100 年後の気温(未来の情報)を推測 情報化のもたらす果実 インターネットによる通信網の発達 … 世界中のネットワーク化 ⇒ 企業による開発援助ビジネス … 発展途上国の商品をウェブサイトを立ち上げて,インター ネットで販売を開始(⇒ 世界中で商品販売が可能に) → 情報通信網の貢献の好例 よりよい未来のために ・近年の国際的な動き 例.アメリカのICT企業 原料=世界中で最安値の場所で調達 … 社会貢献:ICT教育を発展途上国に広める 生産=最も人件費の安い場所で生産 発展途上国向けに「100 ドルPC」の開発 販売=最も売れそうな場所で販売 情報化の影 (世界情報社会サミットで披露される) ↓ 情報化の進展:多くの人に幸福をもたらす ⇒ 情報を手に入れられる人に限られる (条件) 活用方法の教育,必要な機器の購入,接続環境の整備 *デジタルデバイド(情報格差)が生じている … 貧富の格差 ※ 進むICT(情報通信技術)化 ←→ 情報弱者 … 世界→ 先進国と発展途上国,国内→ 貧富の格差を拡大 p.010-013 例.発展途上国援助に関する新しい考え方 「金銭や物品の援助」 < 「経済的な自立につながるもの」 現代 → 短時間で正確に情報を手にすることができる 例.企業: *情報化 … 豊かな人をより豊かに ⇒ 違う側面も *携帯電話の普及の急速な拡大が進む (理由)・無線アンテナの設置=低額 ・携帯電話はPCと比較して安価 … デジタルデバイドの解消に果たす役割は大きい 第1編・【環境】 「自然」と「人間」との対話(p.014-017) ◆「自然」と「人間」との対話(p.014-017) 沈黙の春 ① 伝統的な資源の供給(… 例.木材資源など) レイチェル=カーソン(著書『沈黙の春』) ② 癒し効果や文化的な資産としての価値 ・自然環境(生態系)に関する研究 ・自然界のバランスは生物間,生物と環境間の相互関係が成立し てこそ(=「生態系のもろさ」「安易な自然改変を戒める」) ホッキョクグマの憂鬱 (… 例.自然とのふれあいがもたらすもの) ③ 長い間のなかで人間と自然の調和がはかられてきたもの (… 例.里山・里海などの人間によって手が加えられてきた自然) ④ 歴史的・文化的ストックが提供してくれるもの ホッキョクグマ → 汚染に関係ないと思われたその体内から,人工 的な有害物質が検出 … 海,大気などを通じて体内に(=地球は大きな一つの生態系) 地球規模の環境問題 人間 … 食料・豊かさを求めて自然を改造(特に工業など) → ① 化石燃料(石油・石炭など)を大量に燃やす ② 行き過ぎた森林伐採 ⇒ 二酸化炭素量の増加(温暖化:地球規模の環境問題) ※ 人間が自然を改造する力の高まり =力の使い方しだいで危機的状況に陥る可能性 自然と人間が共生する社会 ミレニアム生態系評価(国連による)以降 … 「生態系サービス」 :生態系や生物の多様性から受ける恩恵 p.014-017 (… 例.アメニティ[生活環境の快適さ]) 自然と人間との対話 ・これまで … 「自然対人間」=対立的 例.開発行為:人間社会を発展させる=肯定的に評価されてきた ←→ 破壊される自然の価値=評価されない ※ 人間側でも無秩序な開発を抑える … 自然環境に与える影響を,予測・調査・評価する必要 環境アセスメント(環境影響評価) ↓ ※ 共有の資源(コモンズ)の重要性 … 資源をルールを無視して使い続ける(共有地の悲劇を招く) ⇒ 開発について,自然がどう評価しているかも聞く必要がある … 自然と人間との対話の実現(「自然の権利」訴訟) 第2編・第1章 青年期と現代社会・第1節 現代の社会(p.20-29) 1 変化する大衆社会(p.20-21) ■リースマン;他人志向型(『孤独な群衆』) 現代社会の姿 =大衆社会に生きる人々 ■モバイル端末の発達 他人の意向や行動に同調する 携帯電話の機能:電話,ゲーム,情報検索,メール +プロフ,ブログ,ツイッター… cf.・伝統志向型=伝統的な価値観・規則を重視 ・内部志向型=子どものころ内面に形成された目標などに基 ・他者とのコミュニケーションの手段が多様化 = づいて行動 ↓↑ ・常に他者とつながっていないと不安(孤独への不安) =個性を見失いがちな現代人の姿 大衆社会の恐ろしさ ■社会全体を危険な方向へ導いた例 ・ヒトラー; 「プロパガンダ(宣伝)」を用いて大衆を誘導 大衆社会のなりたち ⇒ ファシズムを推進する原動力に ■大衆社会の特徴 … 「個性の喪失」,「孤独」 ・政治・経済・社会で大衆が重要な役割を果たす社会 成立 市民革命,参政権の拡大を背景に成立→発達 ↓ ・偏った報道で無実の人物が有罪扱いされる例 ⇒ 大衆世論が一つの方向へ誘導される危険性がある ①大量生産・大量消費・大量廃棄のライフスタイル ②マス-メディアによる,あらゆる面での画一化 ③官僚制の整備 … 「人間は不特定多数の一人」 変化する大衆社会 これまで ↓ 現在 現代の日本は大衆社会か? 経済成長の時代 大量生産・大量消費・大量廃棄の大衆社会 ⇒ 少子高齢化が進行する,低成長時代 … 大衆社会の転換期,社会を見つめ直す時期 p.020-021 第2編・第1章 青年期と現代社会・第1節 現代の社会(p.20-29) 2 少子高齢社会の到来(p.22-23) 高齢化の進行 人口減少の衝撃 ■人口構成の移りかわり ■日本の人口減少(2005 年 12 月~) あらゆるものに対する需要や,企業の生産の減少 ⇒ 経済全体の縮小 … 国家全体の活力が失われる? 年少人口:15 歳未満 人口構成 生産年齢人口:15 歳以上 65 歳未満 → 生産活動の中心 老年人口:65 歳以上 人口転換=経済発展によって人口構成が移りかわっていくこと 少子化の原因と対策 多産多死型 → 多産少子型 → 少産少死型 ■少子化 合計特殊出生率(女性一人が一生の間に出産する子どもの平均人数) …下降気味 ■日本の高齢化 老年人口率:5%(1950 年) → 23%(2010 年) ⇒ *価値観の変化,社会構造の問題などが原因 ① 価値観の変化 ⇒ 急速な高齢化 … 医療技術の進歩が原因 ※ 高齢者の増加+少子化による若年者の減少= 少子高齢社会 かつて:若い時期に結婚・出産 現在:結婚・出産は個人の判断にゆだねる ② 社会構造の問題 ⇒ 1970 年~:高齢化社会へ (老年人口比率が7%以上) 1994 年~:高齢社会へ (老年人口比率が 14%以上) 2007 年~:超高齢社会へ (老年人口比率が 21%以上) 経済的な不安(養育費など) 社会制度の未整備(仕事・育児の両立が困難な仕組み) =「産みたくても産めない」 ↓ 対策…養育費の公的支援,保育施設の整備,育児休暇制度の充実… 少子高齢社会と人口減少社会 少子高齢社会 ⇒ 世代間の問題の発生 ・老年人口の増加:社会保障(年金・医療など)が必要 ・生産年齢人口の減少:老年人口の生活を支える労働力人口を圧迫 ⇒ 新たな経済社会のあり方をさぐる必要あり p.022-023 第2編・第1章 青年期と現代社会・第1節 現代の社会(p.20-29) 3 男女が共に生きる社会(p.24-25) 男女共同参画への意見 男は仕事,女は家庭か ■性別による役割分担=これまで;「男は仕事,女は家庭(家事・育児)」 ⇒ジェンダー(社会的,文化的,歴史的につくられた性意識) ・それぞれの「らしさ」を否定するものではないか? ・女性が仕事をもつことが家族崩壊につながるのではないか? ・専業主婦を軽視することにつながるのではないか? cf. 生物的な性(身体的特徴などによる性) 公正な社会を目ざして 戦後民主化と男女平等 戦後日本の民主化 ⇒ 法の下の平等(憲法第 14 条) ① 婚姻・家族生活 … 男女の本質的な平等(憲法第 24 条) ② 労働基準法 … 男女の賃金差別の禁止 ③ 男女雇用機会均等法(← 女子差別撤廃条約を受けて) ⇒ 改正後 ・セクシャル-ハラスメント(性的嫌がらせ)防止義務 ・男女双方への差別の禁止 ・間接差別の禁止 ④ 育児・介護休業法 … 男女とも労働者が双方の休業取得可能に ⑤ 男女共同参画社会基本法 … 個性・能力を発揮できる社会の実現 p.024-025 ■さまざまな法整備 ⇔ 実際には: 一般女性労働者の賃金:男性の7割程度 非正規雇用者の女性の割合:非常に高い ■女性の労働力率と出生率 *年齢階級別の女性労働力率 … 30 歳代が低くなる特徴 ↓ 女性労働力率の向上 ⇒ 出生率の向上につながる 第2編・第1章 青年期と現代社会・第1節 現代の社会(p.20-29) 4 高度情報社会に生きる(p.26-27) 高度情報社会 情報機器の発達 電子商取引(e‐コマース)の可能な範囲が日々拡大へ ■コンピューターの大きさの変化 1970 年ごろ … 10 畳ほどのスペースが必要 現在 … 高性能で小型化が進むダウンサイジング cf. スマートフォン:多機能(電話+パソコン機能+その他) → B-to-B;企業間の取り引き → B-to-C;企業と消費者間の取り引き ※ 情報社会;情報に価値がおかれる社会 ⇒ 現代日本は,高度情報社会 多機能情報端末:無線LANに対応 (電子書籍,ゲーム,動画,インターネットほか) 高度情報社会の弊害 ■膨大な量の情報の活用,高度情報社会で生活 ネットワーク整備とユビキタス社会 ■情報機器の発達 弊害;サイバー犯罪の発生 …① 個人情報や重要情報が公に ネットワークの整備 … ブロードバンドの普及 ⇒ インターネット上における情報量が増大 ↓ 高性能・小型化された情報機器 + ネットワークの普及 ⇒ いつも人どうし・モノどうし・人とモノがつながる社会 ↓ ユビキタス社会 の実現 ② インターネット上での中傷(匿名性を悪用) ↓ 個人情報の保護 情報倫理(ルールやマナーの徹底) ■悪用の例: 「ネットいじめ」 「炎上」 → ネチケットの徹底 「例.動画などの違法ダウンロード(コピー)」 → 知的財産権の保護 p.026-027 第2編・第1章 青年期と現代社会・第1節 現代の社会(p.20-29) 5 国際社会と日本人(p.28-29) グローバル化と日本 1990 年以前;外国に長期滞在する日本人 = 増加の一途 国境を越える就職戦線 ■企業の意識の変化 cf.日本国内での外国人の労働を禁止(一部の例外を除く) 1990 年以降;出入国管理及び難民認定法の改正 ・ 「日本企業だから日本人を雇う」 … 就労条件の緩和(= 日系人に幅広い労働を認める) ex.企業内の共通語が英語の企業 就職説明会を中国で行う日本企業 ⇒「定住者」という資格新設など 理由 当時:好景気=労働者不足への対策(積極的に受け入れ) 外国人の採用を増やす日本企業 その後:不景気=失業率の上昇 ■働く側の意識の変化 → 労働条件の悪化などの問題が生じている ・ 「日本人だから日本の企業に就職する」⇒意識の変化 ex.外資系企業に人気が集まる 海外で就職活動 → 現地で働き続ける 共に生きるために ■将来の日本 少子高齢化による労働力不足 20 世紀後半以降:あらゆる分野で国境がなくなる(ボーダーレス化) = 地球が一体化していく(グローバル化)かのような国際社会 ex.日本の現状…グローバル化の影響 外国人労働者の受け入れが必要(異文化との交流が日常化する) ■エスノセントリズムからマルチカルチャリズムへ エスノセントリズム=自分たちの価値判断で他の文化を評価する姿勢 ⇔ 進むグローバル化 マルチカルチャリズム(多文化主義) ① 自分の民族や文化に誇りをもつ ② 自他ともに独自の文化を守る ③ 他文化を尊重し,畏敬の念をもつ *グローバル化を共生のきっかけに p.028-029 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 1 青年期とは何か(p.30-31) アイデンティティの確立 第二の誕生 ■青年の課題 ■「青年期」=「第二の誕生」 ;ルソー『エミール』 心理的離乳(精神的離乳)…親からの精神的な独立 人生の重要な節目,自分の人生を生きるスタート ギャングエイジ 青年前期 青年中期 青年後期 ⇒小学生後半 中学生 高校生 それ以降⇒ アイデンティティ(自己同一性)の確立;エリクソン =簡単には変わらない自分の確立 自分の考える自分の姿 他人が考える自分の姿 青年の成長と悩み 一致させる ・他人に認めてもらえるような自分らしさ ■「青年」=「境界人(マージナルマン)」 ;レヴィン 子どもと大人,どちらの性格もあり,どちらにも所属できない ・自我に目ざめる(強い自己意識) ・自分を見つめる 「モラトリアム(猶予期間)の,試行錯誤の経験が必要」(エリクソン) もとは銀行の支払い猶予期間のこと 悩み を相談できる (「他人の目に自分がどう映るか?」) ・何かに打ち込み,自分らしさを確立 大人の義務・責任を免除されている見習い期間 友人を求める ・孤独や劣等感,苦悩を感じる ■アイデンティティの拡散 ・自信がなく,強く不安を感じる ・自分に対する自分の評価と,周りの評価が異なる →アイデンティティの拡散=青年期危機説 ⇔ 青年期平穏説 ヤマアラシのジレンマ ↓ 友人との適切な距離の発見 p.030-031 他人への共感・連帯感 *「人は努力する限り迷うものである」 ;ゲーテ ・ピーターパンシンドローム…大人になることを拒否する心理 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 2 適応と欲求不満(p.32-33) ■防衛機制 さまざまな欲求 適応行動 … 欲求不満から,自我を守るために無意識にとる行動 ■欲求 … 「~したい」 「~されたい」 「欲求の五段階」 ;マズロー 下位の欲求 → 上位の欲求を求めるようになるとする説 上位 自己実現の欲求 …… 成長欲求 承認の欲求 ・置き換え(転移) ・退行 ・同一視(投射,取り入れ) ・反動形成 ・合理化(cf. すっぱいぶどう) ■欲求不満耐性;ローゼンツヴァイク =欲求不満に陥っても,混乱することなく切り抜ける能力 所属と愛の欲求 …… 欠乏欲求(基本的欲求) 安全の欲求 下位 ・抑圧(隔離) 生理的欲求(一次的欲求) 無意識の発見 夢の研究(フロイト);無意識の領域 本人が意識できる領域 ⇔ 本人は意識できない領域(無意識) 防衛機制 自我(エゴ)と超自我(スーパーエゴ) ■欲求不満とは 欲求 無意識の研究(ユング);集合的(普遍的)無意識=人類に共通する無意識 満足 → 安心・幸福感 満たされない → 欲求不満(フラストレーション) ■欲求不満の原因 個性と性格 ■個性(パーソナリティ)とは ・ 外的障害,個人の能力不足 能力 … 欲求を満たすための知識・技能 ・ 葛藤(コンフリクト)=二つ以上の欲求の対立 気質 … 個人の気分・感情の傾向 ⇒ 接近‐接近型,回避‐回避型,接近‐回避型 性格 … 行動と意志を決定 ■個性化;ユング 青年期:自分で立てた目標を達成 → 人生の後半:統合し自己実現 p.032-033 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 3 3 青年期と自己実現 ― 職業と社会参加(p.34-35) ボランティアへの参加 職業の意義 ■自己実現の方法 ・職業を通じた能力・実力の発揮 ■職業の意義とは ・ボランティア(自発的な奉仕・労働)に参加する ex.福祉施設でのボランティア ・収入の獲得…………自立して生活する ・社会への貢献………社会のつながりのなかで,役割を果たす → コミュニケーション能力を高める ・自己実現の達成……能力や実力を発揮し,社会に認められること で満足を得る 介護体験 → 感謝される経験を得る ※近年,NPO(特定非営利活動法人)や NGO(非政府組織)が増加 ■職業観の変化 17 世紀ヨーロッパの宗教改革 「職業は神から与えられたもの」 ⇒ 勤労を尊ぶ考え方 = 近代資本主義の誕生;マックス=ウェーバー 生きがいをもつこと ■生きがいとは…生きる喜びや希望 (自分の能力を伸ばしたり,他人に認められることで得られる) 職業と青年 *主体的真理を求める;キルケゴール ex.シュヴァイツァー ■ニートの増加 ニート…Not in Education, Employment or Training 就業,就学,職業訓練のいずれもしていない状態の青年 <原因>若者の技能と企業の要望の不一致 働くことへの希望の欠如 ■これからの職業意識 ・現代社会:高度情報化・グローバル化の進展 ・個人に求められる能力…情報を選択・活用する力 ↓ さまざまな人と人間関係を形成する力 社会に求められること…青年の職業意識を高める p.034-035 … アフリカでの医療活動 → 貧しい人を救う 生涯学習を続ける ex.パソコンの習熟 ⇒ デジタルデバイドの解消 歴史研究など… 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 4 善く生きること(p.36-37) アリストテレスの現実主義 ソクラテスと無知の自覚 ■中庸(メソテース);アリストテレス ex:「勇気ある生き方」とは ■哲学の始まり=古代ギリシャの思想 万物の根源(アルケー)の探求 : 「アルケーとは何か?」 