...

PDFをダウンロード - EMC Japan

by user

on
Category: Documents
83

views

Report

Comments

Transcript

PDFをダウンロード - EMC Japan
on
L I F E IN I N F O R M A T I O N
2011 Vol.2
特 集
日本復興に向けて
「 ITは日本社会を変える
イノベーション・テクノロジーへ 」
特 集
新・リスク管理考
GRCが日本を元気にする
新・災害対策考
この震災で浮き彫りになった、
想定外のI
T事象を探る
Case Study
学校法人 近畿大学
薩摩川内市
On2011-2 07/11
日本は未曾有の東日本大震災に見舞わ
れた。
しかし視点を変えれば、まったく新し
い 日 本 を 創 造 する時 が 到 来した の で あ
る。復興や再建ではなく、古い日本を創造
的に破 壊して新しい日本を創 造するチャ
ンスが来た。
その時必要なのは、やはり大きなビジョ
ンやゴール設定だ。この大震災をどう乗り
越え、これから日本人はどこへ行くのか、
どのように生きるのか。人間は前に進むと
き、向かうべき方 向につ いて ある程 度 の
共 通 認 識をもたなければ、なかなか一 歩
が踏み出せない。さらに、
「こっちに行けば
何かいいことがありそうだ」という期待が
ないと現状にしがみつく。ビジョンが必要
なのは、期待をコーディネートする力があ
るからだ。
では、いま掲げられるべき世 界が羨 む
日本のビジョンとは何か。それは今回の大
震災を経てはっきりしたと思う。
「 脱原発・
脱 炭 素 社 会 の 世 界 的リー ダ ーになる」、
それ以外に日本が進むべき道はないと思
う。具体的には、分散化した都市国家を築
き、これまでの 半 分 以 下 のエネルギー 消
費で豊かな暮らしを続け、そのノウハウを
創発的破壊と
イノベーション
寄稿 震災後の日本
CONTENTS
on L I F E
IN I N F O R M A T I O N
2011 Vol.2
02 特集 日本復興に向けて
14 TECHNOLOGY
進化したAvamar6.0 & Avamar Data Store Gen4の全容
日本の大切なお客様へ
EMCコーポレーション 会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)
ジョー・トゥッチ
(Joseph M. Tucci)
ITは日本社会を変える
イノベーション・テクノロジーへ
16 SMB(中堅・中小企業)向けEMC VNXeシリーズの革新性を聞く
EMCジャパン株式会社 代表取締役社長
山野 修
一橋大学イノベーション研究センター
センター長・教授
米倉 誠一郎
術 さらには 埋 め 込 み 型 のソフトウェアを
使った省エネ技術で日本企業の右に出る
ものはいない。
こうした 議 論 で 必 ず 出 てくる疑 問 は 、
「 日 本 に そ ん なリー ダ ー が い る の か 」、
である。ここでの 答えは、カリスマ的リー
ダ ー なども はや 要らな いということだ 。
複雑系の研究が明らかにしてきたように、
複 雑なアリ塚は女 王アリが指 令を下して
いるわけではない。
しかし、それぞれのア
リの 小さな営 みが全 体としてきわめて複
雑 かつ 機 能 的 なアリ塚を構 築して いる。
04 東日本大震災・EMC復興支援レポート
ストレージを連携(フェデレーション)
VPLEXでクラウドに向けた
新たなデータセンターの基盤をつくる
06 GRC Innovation 新・リスク管理考
GRCが日本企業を元気にする
20 エンタープライズにも広がる「ビッグデータ」の
新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 シニアパートナー 公認会計士
森本 親治氏
この震災で浮き彫りになった、
想定外のIT事象を探る
容量不足!予算不足!管理者不足!そして節電!
