テーマ L10： 水温と気温の差 室温と相対湿度を一定に保てる部屋に水の

埼玉工業大学
テーマ L10：
機械工学学習支援セミナー（小西克享）
水温と気温の差－1/1
水温と気温の差
室温と相対湿度を一定に保てる部屋に水の入ったコップが置かれている場合，コップ内
の水の温度は部屋の温度より低くなります．
この原因について考えてみましょう．
相対湿度が 100%未満の場合，空気に接する水面からは拡散現象によって水蒸気が発生し
ます．水が蒸発するには，蒸発潜熱（気化熱ともいう）が必要です．この蒸発潜熱の一部
は外気から供給されますが，それだけでは足りないため水自身が持つエンタルピーを減ら
す（熱を自己放熱する）ことで蒸発潜熱に当てなければなりません．そのため，水温は外
気温より少し低くなります．温度差を決定する要因には次のものが考えられます．
① 相対湿度
相対湿度が低くなると蒸発量が増加して放熱量も増加するため，外気温との温度差も
増加します．
② 水量
水量が多いと熱容量（比熱×質量）が増加するため温度差は小さくなります．
③ 外気と接する水面の面積
外気と接する水面の面積が増えると蒸発量が増加するため，放熱量も増加して温度差
は増加します．
④ 水面上の気流（風）の存在
水面上に気流（風）が存在する場合，蒸発が促進されるため放熱量も増加して温度差
は増加します．
水温と気温の温度差は，上記の条件次第で様々な値となるため，温度差を正確に測定す
るには，水量を減らしての蒸発面積を増やす工夫が必要となります．よく知られた乾湿球
温度計では，湿球は湿った薄いガーゼで覆われているのはこのためです．
ところで，野外における水温と気温の差はもっと複雑な要因で決定されます．たとえば，
日中にバケツに入れた水が直射日光を受けた場合には，水が太陽の放射エネルギーによっ
て温められるために水温の方が気温より高くなることも起こり得ます．また，冬になると
気温の方が海水温や池・河川の水温より低くなる現象がよく観察されます．これは，気温
は一日で大きく変化するのに対して，海水温や池・河川の水温は熱容量が大きいために温
度変化が小さいためです．夜半に冷え込むと気温と水温が逆転してしまいます．さらに，
気温が氷点下になった場合は水面近くだけが氷結して，氷の下は 0℃近くの水になること
もあります．
http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/WaterAirTemperature.pdf
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