自信がない= 臆病 → 勇気 → 無謀 =自信を持ちすぎる → タレス; 「水」 ,デモクリトス;「原子(アトム)」 ↑ ■無知の自覚;ソクラテス … 問答法(魂の助産術) くり返すことで習慣として「勇気」が身につく=現実主義 ⇒ 真の知を求め,人間にふさわしい真の生き方を考えさせる 「大切なのはただ生きることではなく,善く生きることだ」 (cf.『ソクラテスの弁明』『クリトン』『パイドン』) ■「人間は社会(ポリス)的動物である」 友愛(互いに尊敬しあうこと)=徳(備えるべき長所) ・優れた人どうしの深い精神的な結びつき プラトンのイデア論 ・人間と社会を結ぶ絆 ■イデア論;プラトン(ソクラテスの弟子) イデア:物事の理想的で変わらない姿 ■その後の哲学の流れ ex.美のイデア 愛慕(エロス): 美そのもの イデアを想起しあこがれる気もち イデアの影:現実にあるさまざまなもの ・ストア派 人間は共通の理性をもつ(平等思想) ↓ 美のイデアの影 ex.美しい人や風景 ■理想主義 … 「善く生きること」=この世でイデアを実現すること p.036-037 ・エピクロス学派 精神的な快楽を目ざす ※自然法思想の原理に 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 5 生き方の思想(p.38-39) ■機械論的自然観(ベーコン,デカルト) 自然は大きな機械→「開発される対象」とする考え方 近代の始まり ■中世の思想 理性を考える ・ヘブライズム=キリスト教の神を中心とした思想 ・ヘレニズム=人間を中心とした思想,古代ギリシャの合理主義 ■経験論 … ベーコン; 「知は力なり」 ・「目的の王国」=互いが尊重し合う社会 イドラ=人間が抱きやすい偏見や偶像 ・市場のイドラ ・劇場のイドラ ■弁証法;ヘーゲル *これらをとり除くことで 正しい知識を得る <帰納法> … 観察や実験を通し,仮説を立てて検証する 事実 → 観察と実験 … 誰もが従わなくてはいけない行動の法則 ・定言名法=だれもがすべきことを, 「~せよ」という命令形で表現 スコラ哲学(中世キリスト教の学問)を批判 ・種族のイドラ ・洞窟のイドラ ■道徳法則(人間の生き方の基準);カント → _共通する一般的な法則_ ex. ソクラテスは死んだ あるできごと 矛盾するもの … [Ⅰ.対 立] 【 Ⅱ.総 合 → Ⅲ.発 展 】 = 歴史の法則 ■唯物弁証法;マルクス … 社会主義革命の必然性を主張 ■功利主義 … 「最大多数の最大幸福」を実現すべし;ベンサム … 功利主義の質を重視;ミル プラトンは死んだ 人間は死ぬ アリストテレスは死んだ 実存主義の思想 ■合理論 … デカルト; 「我思う故に我あり」 実存主義 … だれにもかわることのできない,一人の人間としての生き方 確実な真理を得るために,すべてのことを疑う(方法的懐疑) ■「神は死んだ」 ;ニーチェ … キリスト教を否定→神にかわる「超人」 →「我思う故に我あり」 … 考えている自分の存在は確実である ■「実存は本質に先立つ」 ;サルトル <演繹法> … 確実な真理から推論を重ねて他の原理を導く 単純で確実な真理 → 推論と検証 → 判断 ex.「人間は死ぬ」→「ソクラテスは人間である」→「ソクラテスは死ぬ」 p.038-039 ・自分らしさは自らつくりあげるもの ・社会参加(アンガージュマン)の必要性を説く ・「実存主義はヒューマニズムである」 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 6 宗教を考える(p.40-41) イスラーム 宗教とは何か 宗 教 ■イスラム教;ムハンマド(マホメット) … 希望や安らぎを得る 【成立】7世紀,アラビア半島・メッカ 世界宗教:キリスト教,イスラム教(イスラーム),仏教など 【経典】『クルアーン(コーラン)』 民族宗教:ヒンドゥー教(インド),神道(日本)など ・唯一神アッラー → 人間ムハンマドを最後の預言者に選ぶ → 終末に最後の審判を行う キリスト教と愛の思想 ■六信五行 = ムスリム(イスラム教徒)が守るべき教え ■キリスト教;イエス=キリスト 【成立】1 世紀,パレスチナ地方 六信:アッラー,天使,預言者,経典,来世,天命を信じる 【経典】 『旧約聖書』 『新約聖書』 五行:信仰告白,礼拝,喜捨,断食,巡礼(ムスリムの勤め) ・ユダヤ教(パレスチナ地方の民族宗教)が母胎 ↓ 唯一神ヤハウェを信仰 ムスリムとしての自覚と団結を促す 「モーセの十戒」などの律法を守ることで救われる ・イエスの教え 「すべての人に,神の愛(アガペー)は平等に注がれる」 「神を愛することと隣人を愛するべきである」 ■贖罪思想 = イエスが人間の原罪を引き受けて死んだという思想 ユダヤ教指導者から危険視され,イエスが十字架刑に処される ⇒ パウロ,地中海沿岸にキリスト教を広める p.040-041 現代と宗教 異なった宗教や宗派間の対立 → 抗争・テロなどの事件につながることも ↓ ※ それぞれの宗教に対するバランスのとれた見方が重要 第2編・第1章 青年期と現代社会・第2節 現代に生きる倫理(p.30-43) 7 アジアの思想(p.42-43) 仏教の思想 儒学の思想 ■仏教;釈迦(ガウタマ=シッダールタ) ■諸子百家 … 春秋戦国時代の戦乱を生き抜いた思想家・学派 儒学 ;孔子 『論語』… 荒廃した人心を,道を実行することで救う 【成立】紀元前6~5世紀ころ,インド北部 ・ブッダ(仏陀);出家→真理を悟った覚者 ・礼(人間が行うべき伝統的規範) ・仁(礼を支える心) =諸行無常・諸法無我・因縁生起(縁起) 忠恕 … 素直な心,思いやり ・八正道…煩悩を滅ぼし,悟りの境地(涅槃寂静)に達する 孝悌 … 親や兄弟への愛,年長者に従う 性善説 ;孟子 孔子の思想を発展 ⇒ 「仁」を発展させることを主張 四諦 ⇒人が生まれつきもつ善人の傾向を伸ばし,徳にする 性悪説 ;荀子 苦諦 … 人生は苦 集諦 … 苦の原因=煩悩(欲望)の集まり 滅諦 … 苦の原因を滅ぼす(涅槃) 道諦 … 涅槃にいたる実践(=八正道) ・縁起の理法 … あらゆる結果には縁(条件)と因(原因)がある 孔子の思想の「礼」の部分を強調 ・慈悲の心 … すべての生命をいつくしむ心 ⇒人は生まれつき欲望を追求するので, 「礼」で矯正する ■宗派の分裂 … ブッダの死後 上座部仏教 … 個人の救済を目ざす,阿羅漢を理想とする 道家の思想 ⇒タイなどの東南アジアへ(南伝仏教) ■道家 … 儒家の説く「道」を偽りとして批判 大乗仏教 … 多くの人の救済を目ざす,菩薩を理想とする 無為自然・柔弱謙下 ;老子 ⇒中国,朝鮮半島,日本へ(北伝仏教) 本来の「道」とはすべてを生み出した根源 万物斉同 ;荘子 アジアの非暴力の思想 人間がつくった基準をこえ,自然の道と一体化して生きる ⇒真人 ■非暴力 … アジア古代の思想に共通する要素 儒学 … 徳治主義(暴力による政治の否定)/仏教 … 暴力の否定 ■非暴力・不服従で指導;ガンディー → インド独立を実現 p.042-043 第2編・第1章 青年期と現代社会・第3節 日本の伝統文化と思想のあゆみ(p.44-47) 1 日本の文化と伝統(p.44-45) 伝統文化の意義 日本文化の特色 ■伝統文化 ■日本の特徴 ・書道 …中国起源→日本に伝来,独自に発展 ・島国(海に囲まれていて,南北に細長い) ・茶道 …茶室,道具,食,点前作法などの総合芸術 ・四季がはっきりしている(季節の変化を植物で感じやすい) ・伝統的な祭り…世代をこえた人々のつながり ・重層性の文化=原始・古代から現代までの文化が混在 伝統文化と現代 日本の年中行事 伝統文化を通して自分や社会と向き合い,理解を深める ■年中行事…多くは稲の豊作を祈念,神道と関連するものもあり し め 現代 産業社会 ・正月 …歳神を招き災厄などを取りのぞく(注連飾り,鏡餅など) ・使い捨て文化 ・節分 …穀物の力で悪霊を払う ・ゆとりがない ・桃の節句…人形を流して穢れを払う 子どもの成長 ・端午の節句…菖蒲で邪気を払う を願う行事へ ・七夕 …お盆を迎える準備で豊作を願う ・地域とのつながりがもちにくい 伝統文化 ・お盆 …日本古来の先祖供養+仏教の同様の行事の融合? ・自然との深い関係(ex.熊野筆) ・秋祭り…収穫を神へ感謝 ・文化の発展をささえ,引き継ぐ …などさまざま ■通過儀礼(イニシエーション)…一生の節目の行事 ・お宮参り…神の保護を受ける ・七五三 ・葬儀 p.044-045 …乳幼児の生存を祝う節目 ・新しい文化が生まれることもある 第2編・第1章 青年期と現代社会・第3節 日本の伝統文化と思想のあゆみ(p.44-47) 2 日本人の思想と伝統(p.46-47) 儒教と日本人 日本人の心情 【4~5世紀ごろ】儒教伝わる … 江戸時代 ※農耕による共同生活 ⇒ 争わず,和を大切にする(協力) 清き明き心 穢きもの 他人に隠し立てしない気もち 共同体のつながりを絶つ行為 幕府,朱子学を採用 ※朱子学;1200 年ころ,中国の朱子が儒教から説く *「上下定分の理」によって幕府の身分秩序を正当化 【江戸時代中ごろ】 朱子学への批判 … 新たな思想家の登場 陽明学(日本);中江藤樹 「孝」の心に基づく実践 仏教と日本人 古学 ;伊藤仁斎 朱子学以前の儒学→論語を研究 【飛鳥時代】聖徳太子;仏教に基づく政治(ex.憲法十七条) 古文辞学 ;荻生徂徠 古代中国の政治の道を研究 【奈良時代】仏教による鎮護国家 ⇒ 各地に寺院を建立 国学 ;賀茂真淵 『万葉集』を研究→「ますらおぶり」 【平安時代(末期)】世情不安定 ⇒ 末法思想広まる ;本居宣長 『古事記』 『源氏物語』を研究 →浄土思想の受け入れ 【鎌倉時代】新しい仏教おこる … 仏教が大衆のものに 浄土宗;法然 … 「南無阿弥陀仏」を称えることで →「まごころ」 「もののあはれ」 【 幕 末 】西洋科学技術の積極的導入+儒学道徳思想の取り入れ … 「和魂洋才」「東洋道徳,西洋芸術」;佐久間象山ら 浄土に往生できる 親鸞 … 罪悪を自覚する人間が救われる 臨済宗;栄西 曹洞宗;道元 ……… 修行と悟りは一つであり, 坐禅によって悟りを得る 日蓮宗;日蓮 … 「南無妙法蓮華経」を唱えることで 仏の救いが得られる 西洋文化の受容 ■明治維新 ⇒ 外国文化の流入による変化「一身独立,一国独立」 福沢諭吉;独立自尊の精神 中江兆民;ルソー『社会契約論』翻訳 ⇒ 民主主義の理想を示す ■文明開化政策への批判 夏目漱石;自己本位の立場を貫く 西田幾多郎;日本の独自哲学の道を模索→純粋経験を重視 p.046-047 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第1節 個人の尊重と法の支配(p.48-53) 1 法とは何か(p.48-49) 法の目的とそのはたらき 人と社会と社会規範 法=社会の全員に共通するルール 人間=社会のなかで,かかわりをもって生活している 1) 社会秩序の安定をもたらす ↓ 2) そのための具体的な方向性(=「何が妥当なのか?」) 約束事(社会規範;ルール)にしたがって動く 3) 破られる(法律違反)ことがある場合 *「人間はポリス(都市国家)的動物である」;アリストテレス → 争いごとの解決や,刑罰を科す … 社会秩序を守ろうとする 社会規範の種類 社会規範=人間の行動基準になるもの ex.法,道徳,慣習,習慣,宗教,流行など *異なる点 法が守るべき価値 法 ・特定の年代・場所・人に対して用いられる ・時代・場所・人をこえて守られる重要な価値=人権 ・法:すべての人・すべての行為について強制的に使用される ※ 守られない場合,罰則がある ⇒ 自然法=人間の本性に備わる普遍的な法 ・道徳:個人の心の中のルール,一人一人の自立を重視 ※自然権=自然法思想に基礎をもつ,自分の利益のために ・習慣:自然に社会のなかでできあがってきた決まり事 自分の力を思うままに用いることのできる権利 ・宗教:宗教を信じる人だけのルール,神仏を信仰する教え *共通点… どのような行動をすべきかを判断する基準になる ⇒ 実定法(人がつくる,人が定めた法) 制定法,成文法 = 人間が制定したもの 慣習法 = 慣習として守られているもの p.048-049 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第1節 個人の尊重と法の支配(p.48-53) 2 人権保障と法の支配(p.50-51) 法の支配 「人の支配」=権力者の勝手な判断に基づく政治 人権 = 人間が人間である限り当然にもっているとされる権利 cf. 権利…英語の right の訳「正しい」 「正義」の意 かつて人権を踏みにじられていた人の「叫び」 ↓ 人権は大切な利益であり, 「人権を守ること」は正しいこと ⇔ 人権 「法の支配」=支配権力をあらかじめ存在する「正しい法(=慣習法 など)」により拘束し,個人の権利と自由を守る ex.イギリス…「国王といえども神と法の下にある」;ブラクトン → コーク(クック):権力者による絶対主義に反論 …コモン-ローの優越を主張 生命の尊重 生命 = 守るべき利益のなかで最も重要なもの 1)個人の権利・自由を守ろうとした ・自分の生命が他人によって危険にさらされない 2)個人の自由を保障する法を「正しい法」とした ・自分の生命も,他人の生命も大切にする 3)権力から個人の自由を擁護する裁判所の役割を重視した ⇒ その後の立憲主義の展開に大きな影響を及ぼす 近代憲法と人権保障 近代憲法の制定 = 人権尊重の実現のための方法の一つ ① 人権尊重の願いを互いに理解し合うことを目的として, 国家設立の契約の締結を宣言する文書 ② 国民が政府に対し, 「人権の保障」 「権力の分立」を 約束させたもの 法秩序において最高の権力をもつ(最高法規) ※ これらの内容を備えた憲法に基づいて政治を行う ⇒ 立憲主義 p.050-051 モンテスキュー;権力分立(三権分立) …① 立法権,② 執行権(行政権),③ 司法権 権力どうしを牽制させる,権力の濫用や腐敗を防ぐ 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第1節 個人の尊重と法の支配(p.48-53) 3 国民の司法参加と法(p.52-53) 裁判員制度 法の支配の実現 裁判所 ■法の運用 ⇒ 民事事件・刑事事件・行政事件 これまで: … 法の定める公平で透明な手続きや判断の基準に沿って解決 =社会秩序を守る 法曹(弁護士・裁判官・検察官などの法律の専門家)が運用 2009 年以降:裁判員が参加して裁判を行う(裁判員制度)が開始 ※ 国民の司法参加が実現(司法制度改革の一つ) 司法権の独立 司法権の独立=裁判官は法令に基づいて公正に裁判を行う ⇒ 第三者はそれに干渉してはならない ・自らの良心にしたがい独立して職権を行使 ・憲法・法律にのみ拘束される 【76③】 ⇒ 職権の独立確保(裁判官の身分保障)【78】 1)法曹人口の拡大 司法制度 2)民事・刑事司法制度の改革 改革 3)国民の司法参加(裁判員制度) ①裁判官の独立の侵害 裁判員制度の 問題点 ②裁判員の時間的・経済的な負担の軽減 ③専門家でない人の判断の反映 cf.大津事件 児島惟謙 … 「司法権の独立」と「裁判官の独立」をめぐる問題 犯罪被害者の救済 … 刑事裁判の変化 これまで: 違憲立法(法令)審査権 犯罪の被害者・遺族は裁判に参加不可(傍聴人・証人としては可) 違憲立法(法令)審査権=裁判所が保有する,法律・規則が憲法に違 反(違憲)していないか判断する権限【81】 ※ 最高裁判所 ⇒ 最終的な判断をする「憲法の番人」 p.052-053 2008 年以降:被害者参加制度が開始 ※ 被告人への質問,求刑で意見を述べるなど可能に ⇒ 問題点:裁判が感情に流される懸念 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第2節 日本国憲法の人権保障(p.54-63) 1 個人の尊重と公共の福祉(p.54-55) 公共の福祉 個人の尊重 公共の福祉【13】 「すべての国民は,個人として尊重される」 【13】 … 社会において個人の存在が最重要 = ① 人々の権利・利益の調整をはかるための原理 ② 社会の大多数の人々の利益 各個人が一人の人間として大事にされなければならない ↓ 「生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の 幸福追求権 福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必 「幸福追求に対する国民の権利」 【13】 ・生命の確保 ※「公共の福祉の範囲はどこまでか?」 ← 難しい問題 ・各人は干渉されない 幸 福 ・自分らしい生き方の選択 ↓ ⇒ 社会の変化・進展 …… 新しい人権の誕生 ◇ プライバシーの権利 ◇ 知る権利 ◇ 環境権 ◇ 自己決定権 etc… p.054-055 要とする」【13】 cf.