そんなSMBの悩みを、
この“全自動”ストレージなら解決できる
18 1,000km離れたデータセンター間の
その時、
EMCはどう動いたのか …
10 DR Innovation 新・災害対策考
企業のあらゆるデータを
一元的に重複除外バックアップする時代へ
保存・管理に最適なスケールアウトNAS製品
EMC Isilonシリーズに新製品が登場
22 なるほど Technology
話題のビッグデータとDWHの
深くて新しい関係について
24 Case Study 1
26 Case Study 2
学校法人 近畿大学 様
薩摩川内市様
28 TOPICS
EMC World 2011 レポート
29 EMCジャパン、重複除外ストレージ市場で
圧倒的なシェアNo.1を獲得
編集後記
こうした個々の小さな行為の総和が想像
を 超 え た パ ワ ー を 発 す ることを「 創 発
(emergence)」という。同じように、中東
チュニジアやエジプトで起こったジャスミ
ン 革 命 も 強 力 なリー ダ ー や 革 命 組 織 が
あったわけではない。自由や民主化という
ビジョンに向けた個々人の小さな行動が、
ツイッターやフェースブックを使って増幅
され、打 倒 不 可 能といわれた体 制を崩 壊
させたのである。
いまの日本に必 要なのはこの「 創 発 的
破壊」である。シュムペーターはイノベー
ションにとって「 創 造 的 破 壊 」が欠かせな
世 界と分かち合うことで富に換えている
いといった。確かに、古い秩序の破壊の上
という姿だ。そのために、東北地方を手始
にしか新しい 循 環は生まれない 。
しかし、
めに分 権 的 主 導 権 の 下 で 1 0 程 度 の ス
創 造 的 破 壊には強 烈なアントルプルヌア
マートシティを構 築し、少なくともこれま
やリーダーを想定してしまう。これから起
での 原 発 依 存 度で ある3 0 パーセントの
こる革 命はそうした強 烈 なリーダーによ
エネルギー消費を実現する。
る破壊ではなく、むしろ個々人の小さな発
冷 静 に 分 析 す れ ば 、ス マ ートシ ティ、
言やイノベ ーションが大きな波 動を生 み
スマートハウス、スマート家電などはすべ
出す創発的なものだ。そう考えると、日本
て日本 のお家 芸である。ITとセンサ ー 技
の21世紀はかなりエキサイティングだ。
01
特集 日本復興に向けて
J to J
ITto IT
EMCコーポレーション
会長兼社長兼最高経営責任者(CEO)
EMCジャパン株式会社
代表取締役社長
ジョー・トゥッチ
(Joseph M. Tucci)
山野 修
日本 の 大 切なお 客 様 へ
I Tは日本 社 会を変えるイノベーション・テクノロジーへ
東日本大震災、津波、
そして福島第一原子力発電所の大惨事。
この未 曾 有の災 害は、多くの日本 人が今までの人 生の中で初めて経 験したものでした。
世界中の人々同様、世界中のEMC社員も、
辛く悲しい気持ちでその様子を見つめていました。
震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表し、
被害にあわれた皆様には心からお見舞いを申し上げます。
“これから日本は変わる、
日本人は変わる、我々が変えていくんだ”。震災の直後、私の胸の中で
沸々と湧き上がったこの気持ちを、家族や社員たちに話したことを覚えています。私を含め、
日本人のマインドセットが変わり、再生や復旧以上、復興でもなく、何かを新たに創造していく
日本(人)
になる。
そう信じています。
そのためにITができることは何か。一人の経営者として、被災された皆様をご支援するITの
日本のお客様やパートナー企業の皆様が、
姿を考えたときに、ITはInformation Technologyであると同時に、
日本を変えるInnovation
今回の震災によるビジネスや社員の方々の被害に対応されている中、
Technologyにならなければならない。業務のIT化、情報のIT化だけではなく、新しい創造の
EMCは全力で皆様をご支援することを私から改めて約束させていただきます。
ためのITとなって日本の復興に寄与すべきと思います。
大変な状況にある皆様のことは常に私たちの心の中にあります。
「大きな災害の中にも希望がある」
と言います―不屈の日本人は、
これまで以上に強く、団結して、
