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議事要旨
第 1 2 回 IT 総 合 戦 略 本 部 新 戦 略 推 進 専 門 調 査 会 道 路 交 通 分 科 会 1.日時 平成 28 年2月 17 日(水)15:00~17:00 2.場所 中央合同庁舎第4号館4階共用第4特別会議室 議事要旨 3.出席者 島尻情報通信技術(IT)政策担当大臣 朝倉座長、中島構成員代理、川嶋構成員、川端(敦)構成員、川端(由)構成員、須田構成員、時 津構成員、葛巻構成員代理(SIP 自動走行 PD 代理)、天野様(オブザーバー) 一般社団法人 日本自動車工業会 池様(参考人)、ロボットタクシー株式会社 中島様(参考人) 内閣官房 IT 総合戦略室 遠藤政府 CIO、楠政府 CIO 補佐官、二宮次長、吾郷次長、市川参事官、 内閣府、警察庁、総務省、経済産業省、国交省道路局、国交省自動車局 4.議題 (1)開会、島尻大臣からのご挨拶 (2)自動走行に関する事業者・団体からの説明 ①一般社団法人 日本自動車工業会:自動運転ビジョンについて ②ロボットタクシー株式会社:無人自動走行サービスに向けた取り組み (3)質疑応答 (4)「官民ITS構想・ロードマップ2015」見直しに向けた論点:「①市場化に向けたロー ドマップの精緻化」について (5)意見交換 (6)今後のスケジュールについて (7)閉会 注:上記議題(1)~(2)についてのみ、報道公開を実施。 5.議事概要 (1)開会 ①事務局より挨拶。 ②島尻大臣より挨拶。 ③事務局より構成員の追加について「資料1」をもとに説明を実施した。 ④朝倉座長より挨拶。 (2)自動走行に関する事業者・団体からの説明 ① 一般社団法人 日本自動車工業会の自動運転ビジョンについて、池会長より「資料2」をもと に説明を実施した。 ② ロボットタクシー株式会社の無人自動走行サービスに向けた取り組みについて、中島社長より 「資料3(非公開)」をもとに説明を実施した。 (島尻大臣ご退室。その後、報道陣も退室。 ) (3)質疑応答 ○議事(2)の自動走行に関する事業者・団体からの説明について、質疑応答を実施した。 (4) 「官民ITS構想・ロードマップ2015」見直しに向けた論点: 「①市場化に向けたロードマップの精 緻化」について ○事務局より「資料4」をもとに説明を実施した。また国交省自動車局より「参考資料」をもと に無人運転車に関する米国道路交通安全局(NHTSA)のスタンスについて説明を実施した。 (5) 意見交換 ○朝倉座長 それでは、次に意見交換を行います。今、事務局からご説明がありました「市場化に向けたロー ドマップの精緻化」、及び先ほどご説明がありました、資料2、資料3を踏まえまして、皆様方の ご意見をいただきたいと思います。ロードマップの精緻化に関しては、制度面も含めて、精緻化を 図っていくというのが、大きなポイントです。それから、2つの対象を軸に検討を進めること、即 ち1つは高速道路での自動走行、もう1つは限定区域での無人自動走行を軸に検討を進めることが 提案されました。これらを踏まえて検討すべき論点やご意見をいただければと思います。 基本的に、構成員、参考人の方全員から意見を出して頂きたいと思っております。従って一人当 たり3分ないしは4分を目安にお願い致します。 ○委員 一般論として、自動走行による社会メリットの最大化に向けて取り組んでいくことは、とても重 要だと感じております。 今回ご説明がございましたロボットタクシー社のような無人自動走行は、当面の間は実現しない と思っていたのですけれども、昨年秋のボルドーのITS世界会議で、シティーモバイル2という無 人バスに試乗した際に、限定された条件であれば十分に実用化し得ると思った次第であります。 今回、資料4にあるボストン・コンサルティング・グループ(世界経済フォーラム協力)が示し ています2つのアプローチ、すなわち従来の自動車メーカーのアプローチと、ロボットタクシー社 を代表とするような挑戦者のアプローチ、この双方を日本においても多様な進め方として行ってい くことは、自動走行全体のレベルアップにつながり、非常に好ましいと考えております。その上で、 この2つのアプローチは、別々の運用、別々の思想で進めていくことになると思います。そこで将 来にわたって社会システムとして不整合にならないように、双方のアプローチを交流していくよう な、あるいはお互いに議論していくような、そういう場も必要ではないか、また、そういう仕組み が必要ではないかと思った次第であります。今回、こういう形で、双方が席を一緒にしてお話でき ているというのも、その1つだと思っております。 ○委員 質問なのですが、事務局作成の資料4の6~7ページに記載された遠隔自動化型に関して、同19 ページには緊急時を含む安全確保の検討課題(例)として、遠隔運転者による監視、操縦機能、非 常時における自動安全退避機能と記載されています。