明治憲法下;「公益優先」,国民の権利は厳しく制限 ⇒ 自分の自由・権利を行使する 他者の自由・権利を侵害してはならない ↓<侵害された時> 「立法その他の国政」の担当者が判断を下す ⇒ この判断は慎重に下されるべき ※「公共の福祉」⇔「表現の自由」 「経済活動の自由」 (対 立) 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第2節 日本国憲法の人権保障(p.54-63) 2 法の下の平等(p.56-57) ◆平等の実現に向けて 平等という考え方 《 部落をめぐる問題 》 ・絶対的平等…各個人はすべて異なった貴重な存在 ⇒ いっさい差別なく尊重される ・相対的平等…各個人の条件はさまざまである ⇒ 条件しだいでさまざまな扱い方を認める 江戸時代:農民・町人とは区別 明治時代以降:身分制度廃止,「新平民」の呼称,実質的な差別 日本国憲法下:差別禁止だが,社会生活のなかに残存 → 同和対策審議会の答申(1965-2002 年) 地方公共団体を中心に問題解決のための取り組み続く 法の下の平等 《 女性をめぐる問題 》 ■日本国憲法:個人の尊厳の保障 「人種,信条,性別,社会的身分又は門地」で差別されない【14①】 cf.明治憲法下:男尊女卑,職業差別,民族差別 *その他さまざまな差別の廃止 ・貴族制度,栄典に伴う特権の廃止 ・選挙の平等 ・教育の機会均等 ・家族生活における男女平等 「両性の合意に基づく婚姻の自由」 【24】 ← これまでの反省から ⇒ 男女共同参画社会基本法の制定 … 差別が残存 ・男女雇用機会均等法:違反に対する制裁措置の整備 ・夫婦別姓の導入問題:民法改正の議論 《 先住民族をめぐる問題 》 アイヌ民族:アイヌ文化振興法制定(1997 年) 《 在日外国人をめぐる問題 》 *依然として残る差別 ⇒ 解決しなければならない 選挙権・被選挙権・公務員になる権利の制限 障がい者,アイヌ民族,在日外国人への差別・偏見,部落差別… 雇用・住宅をめぐる差別 ■ポジティヴ-アクション(アファーマティヴ-アクション) 積極的差別是正措置 ex.差別されてきた人々を一定の割合で教育機関が受け入れる, 公共団体が雇用する p.056-057 《 障がい者をめぐる問題 》 障害者基本法(1993 年制定):障がいのある人の側に立った改善 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第2節 日本国憲法の人権保障(p.54-63) 3 自由権(p.58-59) ◆人身の自由 自由権 大日本帝国憲法下:令状によらない逮捕・勾留,拷問,自白の強要 ■自由=自分で決めて何かをできること ⇒ 権力による束縛・強制からの解放 cf.日本国憲法下:裁判所が有罪と判断するまでは,無罪として扱う (無罪の推定[推定無罪])【31】=適正(法定)手続きの保障 ■自由権 → 身体を不当に拘束されない自由【34】 =主として政府が個人の領域に立ち入らないように要求する権利 cf. 他者からの強制的干渉がなく,自分のやりたいことが行える 奴隷的拘束や苦役からの自由 ⇒ ① 罪刑法定主義【31】=犯罪行為と刑罰があらかじめ法律 =「消極的な自由」 「~からの自由」 自らの意思を主体的に実現できる で定められていなければならない ② 令状主義【33・35】=逮捕・捜索・押収は,現行犯以外は =「積極的な自由」 「~への自由」 裁判所発行の令状が必要 ③ 黙秘権【38】の保障 ⇔ 冤罪(無実の罪)は残っている ◆精神的自由権 ・思想及び良心の自由【19】=内心への権力の干渉の禁止 ・信教の自由【20】=宗教活動をする自由,宗教を信じない自由 ◆経済的自由権 日本国憲法 ・政教分離の原則【20③】=政府と特定の宗教の結びつきを禁じる ・ 財産権【29】の保障=土地の所有など ・表現の自由【21】 ・ 職業を選択する自由【22①】 =内心に抱いた思想や意見などを公表・交換する自由 ⇒ 報道の自由 … 国民に情報を提供する自由 ・集会・結社の自由【21①】 =思想・意見を表明する場合,それを支える組織・集団的な 活動の保障 ・学問の自由【23】=学問の内容などに介入・干渉を受けない自由 p.058-059 =企業活動を営み,自分に適した職業を選べる自由 ※ 「公共の福祉」の観点から調整や制約が加えられる場合あり 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第2節 日本国憲法の人権保障(p.54-63) 4 社会権と人権を確保するための権利(p.60-61) 労働基本権 社会権の誕生 *労働者の労働条件の改善,経済的地位の向上を目ざすための権利 ■私的自治の原則: 「富める者」⇔「貧しい者」… 貧富の差の克服 ① 団結権【28】 = 富から排除された者の利益の尊重(福祉国家) ② 団体交渉権【28】 ⇒ 法的保護+権利を保障 = 社会権 ③ 争議権(団体行動権)【28】 ※ワイマール憲法で法として初めて社会権の考え方が示される 労働基本権 = 労働三権【28】+ 勤労権【27】 cf.福祉国家(=積極国家) ⇔ 消極国家 ・ラッサール:消極国家を夜警国家とよび,批判した 生存権 労働三権 ↓実現のために 労働三法 = 労働基準法・労働組合法・労働関係調整法 ◆人権を確保するための権利 ■生存権の保障 【25】 救貧;人間らしい生活のために救済を施す 防貧;貧困にならないように手立てを施す *生存権; 「健康で文化的な最低限度の生活」を送れるように政府 に求める権利(⇒ 社会福祉・社会保障政策に頼る) ex.朝日訴訟・堀木訴訟 ・政治・裁判に参加し,監視する権利の保障 … 参政権 中心となる権利 … 選挙権,被選挙権 ・基本的人権の侵害,不利益な扱いを受ける … 国に共済を求める権利がある;請求権 ex.請願権【16】;国民 ⇒ 国・地方公共団体に訴える … プログラム規定説(国の責務は努力目標) ◆国民の義務 教育を受ける権利 ・さまざまな権利+三つの義務 ・教育を受ける権利【26】 … 学習権としての側面+教育制度を整え る国の義務(=義務教育の無償) ex.9年間の義務教育の無償 p.060-061 ① 納税の義務 ② 勤労の義務 ③ 普通教育を受けさせる義務 第2編・第2章 人権保障の原理と日本国憲法・第2節 日本国憲法の人権保障(p.54-63) 5 広がりゆく人権(p.62-63) 知る権利 人間の尊厳と広がる人権 知る権利 基本的人権=人間の尊厳にふさわしい生活を送るための権利【11】 ↓ 国・地方公共団体が保有する情報の公開を請求する権利 ① 反論権(メディア-アクセス権); 社会変化に伴い新しい人権が生じる(幸福追求権【13】を根拠に) 意見や反論を報道機関などに反映させることのできる権利 ⇔ 「表現の自由」【21】(特に「報道の自由」)を損なうおそれ プライバシーの権利 ② 情報開示請求権;行政機関が保有する情報の開示を求める権利 プライバシーの権利 … 幸福追求権にこの権利が含まれる 「表現の自由」【21】に基づく法・条例が必要 ① 私生活を正当な理由なく公開されない権利 ⇒ 1999 年,情報公開法の制定(情報公開制度) ② 自分に関する情報を自分で管理できる権利 ・自分に関する情報にアクセスすること ・情報を訂正・廃棄(抹消)させること ・本来の目的以外の使用を認めないこと ex.住基ネットからの個人情報流出 ・個人情報の流出への配慮 ・自己情報確認時の公開請求に対応した開示 ex.(対応策) 国;個人情報保護法など 地方公共団体;個人情報保護条例など ⇔これらに対し… 通信傍受法 p.062-063 個人のプライバシーの侵害? 環境権 *これまでの公害防止運動 ⇒ よい環境を享受し,これを維持する権利(環境権) ↓ すべての環境を破壊から守る 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第1節 民主政治とは(p.64-67) 1 民主政治の原理(p.64-65) *独裁制(独裁政治)=一部の人間が決定 民主主義とは 少数者で決まりをつくる ⇒ 他人に押し付ける ■民主主義と君主制 *民主制=全員がなんらかのかたちで決定に参加(関与) 民主主義(デモクラシー) ・決定に参加する人が, 身分・収入で限定されない ・一人一人の平等が前提 ・言論・批判の自由を保障 <為政者> 君主制 ・君主・皇帝が権力を握り, 民衆を統治 (cf.立憲君主制= 君主の立場を憲法が規定) <為政者> 選挙で示される国民の支持 <税金> 世襲で決定 <税金> 国民の代表が法律に従って決定 支配者によって恣意的に決定 政府の決定は法に基づく →法の支配 ① 直接民主制 社会の構成員が直接参加して決定 ⇔ 社会規模が大=不可能 ② 間接民主制(代表民主制) 代表者を選出 ⇒ 彼らが決定を行う ◆社会契約説の役割 社会契約説=国王の統治は自然状態ではない ⇔ 支配者と被支配者の間で契約が交わされたから統治できる ホッブズ(イギリス) 自然状態: 「万人の万人に対する闘い」 国家:自然権を譲渡 ⇒ みんなが同調できる共通の権力 ロック(イギリス) ■近代の民主主義の展開 自然状態:対立はあるが,互いを尊重し合う <アメリカ> 国家:生命,自由,財産の保障のため権利を委託 1620 年 →相互に協力して政治を行うことを誓約 →タウンミーティングによる直接選挙制などの実行 1830 年代 アメリカ合衆国全域で普通選挙実現 <イギリス> 19 世紀~:選挙権拡大,20 世紀~:普通選挙の実現・下院の優越 p.064-065 ⇒ 濫用があったときは取り戻せる(抵抗権) 渡米したピューリタン(清教徒)によるメイフラワー誓約 ルソー(フランス) 自然状態:自由で平等な状態 国家:共同体への自己の全面的譲渡(一般意思に従う) ⇒ 平等な条件下で,自由を保障(人民主権) 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第1節 民主政治とは(p.64-67) 2 世界のおもな政治制度(p.66-67) <行政> イギリスの議院内閣制 大統領 国民 ■議院内閣制=立憲君主制の国家に多い;イギリス,日本など 明確に分離 投票 <立法> 上院・下院 (対立的) 立法・行政・司法は独立 ⇔ 行政機関と立法機関は緊密な関係 <立法> 投票 国民 任命 下院(庶民院) 上院(貴族院) <行政> 首相 内閣 中華人民共和国の一党制 ■一党制=中国共産党が国家機構を指導 立法・行政・司法は抑制しあわない 協調して予算案・法案を提出 中国共産党 監督・任免 ・下院の多数派に行政をゆだねる ⇒ ∴権力が集中しやすい ・下院が内閣に対し不信任案を提出可能 投票 国民 選出 選出 →地方各級人民代表大会→全国人民代表大会→常務委員会 ⇒ 総辞職か下院の解散を迫ることができる 国家主席 首相 アメリカの大統領制 ■大統領制=共和国に多い(アメリカ,大韓民国など) ・実際に国政を動かすのは中国共産党 ・国民が大統領,上院議員,下院議員を別々に選出する ・中央政治局常務委員会(中国共産党の最高指導集団)に権力が集中 不信任・解散なし,最大任期2期8年=安定化 ・立法・行政・司法は独立 ⇔ 行政機関と立法機関は厳格な分離 議会で与党が少数派 ⇒ 政治的な動きが停滞することも ※ モンテスキューの影響 ⇒ 勢力均衡を重視,権力集中を警戒 p.066-067 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第2節 日本国憲法の基本原理と平和主義(p.68-73) 1 日本国憲法の基本原理(p.68-69) 国民主権と象徴天皇制 日本国憲法の成立 1945 年 ポツダム宣言受諾 ・戦後の民主化政策が示される (基本的人権の尊重,民主政治の強化,軍国主義の除去など) 明治憲法 主権 天皇 国民 人権 臣民の権利 永久不可侵の権利 天皇から与えられたもの ・ 「憲法改正要綱」発表;国体護持にこだわったもの ⇒ 大日本帝国憲法(明治憲法)にかわる新しい憲法の草案 日本国憲法 天皇 神聖な存在,国家元首 1946 年 マッカーサー(連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)) 日本国・日本国民統合の象徴 国民の総意に基づく ※憲法草案作成を指示→政府とGHQ,折衝 (象徴天皇制) ・「憲法改正草案要綱」発表 国事行為のみを行う ・帝国議会で審議,修正を経て可決 ・日本国憲法公布 ■ 憲法改正の手続き … 【96】国民投票法で定める 1947 年 日本国憲法施行 日本国憲法の基本原理 国民主権 日本国憲法は硬性憲法であり,改正には厳格な手続きが必要 衆議院 参議院 総議員の 2/3 以上の賛成 総議員の 2/3 以上の賛成 国の政治を決める力(主権)が国民にある *民主主義の根幹,代表(間接)民主制の採用 基本的人権の尊重 平和主義 p.068-069 国民の平等な政治への参加に不可欠 基本的人権の尊重に不可欠 国民投票で過半数の賛成 天皇が国民の名で公布 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第2節 日本国憲法の基本原理と平和主義(p.68-73) 2 平和主義と憲法第9条(p.70-71) 自衛隊をめぐる議論と文民統制 平和主義 ■自衛隊をめぐる議論 ■日本国憲法の基本原理=基本的人権の尊重,国民主権,平和主義 ↓ <憲法第9条> 戦争の放棄,戦力の不保持,交戦権の否認 ※世界のすべての人々が 「平和のうちに生存する権利(平和的生存権)」をもつことを確認 自衛隊は第9条に違反している 日本の平和と安全のために存在を認めるべきではない etc… 政府 自衛隊は第9条に違反していない 「自衛のための必要最小限度の実力」 =「戦力」ではない ■日本の防衛政策 … 専守防衛 ・武力攻撃を受けて初めて防衛力を行使 ・防衛力の規模,質,行動は必要最小限 ・集団的自衛権の行使は許されない 憲法と自衛隊 ※自衛隊をめぐる裁判 … 砂川事件,恵庭事件,長沼ナイキ基地訴訟,百里基地訴訟 * 高度な政治性をもつ行為は憲法判断しない=統治行為論 ■文民統制(シビリアン‐コントロール) 1950 年 朝鮮戦争勃発 → 警察予備隊の設置 自衛隊を国会・政府の統制のもとにおく 1951 年 サンフランシスコ平和(講和)条約締結;日本の独立 (=文民統制;内閣総理大臣・国務大臣は文民に限定) 日米安全保障条約を締結 1952 年 警察予備隊 → 保安隊に 1954 年 保安隊 → 自衛隊(陸上・海上・航空)に 日米相互防衛援助(MSA)協定,防衛庁設立 2007 年 防衛庁 → 防衛省に p.070-071 軍人でない者 ※自衛隊の統制 最高指揮権:内閣総理大臣がもつ 防衛上の重要事項:内閣の安全保障会議で協議 出動:国会の承認が必要 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第2節 日本国憲法の基本原理と平和主義(p.68-73) 3 日本の安全保障体制と平和の構築(p.72-73) 平和の構築 日米安全保障条約 ■有事法制…戦時を想定した法制 1950 年 朝鮮戦争勃発 2003 年 武力攻撃事態法など(有事関連三法) 1951 年 2004 年 国民保護法,米軍行動円滑化法(有事関連七法) 日米安全保障条約(日米安保条約) 米軍基地を日本国内におく 日本周辺における米軍の活動を認める ① アメリカとの同盟関係による日本の平和の維持 ② 西側諸国の一員としての外交・防衛政策を行う → 日本の平和主義が岐路に立っている ■国際社会と平和 「人間の安全保障(1994 年)」 ;国連開発計画(UNDP) 軍事力による国家の安全保障ではなく,生存権を大切に ⇒ 1960 年改定 … 激しい反対運動に 1960 年 日米相互協力及び安全保障条約(新日米安全保障条約) 日本に武力攻撃→日米協力して防衛(日米共同軍事行動) 日米両国の防衛力の維持・発展 自由主義の堅持,日米の経済協力などの多分野での協力 ※在日米軍の動きに関する事前協議 → 有効性は疑問視 ※10 年期限の条約で,1970 年以降自動延長 1960 年 日米地位協定 … 在日米軍の法的地位の取り決め 1978 年 日米防衛協力のための指針(旧ガイドライン) 日米の軍事協力強化(日本以外の極東における事態まで) 日本駐留時の経費を日本が一部負担 → 思いやり予算 1997 年 新ガイドライン … 日米の具体的な軍事協力のために周辺事態法制定 p.072-073 日本国憲法の基本原理 ※ 全世界の国民が平和のうちに生存する権利 (平和的生存権)を確保する 理想の達成への努力が求められる ■日本外交の取り組み 非核三原則 … 核兵器を「もたず,つくらず,もちこませず」 武器禁輸三原則 … 武器輸出の禁止(⇒ すべての国への) 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第3節 