この大震災からの復興という長い道のりを進むために
今回の震災では多くのお客様が被災にあわれました。その中でEMC製品をご利用いただ
いている大多数のお客様は、セキュア・リモート・サポート(*1)によって稼働状況がわかる仕組み
になっていました。
そのお陰で、多くのお客様が問題なく稼働していることがつかめました。
また、
サポートを必要とされたお客様においては、弊社製品SRDF (*2)によってストレージの全データを
立ち上がってくるに違いないという希望と確信が私たちにはあります。
遠隔地に退避させることができました。今回の震災やその後の想定外の困難にあわれ、いち
長い復興への道のりの中で、一人でも多くの日本の皆様が共に助け合い、
早く事業継続計画を見直しされた企業、
自社のデータセンターを大阪などに分散させた企業、
希望の種を見出していかれることを心から願っています。
あるいはクラウド化やクラウド型サービスへの移行を加速させている企業が増えています。
日本企業は、事業継続性に優れた企業、
リスクに強い企業に生まれ変わろうとしています。
今こそITが日本社会を変革していく起爆剤となり、
イノベーションのためのITへと変わるべきでは
ないでしょうか。微力ではありますが、EMCはその変革に向けて全力で支援してまいります。
(*1)EMCセキュア・リモート・サポート:お客様のEMCシステムを24時間365日自動的に監視し、
システムの異常状態をEMCのサポート・センターに通知
(*2)SRDF (Symmetrix Remote Data Facility) :災害復旧やビジネス継続性を実現する
リモート・レプリケーション・ソリューション
02
03
東日本大震災・EMC復興支援レポート
その時、
EMCはどう動いたのか…
想定をはるかに超えた東日本大震災。地震、津波、原発という三重の被害からまだまだ復旧・復興への道は険しく、
今ほど、一企業だけでなく、一人の人間としての使命が試されているときはありません。
復興に向けて日本中が大きな絆で結ばれ歩み始めていますが、
“その時、
自分たちはどういう行動をとったのか”、
改めて記憶に留めておくことが一企業として個人としてのさらなる発展と成長に欠かせないのではないでしょうか。
3月11日以降、
EMCはお客様と社会とどのように向き合ったのか、その事実をご紹介します。
1.緊急体制
4.情報共有体制
EMCでは、各国のEMCの取り組みやビジネスの状況を、社内テレビ
網
「EMC TV」
、
情報共有サイト、
全社会議などを通じて共有しています。
日本における本社や物流拠点、サポート部隊などの震災対応は、
この
社内テレビ網によって全世界のEMCに伝えられており、山野社長をは
3月11日、成田で製品被災報告。その2時間後に…
日本では、海外からの空輸が大部分を占めるEMC製品。震災が
起きた3月はちょうど日本企業の決算月にあたり、
EMCジャパンが
抱えていた受注件数は通常月の1.5倍に達していました。期末納品
の義務を履行するためには、震災後数日のうちに速やかにデリバリ
しなければなりませんでした。
1
「成田空港も閉鎖されて立ち入れないそうだ!このままでは期末
納品が間に合わないぞ!」地震直後、この知らせを受けた東京・新宿
本社では、緊迫した空気の中、通報から2時間後にはグローバル・
サプライチェーン・チームの「緊急時体制」が構築され、
24時間体
制で動き出したのです。
2
全世界のEMC拠点が社内TVで震災対応を共有
5.義援金支援
じめ、緊急時体制チームなどの報告がオンタイムで伝えられ、
よりよい
対応策や義援金の募集にも活かされています。また、日本以外の
EMC社員が今回の震災をどう受け止めたのかも番組で語られ、被災
地での日本人の辛抱強さと忍耐力、高い倫理観が賞賛されました。
EMCのマッチング・プログラムによる義援金の支援
EMCでは、被災された方の救済および被災地の復興のために、 また、
4月にE M C 本 社ボストンで予 定していた「 花 見とジャパ
1 0 0 , 0 0 0 米ドルの 義 援 金 の 支 援を行うことを決 定 いたしまし ン」というテーマの 催しを「日本 復 興 支 援 」に変えて、日本 の 現 地
た。さらに、E M Cは、全 世 界 の E M C 社 員から募った募 金に、同 額 状況の理解を深め義援金を募りました。
の寄付をプラスする“マッチング・プログラム”を年内続け、日本赤
