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提言 糖尿病阻止、5カ年計画策定へ - メタボリックシンドローム・ネット

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提言 糖尿病阻止、5カ年計画策定へ - メタボリックシンドローム・ネット
提言
糖尿病阻止、5カ年計画策定へ
日本人の多くが「倹約遺伝子」
日本の糖尿病患者は、予備群合わせ
て2210万人を数え、この50年間で治療
を受けている人は30倍以上となります。
なかでも深刻なのは合併症。糖尿病が原
因で新たに「透析」を余儀なくされる人
は毎年1万6000人を超え透析導入の第
一位。最近は、失明、脚の切断といった
ほかに太い血管(大血管)の合併症とし
て動脈硬化の大きな原因となっており、
心筋梗塞や脳卒中を起こす糖尿病患者が
非常に増えています。
糖尿病は血糖値を下げるインスリンの
作用不足の病気です。原因の1つはイン
スリンを出す膵臓のβ細胞からの分泌低
下。もともと日本人を含めたアジア人は
欧米人に比べインスリン分泌が2分の1
しかありません。日本では欧米型の生活
習慣を急速に取り入れた近年、肥満や内
臓脂肪が増えて、インスリンの効きが悪
くなる「インスリン抵抗性」が加わり、
急増することになったのです。
肥満で脂肪細胞が肥大化すると、善玉
ホルモン(アディポネクチン)が欠乏し、
悪玉ホルモンが増えてインスリン抵抗性
を起こすことになります。数万年前の厳
しい氷河期などの飢餓に多くさらされて
きたモンゴロイド(日本人やアジア人)
は、食べたものをできるだけ脂肪として
蓄積する「倹約遺伝子」を持っているの
ではと考えられてきました。事実、日本
人の3分の1がその倹約遺伝子を持って
おり、白人は約8%しか持っていません。
これとは逆に脂肪の蓄積を促進する
PPARγという遺伝子があり、なかでも
その働きが強いプロニン型の倹約遺伝子
を持っている人が、日本人では実に
96%に上ることが私たちの調査でわか
りました。白人は約80%です。
欧米人ほどカロリーや脂肪を取ってい
目
次
P.1
P.2
P.4
P.5
P.6
なくても、そうした倹約遺伝子体質が色
濃く残っているので、日本人やアジア人
の肥満が増えてきているのです。
同じ皮下脂肪の量の日本人と欧米人で
は、日本人の内臓脂肪量が約1.5倍多い
ことが明らかになっています。いわゆる
「隠れ肥満」
「隠れ内臓脂肪」の確率が高
いわけです。
牧畜文明の欧米人は以前から肉、バタ
ーなどインスリンを多く必要とする生活
で膵β細胞のインスリン分泌能を増大さ
せていき、一方、農耕社会の日本人は米、
野菜、大豆、魚中心のインスリンを余り
必要としない生活を送ってきました。数
千年におよぶ生活の違いが約2倍のイン
スリン分泌能を白人に賦与したと言えま
す。ところが日本人の食生活は過去数10
年で和食中心から大きく様変わりし、動
物性脂肪・タンパク質の摂取量が4倍に
もなりました。しかし、インスリン分泌
能力は急には増えないので糖尿病が欧米
以上のスピードで増えているのです。
本態解明、エピゲノムに注目
メタボリックシンドロームは、内臓脂
肪をベースにしてインスリン抵抗性が惹
起され、糖尿病にまで進まなくても高血
糖、脂質異常、高血圧など心血管イベン
トのリスクファクターが1人の患者に集
積する病態です。欧米人ほど内臓脂肪が
たまらなくてもたちまちインスリンの作
用不足、高血糖や脂質の異常に陥りやす
いという点で、欧米型のメタボと違って
日本型のメタボというものが非常に重要
です。インスリン分泌が低い体質が糖尿
病の根本にありますが、直接の引き金は
肥満、内臓脂肪蓄積です。内臓脂肪を減
らすような生活習慣の改善は、糖尿病の
予防、病態の改善につながります。
日本糖尿病学会は新しい糖尿病対策5
提言 糖尿病阻止、5カ年計画策定へ
特集 糖尿病・アーカイブ∼糖尿病と歯周病∼血栓に弱い糖尿病∼食後高血糖は“隠れ糖尿病”
連載 今、なぜ患者の声が必要なのか!? ─「在宅医療のシステム化」
食育のススメ 食習慣と子供たち
脱メタボ! 各地の試み、成果続々
長野県・佐久肥満克服プログラム∼チーム岡山大学の取り組み
P.7 情報カプセル
P.8 事務局だより
東京大学大学院 医学系研究科 教授
(日本糖尿病学会 理事長)
門脇 孝氏
カ年計画を今年中に決定する予定です。
二つの大きな柱として、まず糖尿病の本
態解明。糖尿病の体質、分子メカニズム
を解明することで新薬開発、根本的な予
防法、治療法を見つけて患者さんに最適
なテーラーメード医療の確立を目指して
います。最近注目されるのは、ゲノムの
次の段階、エピゲノムです。同じ遺伝子
であっても環境因子によって発現が変化
していく現象のことですが、糖尿病の遺