一方、ロボットタクシー社の中島様からご説 明いただいた資料3の4ページには、遠隔からはモニタリング、監視だけを実施するとも読めます。 ここの整合性はどうなっているのでしょうか。 また、最終的に無人自動走行が実現したときのことを考えると、何らかの形で遠隔操縦を行うい わゆる「管制機能」が必要になるのではないかと考えます。これは、ロボットタクシー社のアプロ ーチだけではなく、高速道路での自動走行を目指す自動車メーカーのアプローチにも最終的には言 えることではないでしょうか。このため、前者のアプローチのみを指しているようにも読める「遠 隔」という言葉の定義を、はっきりしておいたほうがいいと思います。 また資料3の4ページには、万が一のために、 「何らかのトラブルが発生した場合は一定時間(例 えば30分以内)に人間が駆けつけられる体制を整備」とありますが、それでは遅いのではないかと 思います。 ○委員 資料4の2ページ目には社会的な利益の大きさについて記載があります。ぜひロードマップの アクションアイテムの中に、社会的利益というものを、具体的・定量的に分析するような作業を 織り込んでいただきたいと思います。自動走行の出現により起こり得るリスクと得られる社会的 利益、この双方のバランスの中で社会受容性が判断されると思いますし、制度設計もなされるの であろうと思います。そういう意味で、これまでのところ、社会的利益を定量的に評価するとい う作業が十分に行われていないのが、不足ではないかと感じております。 なお、自動走行中の運転者にセカンドタスクを認めるか、認めないか、これは社会的利益とは 違うのではないかと考えます。自動走行システムが搭載された車を買った方にとっては、非常に メリットがあるものかもしれませんけれども、それはあくまで車の消費者に対する商品力に近い ものではないかと思います。そういったところの区別もしながら、ぜひロードマップに織り込ん でいただきたいと思います。 社会的利益としての安全性に関して、自動走行技術が採用されると安全性が飛躍的に高まると いうことはよく言われておりますが、実はレベル1、レベル2の技術が搭載された場合に得られ る安全性のゲインと、それをそこから更に無人にもっていったときにプラスで得られるゲインと、 どちらが大きいかを考える必要があり、レベル1、レベル2の搭載車を普及させる方が社会全体 としての安全性にとって多くのゲインが得られるという議論が以前からあります。 そのような視点からすると、今回のロードマップの見直し案は、特に無人自動走行の実現にか なり力点が置かれていて、それを是とした上で制度設計をどうしていくかという論調に見えるの ですけれども、その前提として目指すべき社会的利益を明確化するとともに、それに対する自動 走行システムの効果を定量化するということを是非やっていただきたい。これはヨーロッパもア メリカも、インパクトアセスメントという名前で、非常に力を入れている分野ですので、ぜひ織 り込んでいただきたいと思います。 ○参考人 自動走行については、どうしても既存の自動車メーカーのアプローチは積み上げ式になってし まう。しかしグーグル等のアプローチはセカンドタスクありきで、車そのものを移動手段として 捉え、移動の間の時間を有効に使いたいという発想がある。これが先ほどの社会的利益なのかど うかは考える必要がある。一方で、自動走行の実現によりいわゆる移動困難者、例えばご自身で は自動車の運転ができない方などに対するメリットもある。これらを含めて社会的利益を考える ことが大事だと思っています。 余談になりますが、先日あるシンポジウムがあって、その表題が「目前に迫る自動運転社会」 というような表題でした。最近のマスコミの論調もそうなのですけれども、こういった言い方は 一般の方に誤解を与えるのではないかと懸念しています。自動車メーカーとしては、安全性の向 上という目的があると思います。無人自動走行そのものを目的としているわけではなくて、事故 をいかに減らすかというところが大前提で、事故を減らすことを通して最終的には無人自動走行 になるかもしれないという思いがあるのです。それが一足飛びに、海外でも無人で走らせている からというところで、無人自動走行ありきになってしまったのでは、社会的利益という視点がち ょっと欠落しているという気がしています。 古典的な技術の積み重ねで、まずは人間の及ばないところを機械が補助しながら、いかに事故 を減らすかを目指す。単なるセカンドタスクというものが社会的利益かというと、ちょっと議論 が必要だと思います。 ○参考人 事務局の資料4の5ページ目に、ボストン・コンサルティング(世界経済フォーラム協力)の 資料がありますけれども、まさに着実に登山道を切り開きながらその途中段階でしっかり製品化 をしながら山を登っていくというアプローチと、最終的な頂上のところで製品化をすれば良いの で途中段階の製品は不要として崖をのぼるというアプローチと、アプローチが違うというのは確 かにあります。