十字社を通じて寄贈しています。
4
6
7
EMC
復興支援の
歩み
2.物流体制
複数の海外拠点から成田へ…だがガソリンが足りない
緊急時体制チームが11日のその日のうちに取り組まなければ
ならなかったのは、破損した製品の代替品の空輸手配、震災ですべ
て予定変更となった空輸のフライト・スケジュールの再編成と海外
複数拠点からの新たな製品手配、国内での輸送方法・輸送ルートの
確保などがありました。
また、被災したのは空港の保管庫だけではありません。千葉県
の 原木 中 山 の 倉 庫では、倉 庫 内で搬 送 中 のエレベ ータが停 電で
止まり、お客様への出荷間近の数百キロもある製品の搬出に苦労
するなど、今までに経験したことのない事態が続きました。
期末納品契約のお客様は180社を超えていたため、震災後すぐ
3.サポート支援体制
震災直後から1日の休みもなく保守サポート
震災直後、多くの企業が帰宅難民や出社待機の事態に直面しま
した。
EMCジャパンでは、保守サポート人員の自宅および社内から
のリモート・サポートを実 施し、お客 様 の 事 業 継 続を支えました。
今までリモート・サポート契約にあまり価値を感じなかったお客様
からは大変喜ばれたという声もお聞きしています。
また、
EMCジャパンでは被災されたリース契約のお客様に対し
04
に全製品の出荷のめどをたてなければなりませんでした。成田空港
で損壊した代替品は、アイルランドのEMC Cork工場から関西国
際空港へ空輸しましたが、いざ国内でトラック輸送しようとすると
ルートは確保できてもガソリンが足りないことが判明。急きょ他の
運送会社との連携を進め、無事期末納品を守ることができました。
サプライ・パーツを日本に重点的に送る手配を行ったり、他のお
客様への納品もアジア・パシフィックからの製品調達を組み合わせ
るなど工夫し、すべてのお客様にご迷惑をおかけすることなく納品
できました。これはグローバル調 達 の おかげで、日本 の お客 様も
改めてそのメリットを実感されたといいます。
ては、契約期間延長などのお申し込みにお応えするなど柔軟に検討
しています。
今後、震災の影響によって売上が減少し、毎月のお支払が資金繰
り上、大きな負担となっているお客様には、新規導入時のご契約で
はお支 払 据 置き期 間(お支 払 猶 予 )を設 定させていただくことも
検討いたします。
6.物資支援
あえて海外から紙オムツなどを日本の被災地へ
昨年よりNPO団体「セカンドハーベスト・ジャパン」と提携して
CSR活動を取り組んでいたこともあって、被災地で必要とされて
いる物資のヒアリングを行い、
EMCのアジア拠点から紙オムツや
炊き出し用品などの支援物資を送ってもらいました。日本国内の物
資が足りなくなるのを防ぎ、被災者の方々が心置きなく使用してい
7.長期支援
ただくのにお役に立てたと考えています。
被災地への支援物資は、
「 セカンドハーベスト・ジャパン」の皆さ
んが仕分けや配送準備を行い、
「 がんばろう!東北」など各自がメッ
セージを書き込んだ輸送トラックによって、熱い言葉と物資が東北
各県に届けられました。
ボストン・マラソンのスタート地区で
“桜の樹”
を植える
“日本の震災を忘れないために”。
EMC本社のあるボストンのホプキ
ントンでは、
4月20日に1本の桜の樹が植えられました。毎年、桜が
咲くのを見ながら、日本が復興するのを願い、被災された方々への
鎮魂の意味を込めたモニュメントです。
ホプキントンは、ボストン・マラソンの出発地点のある場所であり、
ボストン・レッドソックスでは日本人選手が活躍、ボストン美術館には
浮世絵の所蔵が多数あることでも有名で、親日家が大勢いらっしゃ
います。
来年の桜が咲く頃には、日本が大きく復興した姿を世界に見せら
れるよう、
EMCおよびEMCジャパンでは長期にわたって応援してま
いります。
05
GRC Innovation 新・リスク管理考
■統合リスク管理GRCツールのモジュール体系(「RSA Archer」例)
経営活動はリスクの
克服活動そのもの
リスク管理(総括)
財務、
オペレーショナル、IT等のリスク
に関する諸活動を一体管理
・リスク評価、分析
・リスク軽減措置の策定、
フォローアップ
・モニタリング、
レビュー等
GRCが
日本企業を
元気にする
例外処理申請
発見事項
全社で取り組んでいるリスク管理の問題点とは?