伝子が解明されてもすぐに本態解明とい
かないのは、生活習慣の要因が大きいた
めで、エピゲノムのメカニズムがわかれ
ば発症抑制も可能となるわけです。
もう1つは、糖尿病予防・治療のエビ
デンス(科学的証拠)を集積し、それに
基づいた環境整備を国のなかで行なって
いくことです。例えば、体重が変わらな
かった人と、生活習慣に介入して2キロ
減の人とを比較すると、わずか2キロ減
っただけで糖尿病発症が67%も予防で
きた。そうしたエビデンスに基づくキャ
ンペーンを今回の特定健診・保健指導と
も連携しつつ進めていきたい。
合併症を起こさないためには、
血糖、
血
圧、コレステロールの3つを治療するこ
とが重要で、医師はそれらを下げる薬を
処方しますが、
実際どれだけ心筋梗塞、
脳
卒中を抑制するのか、そのエビデンスを
得るために私が主任研究者を務める「J・
DOIT3」という大規模な臨床試験を実施
しています。
この試験は今後4年間継続し
て、糖尿病でも合併症や死亡率を大きく減
少できる治療法を確立していきたい。
メタボリックシンドローム
1
糖尿病、及びその合併症について、多角的なアプローチによりさまざま
な研究が進められている。そのなかで歯周病や血栓症との密接な関係が
明らかになってきた。さらに“隠れ糖尿病”とも呼ばれ、糖尿病の予防
対策として注目される食後高血糖をアーカイブから紹介する。
糖尿病と歯周病
糖尿病と歯周病の深い関連性について、
日米の研究の最前線を追った。
歯周病は糖尿病の感染合併症
米ボストン大学ゴールドマン校歯科医
学部のトーマス・ヴァンダイク教授は、
今年1月末、大阪で開かれた「食事・栄
養と糖尿病、口腔保健推進セミナー」
(主催・サンスター歯科保健振興財団、
ハーバード大学医学部附属ジョスリン糖
尿病センター)で「糖尿病と歯周病の関
係」と題して講演。「歯周病は、糖尿病
の感染合併症といえる」と強調した。
ヴァンダイク教授は、糖尿病の罹患率
が高いことで知られるアリゾナ州のピマ
族インディアン約2000人を対象に行な
った最初の疫学研究で、歯周病にかかっ
た人の歯槽骨の喪失具合をレントゲン写
真で長期に調べたところ、糖尿病患者の
場合は特に歯周組織の喪失度が激しく、
歯槽骨がなくなっていた例もあった。さ
らに糖尿病患者でない健常者と比較して
歯周病の相対リスクを調べた結果、糖尿
病患者の歯周病発症リスクは、健常者の
1.95倍に上ることがわかった。
米国では、糖尿病と歯周病の関連性を
追った研究が50数件にも上り、その大
半で相関関係を示すエビデンスが得られ
「全体的に見
ヴァンダイク教授は
ており、
ても相関があり、糖尿病患者は通常の2、
3倍歯周病にかかりやすい」と指摘する。
一方、血糖コントロールに関しても、歯
周病の重篤度が高い人ほど血糖コントロ
ールが悪くなりやすく、歯周炎ありのグ
ループは、ないグループに対し、3倍以
上も血糖コントロールが悪化していた。
最近、注目されている心臓病や腎臓病
との関連についても、ピマ族インディア
ンを12年間追跡調査した結果を報告し
ている。総死亡では、糖尿病と歯周病を
併発している患者は、併発していない患
者に比べ死亡率が倍近くなり、一番死因
として差が大きかったのは心筋梗塞など
の心臓病で、歯周病でない人の2.7倍に
上っていた。それを上回っていたのが糖
尿病性腎臓病であり、従って歯周病の糖
尿病患者においては、血糖コントロール
せず放置しておけば、心臓病・腎臓病に
2
メタボリックシンドローム
つながり死亡率が高まることが示唆され
たのである。
ヴァンダイク教授は、歯周病が糖尿病
の感染合併症との見方について、「歯周
病そのものは、感染性のバクテリアが原
因となって炎症が起こる。糖尿病と歯周
病はこうした炎症反応に関連しているの
ではないかといわれており、糖尿病の血
糖管理が不十分だと、生体の防御反応や
治癒機能が衰え、生体を過剰な炎症状態
に導くことによって歯周組織の破壊が進
むのでは」と説明する。
糖尿病によって歯周病にかかりやすく
なるのか、あるいはその逆なのか。ヴァ
ンダイク教授によれば、炎症性のサイト
カイン(生理活性物質)が体内の血中に
漏れることによって炎症が高まり糖尿病
が悪化していくかどうかは研究中としな
がらも、「現在のデータではっきりして
いることは、炎症をコントロールすれば
歯周病や全身性の糖尿病の進行を抑え、
改善されるなど、いい結果をもたらすと
いうことです」と話す。最後に、歯周病
を予防し治療することで、食物繊維の豊
富な硬い食事も取れるようになる。糖尿
病患者の歯周病を管理することは血糖管
理をより良好に維持することの助けにな
るかもしれない」と語った。
糖尿病発症率と口腔保健、
食事の重要性
このセミナーでは、世界的に権威のあ
ジョスリン糖尿病センター
ウィリアム・C・シュー氏
米ボストン大学ゴールドマン校
歯科医学部教授