そういった中で、同資料の6ページにあるように、両方のアプローチを別のもの という形で定義を分けるのは、非常に良いことだと思っております。 具体的に言うと、着実に登山道を登っていくアプローチでは、ドライバーに向けた車、即ちド ライバーズカーをつくっていると思うのですけれども、交通弱者に向けてというところでいくと、 崖をのぼるアプローチではドライバーがいないパッセンジャーカーをつくろうとしている。同じ 自動車という呼び名ですけれども、別の製品をつくろうとしているぐらい、違うものをつくろう としているという認識でおりますので、定義や制度も分けていただくというのが、実態に即して いると思っております。そう考えると、資料4の7ページ目のところで、パッセンジャーカーは サービス提供として実施されますので、常に監視義務が課されるという点に関して、車1台に対 して1人監視員が要るということになってしまうと、サービスとしては成り立たないということ になってきます。このため1人の監視員が複数の車両を監視するという形態の実現に向けて、検 討をご一緒にさせていただければと思っております。 先ほどご質問というか、ご意見をいただいたところに関しては、後ほどまた議論させていただ きます。 ○朝倉座長 今、もしよろしければご回答をお願いします。 ○参考人 資料3の4ページ目に関して、自動走行システムは基本的に人間による運転と同等の安全確保 がなされた状態で運行ができるというのが大前提にあります。その上でもし何かあった際にはき ちっと安全に車を停止させること、例えば車を路肩に寄せて停めるということを、遠隔から実施 したり、フェールセーフ機能により一部のシステム異常が認められたときに車を自動で路肩に寄 せて停めるとか、どこまでをシステムで安全・安心を担保して、どこまでを監視員のほうで安心・ 安全を担保するのかというところは、組み合わせだと思っていまして、現時点でここまではシス テムでやります、ここまでは人でやりますというところまでは、まだ煮詰められていないので、 これからの検討課題だという認識でいます。つまり、現時点で監視センターのほうでやることを 制限してしまって、ここまでしかやらないと限定的に考えているわけではなくて、まさにそうい ったところは、関係各所とご相談させていただきながら、これだったら社会的にも認められるだ ろう、安心・安全のルールとしても十分だろうというラインを、これから引いていきたいと考え ているというのが、我々の考えているところです。 ○委員 今、このロードマップでは、当面の自動走行システムの実施対象場所として高速道路と過疎地 を想定しておりますが、都市への導入は技術的に難しいことはわかるのですが、一方で社会的メ リットは逆に都市のほうが多い場合があり得るわけです。 資料4の3ページ目で引用されているOECDのレポートにも記載されているのですが、自動走行 の車が町にやって来たときにライドシェアをすることによって、全体として町の中の交通量を減 らし、CO 2排出量を減らすことができる。 そういう意味において、ロードマップの中で遠隔操縦を分けて考えるというのは、大変いいア イデアだと思うのですけれども、できれば過疎地だけではなくて、中小都市も対象に入れていく べきではないか。そこでは、公共交通機関と自動走行車の組み合わせを考える必要がある。おそ らくロボットタクシー社はそれを考えておられるのでしょうけれども、例えば駅までの移動に自 動走行車が利用され、そこから電車等の公共交通を使い、最後にまた自動走行車を利用すること で、町の中の交通量を減らしたり、路上駐車を減らすことができる。 例えば欧州のマルセイユとか、ボルドーもそうですけれども、やたらと路上駐車が多いのです。 日本の場合、それほど路上駐車が多くないのですが、これを減らして都市の景観を変える、都市 の利用形態を変えるという考え方がある。これにより空いた空間には、例えばカフェをつくるな り、歩行者天国の様なことに活用してみる。そうすると、社会的メリットは違う面で出てくる。 OECDではこのような検討もなされていますので、高速道路と過疎地だけという分け方が良いのか は、ほかの国との調和という意味でも、検討をする必要があると思います。 ○委員 今回、高速道路と低速での限定地域交通に注目したのは、自動走行のやりやすさという観点か らは非常にいいストーリーだと思うのですけれども、社会的なメリットからいうと、人間の移動 だけではなくて、物流というのは、非常に大きいテーマだと思っています。物流という視点を含 めると、高速道路といったときに、必ずしも乗用車を対象とするだけではなくて、トラック等も 視野に入れる必要がありますし、そこでは後続車両を電子牽引するという話もあります。また低 速の場合は、今まで諸外国で実施しようとしているものは、比較的公共交通的な位置づけになっ ています。 