「いやぁ、我が社では、
リスク管理に関しては、すでに会社法の
改正等を契機に数年前から全社、全部門を上げて、取り組んでい
ます」
−そうおっしゃる経営者の方が沢山いらっしゃいます。では、
そうした全社的なリスク管理の弱点はどこにあるのでしょうか。
企業の組織は、外部取引先管理は購買部門、生産は生産部門、
物流は物流部門というように分かれており、災害等の同一のリスク
に対して全社で取り組んではいても、それぞれがバラバラな対応
策をとっているケースが見られます。危機管理委員会を設け、主管
となる部署に各部門のメンバーが集まってタスクフォースを作り、
必要な情報を持ち寄りながら対策を検討する− こういうカタチで
危機管理を推進してきたのではないでしょうか。
このような場合、
関係部署やメンバーとの連携および情報の周知徹底は、関連する
ファイルのメール転送やグループウェア上で行われることがほとん
どです。
しかしながら、私どもが危機管理計画、事業継続計画(以下、
「BCP」で総称)
を拝見すると、次のような課題がよく見られます。
すなわち、計画そのものが現場レベルの社員や取引先に周知され
ていない、あるいは、組織や設備、業務プロセス、
システム、取引先
に重要な変更、移動、統合があった場合でも、
リスク関連情報が計
画担当者や関係部署と情報共有されず、計画に適切に反映できて
いないために、いざという時に使いものにならない、
といった課題
です。
なぜリスク管理は形骸化していくのか?
いったん完成させたBCPが形骸化してしまうことは多々ありま
すが、その主な原因は、組織や資産、取引先などの変更に対応しき
れずに、情報が陳腐化してしまうことにあるといえます。最近では、
06
リスク統計値
リスク登録簿
外部脅威管理
・情報資産に対する外部からの
さまざまな脅威に関する管理
・各資産の脆弱性の統合把握
・外部脅威の可能性ある事象に
ついてのユーザーへの警告
脅 威
新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部
シニアパートナー 公認会計士
森本 親治氏
経営のスピードが加速しており、コスト削減のために人員を減ら
す、組織を統合する、工場や倉庫を集約化する、業務をアウトソー
シングするといったことが頻繁に行われます。
また、
グローバル化
やネットワーク技術の進展により、
リスク管理の対象がきわめて多
岐にわたり、国内外に分散化している現実があります。緊急連絡網
に取引先の退職者の名前がそのまま残されていたため緊急時に
連絡がつかなかった− そんな事態に直面したことのある方もい
らっしゃると思います。
また、一番多く見られる課題は、取引先の誤った集約です。取引
先A社、B社、C社の3社のうち、A社とB社の2社に集約したとし
ます。実際にB社が被災する事態が発生した場合に、C社がB社の
代替企業として機能していたのに、
リスク管理が連携せずBCPが
成り立たっていなかったことに気づくわけです。
私ども監査法人が、2010年から本格的に提唱しているGRC
(Governance・Risk・Compliance)
という統合的リスク管理の
概念の趣旨は、端的にいうと、
このようにバラバラになりがちなリ
スク管理を連携させよう、BCPの実効性を低下させる要因となり
がちな資産や組織の変更、人材の異動などの情報を一元的に管理
してタイムリーに更新できるようにしようというものです。
災害への対応方法を全員が本当に理解している?