トーマス・ヴァンダイク氏
るジョスリン糖尿病センターのウィリア
ム・C・シュー氏は、米国で特にアジア
系米人の2型糖尿病の発症率の高さに触
れ、「軽度のβ細胞機能不全でもインス
リン抵抗性が進展してしまう日系、アジ
ア人の遺伝的素因が、肥満などを呈する
環境の変化によって顕在化してくる」と
説明した。
また、シアトルの日系2世調査では、
糖尿病が16∼20%の発症率を示し、3
世ではさらに増加。中心性肥満、腹部肥
満といった指標の方がBMI(体格指数、
体重÷身長の2乗)よりもインスリン抵
抗性糖尿病の発症を予測できることを明
らかにした。
一方、同センターの登録栄養士、糖尿
病療法指導士のソフィア・チェン氏は米
国における過体重が60∼70%、肥満
(BMI35以上)が33∼35%に及ぶことを
明らかにし、昔より総カロリーは減って
いるものの、エネルギー消費がアンバラ
ンスになってきた結果、糖尿病が増えて
きたと説明する。80%の参加者が体重
減に成功した日本の長野県・佐久プログ
ラムを例に挙げ、減量を成功させる秘訣
について、▽食事を楽しむ▽リバウンド
ジョスリン糖尿病センター
登録栄養士・糖尿病療法指導士
ソフィア・チェン氏
を怖がらない▽炭水化物の量に気をつけ
よう▽記録を取る−など10カ条を提案
した。口腔保健について、
「不適切な歯の
管理をしている人は軟らかいものを食
べたがる。それは必然的に脂質の多い
食事になりがち」とチェン氏。その種の
食物は単糖類が多く、グルコース値に
も影響を与え糖尿病にも決してよくな
いと強調した。
歯周病が全身に影響を及ぼす
歯周病に侵された歯の再生医療にも取
り組んでいる大阪大学大学院歯学研究科
の村上伸也教授は日本の歯周病治療の現
状をめぐって「大人の8割近くが罹患状
態であり、国民健康づくりの一環として
立ち上がった『健康日本21』でも口腔
領域で唯一、歯周病が取り上げられてい
る」と指摘。歯周病の原因として、プラ
ークに付着する歯周病原性細菌が元とな
る感染症としながらも、それだけで発
症・進行が決められるものではなく、生
活習慣や体質などが加味されて人体の抵
抗力が減弱する何らかの全身状態になる
と、歯肉炎から歯周炎へと移行し歯周病
が発症しやすくなることを強調した。
歯茎が炎症を起こすとTNF-αなどさ
まざまなサイトカインが多量に分泌され
てくるが、歯周病治療で炎症が治まると
サイトカインの発現は格段に下がってく
る。しかし、炎症性のサイトカインが持
続的に産生されると、歯周組織から体中
に循環して全身に影響を及ぼす可能性も
あるとしている。
(3月24日)
血栓に弱い
糖尿病
糖尿病は「血栓症」
(血液の塊が
できる病気) とも深くかかわって
いることがわかった。
熊本大学大学院医学薬学研究部循環器
病態学の小川久雄氏は、臨床の経年的調
査から年を追うごとに糖尿病の危険因子
としての重要性が高まり、実際、心筋梗
塞などで大学病院の循環器に入院してく
る患者さんの半数近くがすでに糖尿病
で、しかも高血圧で入院中の患者さんも
糖尿病を合併している人が半数に上ると
している。「冠動脈造影で調べると、糖
尿病の人は血管が全体的に細くなってお
り、すでに心臓を取り巻く動脈(冠動脈)
の動脈硬化が進んでいる表れとわかる」
と指摘し、心筋梗塞や狭心症の患者さん
からもこうした血管の特徴から逆に糖尿
病を患っていることを言い当てることも
できるくらいだ。
急性心筋梗塞患者を調べた「JACSS研
究」では、危険因子の一番手として高血
圧に変わりはないが、糖尿病と合併する
と、さらにリスクが高まり症状も悪化す
る。最近、特に目立つのは女性の心筋梗
塞で糖尿病のリスクが格段に高く、予後
も概して男性より悪い。
急性心筋梗塞は、心臓を取り巻く冠動
脈に「血栓」が詰まり、心臓の筋肉が動
かなくなることによって起こる。私たち
は、22年前から血栓に関連する「血液凝
「血小板」の研究に取り組
「血栓溶解」
固」
村上伸也氏
小川久雄氏
んできたが、糖尿病の患者さんは、血小
板の働きが強くなり、血が固まりやすく
なることがわかった。血栓で血液の流れ
が一定時間途絶えると一気に発症する。
人間の血流は、血液の塊を溶かす作用
(線溶系)と血液を固める作用(凝固系)
の微妙な絡み合いでなりたっているが、
血液中にあって血を止める作用の血小板
の作用が強くなると、血栓症をより促進
することになる。つまり糖尿病の人は、
血小板の働きが強くなることに加え、線
容系が衰え、凝固系が高くなるので血が
固まりやすい。それに加え、高血糖で血
液の流れも悪くなるので、3拍子揃って
心筋梗塞になりやすくなる。
昨秋、小川教授は、米国心臓病会議で、
糖尿病患者を対象にした心筋梗塞など動
脈硬化への予防研究「JPAD」を発表し、
血小板の働きを弱める薬(アスピリン)
投与群では、心筋梗塞や脳梗塞の発症リ