もう一つ、無人自動走行について、いわゆるグーグルみたいにAIを利用するストーリーと、今 回お話のあったロボットタクシー社のように遠隔監視・操縦で実施するから無人走行が可能であ るというストーリーがある。その話は必ずしも整合がとれていないのではないかと思いますので、 きちんと整理しておいたほうがいいのではないかと思います。 遠隔操縦は、私も非常に有用な手段だと思っているのですけれども、通信の精度や信頼性等の 話もあり、遠隔操縦をどう位置付けるかについては、必ずしも十分に議論されてきていないとこ ろがあります。遠隔操縦の位置付けや仕組みについて、もう少し議論を深めることが必要ではな いかと思います。 最後に3点目ですけれども、高速道路と限定地域の2つのストーリーが並列しているのですが、 最終的に両方を見たときの整合性を検討すべきではないか。他の委員からもお話があったように、 片方は高速道路から自動化を段階的にやると言っており、もう一方はいきなり無人自動走行をや ると言っているのは、社会一般から見て、異質のものが同時進行しているように見えるのではな いか。上手くストーリーを説明しないと、社会に混乱を与える可能性があるのではないか。 ○委員 今の話と関連しますが、資料4に限定地域での無人自動走行とありますけれども、地域という のは特区をイメージされて地域という語を入れたと思うのですが、それだけではなくてシーンの 限定だとか、あるいは技術的な限定だとか、そういう限定条件という位置付けもあると思います。 ですから、限定地域と記載されているものは、ある範囲内の条件の中である範囲内の無人自動走 行をやるという意味であり、それは今後議論されるであろうロボットタクシー社のサービス提供 においても発生してくる限定条件だと思います。 ジュネーブ条約との関係性をクリアにしていくためには、この限定条件を洗い出して、それを どう潰していくかという作業になると思うのですが、資料中の限定地域というところには、注を どこかに入れてご説明いただくか、あるいはこういった限定条件についての議論を深めていく必 要があると思います。 もう一つ、資料2の自工会のご説明の中にデータ提供インフラ整備というところがありますが、 共通で使うデータベースや地図等は、どこかのセンターに置いて共有で使うものだと思います。 そうなると、イメージ的には、自動走行センターではないですけれども、共通に使う情報がどこ かに集まっていて、走っている車の状態を全部そこで吸い上げて、あるいはそこから監視すると いうのは、絵的にはすぐにイメージできるものですから、自動走行センターなるものが概念とし て出てくると思います。それは国がやるのか、民間の各々のシステムごとにやるのか、あるいは そういったものを束ねてシステムとして見るのか、こういった議論は、そろそろ本格的に始めて もいいのではないかと思います。従って、どこかでセンターについての議論ができるような項目 をロードマップに入れていただくといいのではないかと思います。 ○委員 気になった点を指摘させていただきます。私どもだけの呼び名なのかもしれませんが、ADAS(先 進運転支援システム)とAD(自動運転)というのが、一緒に議論されているという印象を受けま した。ADASというものに関しましては、例えば高速道路で走るというのは、既にかなり実現され ておりますし、基本的には商品性を上げるという観点で議論されているのではないかと思ってお ります。ADAS自身もどんどん進化してまいりますし、安全・安心だけではなくて、燃費を向上さ せたり、社会的にも貢献するような技術を踏まえた進化があると思っております。 一方、ADとなりますと、例えば時速10キロ以下ですと、バレーパーキングというのは一部実現 されているようですし、無人で車を動かすという話も議論されているのではないかと思います。 バレーパーキングが実現されますと、駐車時の人の乗り降りがないのでその分狭いスペースに詰 めて多くの車を停めることができるといった利便性も含めて、議論がされていると思います。そ ういった技術に関しても、ロードマップで捉えられたらいかがかと思いました。 もう一つ、高速道路の自動走行でもそうなのですけれども、最終的に分合流をやろうと思うと、 通信系というのは必ず必要になってくると思うのですが、通信系となると、国内だけの議論では 済まなくて、海外でどのような議論があるのかということもございます。車とインフラ、例えば 道路標識と車が通信したり、あるいは車と車が通信して、分合流をうまく制御したりといったと ころに関しても、技術革新が相当早いスピードで行われておりますので、そのあたりに関しても、 ロードマップに記載してはどうかと思います。 ○委員 本日の議論については、大きく4つに課題が分類できると考えました。 1つ目は、法制化が必要な分野として、製造側のリスク、いわゆる誰がリスクをとるかという ことだと思います。システムになるのか、運転者なのか。従来、人間は、リスクのある運転を必 ずしていて、例えば北海道の雪の上で、時速100キロメートルで走るということを人間はやります。 