現在、御社では、各担当者が自己に責任のあるリスク対応業務を
常に把握し、全体の総合的なリスク管理の中でのその位置づけを
常に確認できる仕組みがありますでしょうか。今回の震災を契機
に、あらゆる企業が今まで以上に綿密かつ緻密なリスク管理に
基づいて事業継続計画の見直しをスタートさせていると思いま
す。
ところが、詳細になればなるほどその管理は複雑になり、
マニュ
アルだけでも200ページ、
300ページになることが想定されます。
東海地震ではどう対応するのか、南海地震ではどうするのか、
それらが併発したらいったいどうするのか、
といった具合にさまざ
企業目的
会社情報
業務プロセス
統制目標
当局法規制
部 門
各種資産
ビジネスユニット
購買情報
統制手続
コンプライアンス管理
・コンプライアンスに関わる統制
手続、
テスト計画の管理
・関連法規制との関連付け
・リスクベースでの管理領域特定
・CSA策定と実行管理等
警 告
組織(資産)管理
・組織構造および階層、承認権限に
関する情報を一括的に集約
・組織と資産の関連付けおよび
各種資産(システム、不動産等)
に係る
毀損リスクの管理
ポリシー
テスト計画
脆弱性
これまで、自社の危機管理について、
まったく考えてこなかった会社はないと
思います。
しかし、今回の東日本大震災では、危機管理計画や復旧計画自体が、
広域にわたる津波被害や原発事故などの複合的な要素によって、当初想定した
通りにはうまく機能しなかったケースが多く見られました。その主な原因は、
ひとつひとつのリスクへの対策は全社で検討していたが、複合的なリスクに対
して危機管理を統合的に行う仕組みを持っていなかったからと考えられます。
では、今までの全社的な危機管理と、新たな“統合的な危機管理”との違いは
何かを分かりやすく紐解いていきましょう。
ポリシー(制度変更)管理
・各種ポリシー、規程類等の集中管理
(ライブラリー機能)
・社内規定と関連法規制との紐付け
・各ポリシーと統制手続きとの紐付け
・例外手続きの管理等
ベンダー管理
・ベンダー情報、調達履歴管理
・ベンダーの信用状態、取引振り
データ等を基にしたベンダーリスク
管理、ベンダー選択支援
・社内購買規定との整合性確認等
事業継続管理
・事業継続計画の管理
(作成、変更管理等)
・災害復旧計画の管理(同上)等
事業継続計画
事業継続
計画テスト
事業影響度
分析
復旧戦略
事故(障害)管理
・事故に繋がりうる潜在的な
ビジネスプロセスの管理
・業務インパクト、法規制を考慮した
対策検討と行員への実行指示、
モニタリング等
統制手続
ベンダー情報
契約管理
警告情報
リスク評価
コンタクト情報
設備備品
事 故
まなリスクを想定すればするほど全容も部分も見えにくくなり、
運用が難しくなっていきます。組織変更等の情報を漏れなく更新
し、社内外の関係者に適切なタイミングですべてを周知徹底する
のは不可能だとさえ思えてくるかもしれません。
この点、GRCツールを使った統合的リスク管理が優れているの
は、災害時の業務継続計画や復旧・復興計画において、関係する
人々がいつどのように対応すればいいのか、索引形式でひと目で
わかるように
「見える化」
されていることです。膨大な事業継続計画
の中で、
どの部分が自分の担当箇所であるか、
または各担当者が
誰から何を受けとり、
どんな対応をし、次の部署や担当者にどのよ
うな情報を渡すのかを具体的に登録し、素早く参照できるシステム
となっています。
GRCへの第一歩を
踏み出すために…
会社によって遭遇するインシデントは異なり、想定するリスクの
種類や体系もさまざまです。そこで、
リスク管理を統合的に行う
GRCツールでは、
ポリシー管理やベンダー管理、組織・資産管理、
事故管理、あるいは事業継続管理など多種多様なリスクに対応し
た管理項目(モジュール)
をあらかじめ体系化して標準で装備する
とともに、臨機応変にカスタマイズすることが可能となっています。
さらに、各モジュールに入力された情報は他のモジュールにも自動
的に反映されて同期が図られるため、
これまで組織内に偏在化ま
たは属人化していた情報を標準的かつ一元的に管理することが
可能になっています。
たとえば、
ポリシー管理のモジュールは、法令などの外部の規制