スクが約20%低下し、少量のアスピリン
に抑制効果があることを示し、注目を浴
(5月29日)
びた。
食後高血糖は
“隠れ糖尿病”
血糖値は食後大幅に変動する。
現在、糖尿病の予防対策としてこの
食後高血糖が注目されている。
横浜市立大学内分泌・糖尿病内科学の
寺内康夫教授は、糖尿病患者は健常な人
と比べ、平均寿命が10∼13歳短くなって
いることを明らかにしている。糖尿病を
発症する前から動脈硬化は始まってお
り、血糖の異常を見つける従来の手法と
して「空腹時血糖値」あるいは血糖の平
均値を示す「ヘモグロビンA1c」がある
が、血糖値は食後にダイナミックに変動
大阪大学大学院歯学研究科教授
熊本大学大学院
医学薬学研究部循環器病態学教授
する。空腹時はそれほどでもないのに食
後の血糖値だけ高い患者さんは“隠れ糖
横浜市立大学内分泌・糖尿病内科学教授
寺内康夫氏
尿病”といわれる。
最近の研究では、空腹時の血糖が上昇
する前から食後の血糖値が上昇してお
り、その段階から血管内皮の損傷や動脈
硬化に伴う合併症が進んでいることが明
らかになっている。食後高血糖は世界的
にも注目され糖尿病の予防対策として論
(3月19日)
議されている。
メタボリックシンドローム
3
今、なぜ患者の声が必要なのか!?
医 療 の 転 換 期 を 迎 え て ――「 在 宅 医 療 の シ ス テ ム 化 」
大きな医療制度改革やメタボ対策を手がけてきた元厚生労働事務次官の辻哲男氏の特別講演「今、
なぜ患者の声が必要なのかー医療制度改革の視点から」の連載シリーズ第3回目をお届けする。
「生活の場で生活できるのを
支援する医療」
老いて弱っていくお年寄りも、人間と
して基本的には、「生活の場で生活でき
るのを支援する医療」が望ましい。そこ
で、「かかりつけ医療」と「在宅医療」
をしてくれる最前線の診療所が必要だと
いうことなのです。
医療の機能分化と連携から、在宅を守
る診療所に至る医療システムというもの
が、もう一つの改革の要諦です。
全国的に地域で医療機関の間を結ぶ
「地域連携クリティカルパス」が広がっ
ており、急性期病院から回復期リハビリ
病院へという医療連携がイメージできま
す。「在宅医療」のきっかけは、急性期
の入院による心身・体力低下から始まる
ことが多いので、急性期治療から、もと
の生活に戻るシステムの構築が大切で
す。退院時、病院の主治医やケアチーム、
それに在宅の主治医らがそろってカンフ
ァレンスを行ない、きちんと在宅生活で
のポイントを話し合い、それに患者の家
族らも参加する。そして安心して帰すと
いうプロセスが非常に重要だと気がつい
てきたわけです。
これからは、在宅医療が大きなポイン
トになります。人みな老いて死ぬことを
考えれば、やはり、ホームグラウンドに
戻り生活に復帰できる医療システムが必
要になります。24時間対応のチームで
時間外は輪番制を取り、責任を持って受
け止めるシステムを作れば、在宅医療が
可能だと、広島県尾道市の実践例などで
も明らかになっています。
しかし、開業医は、みな一国一城の主
なので、なかなか難しい。システム化す
るには、①急変時は病院が受け止めて治
療し、安定したら生活の場に戻すという
バックアップシステム ②在宅医療を行
なう開業医のグループ化 ③介護保険領
域でのケアシステム――それらをうまい
具合に組み合わせられれば、在宅での
「看取り」も可能です。実際、尾道市の
ように医療現場の最前線ではほぼそうい
うことができつつあり、今後、そういう
実践例をどうシステム化するかです。
そのためには、地域で急性期病院、回
復期リハビリ病院、在宅医療を行なう診
療所など、対応可能な施設がどれぐらい
あるか、圏城ごとに情報開示してもらい、
圏城ごとに整備する必要があります。
4
メタボリックシンドローム
介護型の「療養病床」についても見直
しが必要です。医師の直接の関与があま
り必要のない方も療養病床を利用してい
る実態があります。医療財源・人材など
の観点だけでなく、患者へ適切なサービ
ス提供という意味でも施設機能の再編制
が必要です。老健施設などへの転換にと
どまらず、地域に根ざした医療機関にな
ってほしいのです。
今必要なのは、
「在宅療養支援拠点」の
構築です。例えば、「在宅療養支援診療
所」を作り、周辺の診療所の医師たちを
グループ化し、介護保険のケアのシステ
ムと連携させる。これを医療福祉の「ハ
イブリッドシステム」と呼ぶ人もいます
が、このような在宅の生活を支えるシス
テムの拠点に転換してほしいのです。
在宅療養支援拠点となる
「ショートステイ」
介護保険制度は、生活を支えるシステ
ムとして随分進化してきたが、それでは、
「生活を支える医療」はどのように行な
うのか。
ホスピスで名を知られる医師、山崎章
郎氏が運営するケアタウン小平を訪ねた
ことがあります。1階には、診療所のほ