日本国憲法と政治の仕組み(p.74-81) 1 議会制民主主義と国会の仕組み(p.74-75) 国会と議院の権限 政治制度の原理 ■ 国会の権限 ■ 日本国憲法の目的…人権の保障 (手段)国会・内閣・裁判所 国民主権・権力分立・法の支配 ・憲法改正の発議 ・条約の承認 ・法律の議決 ・財政の議決 ・内閣総理大臣の指名 ・弾劾裁判所の設置 ■ 各議院の権限 (衆議院)・国政調査権 立法(国会) ・内閣不信任決議権 *衆議院の優越(両院の議決が異なる場合など)を認める 三権分立制 司法(裁判所) 行政(内閣) 抑制と均衡 国会の地位と構成 :全国民を代表する選挙された議員によって構成 国権の最高機関 …国政の中心的地位を占める機関 国の唯一の立法機関 委員会 … 法案の審議 ↓可決・報告 本会議 委員会中心主義 … 議決 …立法は常に国会を通さなくてはならない ※例外:議院規則,最高裁判所規則,委任立法 …衆議院と参議院で構成,国会議員に憲法上の特権 ※国会の種類 通常国会(常会)[年一回,150 日間の会期],臨時国会(臨時会)[必 要に応じて],特別国会(特別会)[衆議院解散の総選挙後] (※衆議院解散中の緊急要件…参議院の緊急集会) p.074-075 国会の立法活動の現状と課題 ■委員会制度 … 実質的審議は専門化した委員会で行う 国会 … 間接民主制(議会制民主主義)による議会 二院制 (参議院)・国政調査権など ■官僚主導から「政治主導」へ 法律案の提出数 … 内閣(官僚が作成) > 議員(議員立法) → 「国会審議がかたちだけのものになっている」という批判 ↓ 政府委員制度を廃止(=国会での答弁を大臣が行う) 副大臣,大臣政務官制度の導入(=省庁に入る国会議員の増加) 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第3節 日本国憲法と政治の仕組み(p.74-81) 2 行政権と内閣(p.76-77) 内閣総理大臣の権限 行政権と内閣 ■内閣 … 内閣総理大臣と国務大臣からなる合議体【66】 ■内閣…国の行政機関【65】 行政事務 閣議による全会一致で意思決定 【73】 ■内閣総理大臣の権限 ・国会の制定した法律の執行 ・予算の作成 ・条約の締結 ・政令の制定 天皇の国事行為に対する助言と承認 最高裁判所長官の指名 裁判官の任命 ・国務大臣の任命,罷免【68】 など 【3】 【6】 ・内閣を代表して議案を国会に提出【72】 ・国務,外交関係について報告【72】 ・行政各部の指揮監督【72】 【79①】 ◆行政改革と私たちの暮らし ■行政委員会…内閣から独立して職務を行う (人事院,公正取引委員会,中央労働委員会など) 国会と内閣 大きな政府 (積極国家,福祉国家) 政府が経済に介入,国民生活を守る=国の財政支出が増加 1980 年代 財政危機 ■議院内閣制…国会が内閣を監視し,責任を問える仕組み ・内閣総理大臣…国会の議決で指名【67①】 ・その他の大臣(国務大臣) …過半数は国会議員から選ばれ,文民【66・68】 ・内閣は,国会に対して連帯して責任を負う【66③】 ■内閣不信任決議 (衆議院のみ) 内閣は,10 日以内に衆議院を解散しない限り,総辞職する p.076-077 小さな政府への転換 「官から民へ」 「国から地方へ」 ・民営化 … 国鉄→JR,電電公社→NTT,専売公社→JT ・構造改革 … 規制緩和,郵政民営化 行政手続法,情報公開法の制定 ※行政のかかえる問題=行政権の優位, 「天下り」 , 「族議員」 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第3節 日本国憲法と政治の仕組み(p.74-81) 3 司法権と裁判所(p.78-79) 裁判所の構成 司法権とは 最高裁判所 … 長官:内閣が指名・天皇が任命【6②】 司法権=具体的な事件について法を適用し解決する国家のはたらき 最高裁判所 下級裁判所 裁判官:内閣が任命【79①】 民事事件・刑事事件・行政事件 ※司法権の独立【76②】 … 特別裁判所の禁止,行政機関の終審裁判禁止 国民審査 【79②】 下級裁判所 … 裁判官:最高裁作成の名簿から内閣が任命【80①】 (=高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所) 三審制 ⇒ 判決に不服の場合,異なる階級の裁判所で判決を受ける 裁判の対審と公開 (第一審) 公正な裁判 (控訴審) 控訴・抗告 (上告審) 上告・特別抗告 対審:中立的な裁判官の前で対立する当事者同士が意見を戦わせる 冤罪と死刑制度 裁判の公開【82①・②】 …裁判の対審及び判決は,公開法廷で行う 政治犯罪・国民の権利が問題となっているものは常に公開 ■冤罪事件 有罪判決の確定 ⇒ その後有力な無実の証拠の発見 ⇒ 再審 → 日本の刑事裁判への信用の低下 ■冤罪を防ぐ取り組み 上訴 控訴;第一審の判決に不服を申し立てる訴訟手続き ・取り調べを録画 ⇒ 可視化 上告;第二審の判決に対して不服を申し立てる訴訟手続き ・代用監獄(代用刑事施設)の廃止 抗告;決定・命令に対する不服申し立て ・検察官のもつ証拠の全面開示 *特別抗告;決定・命令に対し特に最高裁に判断を求める抗告 ■死刑制度をめぐる議論 死刑廃止論 ⇔ 死刑制度の支持 *裁判員制度の開始など … 死刑制度を考えることが国民的課題に p.078-079 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第3節 日本国憲法と政治の仕組み(p.74-81) 4 地方自治の原理と仕組み(p.80-81) 住民の権利 地方自治と民主主義 ■直接請求権 … 住民自治の観点から認める(直接民主的な制度) 地方自治…①日本国憲法で規定(cf.大日本帝国憲法では規定なし) ※ 憲法は地方自治特別法に関する住民投票を規定【95】 ②「民主主義の学校」(J.ブライスの言葉より) ↓ 住民自治=地方自治が地元住民の意思で行われる 地方自治 団体自治=地方自治は国から独立した団体の意 の本旨 思・責任の下でなされる 政策・論点ごとに住民投票を実施することが増加 ■オンブズマン制度;地域住民が行政に対し苦情を訴える制度 地域住民から受けた苦 改善点をまとめて行 情を中立の立場で調査 政機関に勧告する 地方自治の仕組み ■大統領制的なところ … 長・議員 地方自治の課題 ・ともに住民の直接選挙で選ばれる【93②】 ・ともに独立・対等な関係 (現状)歳入;地方税=税収総額の3~4割 ■議院内閣制的なところ … 長 地方分権;地方公共団体が財政決定権をもつことが必要 歳出;地方公共団体の占める割合=6~7割 議会解散権 議員 不信任決議権 ∴ 仕事量と税金の関係が逆転 ⇒ 不足分;地方交付税交付金,国庫支出金で補填 *地方公共団体の権限【94】… = 国からのコントロールを受けやすい ・財産の管理 ・事務の処理 ・行政の執行 ・条例の制定 ↓ *地方公共団体の行う事務 … 自治事務と法定受託事務 ⇒ 機関委任事務は廃止(地方分権一括法による地方自治法改正) ※ 国;国際的事務,全国的事務 地方公共団体;身近な行政を行う ⇒ 地方分権の動き促進 p.080-081 ① 国庫補助金の廃止・縮減 *三位一体の改革 ↓ ② 国から地方への税源移譲 ③ 地方交付税交付金の見直し 地方公共団体の財政悪化(格差の拡大など) ⇒ 財政再建への課題残る 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第4節 民主政治と政治参加(p.82-85) 1 政党政治と選挙制度(p.82-83) ■比例代表制 小政党でも議席獲得が容易 = 多党制を促進 政党 ・死票は少ない 考え方や価値観が共通する政治家が選挙で勝ち抜くために結成 ・国民の多様な意見を集めてくみあげる ・過半数の議席をとる政党が生まれない可能性大→連立政権 ⇒ 妥協しながら多数派を形成 + 責任の所在が不明確 ・政党ごとに政策・マニフェストが表明される ∴ 民意からかけ離れることも ・選挙=複数の政党が競う ⇒ 有権者に選択肢を提供 ◆日本の選挙制度 さまざまな政党制 ■衆議院;小選挙区比例代表並立制 … 任期4年 ・二大政党制 … 実際には少ない ex.米 政党政治 ・多党制(複数政党制) … 圧倒的に多い = 小選挙区制(300 人) + 比例代表制(180 人) ※ 公職選挙法改正(1994 年)で中選挙区制から変更 ex.日・独・仏・英 ⇒ 二大政党制へ[政権交代(2009 年)] ■参議院;都道府県単位の選挙区制(146 人) + 選挙制度と政党制 … 密接な関係 ■小選挙区制 一つの選挙区から一人当選 = 小政党に不利 比例代表制(非拘束名簿式)(96 人,3年ごとに半数ずつ改選) … 任期6年で3年ごとに半数ずつ改選 ・政党数は少ない ⇒ 2~3の政党での争い→大政党に有利 ・死票が多くなる 公職選挙法 ・政党・政治家に緊張感をもたらす (問題点) ・戸別訪問禁止 ・強力な多数派を生みやすい ⇒ 公約が遂行しやすい + 責任の所在が明らか ・政治献金 企業献金,団体献金のあり方の議論 要件を満たした政党に政党助成(交付)金の支給 ・一票の重み(価値)の不平等 ⇒ 訴訟が提起されている p.082-083 第2編・第3章 民主政治と日本国憲法・第4節 民主政治と政治参加(p.82-85) 2 世論と政治(p.84-85) cf.政治家=世論の多数派の言うとおりに行動すればよいのか? マス-メディアの役割 … J.S.ミル; 「世論の専制・横暴」「多数者の専制」を批判 ■マス-メディア=報道・出版などを扱う組織あるいは媒体 さまざまな意見(世論)が登場 ⇒ 世論の交換が行われる 世論調査・投書など ⇒ 国民の意見の紹介 ・例えば,世論は増税に反対しがち ⇒ 財政破綻を避けるために,世論を説得しなければならない 場合もある ∴ マス-メディア=「一つの権力」 政治的無関心と棄権 報道の自由 ■政治的無関心=低投票率問題(投票率が低い[棄権者が多い]) ■報道の自由とは → 相対的に少数の有権者の支持しか得ていない候補者が当選 ↓ ⇔ ・報道内容を制限する国家 当選者自身や政権の正当性が弱まる ・憲法で報道・言論の自由が守られている国家 → 報道のあり方 … 政府寄り or 政府に批判的 ■マス-メディアの報道 ⇒ 世論に対するはたらきかけ → 世論の誘導(世論操作) ⇒ 批判 利益団体と住民運動 ■利益団体(圧力団体) 同じ利益を共有する人々がその実現を目的にして結成した団体 ∴ 国民の内容と質の的確な把握 + 判断能力を高める必要性 ↓ ●選挙 世論の役割 ●マス-メディア・世論へのはたらきかけ ・特定の政策への世論の反発が強い ⇒ その政策を実施できない… ・世論調査で首相の支持率が低い ⇒ 首相の力が弱まり,辞任につながる… p.084-085 ●政党・政治家・官庁への陳情 ■住民運動 参加者が特定地域の人々で,地域特有の問題解決を求める団体 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 1 現代経済に生きる私たち(p.86-87) 携帯電話の生産から廃棄まで 私たちをとりまく経済 消費=財の購入やサービスの利用 ■「100 円パソコン」 「1円携帯」 (例.携帯電話購入,通話・メールの使用) 購入と同時に,長期の通信サービスに契約 生産=モノを製造したり,サービスを提供したりすること ∴ サービスによる利益 > 商品の代金 (例.携帯電話製造,通信サービス提供) ■商品;交換(売買)を目的に生産され,人間生活に役立つ 財(モノ)… 例えば,パソコン,携帯電話(=形がある) ⇒ 購買意欲の促進(新しい機能,デザインの新製品の生産) 生産 … 分業=労働を分担し合う サービス … 例えば,通信サービス(=形がない) ↓ ■生産力 … 人間が労働力を使って自然にはたらきかけてどのく 大量生産 協業=集団で協力し合う らいの生産物を生み出せるかという能力 ライン生産方式(流れ作業) ⇒ 労働手段(道具や機械など)を革新することによ cf.セル生産方式(屋台生産方式) って生産力を向上させてきた 労働対象(原材料など人間が労働を加える対象) ※ 生産手段 … …多品種少量生産 流通 運搬や商業 → 消費 購入,買い換え … (=大量消費) + 廃棄 労働手段(道具や機械など) ⇒ リサイクル(再資源化) ※ 生産関係 … 人間どうしが生産において結ばれる関係 ⇒ 「だれが生産手段を所有しているか」で決定 (例.携帯に使われている貴重な金属類の取り出し) ※社会的分業;一つの仕事に多くの人々が関係している ⇒ p.086-087 ↓ 生産→流通→消費→廃棄 … 一連の営み(経済) 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 2 経済社会のあゆみとその変容(p.88-89) 資本主義経済の変容 経済社会とお金の役割 18 世紀後半:産業革命(英) ■生産力の向上 → 市場で交換 ⇒ 生産物が商品に 物々交換 お金(貨幣) 人気商品が仲立ちの役割 工場制手工業(マニュファクチュア) → 工場制機械工業 19 世紀後半 ① 重工業の発展,② 規模の拡大,③ 少数の大企業が市場を支配 Ⅰ.自由競争的資本主義 ⇒ 独占資本主義へ移行 ■貨幣の登場 ⇒ 市場経済(商品経済,貨幣経済)が発達 貨幣に金・銀など貴金属を使用 → 取引量の増加 → 紙幣を使用 ※管理通貨制度=政府・中央銀行が貨幣の価値を保証 ⇒ 資本主義経済へ Ⅱ.先進国…資源・市場を求め植民地化を進める(帝国主義) 資本主義経済;生産力の飛躍的向上+大量生産 ⇒ 景気循環(好況→不況→好況→…)しながら拡大 1929 年:世界恐慌(米で発生) ⇒ 資本主義諸国を大不況へ導く F.ローズヴェルト大統領(米) 資本主義経済の始まり ⇒ 大規模な公共事業(ニューディール政策)で景気回復 封建制社会後期: …ケインズの有効需要の理論に基づく 貨幣・生産手段・労働力を手にした地主や商人 ⇒ 資本家 =もうけ(利潤)を目的に工業を営む者 ※資本=利潤を生み出す元になる貨幣 (有効需要を政府が作り出し,景気・雇用の回復を図る) それ以降:国家が経済活動に積極的に関係,資本主義経済を支える 現代:(市場経済+政府による計画経済)で運営=混合経済 農民 → 都市に移り,労働者に ex.英のエンクロージャー「羊が人を食う」 ① 労働者は土地を自由に移動できる ② 生産手段を持たず資本家に労働力を提供 ⇔ 賃金を入手 (=労働力の商品化) 社会主義の思想とソ連 資本主義の問題点:不況・失業を伴う景気循環・分配の不平等 ⇒ 社会主義思想;マルクス 生産手段の社会的所有,計画経済 1917 年 ロシア革命 → ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)成立 1991 年 p.088-089 解体 → CIS(独立国家共同体)に移行 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 3 家計の役割と三つの経済主体(p.90-91) 家計の役割 家計=ある収入をもとに支出をして暮らす,人々の集まり(ex.家族) お金の使い道を考えてみよう ■家計の収入 お金の使い道:① 消費,② 貯蓄,③ 投資 ・ 労働力 (働くための肉体的・精神的能力=商品)を売る 経済主体…目的をもって経済活動を行う基本的な単位 ⇔ 賃金 を受け取る=収入[所得] ・その他= 預金 ・ 株式 ・ 土地 など 三つの経済主体 家計・企業・政府 ↓ 経済活動の単位=経済主体(家計・企業・政府) ① 家計:所得をもとに一人一人の生活を支える経済活動 ② 企業:もうけ(利潤)を求め財・サービスを提供する経済活動 ③ 政府(国・地方公共団体): ↓ ↓ 利子 ・ 配当 ・ 地代 などが収入になる ・(退職後)貯蓄・年金収入など ■家計の支出 ・ 所得 - 社会保険料 (医療・年金・介護など) 家計や企業から税金を徴収し公共的な仕事を行う経済活動 ↓ 労働力,財・サービス,貨幣により結び付けられる ⇒ 一つのまとまりとして国民経済を形成 = 可処分所得 (使い方が自由な部分) ・ 可処分所得 - 消費支出 = 貯蓄 消費支出=財やサービスの購入 貯蓄:日本の貯蓄率は低下傾向 ↓(金融機関を通じて企業に貸し出される) 投資 ■住宅などの高額な商品の購入 ⇒ 金融機関からの借り入れ(ローン)を利用 ■クレジットカードの普及 利点:商品を早く入手,支払いを長期に分散 欠点:後々の支払いが可処分所得を圧迫することも p.090-091 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 4 企業の分類とその役割(p.92-93) 企業の種類と株式会社 経済主体の一つとしての企業 ・公企業 … 政府・地方公共団体が出資・経営 ■企業=国民経済における重要な経済主体 例.