の変化に対応して迅速に社内ルールの見直し等を行っていくため
のモジュールです。グローバルに事業展開している企業では、
各国の法的規制が変更された場合にはその影響を迅速に把握し
対応しなければなりません。
日本で製造していた製品が、新たに東
南アジアに生産拠点を移して販売先の国も広げていくことになっ
たとします。そうなると今度は移転先の国の環境基準や、
リサイク
ル基準、
安全基準など、新市場となる国の基準を守る必要が生じて
きます。最近では製品の全部品を1つの国で生産することもなく
防御対策
なったため、ある部品はインドやブラジルの規制に従い、組み立て
は東ヨーロッパの規制に従うなど、複雑にならざるを得ません。
そこで各国の法令等の規制は1つのポリシー管理のモジュールに
集約して、ある製品がどの国のどういう規制に影響を受けるのかを
一元的に集中管理する必要性が生まれてきます。
このGRCモジュールの中で、特にBCPに関連するのは組織・
資産管理、およびベンダー管理です。
これらのモジュールにおい
ては、たとえば、持ち株会社ではその下に子会社が階層化され、
あるいは事業会社では事業本部とその下の各部門が階層化され
ており、業務プロセスとも結びつけられています。Aという生産子
会社はA1とA2と呼ぶ機械設備を持ち、購買→検査→生産→
物流という業務プロセスがあるといった具合です。
また、こういった組織内には組織に付属して管理される資産
(機械設備など)があります。A社がある業務に関係するBCP
計画を策定しようとする場合は、資産をどのように確保すればよ
いかなどについてこの組織・資産管理モジュールを中核に据えて
考えればいいわけです。A社のBCP担当者は、自分でこの組織・
資産管理モジュー ルにアクセスすれば、A1という機械設備が
被災した場合の代替設備がB社工場のB1であることがわかり、
補修部品もB1で共通化されているといったことが即座にわかる
仕組みです。従来のBCPの管理ツールでは、こういうグループ
企業を含めた統合管理の視点が欠落していました。
このようにBCPだけをみても、
これまでの管理手法ではBCP
の実効性と経営効率が両立しにくい面がありました。連携のない
BCP、情報共有の低いBCPのままでは、逆にBCPが経営を圧迫
して競争力をそぐことになりかねません。今こそ、一元化された
統合リスク管理に基づく企業戦略の重要性が問われているとい
えるでしょう。
GRCはERP導入企業ほど取り組みやすい
統合的なリスク管理の概念である
“GRC”
とは、
「Governance・
Risk・Compliance」の略であり、法令やグループ方針・ルール
を徹底させる態勢としてのGroup Governanceと、各組織・業
務・プロセスのリスクを統制するRisk、それにこれらの運用遵守
を確認するComplianceの三者を首尾一貫して重複なく、効率
的にリスク管理として統合化しようとする概念です。GRCは、
ここ
数年で欧米を中心に急激に浸透しつつあり、GRCに関連したソ
リューションの導入企業も増加していますが、日本での採用は十
07
GRC Innovation 新・リスク管理考
GRCツールを活用したBCPへの取り組み方
例
まず、最初のStep1では、BCPの対象となる施設や資産、外部委託
先の会社としての安定性(会社概要・財務・技術力・開発力等)やその
会社のリスク管理能力(BCP管理体制/情報セキュリティ管理体制
等)の評価をします。委託先にはものづくりの能力を期待するだけで
なく、個人情報や経営機密情報も渡すことになりますので、そのような
点についても評価できるようにGRCには多様な評価項目(テンプレー
ト)
が標準で組み込まれています。
次にStep2では、組織・資産管理およびベンダー管理における項目
とBCPを有機的に関連付けて統合的に管理を行うことでその実効性
を高めます。従来の人や組織に依存したシステムでは、年数回のリスク
管理会議で情報を更新するのが精一杯だったのではないでしょうか。
Step3では、
たとえば委託生産先の機械設備が刷新されたり、担当
者が異動になったりしたとします。その際には即座にGRCモジュール
間で情報の相互参照が行われ、社内外でのリスク管理情報の共有と見
える化を可能にします。