かに訪問看護・介護ステーション・デイ
サービス・食堂があり、2階は賃貸住宅
だが、患者の家族も寝泊りし一緒に住む
ことができます。山崎氏が言うには、
「『ショートステイ』を持てばよかった」
と。患者の中には、ショートステイを活
用しながら、家で頑張りたいという人が
多いらしいのです。まさしく地域の療養
病床も機能を転換して、こういうバック
アップの在宅療養支援拠点を持てばいい
と思うわけです。在宅医療は1人ではで
きません。在宅のバックアップの病床を
持ちながら、開業医とグループを組んで
地域全体を支えるシステムを作ることが
できれば、療養病床も大きく地域に貢献
できるようになります。
「命のリレー」という現場の医師の言
葉がありますが、在宅医療で「看取り」
までやると、医師自身、とても謙虚で豊
かな気持ちになれるし、家族や地域の絆
も深まっていく。そういうコミュニティ
ーをつくろうではないかということなの
です。最終的には住宅政策とさきほどの
ハイブリッドシステムを組み合わせれば
心豊かな社会が実現できるのではない
か。入院はするけれどもまた戻ってこら
れるシステムが必要です。都市の高齢化
政策は、住宅政策との組み合わせであり、
厚労省と国交省もそれを意識して政策を
進めています。
「医療費適正化計画」
。言葉は難しいで
すが、言い換えれば、保健事業を推進し
て生活習慣病の発症率を少なくするとと
もに、正しく入院日数を減らすことで医
療費の伸びを減らそうという計画です。
例えば、患者の入院日数が増えれば医
療費がかさむことになります。しかし、
生活習慣病の罹患率が低い長野県では、
それだけでなく、全国平均在院日数
(36日)と比べ極端に低い27日の在院日
数で、医療費も一番低い水準にあるので
す。適正化計画は、健康でより安心でき
る社会を作る計画と言い換えてもかまわ
ないでしょうが、キーポイントは、都道
府県ごとにしっかりしたビジョンを持つ
ことです。
東京大学高齢社会総合
研究機構教授
(元厚生労働事務次官)
辻 哲夫氏
1947年生まれ。東大
法学部卒業後、厚生省
老人福祉課長、官房長、
保険局長、厚生労働審
議官などを経て、平成18年に事務次官。翌
年退官し、現在、東大高齢社会総合研究機
構教授、田園調布学園大学客員教授。
食習慣と子供たち
食習慣の影響は、子供が一番強く受け
るものらしい。それが大人になっても引
きずることになるので、問題なのだ。日
本肥満学会の「ストップ・ザ・こどもの
メタボ」市民公開講座にも参加した浜松
市立砂丘小学校の大石隆示校長から、興
味深い話を聞いた。
浜松の南、日本の3大砂丘といわれる
遠州灘中田島砂丘から道路をはさんで、
その小学校がある。昭和から平成に変わ
るころからブラジル人が大勢でやってき
た。浜松近辺の工場に勤務するためだ。
その子供たちが全校児童の約2割を占め
るほどに膨れ上がっている。
話というのは、ブラジル人の子供たち
の食生活だ。大石校長の観察によると、
肉は毎日食べるが、魚はあまり食べない。
コーラは水がわ
り。日本の食卓で
は、おかずをめい
めい分けて食べる
がブラジルではそ
ういう習慣がな
く、大きな鍋にた
くさん用意し、各
自好きなだけ取っ
浜松市立砂丘小学校
て食べている。
大石 隆示 校長
鍋は中央にあるので、自分で取って好
きなものを好きなだけ食べられる。
朝食にパンだけ食べてきたブラジル人
の子供たちは、2時間目になるともう
「お腹がすいた」という。給食は量が決
まっているから好きなだけ食べるという
わけにはいかない。
親たちは夜勤で働いているので家に帰
っても誰もいない。お腹がすくと夕食前
にポテトフライを揚げて食べている子供
もいる。夕食後の夜10時ごろ、夜食を
食べる子供もいるそうだ。子供たちの寝
る時間も午後11時頃。小さいころから
の習慣は、なかなか抜け切らないものら
しい。
児童のメタボの割合はどうか。先ごろ、
希望を募って浜松医科大学の協力で外国
人7人、日本人66人計73人(全校の4分
の1)のメタボ健診をしたところ、外国
人4人(57%)、日本人7人(11%)が
なぜ多いか考えることもできた。検査を
きっかけにブラジル人の中には、遅い食
事をやめ早く寝るよう習慣を変えた子も
いるのです」と大石校長。
浜松に限らず日本人の子供も、ブラジ
ル人の子のような生活習慣になりつつあ
る。「我校でも朝食を食べる子が全国平
均よりだいぶ少なかったが、学校と家庭
が協力して全国平均になった。しかし、
今に日本人の子のメタボも5割を超えて
しまうのでは」と危惧する。学校の体育
もボールを使って何かを表現するみたい
な授業形式が多く、「体を鍛える」こと
は、おろそかになっているらしい。そこ
メタボとわかった。日本人は全国平均と
同じぐらいだが、外国人は6割近く、や
はり肥満が目立つ。栄養士グループによ
る、栄養相談を兼ねた別の健診では、ブ