上下水道・ガスなど(=国民生活の基盤を提供) ①消費者に財やサービスを提供する ・私企業 … 会社法に規定された会社が中心 ②雇用(=労働の場)を提供する ⇒ 株式会社,合名会社,合資会社,合同会社 企業・労働者が支払う税金 ⇒ 政府の収入源 ・株式会社(会社数のほとんどを占める):株式を発行 企業とは何か 企業 ⇒ 株主: ①株式数に応じ会社の所有権を保有 資本 (企業を始めるためのお金) ②会社の利潤の一部を配当で受け取る 買い入れ ③株価変動による差益(キャピタルゲイン)を得る 労働力・生産手段 (機械・原材料) ※差損(キャピタルロス)を被る場合も (商品の生産) ・会社経営 … 経営;専門的経営者(取締役など)が行う 商品の売り上げ (支払い) 株主;会社の所有権を持ち, ・賃金 ・生産手段への支払い もうけ(利潤) * 「もうけを増やす」→ ・借入金の利子 ① 商品の売り上げを伸ばす ② 費用を引き下げる 株主総会で経営内容をチェック 費用 議決権:一株一票制 (コスト) ※ 所有と経営の分離 大企業と中小企業 企業の大半=中小企業 … 経営実態は厳しい 下請け・系列 地場産業の担い手 ※ベンチャー-ビジネス;大企業が進出しにくい分野へ進出を目ざす p.092-093 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 5 市場経済のはたらき(p.94-95) アダム=スミス;「見えざる手」に導かれる 需要・供給が出会う市場 ⇒ 需要と供給が一致する + 社会全体の利益も最大になる 消費者が商品を選ぶ基準=品質,デザイン,価格 … 企業が消費者に買わせる工夫 → 価格の自動調節機能に結びつく 流行,消費者の好み 品質の維持と費用の抑制 需要:消費者が商品を買おうとすること 供給:生産者が商品を売ろうとすること 独占・寡占市場の成立 価格メカニズムが十分にはたらくために ※ 十分な自由競争が行われる市場(完全競争市場)が前提 市場(マーケット):需要と供給が出会う場 ① 多数の生産者・消費者 ⇒ 自由競争と価格の自動調節機能 ② 新しい企業(生産者)が自由に市場に出入りできる ③ 商品・市場の情報が両者間で共有されている 商品の価格が変動する要因 =「情報の非対称性」がない 需要と供給に不均衡が生じる ↓ 独占資本主義の段階 需要 < 供給 (…商品過剰):超過供給 ⇒ 商品価格は下落 生産者・消費者の行動=価格が調節される =価格の自動調節機能(価格メカニズム) 需要 > 供給 (…品不足) (実現されていない) * 市場は少数の企業に支配される 「寡占」 :少数企業が価格・市場を支配 「独占」 :一つの企業による支配 ⇒ 価格の自動調節機能がはたらかない :超過需要 ⇒ 商品価格は上昇 価格が下落しにくい(価格の下方硬直性) p.094-095 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 6 市場経済の限界(p.96-97) 市場の失敗と政府の介入 寡占市場と管理価格 ■市場の失敗 … 政府の介入により調整される 市場の寡占化が進む=十分な価格競争が行われなくなる 寡占市場:有力企業(プライス-リーダー[価格先導者])が 価格を設定 ⇒ 他企業もそれに合わせる ※ 管理価格 → 価格の下方硬直性につながる ・カルテル … 価格・生産量・売り先(販路)で協定 企業間競争が失われる(企業の活力の低下) ※ 独占禁止法:公正取引委員会が監視する ・外部不経済 … 市場を通さず第三者に悪影響を及ぼすこと ex.企業の経済活動が環境汚染を起こし,第三者が病気に 差別化と非価格競争 → 政府による経済活動の規制が必要 * 価格がかわらない商品は何を「めやす」にして選ぶか? ① デザインやパッケージ ② 商品のブランド化 ※ 差別化 例.生産地域名や栽培方法などを告知 ③ アフターサービスの提供 ④ 大規模な宣伝・広告など… 非価格競争により市場占有率(マーケットシェア)を高める p.096-097 cf.外部経済 … 第三者に好影響(例.自宅用に設置した街灯) ・公共財(公園や道路)はだれでも無料で利用できる ↓ 市場では十分に供給できない ∴ 政府の手によって供給される 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 7 国民所得と国富(p.98-99) ※ 国民所得=生産・分配・支出の三つの経済局面を循環し, 国民所得の考え方 等しくなる 一国の経済活動の大きさをあらわす指標 ⇒ 国民所得の三面等価 ① 国内総生産(GDP)=総生産額-中間生産物 国内で1年間に新たに生産された財・サービスの総額 ② 国民総生産(GNP)[=国民総所得(GNI)] 国民所得と国民の豊かさ * 国民所得:経済活動のみを計算 ⇔ 家事労働・自給的農業などの その国の国民が海外活動も含めかせぎ出した所得の年間総額 ③ 国民純生産(NNP)(市場価格で表示)= GNP-固定資本減耗(=生産に使われた機械などの消耗部分) ④ 国民所得(NI)=NNP-間接税+政府補助金 市場価格で表示(間接税分高い&政府補助金分だけ低い) 生産活動を含まない * 国民所得:年間の生産・分配・支出 … フロー(流れ) 国 富:過去に生産され,蓄積されてきたストック(蓄え) ↓ ・自然資源 ・建造物(住宅・ビルなど) ・社会資本(インフラストラクチャー) 三面等価の原則 国民所得 ① 生産国民所得:1年間に産業ごとに生産され,新たに付加され た財・サービスの価値(付加価値)の合計(=生産面から) ② 分配国民所得:生産されたものを分配の側面から ・雇用者報酬(賃金など) ・財産所得(利子配当,地代など) ・企業所得(利潤) ③ 支出国民所得:消費(家計),投資(企業),政府支出(政府) p.098-099 ① 産業関連社会資本(道路,鉄道,港湾など) ② 生活関連社会資本(上下水道,公園,教育施設など) * 実際の生活の豊かさを示す指標 ・国民福祉指標(国民純福祉;NNW) ・グリーン GDP(EDP) ・国民総幸福(GNH) → いずれも数値化が困難で,実用化に向け試行中 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第1節 現代経済の仕組み(p.86-101) 8 経済成長と景気変動(p.100-101) インフレとデフレ 好況と不況 インフレーション(インフレ) 市場における価格の変化 → 需要・供給を調整していく ① 好況(好景気)… 需要 > 供給 ・消費者:商品を多く購入 ・企 業:商品需要の高まり=増産 雇用・原材料の購入=増,設備投資=増, 人手=不足,賃金・価格の上昇 … 好況時,需要>供給 ⇒ 商品不足で物価が上昇(需要インフレ) デフレーション(デフレ) … 不況時,需要<供給 ⇒ 安い商品の売り出しで物価の下落 さらに人員整理などで景気が悪化(デフレスパイラル) スタグフレーション[1970 年代の石油危機の際に日本で発生] … 不況時,生産コストが上昇(資源価格の急騰などが原因) 不況のまま,インフレ(コストインフレ)になる <景気の過熱> 企業:積極的な設備投資 ⇒ 生産過剰 ⇒ (需要<供給) ⇒ 商品の売れ残り ⇒ 販売不振 … 倒産・失業者の増加 景気変動と経済成長 一国の経済はサイクルを描いて変動(=景気変動[景気循環]) ② 不況(不景気) ※ 好況 → 後退 → 不況 → 回復(景気循環の4局面) ・企 業:人員整理,古い機械設備の廃棄 … 好況を呼び戻そうとする 生産の落ち込み → 失業者の増加,労働時間の短縮 ・消費者:賃金が抑えられ,個人消費は縮小 ※ 不況への対応策 = 企業が投資しやすくする 政府:財政政策(例.公共事業など)を行う 中央銀行:金融政策(例.金利の引き下げなど)を行う 経済は傾向的に拡大(成長)していく cf.好況 → 大不況:急激な景気後退=恐慌 (経済成長の要因) ・生産年齢人口の増加,勤労意欲・労働の質の向上, 技術革新による労働生産性の向上 経済成長率 … 近代化の当初は上昇 → やがて先進国に移行すると徐々に低下する傾向 独自の技術革新に費用がかかる + 消費意欲の下降 ※ 日本:1950 年代以降の経済成長率の傾向も同様 p.100-101 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第2節 政府の役割と財政・金融(p.102-107) 1 政府の役割と財政政策(p.102-103) 財政政策 政府の役割 ※政府(中央政府[国]・地方自治体);公共性の高い事業,福祉支出 政府の市場経済への介入の必要性 … 財政資金(財源) ・ 自国の経済の安定と成長 ・ 国民生活と雇用に対して責任を持つ 公債を発行 財政政策;政府が財源を運用し,経済に影響を及ぼす 1 景気・雇用の安定化 ⇒ 財政政策を行う 景気変動の緩和 → 財政政策 租税(← 政府を信用し,国民が負担) (1) 歳出の金額(財政規模)を変化させる … 財政政策の方法 不況からの回復(景気刺激策),雇用の確保, (2) 歳出の項目変更(⇒ 予算配分の変更) (3) 租税方式・水準の変更 インフレーションの抑制 (1) 所得の再分配 2 経済成長の実現 ⇒ 産業構造の変化を促す … 財政政策の目的 有望産業の保護,新技術の研究・開発の援助 *(3) 有効需要の操作による景気の安定化 3 適切な市場競争の実現に向けての調整 ⇒ 国民生活の安定 ・独占・寡占の監視 (2) 社会資本・公共財の充実 ↓ ex.不況時 … 公共事業の拡大,減税(民間の経済活動を刺激) ・国民生活にかかわる産業に関する規制,行政指導(行政的介入) 4 所得の再分配と福祉政策の実施 ⇒ 所得の不平等の是正 ・失業者への雇用保険金の給付 ・高齢者への年金の給付 ⇒ 福祉サービスの提供,就業機会の拡大支援 景気の安定化機能;ビルト-イン-スタビライザー(自動安定装置) ・好況時 … 所得が上昇 ⇔ 累進課税(税収;増) 5 国民生活に必要な公共財の提供と社会資本の充実 ⇒ 市場では提供しにくいものの提供と管理 ex.道路,病院,水道,公共交通など 6 諸外国との経済の調整 ⇒ 国家間(二国・多国間)の調整 ・貿易不均衡の調整 p.102-103 ・為替レートの変動の調整 <景気の過熱を抑制> ・不況時 … 所得が減少 ⇔ 福祉給付などで所得を支える(税収;減) <景気の後退を抑制> 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第2節 政府の役割と財政・金融(p.102-107) 2 予算の仕組み(p.104-105) 赤字国債の発行:1970 年代以降,不況時に発行続く(国債残高の増加) 予算と租税 ① 予算 国債発行=「政府の借金(債務)」 一般会計:さまざまな項目にわたる歳入・歳出を管理 国債の利払いのための資金(国債費)が必要 (歳入・歳出:一会計年度内の政府の収入・支出) ⇒ 他の歳出を圧迫(財政硬直化) 特別会計:特定分野(食料管理・外貨準備など)について 一般会計とは切り離して管理 ② 財政投融資(「第二の予算」):政府保証の財投債の発行で資金調達 財政赤字が生み出す問題 ・不況対策 ⇒ 財政政策(公共事業など) ⇒ 財政赤字の発生 ⇒ 貸付(金融機関・独立行政法人などへ) ⇒ 社会資本・生活環境の整備へ 直接税:租税の負担者が直接納税(所得税・法人税など) 租税 「大きな政府」から「小さな政府」への転換(行政改革) … 1980 年代以降:財政規模の縮小+政府の経済介入を縮小化 間接税:租税の負担者と納税者が異なる(消費税・酒税など) 売り手が納税,物品購入者(消費者)が負担 cf.地方の歳入 ・租税 … (1) 所得税の最高税率の見直し 地方税(地方独自) (2) 直間比率の見直し 地方交付税交付金(国から一般財源として交付) (3) 消費税率の引き上げ 国庫支出金(国から使い道が指定されて交付) ↓ ※ 将来の税負担の増加(← 少子高齢化などにより) 国債とは ↓ 公債の発行:歳入不足で租税で歳出をまかないきれないときに発行 … 赤字を補うための公債発行は財政法で禁止 ※ 例外 ① 建設国債の発行 ② 赤字国債(特例国債) … 特例法の成立が必要 p.104-105 ⇒ 租税の公平性(垂直的公平・水平的公平) … 垂直:所得・経済力に応じて税を課すべき(所得税など) 水平:同じ所得に対しては同じ税を課すべき(消費税など) → 租税の公平性を確保しつつ,税収入をどう高めるか? 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第2節 政府の役割と財政・金融(p.102-107) 3 通貨と金融政策(p.106-107) 金融政策 通貨と金融 ■中央銀行(日本では日本銀行)の役割:通貨の量を操作する ■経済活動=財(モノ)やサービスの交換 →貨幣(通貨):紙幣・硬貨・預金として流通 ■企業の資金調達 ① 「発券銀行」 :銀行券(紙幣)を発行 ② 「銀行の銀行」:一般の銀行へ資金を貸し出す ③ 「政府の銀行」:政府の資金を取り扱う =手もちの資金,株式・社債の発行,銀行からの借り入れ 直接金融:資金を直接調達(例.株式や社債の発行) ※金融政策を行う=中央銀行が行う経済政策の一つ ⇒ マネーストック(通貨残高)を操作:利子率に影響を与える 間接金融:仲介金融機関からの借り入れ(例.銀行など) 不況時:増やす(金融緩和) 好況時:減らす(金融引き締め) 金融市場 借り手 資金 貸し手 金融機関の間を移動,株式市場・債券市場で取り引き ■金融政策とは ① 政策金利の操作(金利操作,一般銀行への融資時の金利) ② 公開市場操作(市中銀行との有価証券の売買) ③ 預金準備率操作(市中銀行などの貸出準備金量の調節) ◆利子と金融市場 ・銀行は信用創造を通じて預金額の何倍もの預金通貨をつくり出す 借り手 → 貸し手 :資金+利子:利子率(資金に対する利子の割合) ex.国債・社債の利子率:高 ⇒ 資金は国債・社債市場に流れる 銀行の利子率:高 ⇒ 株式投資:減,銀行に預金:増 これまで:公定歩合操作を中心とする貨幣量・利子率管理 ↓ →近年:金融の自由化(金利自由化,証券取引の簡素化)がすすむ ・利子率:高 … 企業:投資を控える 経済活動:抑制 ・利子率:低 … 企業:投資が高まる 経済活動:活発化 p.106-107 金融の自由化 ※世界の金融市場との結びつき強化=金融の国際化の進行 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 1 日本経済のあゆみ(1)-経済民主化から高度経済成長へ(p.108-109) ・1950 年:朝鮮戦争の開始 戦後の経済民主化 ⇒ 米が戦争のための物資を日本に求める ■第二次世界大戦の敗戦 … 生産力の低下・物資の不足で深刻な状態 生産が拡大(繊維・金属工業など):朝鮮特需 → 通貨の増発(インフレーション[インフレ]の発生) ■連合国軍最高司令官総司令部(GHQ):日本経済の古い仕組みの解体 ⇒ ※ 経済民主化政策(農地改革・財閥解体・労働関係の民主化) ・農地改革:小作農 → 自作農 … 生産性向上・国内市場の拡大 ・財閥解体:独占禁止法・過度経済力集中排除法制定 … 企業間の競争がはじまる ・労働関係の民主化(→ 労働運動活発化へ) … 経済分野での日米の関係緊密に 高度経済成長 高度経済成長:1955-1973 年(→ 実質経済成長率が年平均 10%超) ① 耐久消費財の普及(「三種の神器」「3C」) ⇒ 国民の多くが「中流意識」をもつように ② インフレの進行:GNPの増大 ⇔ 実質賃金の上昇は抑制 ③ 6大企業集団(戦前の財閥にかわる独占体制)が形成 :労働運動の復活,労働基本権を憲法に明記,労働三法の制定 ◆ 高度経済成長の要因 ■政府:基幹産業(石炭・鉄鋼)に集中投資(傾斜生産方式) → 復興を目ざす … 日本銀行から資金調達=インフレ悪化 (復興金融金庫の設立) 1 企業に役立つ社会資本の優先的整備,金融機関は低金利政策 ※ 財政・金融両面で経済成長の条件を整備した 2 国民の高い貯蓄率 預金 ⇒ 企業への貸し付け ⇒ 企業の設備投資が活発化 ※ドッジ-ライン:日本経済自立のため 米・GHQ による金融引き締め(緊縮財政)政策 → 経済安定九原則(均衡予算,徴税の強化,融資の規制, 賃金の安定,物価の統制,為替の管理強化など)を示す p.108-109 先進国の技術の導入 ⇒ 技術革新 3 大量の労働力の供給:農村から都市へ 経済民主化による所得の向上 ⇒ 個人消費の拡大 4 軍事費負担が少ない ⇒ その分を経済発展にまわせた 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 2 日本経済のあゆみ(2)-石油危機からバブル・世界金融恐慌へ(p.110-111) ⇒ 日本銀行,金利引き上げ 石油危機と高度経済成長の終わり ・1990-1991 年:地価・株価の暴落(バブル経済の崩壊) 1973 年~:第一次石油危機(アラブ産油国の原油価格引き上げなど) 長い不況へ ⇒ 激しいインフレ→金融引き締め策 ⇒ 景気が悪化 ⇒ 1974 年:戦後初のマイナス成長+スタグフレーション発生 ↓ 経済の停滞と日本経済の進路 ■バブル経済の崩壊 … 企業:国内需要減少による輸出の拡大 ・省エネルギー技術の開発(ex.