自動走行システムになったときには、そういった運転はやらないということがある程度予想され ます。ただ、そういった場合のリスクというのは、保険などの問題でかなり変わってきますので、 日本のような、実績主義の保険のやり方で、保険料の事前算出できるのか。例えばイギリスのサ ッチャム(Thatcham: The Motor Insurance Repair Research Centre)では、リスクを事前に計 算するシステムを持っていて、例えばボルボが、2007年ぐらいに全車に自動ブレーキを標準装備 したときに、まだ実績がそれ程ない中で、ボルボ車の保険料を安くするということを先行してや ったりするのです。そうすると、そのような装備を搭載した車をロールアウトするときの駆動力 になります。イギリスなどは、若い人が車に乗ろうとすると50万円ぐらい保険にお金がかかって しまうことがあって、それが例えば20~30万と安くなると、自動ブレーキの車を買おうというイ ンセンティブになったりします。そういったことが、ADASの先の自動走行でも可能性があるとい うことで、保険の料率は、実績に基づかず算出する仕方、今の日本にはないと思うのですが、そ ういったことも考えなければならないと思います。 2つ目は、これも他の委員のお話に出ていましたけれども、自動走行中の空いた時間でセカン ドタスクとして何をしていいのかということも、法制化しなくてはならないのではないかと考え ます。あるいは必ずしも法制化ではないかもしれませんが、許容する範囲を決めていかなければ なりません。例えばグーグルですが、従来の自動車メーカーはセカンドタスクに余り高い関心は なくて、グーグルがビジネスモデルとしてここがとりたいのだと思います。そういった場合、セ カンドタスクを自動車メーカーとして認めるのは非常にリスクが出そうだということで、社会的 に嫌だとは思うのですが、ここをビジネスモデルとしてとりたい人がいる以上、許容する範囲を 決めていかなければならなくなりそうだということが予想されます。 また、自動走行システムは、制限速度を守って運転をしますということなのですが、実際に自 動走行車に搭乗させていただくと、法定速度を守っていることがかえって危険となる場面という のがあり得ます。現実的にはそうだと思います。法定速度を守るのはとても重要なのですが、国 内の場合、法定速度を慢性的に20キロぐらいオーバーしているのが常態化している幹線道路があ ったり、破線なのだけれども、車線変更していいのか、悪いのか、わからないような曖昧な白線 等があって、いわゆる現行の法定速度や、白線とかいったものが、適正なのかということを見直 さなければならないのではないか。つまり、自動走行車に法定速度を守らせるのであれば、まず は現行の法定速度の適正化をしなければならないのではないかということが考えられます。 また、駐車場に関して言えば、ヨーロッパでは、駐車場といった限られた場所での無人自動走 行、マンレスドライブという形を認めていこうという動きが始まっているので、例えばこの速度 以下でこういった条件下では無人自動走行をしていいといった条件を検討せざるを得なくなる可 能性があると思います。 次に3つ目として社会受容性に関してですが、車の運転者だけが受益者ではないと思います。 例えば、歩行者が受益者となるのか、歩行者にどういったリスクが発生し得るのかという観点で の、社会受容性の検討が必要です。社会が自動走行を認めていく中で一番重要なのが、先ほど出 た社会的負担の算出というもので、社会的利益の定量化、すなわち利益と負担の算出が必要だと 思います。 一例としては、自動走行中にオーディオビジュアルをより利用できる、すなわち車の中でテレ ビが見られますとか、iPadが使えますみたいな話が当然出てきますし、これは先ほど申し上げた セカンドタスクをどこまで認めるかというところにもつながります。 また、他の委員もおっしゃったのですが、駐車スペースの削減というのは、ヨーロッパではか なり大きなプラスの要素として計算されています。 また、事故削減というのも、ある報告の中には90%削減できるという数字が出ていたりするの で、これを日本に適合させて、どれぐらいの効果があるのかということもある程度算出しなけれ ばならないのではないかと思います。 また、新しいモビリティーが生まれる可能性もあって、これは従来の自動車産業の延長になら ない部分であったり、グーグル、アップルのような、IT産業とも関係ないところで、新モビリテ ィーが生まれる可能性も検討したほうがいいと思います。これまでが、社会受容性と社会的利益 の定量化です。 最後に、イノベーションに向けて共通するタスクをまとめるべきだと思います。一番顕著に出 ているのが、ダイナミック・マップをつくっていくという話なのですが、ヨーロッパはジャーマ ン3がHEREを買収したこともあり、最終的に誰がデファクトをとるのかという話になっていくと 思います。