ラジルの親たちの8割が肥満ということ
だった。
「実態がわかれば対策も立てられるし、
で大石校長は、運動場の遊具や鉄棒など
を活用してサーキットトレーニング場を
設ける計画。給食もカロリーの多い揚げ
物などを少なくすればと考える。
大石校長は「和食の味や日本の生活習
慣のすばらしさを見直すことが重要。今
から手を打つ必要があるのです」─。
最近は、てんぷら食でも、低カロリーに
挑んでいる。
食塩使用量も2.2グラム以下が鉄則。
いかにして低カロリー、減塩を可能に
するのか。「同じ肉でも蒸すよりも焼い
たときの方が低エネルギー。調理の仕方
でエネルギー量は変わってくる。塩は水
で溶いてはけで塗るが、均質だと物足ら
なくなるから、仕上げにぱらぱらとふり
かけ、味のメリハリをつける」
(田中氏)
といった具合。
360キロカロリーとしたのは、草創期
のメンバーの小柄な女性(140センチ)
でも食べ過ぎにならない量と判断したか
らだが、知食の会では、独特のカロリー
計算式がある。「BMIで1食当たりのエ
ネルギーを計算するのは大変。身長から
100を引いて×9の計算式で、140セン
チなら360キロカロリーと直ちに暗算で
きる。180センチでは、80×9で720キ
ロカロリー。パンをもう一切れ、ワイン
をもう一杯飲んでちょうどいい。それが
360キロカロリーの基本的な考え方で
す」と田中氏。
「知食の会」の知食メニュー
「知食の会」(代表幹事、田中範正氏)
が「健康の究極は食を知ること」を旗印
に活動を始めて15年になる。産みの親
である田中氏自身、糖尿病の合併症に陥
り、主治医の「インスリン注射では糖尿
病は治らない」という一言で「回復する
には食事管理しかない」と悟ったのが原
点。しかし、「おいしいものはどうして
も食べたい」という欲求から低カロリー
でありながらおいしく満腹感のある「知
食メニュー」を自ら開発。ホテルのシェ
フらとも語らって、フランス料理のフル
コースでも、360キロカロリーで食べら
れる知食フォーラムなどを催している。
知食の会事務局
Eメール:[email protected]
メタボリックシンドローム
5
男性長寿日本一を誇る長野県佐久地方では、平成17年より人間ドック受診者を対象とした「佐久肥満克服プログラ
ム」を実施。その3年間にわたる成果を中間報告した。一方、岡山県では、チーム岡山大学による「脱メタボ」作戦
が学会でも取り上げられ、成功事例が披露された。
◆ 長野県・佐久肥満克服
プログラムで成果
男性長寿県ナンバー1の長野県のなか
でも筆頭に挙げられる佐久地方。そこで
佐久総合病院の人間ドックを受診してい
る男女40∼64歳の方々約240人を対象
に、「佐久肥満克服プログラム」が始ま
ったのが平成18年。それから3年、研究
主体の国立健康・栄養研究所の手によっ
て、ほぼ成果がまとまった。
研究名に銘打
つ通り、直近の
受診時BMI(体
格指数)が28.3
という人に参加
を呼びかけ、男
女別にA、B2群
に分け無作為割
付で、まずA群
から1年間介入したあと1年は何もせず、
片やB群は1年間無介入、2年目に介入す
るという段取りで比較対照試験を行なっ
た。開始時A、B群とも体重は80キロを
軽く超え、腹囲は男性でおよそ100セン
チ、女性で103センチだった。いずれも
人間ドックの受診記録から、血圧や血糖
などのデータベースはバッチリ。介入を
受けた期間と受けなかった期間の差、リ
バウンドを見るのも大きな目的だった。
介入の方法としては、最初に減量に有
効な栄養や運動の情報を盛り込んだ「対
象者手帳」を作り、減量の科学を学んで
もらったうえ、体重
計、活動量計(ライ
フコーダー)、カロ
リーのわかるクッキ
ングスケールを手渡
し、10カ条からな
ライフコーダー
る「運動の勧め」を
配った。中心部の佐久市でも冬になると
寒くて歩けない。そういうときには、部
屋の中でできる運動を提案し、無理なく
減量しようと呼びかけた。
その後、実行編に移る。それぞれ対面
して、個々人の行動変容ステージに対応
しながら、減量目標などを自分自身で決
めてもらう。「自ら問題を見つめて、で
きることから始める。自分でたてた目標
の達成度を日ごと○×で評価し、体重を
グラフ化して日誌に記入すること、また
毎日の食事を記録することによって、ど
6
メタボリックシンドローム
んな食事や身体活動
が体重変化と結びつ
くのかを知ってもら
うことが重要でし
た」と栄養教育プロ
グラムリーダーの饗
場直美さんは語る。
いってみれば、認
饗場(あえば)直美氏
知行動療法。最初の
半年は、毎日食事や運動、体重を記録す
るセルフモニタリングの癖をつける。半
年過ぎると、食事バランスのチェックや、
体重増減の理由を考えることをはじめ
る。3カ月ごとの面接の間に月々のコメ
ントでのサポートも行なった。「いわば
自己評価の段階。○×がいくつあるか、