低燃費の自動車) 対策 ・マイクロエレクトロニクス(ME)産業に重点を移す =貿易黒字,円高進行 ① 企業:生産拠点を海外に移転(国内:産業空洞化) ・減量経営(正規労働者の削減など経費節減→企業体質の軽量化) ⇒ 1970 年代後半~:競争力の回復 ⇒ 対米輸出の急増(対米黒字) →サービス産業の拡大 ② 企業:不況克服のためにコスト削減(リストラ) ※ 日米経済摩擦が生じる →正規労働者の削減 ③ 不良債権による経営悪化(バブル崩壊後の地価の下落が原因) バブル経済とその崩壊 →金融機関の経営破綻(⇒ 公的資金の投入) 1985 年秋~:G5(先進5か国財務相,中央銀行総裁会議) 米の貿易赤字改善(ドル高解消)を合意(プラザ合意) ⇒ 急激な円高・ドル安→輸出減少(円高不況) 対策 ■「失われた十年」(1990 年代) … 長期の不況 ⇒1990 年代半ば~:構造改革 日本銀行:金利引き下げ→企業の設備投資を促進 ・規制緩和(規制改革) 企業:原材料・資源を安く輸入+工場を海外移転して生産 ・ 「官から民へ」 ⇒ 市場競争の強化,所得格差の拡大 ↓(経済好況へ) 日本銀行:低金利政策維持→土地・株式の投機的取引過熱 地価・株価の急激な高騰(バブル経済) ■景気回復へ(2000 年代) ↓ 2007 年:サブプライムローン問題が米で発生 2008 年:世界金融危機発生 p.110-111 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 3 地域経済と食料・農業問題(p.112-113) 食料問題の今後 産業構造の変化 ■農業人口の減少:食料自給率の低下 ■産業構造 ※食料全体の自給率が 40% ① 第一次産業:農業,林業,漁業,鉱業など ② 第二次産業:製造業,工業,建設業など ③ 第三次産業:商業,金融業,交通・サービス業など ⇒ 経済発展につれ,労働人口が第一次から第二次・第三次へ (ペティ-クラークの法則) ↓ ※日本:高度経済成長期 … 第一次→第二次→第三次 ・農業人口の減少:農村部の過疎+都市部の過密 先進国のなかでも非常に低い → 食料の安定確保のためにも自給率の回復が必要 ■日本の農業 … 保護政策を推進 ex.米など主要品目:食糧管理政策(政府が生産・流通を管理) ↓ 専業農家の減少,食生活の変化 → 米の消費,飽和状態に 1970 年代~:政府,減反政策(米の作付け制限)進める 1980 年代~:農産物の輸入自由化(貿易摩擦解消との関連) ・少子高齢化 ・1993 年:初の米の部分的な輸入自由化 ・製造業・大企業を支えてきた中小企業の衰退 ・1995 年:米の流通自由化 食管制度から食糧制度・食糧法へ 地域経済の諸問題 ・1999 年:食料・農業・農村基本法(← 1961 年:農業基本法) ■産業空洞化 ⇒ 地域の産業全体に大打撃 ※農作物の輸入自由化 … 今後の大きな問題 ・過疎化 → 顧客の減少 → 産業全体の衰退 ・世界との価格競争 ・大規模商業施設の出店 → 商店街の顧客の減少 ・食料の安定供給の問題 → シャッター商店街 ※大規模小売店舗立地法(大店立地法) → 出店規制の緩和へ ・商店の減少 → 交通手段のない消費者 → 買い物難民 p.112-113 ※日本の農業の後継者問題 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 4 労働基本権と労働者の権利(p.114-115) ・労働組合がある場合→労働条件の改善の要求 労働条件と労働組合 ⇒ その活動を保障…労働組合法 ■労働条件について (→ 使用者の不当労働行為の禁止) 雇用条件 ・労働条件(賃金など)…対立 ⇒ 自主的に解決できない場合 =所得・仕事内容・昇進のルール・単身赴任の有無・リストラなど… → 労働委員会:斡旋,調停,仲裁の手続きの利用が可能 「契約自由の原則」 (資本主義:自由意思に基づく売買契約) (労働関係調整法) ⇒ 求人者(使用者・買)⇔求職側(労働者・売) ↓対等である必要あり ・使用者による解雇=合理的な理由が必要(労働契約法) ※解雇など個別の労使紛争の解決 ⇒ 労働審判制度 実際には使用者>労働者 ■労働組合 【28】労働三権(団結権・団体交渉権・争議権[団体行動権])を保障 ⇒ 労働三権+勤労権【27】=労働基本権を保障 労働三法(労働組合法・労働関係調整法・労働基準法) 増える非正規雇用 企業: 「必要な労働力を必要なときに必要なだけ」 …派遣労働,業務の外注(アウト-ソーシング)などの採用の増加 ⇒ 非正規雇用の割合の増加 ↓ 労働者の権利 ・労働条件…人間らしい生活を営むための最低基準(労働基準法) ・賃金…地域別・産業別の最低額(最低賃金法) ※通勤・業務での負傷など…保険給付(労働者災害補償保険法) p.114-115 ※労働組合に組織されない=権利保障が今後の課題 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 5 日本的経営の変化と新しい労働問題(p.116-117) * 賃金体系 … 年功序列型 日本独特の経営方式 日本的経営:日本の企業を支えてきた独特の経営方針(慣行) ① 終身雇用制:新卒採用 → 定年(同一企業で勤める) ② 年功序列型賃金:能力・業績よりも勤続年数重視の賃金体系 ① 年棒給:一年ごとの業績評価で賃金を決定 ② 能力給:一定の基準によって賃金を査定 新しい制度の導入:成果主義 ③ 企業別労働組合:企業ごとに編成される労働組合 ※「公平で健全」 ,「評価基準が不明確」 ↓ ・労働者:企業との一体感が強い ・労使関係が協調的になる傾向 ◆労働をめぐる新しい問題 安定した企業経営を支える ■世代をこえた労働問題 ・リストラの進行(1990 年代以降) 多様化する労働環境 出向や希望退職による,中高年層の事実上の解雇 企業間競争の激化・不況の深刻化 ⇒ 経営姿勢・体質の見直し 1990 年代:構造改革が進行 ⇔ 日本型経営の独自の性格が批判される * 終身雇用制・年功序列型賃金 ⇒ 維持が困難 * 雇用制度 ⇒ 使用者の求めに応じた期限つき雇用形態 企業:経費節減 ⇔ 労働者:生活の不安定化 ・1999 年:男女雇用機会均等法の改正 ・女性労働の保護の後退 ⇒ 中高年労働者の間で雇用不安広がる ・新しい就労形態 フリーター(若年層の非正規雇用者[パートや派遣労働]) ⇒ 就職難,熟練機会の減少 ■失業率の上昇 ⇒ ワークシェアリング:有給労働の総量を多数の人で分けあう ■働きすぎる ・不安定な雇用状況からくる過重労働 ・職務に起因する(長時間労働など)過労死 社会問題化 ・時間外手当が支払われないサービス残業 ⇒ ワーク-ライフ-バランス(労働と生活のバランス) p.116-117 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 6 社会保障と社会福祉(p.118-119) ◆見直される社会保障制度 社会保障制度のあゆみ ・高齢化 *自由競争を基本とする経済体制下: ⇒ 医療費や年金に対する政府の財政負担:増 ⇒ 若年者の不公平感:増 個人の活動については個人で責任を負う(貧困も個人の責任) → 1980 年代~:個人の自助努力が求められる ⇒ 最低限の生活を保障するのが国家の責務 … 医療費の一部を患者自身が負担,年金の支給方式の転換の検討 (社会保障制度の整備) (背景)他の先進国の動き: 「過剰な福祉は勤労意欲を損なう」 19 世紀末:ビスマルク(独)が社会保険を導入[疾病保険法の制定] 20 世紀: 失業保険の導入 例.サッチャー(英) :手厚い社会保障制度の見直しなど福祉政策を転換 ベヴァリッジ(英)の報告:手厚い社会保障体系の導入 … 「小さな政府」を求める新自由主義(米・英・日) (「ゆりかごから墓場まで」) ↓ *「社会保障はセーフティー-ネット(綱渡りの安全網)」 日本の社会保障制度 (国民に安心を与える) 1 社会保険→年金,保険金などとして給付 *2000 年,介護保険制度が導入(2005 年改正) ⇒ 今後に課題 ⇒ 5種類(医療・雇用・労災[労働者災害]・年金・介護) 資金:被保険者+事業者の保険料でまかなう(一部公費負担) 2 公的扶助→最低限の生活を維持できない国民 公費負担で生活を保護する(生活保護) 3 社会福祉→保護者のいない児童,一人親の家庭,障がい者,高齢者 おもに公費で手当やサービスを提供する 4 公衆衛生・医療→国民の健康増進,環境衛生を改善する 少子高齢化時代の福祉政策 *「国民皆保険・国民皆年金」=社会保障・社会福祉の充実 少子高齢化が福祉政策に影響を及ぼしている ※例. ・年金制度:積み立て方式から ⇒ 賦課方式を中心に 現役世代が高齢者世代の支給を支える ・増え続ける高齢者の医療費の拡大 社会福祉の充実 ⇔ 国民負担のバランス … 社会的な課題 p.118-119 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 7 消費者問題と企業の社会的責任(p.120-121) 行政側の動き: 消費者問題の発生 1970 年,国民生活センター(国),消費生活センター(地方機関) 技術の進歩=商品の質の向上 ⇔ 企業と消費者の間で商品に関する情報格差;情報の非対称性 (商品テストや苦情処理) 2009 年,消費者庁の新設 情報に乏しい消費者;商品の特性・質が判断できない クーリングオフ制度:一定期間内なら契約解消できる制度 モデルチェンジが頻繁なため,修理が困難になる … 製造物責任法(PL法):被害を受けた消費者の保護 ⇒ 消費者問題 … 製造物の欠陥で消費者に被害が生じた場合 ⇒ 製造業者側が無過失であっても損害賠償責任を認める 自己責任原則と消費者保護 ↓ 商品の購入は消費者自身が情報を集め,判断する;自己責任原則 消費者主権の考え方 公開された情報から判断するのが難しい 悪徳商法;販売戦略を利用するなどして消費者心理に付け入る ex.ねずみ講,キャッチセールス,マルチ商法など クレジットカードの普及;支払い能力以上の購入 → 自己破産 消費者問題; 「消費者が製造・販売側と対等の立場にない」から 有害食品・薬害事件などを機に;消費者団体の結成 1968 年,消費者保護基本法(→ 消費者基本法に改正) … 消費者の権利と自立の支援,事業者の責任の明確化 2001 年,消費者契約法が施行 … 2007 年に改正,消費者団体訴訟制度の導入 (被害者にかわり認定された消費者団体が訴訟を起こせる) p.120-121 企業の社会的責任 企業の社会的責任(CSR):企業には社会に対する責任がある 社会貢献活動(公益活動・非営利活動)への取り組み … 企業倫理の確立,コンプライアンス(法令遵守), 企業情報の開示(ディスクロージャー) ex.企業メセナ:資金・施設の提供で芸術活動を支援 フィランソロピー:社会貢献などの公益活動を中心に支援 → 営利の追求 + 消費者に社会的利益をもたらす 第2編・第4章 現代の経済社会と経済活動のあり方・第3節 豊かな社会を目ざして(p.108-123) 8 公害防止と環境保全(p.122-123) ※現実には,産業廃棄物の不法投棄などあり 日本における公害問題 ■環境汚染の対策として 高度成長⇒「生活を豊かに」⇔「深刻な公害問題」 1960 年代 四大公害事件の発生=企業の過度な利潤追求の姿勢 ※水俣病・新潟水俣病・四日市ぜんそく・イタイイタイ病 公害批判の高まり=公害対策基本法制定(1967 年) 1971 年 環境庁新設 ・環境アセスメント(環境影響評価) ・事業者の無過失責任も問われる ・消費活動による環境汚染の防止 →ごみの分別,リサイクルを心がける cf.家電リサイクル法:生産活動を通じて生じた廃棄物の減量, 1970 年代以降 幅広い公害問題 資源の有効活用 ・生活公害:騒音公害,排出ガス,地盤沈下など ・有害物質:ごみ処理・産業廃棄物などから発生 (ex.ダイオキシン) ※環境ホルモン:正常なホルモン作用に 影響を与える物質 1993 年 環境基本法制定 環境汚染と経済のあり方 ■環境保全のために 現在の経済のあり方(大量生産・大量消費・大量廃棄) ⇒見直していく必要性…持続可能な循環型環境社会へ ■循環型社会形成推進基本法(2000 年施行) 2001 年 環境庁が環境省に 経済発展と環境保全について社会が自覚し,選択する ↓ 汚染者負担の原則 一人一人が環境に対する意識を高める必要 企業=生産活動…廃棄物を排出→外部不経済:環境を汚染する →環境の復元のために企業自身が費用を負担する 汚染者負担の原則(PPP) 公害を発生させた企業 p.122-123 ・被害者への損害賠償・補償 ・公害防止への対策費を負担 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第1節 国際政治とその課題(p.124-135) 1 国際社会の成り立ち(p.124-125) ■国のあり方…多くの場合,複数の民族からなる 主権国家 ・多民族が平和的に共存する ■国家と主権 ・対立する→分裂して新しい国家を形成する 世界…200 ほどの国家 ・少数民族が差別や抑圧をされている 独立を維持し,自国内の政策や外交政策を自ら決定する権利 …国際組織が介入する権利があるのか? 領域・国民に対する最高権力,自衛権を含む cf.20 世紀半ばごろまで植民地が存在→今は独立を達成 アジア・アフリカに多く存在 1960 年,アフリカで独立あいつぐ(「アフリカの年」) 国際法 国際法…国際社会の秩序を守るために国家間でなされる合意 ①国際慣習;国家間の長年の慣行に基づくルール ex.侵略されない権利,公海での自由航行の権利など ■国家の三要素 ②条約;国家間で交渉して合意された国際的文書 国家の三要素=主権・領域(領土・領海・領空)・国民 *国際社会…主権国家によって構成されている 領土と国民 北方領土(←ロシアが日本の領土を占拠) 竹島(←大韓民国が日本の領土を占拠) 尖閣諸島(←中国などが日本に対し領有を主張) p.124-125 多国間の条約(国際人権規約など) ※国内法と違い,違反者に懲罰を加える主体がない ■領土問題…世界各地に存在 ex.日本… ex.二か国間の条約(日米安全保障条約など) ∴必ず法令どおりに執行されるとは限らない ↓ 違反行為が放置されることもあるが,国際社会から批判される 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第1節 国際政治とその課題(p.124-135) 2 国際平和のために(p.126-127) 国際連盟と集団的安全保障の試み 外交の一手段としての戦争 ■戦争とは アメリカ合衆国:勢力均衡外交への反感(孤立主義) *ウィルソン大統領(米),第一次世界大戦中に訴え 18 世紀ごろまで:国民・領土は国王の所有物 戦争 … 国王による自国の領土拡大のための「外交政策の一つ」 19 世紀:立憲君主国が増える 戦争は,ヨーロッパでは「外交の一手段,政治の一部」 ・秘密外交の廃止 ・民族自決の原則 ・国際連盟の設立 ※国際連盟発足(1920 年):はじめての国際平和機構 … 「平和を侵害する国に対しては他のすべての国々が協力 し,集団で制裁を課す」(集団安全保障の考え方) 勢力均衡外交 ・総会が決定機関,決定は全会一致 「戦争が外交手段の一つ」 ・制裁;経済的制裁のみ,軍事的制裁は不可 → 政治の民主化・ナショナリズムの台頭・軍事技術の発達 → 侵略国に実効性のある対策が施せない ① 開戦の決定には国民の支持が必要 ・加盟国:米ソ不参加,日独伊脱退 ② 戦争の被害も一挙に拡大 ⇒ 第二次世界大戦を防ぐことが出来ず ex.第一次世界大戦:予想をこえた破壊をもたらした 軍縮と不戦条約 勢力均衡主義:同盟政策によって各国間の軍事力の均衡を目ざす (⇒ 突出した軍事力を持たないように) ex.