従ってこれは非常に重要なポイントだと思います。先ほどの他の委員がおっしゃった ような、センターを共有化して、センターを含めて自動走行システムとして見るという部分につ いてはとても重要だと思いました。 また、安定した通信回線の確保とコネクティビティーは、ロードマップに盛り込んでいただけ たらと思います。これなしでは自動走行はできません。センター側での対応や管理など、どのよ うな社会コストが必要となるかという議論だと思います。 最後に、海外に出た場合、もちろん国内の検討が一番重要なのですが、どうしても自動車はそ れを飛び出してしまうので、国際的に見たインフラ側の共通化、グローバルとか、地域間の共通 化を最終的にどうしていくかということは、多少議論に入れたほうがいいのではないかと思いま した。 ○朝倉座長 ありがとうございました。構成員及び参考人の皆様にご協力いただき、全員の方からご意見を 頂戴することができました。それでは、今、幾つかご意見をいただいた中で、事務局のほうで、 回答というわけではないのですけれども、1つの考え方をご提示いただけるものについては、さ らに意見交換を進めていきたいと思います。1つは、社会的利益のあたりですね。 ○事務局 貴重なご意見をありがとうございました。今回頂きましたご意見を踏まえて、今後のロードマ ップ作成をしていきたいと思っております。たくさんのご意見をいただきましたので、この場で 全部についてはお答えできないかもしれませんが、私又は関係省庁から答えていこうと思います。 高速道路と限定地域の2つのアプローチについては、今後、整合性を取っていくようにという ご指摘をいただきました。これにつきましては、関係する省庁は本日も出席しており、適宜調整 しておりますので、そこは余りずれてはいかないと思っていますが、事業者との関係も含めてど のような交流ができるのかということは考えていきたいと思っています。その中で、全体として どのように整合性を取るのかということは、考えていきたいと思っております。 遠隔操縦のところに関しまして、事務局の資料4の記載内容と、ロボットタクシー社の資料3 の記載内容とが一致していないというご指摘をいただきましたけれども、事務局としては完全に 一致させるという目的でつくった訳ではなくて、我々が考える中ではこんな整理が必要だと思っ ているという話で書かせていただいたわけです。いずれにせよ、今後どういうことを事業として 具体的に考えていくのかを事業者側で詰める必要があり、それを踏まえて関係省庁の中で、こう いった安全対策が必要ではないかという議論を行うことで、具体的な内容を固めていきたいと思 っています。 それから、インパクトアセスメント、社会的利益の定量性については、おっしゃるとおりだと 思います。今、次回の道路交通分科会の資料をつくろうとしているのですけれども、その中で論 点として挙げようと思っております。定量化がすぐにできるわけではないと思いますが、どうい う取り組みができるかということは、関係省庁等も含めて相談していきたいと思っています。 都市交通の話についてもご指摘をいただきました。今回、限定地域の無人自動走行のところで は、まずは過疎というところを挙げております。考え方として、特に日本においては、過疎地域 の移動をどうするのかというのは、社会的な課題の1つとしてあると思っておりますし、また自 動走行システムの導入が比較的容易なところから始めるという視点でも書いております。その中 で、2020年に向けて対象地域をどう広げていくかということは、状況によるとは思いますけれど も、対象として都市というのは当然あると思っています。 また、今回は情報として出しておりませんけれども、経産省・国交省で開催している検討会の 中でも都市が対象に含まれておりますので、そこも含めて、今後検討していきたいと思っていま す。 物流としてのトラックの件もご指摘のとおりですが、これも同じく経産省・国交省の検討会に て検討しているところで、すぐに実現というわけではないですし、技術的な課題も多いとは認識 しておりますけれども、そういうところも視野に含めて考えていきたいと思っております。 AIのアプローチというのは、企業の動きも踏まえて、整理が必要だと思っております。データ ベースのセンターでの共有というご指摘もいただいております。自動走行に向けて具体的にどう やっていくのか、特に今はダイナミック・マップをどういう体制でやっていくのかという議論が 行われているところだと理解しているので、その先の形としてどういうものを描くかというのは、 業界等も含めて、今後さらに検討が必要だと思っております。 その他、イノベーションの話、安全性、コネクティビティーなど、幾つかいただきました。法 定速度の件も、警察庁の検討会の中でいろいろご指摘をいただいておりますので、論点としては 認識しておりますが、今後どうするかは関係省庁とも相談して検討していきたいと思っておりま す。 もし関係省庁から追加のご発言がございましたら、お願いいたします。