減量目標に達せず太ってしまったのは何
が理由か、自分なりに明確にわかってく
る」と饗場さん。
その結果はどうだったか。A群は体重
が男性で84.1→79.1キログラムへとマ
イナス5キロ、女性74.4→70.4キログラ
ムでマイナス4キロとなった。最高18キ
ログラム減らした人もいた。全体で体重
に変化のなかった人は20%で80%が体
重減に結びつき、かなりの成功率といえ
る。2年目、何もしなかった時期には、
平均1.5キログラム増と、わずかなリバ
ウンドにとどまった。
一方、B群は1年間無介入の時期では、
ほとんど体重が変わらず、介入後1年目
は、男性が平均6.7キロ減、女性平均3.7
キロ減となった。無介入期での歩数はわ
ずかに増加していたが、体重は減少して
いなかった。
また、腹囲に関しては、A群男女とも
介入後に約4センチ減、B群は男性6.14
センチ、女性約4センチ減。歩数は、A
群で1400∼1800歩増だった。血圧は男
女とも収縮期がマイナス6mmHgとな
り、血糖についても、服薬していた薬の
数や量が減った人もいたということだっ
人間ドック受診者の栄養調査
た。饗場さんは、「何をしたらやせられ
たのだという、自分をきちんと客観的に
認知できることが肝心なのですね」と話
している。同研究所は、今後も人間ドッ
ク受診者を対象にCTスキャンで内臓脂
肪を調べるなど規模を拡大してフォロー
アップしていく方針。
◆ 脱メタボ! チーム岡大の取り組み
日本高血圧学会(大津)では、岡山大
学医学部附属病院勤務の臨床栄養副部長
の坂本八千代氏が「脱メタボ!チーム岡
大の取り組み」を紹介。生活習慣の見直
しで降圧薬を増やさず、血圧を下げる結
果となった例を発表した。
地元新聞社との共同企画ではあった
が、医学部での血液
検査やCT装置など
を使い、日ごろ糖尿
病治療で連携してい
た内科医師、看護師、
薬剤師、管理栄養士
らも加わり、4人の
男女を対象に食生
坂本八千代氏
活、ライフコーダー
などで減量の活動状況を把握した。食事
記録は、回数を重ねるごとに写真での記
録も追加された。
特に50歳代の男性は、高血圧、肥満、
痛風の既往症があり、服薬の治療も受け
ていたが、取り組み開始時は歩くと足が
痛むなど運動も期待できずにいた。奥さ
んの協力もあり、一緒に栄養相談にのり
ながら、摂取エネルギーや塩分も控えめ
の食事に切りかえた。仕事柄飲酒量も多
かったが、3カ月後には、週1の「休肝
日」も設け励んだ結果、半年後には、血
圧は良好なコントロール状態に戻り、増
やすことを迫られていた服薬もせず済ん
だ。さらに奥さんも減量でき、最近は夫
婦そろってウオーキングをして青空市に
野菜を買いにいくということだった。今
ではほぼ1日1万5000歩。80キロほどあ
った体重が、目標以上の64キロまで下
がっている。
坂本氏は「自分で改革するというチャ
レンジのきっかけをつかむことが大事で
すね。専門職種のサポートで安心して取
り組むことができたのでしょうが、新聞
で報道され、周囲の励ましもあって継続
できたのでは」と話している。
のどの乾燥予報スタート
キャドバリー・ジャパンと民間気象会社ウ
ェザーマップが日本で初めてののどの乾燥予
報「のどカラ予報」を10月19日から「キシリク
リスタル」
のホームページ
(http://teicalo.com)
上でスタートした。全国9都市の地域ごとに更新
「のどカラセーフ」から「のどカラ警報」ま
され、
で、警戒のレベルによって5段階にわけられる。
日本酪農乳業協会で、女子高生の牛乳離れ
を探るため、16∼19歳の女性1200人にイ
ンターネット調査したところ、65%は牛乳
好きなのに、毎日牛乳を飲まない人の6割以
上が「家にあればもっと飲む」と答え、結論
として家庭での牛乳の常備状況が大きな原因
としている。
喘息児の服薬に困難
特定健診、開業医の参加が重要
9月福島市で開かれた東北各県医師会特定健
診・保健指導担当理事連絡協議会では、県内
40市町村の大半が県総合健診センターで行な
っている青森県の担当理事から、
「 農漁村では
タイミングが合わず健診を受けられない人が
多い。開業医が参加するシステムができていな
こぼれ落ちた人を救い上げるのは難しい」
いと、
「一番の原因は医師不足」
との指摘があった。
過敏性腸症候群(IBS)の実態調査
万有製薬が喘息を持つ幼児の母親を対象に
とする秋田県の発言もあり、青森県では、がん
IBS患者は国内で約1200万人といわれてい
治療薬服用に関するアンケート調査をしたと
検診の受診率が、開業医が特定健診に参加して
る。アステラス製薬が20∼79歳の全国2万
人の一般男性を対象に下痢を主訴とするIBS
に関する調査をしたところ、約8割が適切な
治療を受けていないことがわかった。10月
から専用のウェブサイト「IBSねっと∼腸、
