Comments
Description
Transcript
家族歴は SAH の危険因子か(111117)
ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html 家族歴は SAH の危険因子か(111117) 20 歳代に SAH で加療を行ったという女性。「こういうのって、子供にも遺伝するんですか?」と軽 く聞かれた。よく考えたら結構重い内容だったりする。その場を取り繕っていい加減に答えることも できるが、ここはしっかりと調べてみようと思う。 家族歴が SAH のリスクファクターかどうかを調べてみた。参考文献1によると、家族歴(+)、喫 煙(+)だとオッズ比は 6.4、家族歴(+)、以前の喫煙(+)だとオッズ比は 1.8、家族歴(+)、喫煙 (-)だとオッズ比は 2.5 とされている。いずれにしても家族歴はリスクファクターと言えるということ だ。 (参考文献 1 より引用) UpToDate でもいくつかの論文の結果が紹介されているが、家族歴のオッズ比は 4~5 と言ったと ころのようだ。 A family history of SAH also increases the risk of SAH in individuals without one of these conditions. As an example, one case-control study found that patients with a family history of SAH had an odds ratio of 4.0 (95% CI 2.0-8.0) for SAH compared with controls. Similarly, another study found that first-degree relatives of patients with SAH have a three to five-fold increased risk of SAH compared with the general population. It may be reasonable to screen ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html some family members for the presence of cerebral aneurysm. This issue is discussed in detail separately. 一般には親、子、兄弟、姉妹などに 2 人以上、動脈瘤のある人がいる場合にはスクリーニングが 勧められているが、そうでない場合にはスクリーニングは推奨されていない。頻度が少ないこと、 手術をした場合の QOL や機能予後が悪化する可能性があること、生命予後改善の効果が少ない こと、コスト対メリットが少ないことなどが挙げられている。もちろん、これらの意見はマスの視点を 多分に含んでおり、対策型のスクリーニングとしては勧められにくいということだ。 さて、「くも膜下出血って、子供にも遺伝するんですか?」という問いにどう答えたらよいだろうか。 (→もちろん多発性嚢胞腎やコラーゲン関連の疾患などの遺伝的な疾患を持たない患者) 「くも膜下出血を親に持つ子供のリスクは普通の人と比べて 4~5 倍くらい高いという報告があり ます。もし、お子さんが喫煙をしている場合にはさらに高い可能性がありますし、そうでなければも う少し低い可能性があります。少なくとも、親がくも膜下出血を発症したとしても、一般的にはその 子が検診を受けるように強く勧められることはありません。メリットとデメリットを天秤にかけて考え ると、一般的に推奨した方が良いという根拠が無いからです。それでも、患者さん自身がメリットと デメリットを理解した上で検診を受けることは出来ます。検査で動脈瘤が見つかる頻度が低いこと、 検査のための費用を負担しなければならないこと、QOL を改善するとは限らないこと、見つかって 手術をする場合のデメリットがあることなどを許容できるなら、脳ドックなどの検診を受けてみるこ とも構わないと思います。」 いまはこれが振り絞れる精一杯。取り敢えず、この作文を棒読みしてみようと思う。 参考文献 1. Woo D, Khoury J, Haverbusch MM, Sekar P, Flaherty ML, Kleindorfer DO, Kissela BM, Moomaw CJ, Deka R, Broderick JP. Smoking and family history and risk of aneurysmal subarachnoid hemorrhage. Neurology. 2009 Jan 6;72(1):69-72. 2. Etiology, clinical manifestations, and diagnosis of aneurysmal subarachnoid hemorrhage UpToDate Last literature review version 19.2 ROCKY NOTE http://rockymuku.sakura.ne.jp/ROCKYNOTE.html