ウィーン体制(19 世紀はじめ):大国間の勢力均衡が原則 … 三国同盟 vs 三国協商の対立 ⇒ 第一次世界大戦へ 1920 年代 ・ワシントン海軍軍縮条約(1922 年採択)…軍備の縮小 ⇒ 本格的な軍縮条約 ・不戦条約(1928 年採択) … 平和維持の試みとして重要 ⇒ 加盟国の多くが自衛権を留保:実効性に乏しいとされた 不戦条約の成立:国際法における戦争の違法化 国際紛争の平和的処理の流れをつくる p.126-127 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第1節 国際政治とその課題(p.124-135) 3 国際連合の仕組みと課題(p.128-129) イラクの大量破壊兵器保有疑惑(2003 年):安保理で意見が対立 国際連合の基本原理 → 英米は武力攻撃を主張 ⇒ 安保理決議なしで戦争開始 国際連合(国連,1945 年発足):国際連盟の反省にたって成立 総会:全構成国が投票し決定,国際世論が形成される場 … イラク戦争開始 ※アメリカの国連軽視の行動:「単独行動主義」と表現される ・安全保障理事会(安保理):一定の軍事力をもつ国家 → 軍事的制裁の実行力をもつ 5つの常任理事国+10 の非常任理事国で形成 常任理事国には拒否権あり,発動されると決議は不成立 安保理の決定=加盟国に強制力・拘束力をもつ 冷戦時代:米ソで拒否権を多数発動 → 機能不全に陥った 平和維持活動と今後の課題 国連:国家内の武力対立(内戦)への介入 ・1990 年代:カンボジアへ国連平和維持活動(PKO)を実施 → 国連平和維持軍(PKF)や監視団が実際には担当 内戦停止や和平の維持 … 国民の総選挙を実現 ・1990 年代前半:ソマリアへ多国籍軍派遣し PKO を展開 冷戦終結後の国連 武装解除に失敗し撤退 イラクのクウェート侵攻(1990 年):安保理決議成立 「対イラク武力行使容認決議」採択 ⇒ 多国籍軍編成 … クウェート解放(湾岸戦争) ・1990 年代後半:セルビア共和国とコソボの紛争へは対応の遅れ 北大西洋条約機構(NATO)が介入 … セルビアが譲歩 国家が人権を守れない場合(ex.ジェノサイド[大量殺戮事件]など) ・国際社会が主権国家内部に介入することを支持する声 ・介入する側の負担と危険を憂慮する声 p.128-129 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第1節 国際政治とその課題(p.124-135) 4 戦後の国際政治(p.130-131) 1989 年:東欧諸国の社会主義体制の崩壊 → 民主化 冷戦の時代 ベルリンの壁崩壊 ■国際連合の誕生 マルタ会談=米ソ首脳による冷戦終結宣言 第二次世界大戦の終了⇒新たな国際社会の建設 ■冷戦の始まり 1990 年:湾岸戦争(~1991 年);米ソ協力が実現 1991 年:ソ連解体 → 独立国家共同体(CIS)へ ・資本主義諸国(西側陣営):アメリカ合衆国を中心とする国家群 ・社会主義諸国(東側陣営):ソ連を中心とする国家群 東西冷戦 → 世界規模で激しく対立するが,直接戦火は交えず ■冷戦後の世界 ① 朝鮮戦争(1950-1953[休戦]年)=「熱戦」 核戦争の脅威がなくなる⇒世界各地で宗教・民族の対立があい次ぐ ② キューバ危機(1962 年)=米ソが全面核戦争の危機に *同時多発テロ(2001 年) → これ以降,デタント(緊張緩和)の時期へ ③ ベトナム戦争(1964-1975 年)=アメリカの撤退で幕 ・第三世界:東西陣営に属さない勢力 … アジア・アフリカの新興独立諸国 ※多極化⇒ソ連のアフガニスタン侵攻(1979 年) → 新冷戦時代に 対立から和解へ … 国家以外の集団組織が多くの民間人を殺傷(テロリズム) ・テロとの戦いが開始される … 多国籍軍がアフガニスタン占領,国際テロ組織を壊滅へ イラク戦争後もアフガニスタン,イラク,世界各地でテロは続行 ⇒テロリズム … 国際政治における重要課題 ■新興諸国の台頭 新興市場経済圏=BRICs(中国・インド・ロシア・ブラジル) ■冷戦の終結 ■日本人拉致問題 1980 年代:ソ連経済は深刻な停滞に陥る ゴルバチョフ:国内 → 大胆な民主化を進める 国外 → 西側諸国との関係改善を図る (軍縮を前進させる → 米ソ和解・友好深まる) p.130-131 テロと国際社会 冷戦による朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)と 大韓民国(韓国)の対立 → 北朝鮮による日本人拉致 *日朝首脳会談(2002 年) … 北朝鮮,日本人拉致の事実を認める 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第1節 国際政治とその課題(p.124-135) 5 核兵器と軍縮(p.132-133) ■さまざまな条約の調印 人類と兵器 ・部分的核実験禁止条約(PTBT) 20 世紀以降,科学技術の発達 → 兵器の進化:殺傷力の高まり ・核兵器不拡散条約(NPT) 【第一次世界大戦】新兵器(戦闘機・潜水艦・戦車・化学兵器など) ・中距離核戦力(INF)全廃条約 【第二次世界大戦】核兵器の開発・使用 ・包括的核実験禁止条約(CTBT) …地球そのものを破壊する可能性も → 大量破壊兵器の登場による戦争の変化(非戦闘員を大量に殺傷) *原子爆弾:アメリカにより広島・長崎に投下 → 初の実戦使用 …大きな被害 → その後,核兵器の実戦での使用はなし ・米ソ:水素爆弾の開発に成功(米 1952 年・ソ 1953 年) ・第五福龍丸の被曝(アメリカの水爆実験に遭遇,1954 年) → 核の恐怖続く:核兵器・通常兵器が地球上に大量に存在 核軍縮への動き ・新戦略兵器削減条約 ■国際原子力機関(IAEA):核の平和利用の監視 国際司法裁判所(ICJ): 核兵器使用と威嚇は一般的に国際法違反とする勧告的意見 その他:市民運動としての核廃絶運動 ⇔ 核兵器で国際社会に発言力を高めようとする国 国際テロ組織の核兵器保有の危険性 通常兵器の規制 ■核兵器保有2大国:アメリカ合衆国とロシア その他保有国:英・仏・中(=国連常任理事国) インド,パキスタン,北朝鮮,イスラエル(?) ■冷戦開始直後:米ソ間で核実験・製造競争 → キューバ危機以降:核軍縮への取り組み ■高度に発達した通常兵器の規制(核弾頭が搭載可能なものも) ・戦略兵器制限交渉(SALT) ・戦略兵器削減交渉(START) 米ソ間で削減の努力 ■NGO主導による兵器規制の国際条約締結 ・地雷問題・対人地雷禁止条約 ・クラスター弾に関する条約 → 非戦闘員を多数殺傷する兵器への国際世論の批判が背景に p.132-133 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第1節 国際政治とその課題(p.124-135) 6 国際平和と日本の外交(p.134-135) ・同時多発テロ(2001 年)~対テロ戦争 冷戦の終結と日本の平和主義 … テロ対策特別措置法,イラク復興支援特別措置法制定 ■冷戦の終結:米ロ間の全面核戦争・第三次世界大戦の可能性減少 ⇔ 地域紛争が各地で頻発 → 戦闘が続いているイラクへも派遣 自衛隊は軍隊ではない = 戦闘行為を禁じる ■日本はどのような外交によって国際平和に貢献できるのか? 「経済援助だけでいいのか?」 (後方支援と民生支援に活動を限定) ※集団的自衛権の観点から,自衛隊の海外派遣には反対意見も 「人的貢献も必要なのではないか?」 ■日米安保条約の再定義 ⇒ 日本の防衛のあり方を問われる → 「日米防衛協力のための指針」(新ガイドライン)作成 → 周辺事態法制定 世界の一員としての日本 ■今後の日本は世界のなかでどのような行動をしたらいいのか? → 外交三原則:①国連中心,②自由主義諸国との協調, ③アジアの一員としての立場の堅持 自衛隊の海外活動 ■自衛隊の海外派遣 … 国内では賛否が対立 ・国際平和協力法制定 → 国連平和維持活動(PKO)に参加 … カンボジア,モザンビーク,東ティモールなど ・国際社会への貢献は,軍事力に頼らない ・唯一の被爆国として,核廃絶に努力 国連総会に核軍縮決議案を提出し続けている(⇔ 米の核の傘) ・国連の非常任理事国を 10 回経験(加盟国中で最多) ■日本独自の理念で,評価を高め,国際平和の実現に努力を p.134-135 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第2節 国際経済とその課題(p.136-147) 1 私たちの生活と国際経済(p.136-137) 経済のグローバル化がもたらすもの ハンバーガーから見た世界 ■身のまわりの外国製品…増加 ■景気の変動に対応,一部の商品の値下げ販売,新商品の投入… → ファストフード店の競争が激化 チェーン店:多国籍企業(外国に本社,各国に子会社)も ■ハンバーガー → 材料:最安値で輸入できる小麦や牛肉を使用 加工・販売…低価格販売でももうけ(利潤) 本社:原材料の情報・販売状況を把握 → 利潤が出る戦略 ・食料を大量消費する先進諸国 ・8億をこえる栄養不足人口を抱える発展途上国 ↓ FAO:世界食糧サミット(1996 年) …飢餓をなくすこと(地球的規模の課題) 世界における食料供給の不均衡の是正 p.136-137 ■外国に出かける人・外国から入国する人…増加 ↓ 財(モノ),サービス,資本(カネ),労働力(ヒト) …国境を越えて移動(ボーダーレス化) → 相互依存の関係が深まる;経済のグローバル化 ■企業;海外に工場を移転 → 低賃金労働力を利用するため ↓ ・企業…コスト削減,利潤拡大のチャンス ・消費者…より安い商品の購入,外国製品を手に取る機会の増加 ※良い点;国家間の経済的な結びつきが増す ※悪い点;経済摩擦(例.貿易摩擦)の発生,国内の産業空洞化 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第2節 国際経済とその課題(p.136-147) 2 国際分業と貿易(p.138-139) ・イギリスの世界市場進出を合理的に説明する理由となった 日本の貿易の特徴 自由貿易;各国が自由に貿易を進めるべきという考え方 ■貿易;国家間で行われる商品の流通 保護貿易;外国からの工業製品の輸入 → 高い関税 …輸出;外国への商品の販売,輸入;外国からの商品の購買 …国内で生産される同種の工業製品をつく (日本の貿易の特徴) る産業(幼稚産業)を保護すべき 輸出;機械や自動車 ⇔ 利益を得る 輸入;原燃料(石油など),食料品・衣料品・工業用部品 → 日本の貿易;通貨はアメリカドルで取引 *リスト[独]が提唱:自由貿易では後発国は発展できない 垂直的分業と水平的分業 ■垂直的分業…分業の固定化 = 経済成長に与える影響が大きい (原材料) 国際分業の理論と自由貿易 発展途上国 ■貿易;それぞれの国が得意な産業に力を入れて生産する(特化) (比較優位商品) → 全体として生産量が増加 ⇔ 交換し合う = 双方に利益 ↓ 国際分業の仕組み;比較生産費説(リカード[英]が理論化) 先進国 (工業製品) ■水平的分業…限られた市場で厳しい競争 先進国 先進国 (種類や機能の異なる工業製品) ※ 特定の商品の貿易に偏りが生じることも ⇒ 貿易摩擦(ex.かつての日米間の鉄鋼,自動車貿易) p.138-139 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第2節 国際経済とその課題(p.136-147) 3 為替相場と国際収支(p.140-141) ■為替レートの経済への影響 外国為替市場と為替レート ■為替レート(為替相場) … 自国通貨と外貨の交換比率 ex.海外旅行で「円」(自国通貨)を,その国の通貨(外貨)に交換 貿易における国際間の取り引き = 多くが外国為替で決済 <輸出>「円高」の場合 → ドル表示では商品価格上昇 … [輸出品]割高 [輸出量]減少 [輸出産業]不振に陥る <輸入>「円高」の場合 → 円表示では商品価格下落 … [輸入品]割安 [原燃料価格]低下 [企業]製造コストを抑えられる ■変動為替相場制(フロート) … 為替レートが,各国の通貨に対する需要・供給で変動する 「円高・ドル安」の進行 → 経済に大きな打撃があると判断 → 政府・日銀が外国為替市場に「円売り・ドル買い」の 変動の要因 市場介入を行うことも ・日本の輸出が増加(日本の輸出超過) → 米企業:支払いのため「ドル売り,円買い」 → 円需要が増大 ⇒ 「円高・ドル安」の要因に ・アメリカの利子率や株価が高くなる → 米の債券・株式を買おうとして,資本が移動 → ドル需要が増大 ⇒ 「円安・ドル高」の要因に ・通貨に対する投機 → 将来的な価格変動を予測して, 生じた価格差から利益を得る 国際収支とは何か ◆国際収支 国際取引によって生じた外貨の受け取りと支払いの年間集計 ■国際収支統計 … 経常収支と資本収支 (1)経常収支 ①貿易・サービス収支(貿易収支+サービス収支) ②所得収支 ③経常移転収支 (2)資本収支 ①投資収支 ②その他資本収支 (3)外貨準備高(外貨準備増減) p.140-141 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第2節 国際経済とその課題(p.136-147) 4 戦後の国際経済(p.142-143) ニクソン-ショックと変動相場制への移行 ブレトンウッズ体制の成立 ■ブレトンウッズ体制の背景(米の経済力とドルに対する信頼性) ■1944 年,ブレトンウッズで連合国による通貨金融会議開催 … 「第二次世界大戦後の世界の経済秩序をどうするか」 ・IMF(国際通貨基金) ↓ ・西ヨーロッパ諸国・日本が復興し,米の貿易赤字が拡大 ・ベトナム戦争など軍事支出の増加による米の財政赤字が拡大 ・世界銀行(IBRD,国際復興開発銀行)発足 → ブレトンウッズ体制 ■1948 年,GATT(関税と貿易に関する一般協定)の取り決め IMF・GATT体制 … 先進資本主義諸国の通貨安定・自由貿易実現のために (背景) 1930 年代のブロック経済圏の構築(世界恐慌の発生) → 植民地獲得競争 … 世界戦争への反省 ■基軸通貨(アメリカドル,金との兌換が可能な唯一の通貨) *各国通貨:固定された為替レートで結ばれた (固定為替相場制) … 日本:1ドル=360 円 … 米の経済的優位の崩壊,ドルへの信頼の失墜 1971 年:ニクソン大統領,金・ドル交換停止を声明 (ニクソン-ショック) → ドル切り下げなど固定為替相場制を維持する努力 (スミソニアン協定) … 信頼は回復せず 1973 年:主要国が変動為替相場制へ移行 (1976 年,キングストン合意で承認) ■ブレトンウッズ体制の崩壊 … 以後,為替相場の変動で通貨売買し,利益を得ようとする動き ※1997 年,タイ通貨の下落 → アジア通貨危機 ※通貨・為替の安定策 ・IMF:国際収支の不均衡が生じた国に一時的に貸付 ・世界銀行:経済復興や発展途上国に融資 ◆GATTからWTOへ ■GATT体制:ケネディ,東京,ウルグアイの各ラウンド ⇒ 関税引き下げ・非関税障壁の撤廃,知的所有権の保護など ⇔ 日米貿易摩擦問題,管理貿易問題も生じる ■WTO(世界貿易機関):ドーハ-ラウンドのはじまり p.142-143 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第2節 国際経済とその課題(p.136-147) 5 地域的経済統合と経済協定(p.144-145) 世界各地にみる協力構想 経済のグローバル化 ■ASEAN(東南アジア諸国連合) ■世界規模での貿易が活発化 ■APEC(アジア太平洋経済協力);国際政治でも影響力 → 国家の枠を超え,複数国家が経済統合 → 経済のグローバル化の進展 … 20 世紀後半以降;近隣諸国どうしの経済統合の動き ※大きな経済圏へと発展 (アジア太平洋自由貿易圏[FTAAP]を提唱) ※環太平洋パートナーシップ(TPP)協定が注目される ■NAFTA(北米自由貿易協定) ■MERCOSUR(南米南部共同市場) → 地球規模で地域的経済統合の動きが進展 ヨーロッパの経済統合 ■ヨーロッパ諸国 … 経済統合による戦争の回避+戦争で疲弊した経済の再建 *ECSC(欧州石炭鉄鋼共同体)を設立 → EEC(欧州経済共同体) → EC(欧州共同体) → EU(欧州連合) … 共通通貨ユーロの導入 ⇒ EU大統領・EU外相の誕生 p.144-145 ■FTA(自由貿易協定);二国間で関税・サービス貿易の障壁撤廃 ■EPA(経済連携協定);FTA+投資規制撤廃,知的財産保護 … 最終的には巨大な経済統合へ進展する可能性 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第2節 国際経済とその課題(p.136-147) 6 経済における日本の貢献(p.146-147) 人的支援 日本のODA ■JICA(国際協力機構)の活動…政府のODA予算から実施 ■第二次世界大戦後の日本:積極的な経済支援による外交 → 国益にかない,国際社会に復権するうえで重要 ・コロンボ計画,OECD(経済協力開発機構) ・青年海外協力隊:JICAが実施するボランティア活動 …現地の人々が抱える課題の解決に貢献する事業 (農林水産,加工,土木建築,保健衛生,教育文化,スポーツなど) …発展途上国への経済協力 ⇒ ODA(政府開発援助) (無償援助,技術協力,借款,世界銀行などへの資金の拠出) → 経済援助+発展途上国の自助努力の支援 ・1990 年代:日本のODA拠出額:世界一…近年でも世界有数 ・政府以外の援助…NGO(非政府組織),大学,地方公共団体など 民間での協力 ■多国籍企業 …諸外国に生産・流通拠点をもち,子会社・支店を世界に展開 ⇒ 現地に直接投資…その国の雇用を生む ⇒ 先進国から技術移転…その国の開発能力の向上に協力 ↓ NGO,政府,民間の枠組みをこえた取り組みに期待 p.146-147 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第3節 地球社会の課題(p.148-159) 1 地域紛争と人種・民族問題(p.148-149) ・ルワンダ内戦 … 数十万人が虐殺 人種,民族,国家 ・中国 … 少数派の民族文化や宗教などに対する漢民族の弾圧 ■人種:肌の色などの生物学的特徴 ⇒ チベット人(チベット仏教),ウイグル人(イスラーム) ■民族:文化・言語・宗教などを共有する集団 ※二つの概念は厳密に区別されてきたわけではない ・18 世紀後半:フランス革命以降 (より進んだ自治・分離独立を求める運動) ・チェチェン紛争 … ロシアからの独立を求める ・パレスチナ問題 … 複数の宗教が聖地をめぐり対立 … ナショナリズムと国民国家の思想の広まり ・20 世紀以降:民族自決主義 … 民族の運命は「自分たち自身」で決めるべき ・第二次世界大戦後:国連憲章に民族自決の原則 … 民族自決は基本的な原則 ⇔ ほとんどの国家は複数民族国家・多民族国家 … どの民族に属するかの絶対的基準はない (民族の異なりが文化・宗教・政治と結びつく ⇒ 武力衝突) 解決への糸口 ■人種・民族問題の解決 例.