ころ、母親の2人に1人は1週間に1回以上、
「子供に薬を飲ませるのが困難だ」と感じて
いることがわかった。
「がん医療の今」HPスタート
いる青森市内では、特定健診が始まっても上が
ったが、健診者が巡回して集団検診を行なっ
ている地域では低下した実態を明らかにした。
緑内障の年齢は、平均51歳
快適生活!(http://ibsnet.jp)」を開設し、
「市民のためのがん治療の会」は、9月16
啓発活動に乗り出した。IBSは大腸、小腸に
日から日進月歩のがん医療等について患者、
結果、緑内障と診断された年齢は、平均51.6歳
異常が見つからないにもかかわらず、下痢、
家族だけでなく市民にも幅広く情報を解説す
で、診断時すでに3人に2人が視野欠損とわか
便秘、腹痛などの症状が続く。患者自身、病
るため、当会協力医らによる情報提供で、ホ
った。老眼や視力の低下と誤解する人が多く、
気という認識も薄く、生活の質が著しく低下
ームページ(http://www.com-info.org/)
自覚症状に乏しいことが発見を遅らせている。
する。島根大学の研究によって、消化器症状
掲載を開始した。
のスクリーニングで極めて容易に症状を顕在
化できる「出雲スケール」も開発されている。
くすりの服用は正しく
糖尿病神経障害の頻度は?
緑内障フレンド・ネットワークの実態調査の
ピルの使用は欧米の5分の1
シェリング・プラウの低容量ピル服用調査
糖尿病の3大合併症の中で比較的早く自覚
で、国内の20∼40歳代女性のうち、約8割が
症状が出てくるのが神経障害。約20万人の
「経口避妊薬(低容量ピル)を知っている」と
くすりの適正使用協議会は、25∼59歳の
糖尿病患者に対する実態調査によると、神経
回答しつつも、正しい使い方については理解
保護者600人を対象にインターネットによる
障害ありと判定された人は47.1%、その中
度は低く、実際の服用者・服用経験者は
「くすりの服用に関する実態調査」を行ない、
で自覚症状を認めていない人が19.0%。足
14.0%と、米国やフランスの約5分の1にとど
子供のくすりの服用を確認している保護者は
の症状として多かったのが、「足がつる、こ
まっていることがわかった。服用目的につい
約9割だったが、保護者自身、処方薬の服用
むら返りが起こる」(35.0%)「足の先がし
ては、米国・フランスが「避妊のため」が最
を何らかの理由で止めたことがある人は、
びれる」(20.1%)「足の先がジンジン、ピ
も多かったが、日本では、「月経トラブルの緩
72%に及び、多くが自己判断で服用を止め
リ ピ リ す る 」( 1 8 . 9 % )「 足 の 感 覚 に 異 常 」
和」を挙げる人が多かった。
ていることがわかった。また、家族の余った
(16.6%)「足の先に痛み」(9.5%)だった。
処方薬を服用した経験がある保護者も多く、
(京都医療センター『糖尿病センターだより』
くすり使用の基本が守られていないことが浮
き彫りになった。
同協議会では、設立20周年キャンペーンと
して今秋、一般市民向けのイベント「くすり
アゴラ(広場の意)」などを開催する。
(http://www.rad-ar.or.jp)
牛乳離れ、家庭での常備状況が要因
坂根直樹医師)
認知症の告知後が問題
オーストラリア・ニューサウスウェールズ
大学のブライアン・ドラッパー医師らは、初
期にアルツハイマー病と診断された後、自殺
が増えるという調査結果を今年6月、発表し
た。それによると、50∼70歳までに診断さ
第20回メディアセミナーで女子栄養大学
れた人は一般の人よりも8∼10倍自殺が多
栄養生理研究室の上西一弘教授から、「中高
い。アルツハイマー病の初期診断が可能とな
生を対象とした食と健康に関する実態調査」
り、医師が気軽に告知するが、認知症の人は
と「全国骨密度調査」の結果発表があった。
診断後、気弱になり、うつ状態になるので、
それによると、習慣的に牛乳摂取量が多い
自殺の危険性を考慮して告知後の支援が必要
生徒では骨量が増え、女子では摂取量が多い
としている。一方、デンマークの医師グルー
ほど体脂肪率が低値。さらに女子は小学高学
プは、自殺の危険性について、入院中の認知
年から中学生にかけ、男子は中学から高校に
症高齢者は認知症のない高齢者と比べ、男性
かけて骨量が増えるが、高校になると、学校
で約8.5倍、女性で10.8倍高く、診断後3カ
給食がなくなるため急激に摂取量が減る。そ
月以内に男性の26%、女性の14%が自殺し
の傾向は特に女子に見られ、女子高生の骨折
て い た と 発 表 し て い る 。(『 ぽ ∼ れ ぽ ∼ れ 』
経験率の高さが懸念されている。
351号ニュースと情報より)
メタボリックシンドローム
7
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