よろしいですか。以上 でございます。 ○朝倉座長 ありがとうございました。先ほど構成員の方々からいただいたご意見につきましては、こうい ったことを検討の課題に据えてはどうかとか、項目として挙げてはどうかというお話を頂きまし たが、組み込めるものは組み込んで検討を進めたいと思います。この道路交通分科会の中では、 例えば社会的利益をどう定量化するのかを議論することはできないと思うので、それを議論する 場をどこかにつくってそこでちゃんと検討しましょうということを、ロードマップの中に書き込 んでいく。きっとそういう形になると思います。 他に言い忘れたとか、もう一つ言っておきたいということはございますか。 ○委員 私の質問に対して、お答えいただきまして、ありがとうございます。 特にロボットタクシー社では、遠隔監視だけではなく、これから何が必要かということを検討 していただけるということですので、そのようなアプローチをしていただけることは大変ありが たいと思っています。さらに前提として、自動走行車が安全なものであるという前提で話を進め るということでありますから、基本的に自動車メーカーがやろうとしていることと大きな差はな いと思います。 先ほどからボストン・コンサルティング(世界経済フォーラム協力)の図の話がありますけれ ども、2つのアプローチが最終的に1つのところに収斂するのであれば、レベルの定義を2つつ くる必要性はないと考えておりますので、その点のご検討もお願いします。 ○朝倉座長 ありがとうございます。2つのレベル定義については、遠隔自動化型という考え方を入れたた めに、まずはこういう定義ができないかということで入ったものだと思うので、これが成立する かどうかということは、もうちょっと議論して進めていきたいと思います。ありがとうございま した。他にいかがでしょうか。よろしいですか。 それでは、以上、意見交換をさせていただきまして、私の方で議論を総括するというのは変な のですけれども、資料4にありますように、あるいは本日の議論を通じてですが、1つは、これ までのロードマップ2015というのは、各レベルの定義はあったけれども、責任関係等について触 れた項目はなかったのです。今回、精緻化を図るに関して、責任関係、あるいは制度面と読んで もいいですけれども、それを各レベルとの関係性でクリアにして、特に実用化するためには制度 面の議論は避けて通れませんので、そのことを中に入れてロードマップの精緻化を進めていくと いう方向性について、特に反対はなかったと思うので、その方向で進めていきたいということが 1つです。 それから、市場化に向けた精緻化に関しましては、2つのアプローチというか、2つの方向性 ということで、高速道路での自動走行車の市場化ということと、ここでは限定地域と呼んでいま すけれども、そこでの無人自動走行による移動サービスの提供という、2つの違うものに、ある 意味、両極とも言えるかもしれませんが、そのものにフォーカスを当てて議論していく中で、特 性なり、課題を明らかにしていくという、こういった考え方であります。それ自体がいかがかと いう意見は特になくて、むしろその2つのアプローチの整合性をとる、議論できるような場をき ちっと設けてやらないと、話が散らかりますから注意してくださいというご意見があったと思う ので、この2つの方向性を検討しながらロードマップを書いていくという話だと思います。 もちろんその中には、先生方から先ほど頂戴したいろいろな論点があるので、これは今日お示 しいただいた資料の中のそれぞれのところに、検討すべき論点として書いていただいておりまし たので、それらを踏まえてロードマップに反映するということにさせていただきたいと思います。 今日いただいた各ご意見は、相互に矛盾するものはなかったと思うので、それをロードマップに 適切に取り込んでいただくのと、2020年の市場化に向けて早急に決めておくべきことと、もう少 し先の2020年以降の話と両方あったと思うので、そのこともあわせて、議論を継続してゆきたい と思います。 では、道路交通分科会の今後のスケジュールについて、事務局からご説明をお願いします。 (6) 今後のスケジュールについて ○事務局より「資料5」をもとに説明を実施した。 (7) 閉会 ○朝倉座長 それでは、最後に遠藤政府CIOから一言頂戴したいと思います。よろしくお願いします。 ○遠藤政府CIO 本日は、参考人のお二方、最初から最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうご ざいました。それから、構成員の方には、満遍なくご意見をいただきまして、本当にありがとう ございました。一つ一つのことは、今、事務局からお答えできた部分もありましたけれども、で きなかった部分は、持ち帰って消化したいと思います。 私の理解の仕方は、こういうふうに理解しましたので、それもあわせてご披露しておきます。 