南アフリカ共和国 … アパルトヘイト(人種隔離政策)が続いてきた ⇒ 白人が,黒人やカラード(有色人種)を激しく差別 ⇒ 国際社会からの圧力や抵抗運動 ⇒ 1991 年に廃止 ⇒ その後 … 黒人による白人への報復が起きないように 頻発する地域紛争 真実和解委員会の設置 ■冷戦終結後,世界各地で民族紛争の急増・激化 ・ユーゴスラビア ■マケドニアや東ティモールの例 … 共産支配の崩壊後,構成していた各共和国の独立宣言 ⇒ 内戦の発生 民族浄化(エスニック-クレンジング) 集団虐殺(ジェノサイド) p.148-149 (人種間の和解と国民の統合を目ざす) … 紛争が起こる前に国連が部隊派遣:予防外交 (大規模な内戦や国際紛争を回避) 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第3節 地球社会の課題(p.148-159) 2 国際社会と人権(p.150-151) 進む人権保護 人権擁護のあゆみ *国際社会では,特に弱い立場にある者の人権を守る必要あり ■人権:人が生まれながらにもっている権利 … 人類は長い年月をかけて人権を擁護する努力をしてきた ■子ども(児童)の権利条約…国連で採択 ⇒ 生きる権利,守られる権利,育つ権利,参加する権利 (アメリカ独立宣言,フランス人権宣言など) ■第二次世界大戦後 → 四つの柱 ⇒ 児童売買,武力紛争への児童の関与に関する選択議定書 ・世界人権宣言(国連で採択) ⇒ 国際人権規約が採択 ・ヨーロッパの例:欧州人権条約を基礎に欧州人権裁判所設立 ※人権侵害を受けた個人が国家をも訴えることができる ■冷戦終結後 ⇒ 人権保護の動きがさらに活発化 ・国連人権高等弁務官の設置:国際社会での人権を守るため も追加された ※条約成立に大戦の被害を受けた児童の救済・福祉・健康改善 のために設立されたUNICEF(国連児童基金)が尽力 ■少数民族の人権を守る:先住民族の権利に関する国連宣言 ■国連人権理事会(国連人権委員会の改組)の設立 :活動が期待される 難民問題 ■国際刑事裁判所(ICC)[2003 年設立] ■国際社会における人権侵害 ⇒ 難民 ・第二次世界大戦時:ナチ党[独]のユダヤ人迫害 → 難民が発生し,大量虐殺(ホロコースト)も起こる ・第二次世界大戦後:ジェノサイド条約締結 ■UNHCR(国連難民高等弁務官事務所) … 難民を保護し援助するために設立 ※世界の難民数:約 1,100 万人[2008 年] → 努力にかかわらず難民数は減らない p.150-151 → 大量虐殺や戦争犯罪を起こした国家元首などを裁く 人権擁護への期待 … 人権擁護は大きな課題 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第3節 地球社会の課題(p.148-159) 3 地球環境問題(p.152-153) 国際的な取り組みの始まり 「豊かさ」とは何だろうか ■2011 年3月:福島第一原子力発電所事故…放射能汚染による被害 ← 「低コスト」 「クリーン」といわれてきた原子力発電 ⇒ 多くの課題に直面=将来世代への被害 …今後,除染や被害の補償(=長期間にわたる深刻な課題) ↓ 先進国:1960 年代後半~ 発展途上国:1972 年の国連人間環境会議以降 ・国連人間環境会議: 「かけがえのない地球」 → 「人間環境宣言」が採択 ・国連環境計画(UNEP,1973 年)が設立 → 先進国と発展途上国の間の激しい対立 *「豊かさ」とは何だったのか オゾン層の破壊をめぐる問題 消費生活から考える環境問題 ■東日本大震災後…節電(=電力の供給不安) ・電力も限りある資源 ・新エネルギーを含めた発電方式のバランスの問題 ■オゾン層の破壊…国際的に合意がなされた例 オゾン層…太陽からの紫外線を吸収する効果をもつ フロン…豊かな生活のために多用 ↓ フロンはオゾン層を破壊することがわかる ■日常生活…ごみの分別・リサイクル=ごみを出さない社会? ⇒ 「もったいない」が注目されている …自身の行為と環境問題とのかかわりに気づく (「人々の意識を変える」 ⇒ 環境問題の解決に結びつく) p.152-153 (オゾンホールの拡大が問題に) → 人間の健康に悪影響を及ぼす ■フロンの製造の生産・消費の停止の国際的約束 → モントリオール議定書 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第3節 地球社会の課題(p.148-159) 4 環境問題をめぐる対立(p.154-155) ※2010 年,生物多様性名古屋締約国会議(COP10) 環境問題にみる対立 → 2010 年までの目標「生物多様性が失われる速度を減速させ 生態系は相互につながる:地球は「縫い目のない織物」 る」(2002 年採択)は達成できず,新たな目標が定められた 「地球は一つであるが,世界は一つではない」 ↓ … 地球環境保全について反対する人はいない ⇔ 国際的な枠組みづくり=国家間の利害対立のため困難 京都会議以降の新たな対立 ■1997 年,地球温暖化防止京都会議(COP3) … 温室効果ガスの削減対象,削減ルール=京都議定書 ・発展途上国の意見; 「先進国こそが削減に努力すべき」 地球サミット ・先進国の意見; 「発展途上国もそれなりに努力すべき」 ■1992 年,国連環境開発会議(UNCED:地球サミット)開催 ※発展途上国中の新興国(中国・インド)の大量排出 … 「持続可能な発展」 ;環境と開発の「対立」ではなく「両立」 → 新興国が削減の責任をどう果たすか ・「リオ宣言」採択=「予防原則」が盛り込まれる ⇔ それでも一人あたりでは先進国の排出量が圧倒的に多い ・「アジェンダ 21」=「リオ宣言」の具体的行動計画 ・ 地球温暖化防止条約(気候変動枠組条約)の合議 ※「地球環境問題の責任は,先進国・発展途上国が共通に 負うが,おもな原因は先進国にある」 ■2000 年,国連ミレニアムサミット「ミレニアム開発目標」採択 … 目標:「環境の持続可能性の確保」 ※京都議定書以降(2012 年以降)の枠組みづくりは難航 … 先進国と発展途上国の対立は根深い (⇒ 「共通だが差異ある責任」という考え方) ・UNCEDで生物多様性条約が採択 … 生物種の間に共生の関係が成立している(生態系) → 複雑に関係し合い生態系を構成=生物の多様性 環境NGOと地球環境保全 ■地球サミット以降,環境NGO(非政府組織)の 国際会議への参加認められる ・シエラクラブ(米):自然保護団体 ・気候行動ネットワーク(CAN):温暖化防止に取り組むNGO p.154-155 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第3節 地球社会の課題(p.148-159) 5 人口・食料問題(p.156-157) 食料をめぐる動き 世界人口の爆発的増加 ■国連食糧農業機関(FAO)[1945 年設立] ■2012 年3月現在,世界の人口は約 70 億人 … 20 世紀以降,爆発的な増加(人口爆発) ⇒ 食料供給ができなくなるおそれ [問題点の違い] 先進国:少子化+高齢化 ex.日本は超高齢社会をどう築くか? 発展途上国:乳児の死亡率・出生率の高まり ex.国家が自国民を養えない場合も ■2050 年,世界の人口は 90 億人に(国連予想) → 生存のための争いが起こる懸念 … 世界経済の発展と人類の飢餓からの解放 ・食料安全保障の概念の提唱 「全ての人が常に活動的・健康的生活を営むために必要とな る,必要十分で安全な,栄養価に富む食料を得られる」 ■世界食糧計画(WFP)[1961 年設立] … 低所得国への食料援助,穀物の国際備蓄 ■世界食糧サミット[1996 年] … 栄養不足人口を 2015 年までに半減させる(ローマ宣言) ⇔ 2010 年現在,世界の飢餓人口は 10 億人(7人に一人) ↓ 国際社会の取り組み 人口問題と食料問題は関係が深く,深刻化が予想される課題 ■1994 年,国際人口開発会議(カイロ会議)開催:国連主催 … リプロダクティヴ-ヘルス-アンド-ライツ (性と生殖に関する健康と権利) ⇒ 女性が出産に関わることを自由に決定で きる権利を認めようとするもの p.156-157 第2編・第5章 国際社会の動向と日本の果たすべき役割・第3節 地球社会の課題(p.148-159) 6 豊かさと貧困(p.158-159) ■発展途上国側でもNIEO(新国際経済秩序)を打ち出す 貧困問題 … 自国資源への完全な主権,一次産品の価格支持, ■国連 ⇒ 後発発展途上国(最貧国:LDC) … 一人当たりGNIが3年平均で 905 ドル未満の国 (加盟国 192 か国中,48 か国[2009 年現在]) ・かつての貧富の格差=南北問題(先進国「北」,発展途上国「南」) 多国籍企業への規制など ⇒ 積極的に自立を目ざす活動 ■国連:「国連開発の 10 年」(発展途上国と先進国の橋渡し役) ⇒ 1966 年,国連開発計画(UNDP)発足 ・近年 → 発展途上国間での経済格差が問題視=南南問題 ※発展途上国 経済発展して先進国へ(新興国) … 発展途上国における持続可能な開発の実行 ※貧困の解消には至っていない 内戦・革命など政情不安でLDCへ 人の移動 国際社会による努力 ■DAC(開発援助委員会) OECD(経済協力開発機構)の下部組織 先進国からの発展途上国への援助を効率的に行う ■ODAによる援助も貧困問題では重要な役割 ■国家間の貧富の格差 … 解消されていない ⇒ 豊かさを求めて移動する,国境を越える人の移動 例.日本とインドネシア間の経済連携協定(EPA)[2008 年] … 看護師候補者・介護福祉士候補者の受け入れを開始 ⇒ 先進国での人手不足の解消に,人材を受け入れる ⇔ 発展途上国からの人材の流出 → 発展途上国での人材不足が問題に p.158-159 第3編・【個人と社会】 1.「社会起業」という生き方,2.人間らしく働くことができる社会へ(p.162-165) ◆1.「社会起業」という生き方(p.162-163) グラミン銀行の取り組み ◆2.人間らしく働くことができる社会へ(p.164-165) 正規も非正規も団結権を保障 ムハマド=ユヌス:バングラデシュの飢饉での救援活動の経験 *農業生産性の改善 ⇒ 貧しい人々は利益を得られない 地主:利益を上げることができる 貧しい人々: 労働法: 「人格の対等」「契約自由」「私的所有権」の尊重に修正を加える (1) 法律で労働条件の最低基準を決める (例.労働基準法・労働契約法・最低賃金法) 日々の生活維持のみで,努力しても貧困から脱出不可 (理由)工芸品製作の材料購入時 …金貸しとの間で不公正な取引・高金利 ⇒ 手元にわずかな利益しか残らない ⇒ 労働者に人間らしい生活を保障 (2) 労働者が団結して使用者と団体交渉 (例.労働組合法の団結権) ⇒ 使用者との力関係を補い,人間らしい生活を実現 ※彼らに金を貸す金融機関がない (「担保がない」 「申込書に必要事項が記入できない」…) ↓ ※新たな金融システムの創設: 「グラミン銀行プロジェクト」 ⇒ プロジェクト成功…グラミン銀行の発足(マイクロ-クレジット) ① 貧しい人が対象(貧困からの脱出が目的) ② 担保なしで少額のローン提供 ↓ 返済率 98%,着実に利益をあげている p.162-165 ↓ ※労働組合法 労働者=「賃金,給料その他これに準じる収入によって生活するもの」 ↓ …非正規雇用者・失業者も労働組合の結成・加入が可能 *労働組合→法律によって活動を保障されている (…民事免責,刑事免責,不当労働行為を受けないなど) *労働協約:労働組合・使用者が取り決めた文書 …労働契約や就業規則を上まわる効力をもつ 第3編・【社会と社会】 「苦い」コーヒー ~生産者と消費者を結ぶもの(p.166-169) ◆「苦い」コーヒー ~生産者と消費者を結ぶもの(p.166-169) コーヒー価格の変動:大きい…天候・需給関係・投機の対象 「南」がつくり「北」が飲む ① コーヒー生産国…コーヒー生産増→食料は輸入に頼る *コーヒー生産:コーヒーベルト(赤道付近の熱帯地方)で生産 <生産国> ③ 重債務国や後発発展途上国が多く含まれる アジア・アフリカ・ラテンアメリカなどの発展途上国:「南」 ⇒ 1/4:自国の消費量,3/4:海外へ輸出 <消費国> 生産者から消費者まで (コーヒー豆の経路) 生産者→輸入[商社]→ロースト[大手焙煎業者]→卸売→消費者 北アメリカ・ヨーロッパ・日本などの先進国:「北」 *「南」がつくり「北」が飲む コーヒー生産の歴史 …生産者が手にする金額は,小売価格の1%に満たない → 発展途上国の貧困が見えてくる 生産者の顔が見える貿易 原産地=エチオピア・カッファ地方 ↓ → アラビア半島 → ヨーロッパ → アメリカへ伝播 コーヒーハウス=知識獲得・情報交換の場 ⇒ 植民地のプランテーションから供給された 開発:欧米人,労働者:安い労働力(奴隷・先住民や移民) ↓(消費国へ) *輸出用換金作物として大規模に栽培 コーヒー生産国で起こっていること ※独立後もコーヒーの生産・輸出に依存 モノカルチャー経済…一次産品に依存した経済 p.166-169 ② 児童労働の問題 フェアトレード(公正貿易) …生産者と消費者による,安定的で持続可能な取引の実現 *最低輸出価格を保障=生産者の収入を保障 → 生産者の収入と生活の安定 フェアトレード-コーヒーの時代へ 生産者の利点:① 品質の向上(消費者のニーズに合わせる) ② 環境に配慮したコーヒー生産 ↓ やや価格は高価 「生産者支援ができる商品」…今後の普及が期待される 第3編・【現在世代と将来世代】 「世代間の対話」と持続可能な発展(p.170-173) ◆「世代間の対話」と持続可能な発展(p.170-173) ・将来世代に向けて … 世代間衡平の考え方 世代を超える対立 (1)「負の遺産」はできるだけ減らす ※2100 年ごろの地球の平均地上気温 ⇒ 1900 年ごろよりも 1.1~6.4℃の幅で上昇,海面も上昇予測 [IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4回報告書より] 今日排出された温室効果ガスに伴う影響・被害 → 50 年後・100 年後に現実になる … 現在世代:加害者,将来世代:被害者 ↓ … 受け継いだ時より悪化させないで次世代に引き継ぐ (2)「受け継ぎたい遺産」を損なわない … 自然的・文化的資源の多様性の保護・維持に努める (3)「受け継ぎたい遺産」を増やす … 資産の利用法や恩恵に関する知識も引き継ぐ *将来世代が嘆くような環境破壊を, 現在世代が転嫁することは許されない *地球温暖化=「世代間の対立」という側面がある もし,将来世代が今いたとしたら… ・選挙 … 環境問題に熱心な候補の投票 ・環境にやさしい商品の購入 など… 世代間倫理と「持続可能な発展」 ※地球温暖化=世代間倫理の問題でもある ⇒ 環境と開発に関する世界委員会(ブルントラント委員会) … 「持続可能な発展」の考え方を提唱 将来世代の代理人 → (1)現在・将来の世代のニーズを満たす発展 *将来世代の被害を防ごうとする ⇒ 現在世代において温室効果ガス排出量を減らす ↓(大気中に蓄積) → 前の世代から受け継いだ「負の遺産」 (2)南北間・世代間衡平に基づく社会的公正を重視 (3)開発と環境保全を調和させた発展のあり方 … 「持続可能な発展」の実現 → 環境保全+経済開発+社会開発(ジェンダー間の平等など) ⇒ 生活の質の向上が必要 ※低炭素社会づくりに向けて,世代間でも公正な経済発展が必要 p.170-173