自動走行といいますか、道路交通の話というのは、自動車を運転する人のためだけにあるわけで はなくて、結局、社会の構造の中のインフラになっているわけです。それが結果として見ると、 運転者の高齢化とか、あるいは過疎のような人口の急速な偏在化等が明確になってきたために、 今までのやり方のままではまずいというところが、いろいろなところに出てきている。あるいは これからももっと出てくるということをよく理解することが、先ほどの社会的な効果ということ に結びつくのではないか。ビフォー・アフターで効果を測るためには、現在の状況をよく理解し ていないといけない。 私はここのところ、基礎自治体を回っているのです。ここで言うのも何なのですけれども、基 礎自治体は大変なところが多いのです。昔、市になって、そのころは人口5万人ぐらいいたはず なのですけれども、今は1万5,000人とかになってしまっているところが結構多いわけです。そう すると、従来からある公共交通機関、例えばバスは、多くの路線で赤字なのです。どんどん便数 が減る、運行をやめるとなっているのです。そういったものに対して、自動走行技術とか、ある いは社会のインフラも含めて、どのようにして対処してその地域に住んでおられる方の快適、安 心・安全を確保していくのか。そこに若い人たちが住むというときに、非常に喜ばれるという形 になるようにするにはどうしたらいいかということは、物すごく考えています。今まで15カ所回 りましたが、全部同じ問題を持っているのです。10万人ぐらいのところでも、同じ問題を持って いるのです。ですから何とかしなければいけません。 それから、雪の多いところですと、若い人でも雪のときは運転するのを躊躇されます。そうい うところで、移動手段としての足を確保するということについても、これは何の役に立つのか、 どうやれば役に立つのかと考える必要がある。要するにニーズオリエンテッドで考えないといけ ない。シーズオリエンテッドで我々はこういうことができるということだけ言ってみても、ユー ザー側から見ると「俺は関係ない、私は関係ない」ということになりかねないという気がしまし た。 長くなるといけないのですが、もう一つは、自動走行システムは農業の活性化にも役に立つと 思っています。どういうことかというと、遠距離都市間の移動時間が短くできる可能性が十分に あるわけです。ある産地でつくった新鮮なものを消費地に持っていくときに、例えば同じ移動時 間でも100キロメートル移動距離が今までよりも延びたとなる。そうしたら、経済圏が広がるわけ です。そんなことにも絶対に役に立つ。 ですから、ニーズをどうつかまえるかによって、先ほどの高速道路と過疎地域というのは、私 も賛成していたのですけれども、それはそんなイメージを持った代表選手という意味でその2つ を指定しただけなのです。ですから、皆さんがおっしゃられるように、あれが別々に存在するの では整合性としておかしいというのであれば、これは直していきたい。ただ、直すのであればニ ーズオリエンテッドで直したいと思います。 また、自動走行システムを進めようとすると、技術的な課題が、自動車単体でも起こるでしょ うし、路側のことなども含めて、いろいろと発生すると思います。私が一番心配になっているの は、自動走行車の自己診断機能が相当上がらないといけないのではないか、という点です。現在 の自動車の場合、乗車する人間がスイッチを入れると、最初にエンジンをかけたときなどの音も 含めて、正常だとか、おかしいとか、気が付くと思います。それが自動走行車になるとシステム の方に診断を頼る傾向が強まると思います。そのようにシステムに依存した状態において、自動 走行中に自動車の故障が顕在化するようでは困る。そういうことも含めて、自動車の基本に立ち 返るような部分と、アディショナルにいろんなものをつけ加えていかなければいけないというこ とが、同時に進行しないと自動走行システムとして上手く実現していかないのではないかと思い ました。次回以降には、できるだけそういうことを織り込みたいと思いますので、それに関連し ても、皆様のご意見をお寄せいただきたいと思います。 今日は、どうもありがとうございました。 ○事務局 本日は、闊達な意見交換をありがとうございました。 本日使用した資料でございますけれども、後ほどホームページで公開させていただく予定として おりますが、資料3のロボットタクシー社の資料につきましては、同社の意向を踏まえて非公開 にさせていただきますので、よろしくお願いします。 それから、議事要旨につきましては、後日、皆様にご確認の上で、ホームページで公表させて いただきますので、よろしくお願いします。先ほど申し上げましたように、次回の分科会は、3 月2日水曜日9時から10時半を予定しております。SIP推進委員会との合同会議でございます。分 科会の構成員の皆様につきましては、改めて事務局から出欠を確認させていただきますので、ご 協力をよろしくお願い致します。 本日は、どうもありがとうございました。 以上