また最後にStep4では、関連付けを行っている各モジュール情報が
変更された場合、
その変更がそのままBCPに即座に反映され、
BCPの
維持・運用・更新プロセスの刷新が自動的に行われることとなります。
分には進んでいません。
しかし、
ここで1990年代後半の日本に
おけるERP導入の歴史を思い起こしてみてください。ある有力
なERPの導入実績が1,000社に達するのには10年という歳月
がかかりましたが、統合リスク管理=GRCの導入はもう少し普及
のスピードが速くなると予想しています。
幸いにもERPの導入経験のある企業ほどGRCの価値をよく
理解いただきやすいのは、危機管理の改革のプロセスがERPに
よる全社的な業務の標準化・統合化と共通する点があるからで
す。たとえば、下図のように管理すべきリスク項目に応じて、標準
的なモジュールが体系的に組み合わされており、各社の現状や
ニーズに応じて選択的に導入できるところは、
ERPにおける一般
会計、購買、生産、受注・出荷、債権債務管理、固定資産などの標
準モジュール群の組み合わせと非常に近似しています。
ERPに
おいても、会計データに関係するリスクと情報処理に伴う一部の
システム・リスクの管理が可能ですが、経営に関わるさまざまなリ
スクそのものを扱う体系にはなっておらず、
GRCツールが独自に
必要になってきたといえるでしょう。
■GRC事業継続管理モジュールの標準プロセス
STEP1
STEP2
組織(資産)管理モジュール
組織情報
・会社概要
・財務要約
・経営陣情報
部門情報
・財務状況
・コンプライ
アンス状況
ビジネス
ユニット
・リスク一覧
(HeatMap)
コンタクト情報
・住 所
・連絡先
組織階層の設定
製品・サービス
・プロダクト
業務プロセス
概要
・プロセス概要 搭載アプリ
・顧客影響度 ・プロセス区分
ケーション
保管書類
・リスク情報 ・セキュリティ
・作成目的
・ライセンス
・機密度
・保存期間
資産情報
・利用状況
・購買記録
・評価情報
資産とベンダー情報
の関連付け
コンタクト情報
・住 所
・連絡先
ベンダー情報
・要約情報
・詳細情報
リスク評価
(Tier1/
重要ベンダー)
・評価結果
クエスチョン
ライブラリー
・質問内容
・回答形式
リスク評価
(Tier2/
一般ベンダー)
・評価結果
指摘事項
・指摘内容
・ワークフロー
財務評価
・要約F/S
・主要財務指標
・財務評価結果
設備・備品
・配置場所
・管理者
・関連プロセス
クエスチョン
ライブラリー
・質問内容
・回答形式
復旧戦略
・段階
(経過時間)
別復旧活動
事業継続計画(BC)
・計画基本情報
・レビュー/承認
・緊急対応リスト
災害復旧計画(DR)
・計画対象資産
・計画対象環境
・評価
復旧手続き
・代替施設
(資産)要求
・施設保護要求
計画実施
・実施記録
・関連復旧活動
BC/DRテスト
・テスト承認
・テスト結果
・改善事項
クライシスイベント
・関連資産
・法的/保険措置
・コスト分析
非常事態通知
・通知者情報
・初動情報経路
・継続情報経路
ベンダー情報
例外要請
・例外事項内容
・補完統制
業務プロセスの
影響度評価
組織情報
・会社概要
・財務要約
・経営陣情報
評価項目
改善計画
・改善内容
・関連リスク
ベンダー評価
(含むBCP管理態勢)
事故管理モジュール
08
災害復旧計画(DR)
ベンダー情報の追加
コンタクト情報
・住 所
・連絡先
ビジネス
ユニット
・リスク一覧
(HeatMap)
システム部門における入力
復旧計画における
代替資産の設定
資産情報
・利用状況
・購買記録
・評価情報
設備情報
・ロケーション
・重要度
・事故発生数
❶ BCPが組織階層や業務プロセ
ス・資産と紐付けて管理されて
おり、現場部門により常時、関連
する部分が閲覧可能である。
❷ 通常業務において現場が入力・
変更を行っているレベルの情報が
BCPと共有されており、計画に有
効活用できる。
❸ 他の業務管理項目(組織管理や
ベンダー管理)
においてツールに
入 力した 情 報 が シ ー ムレスに
BCPに反映される。
経営活動そのものがリスク克服との戦い
リスク管理の中でも、
まず事業継続管理から見直していきたい
という日本企業が急増しています。
しかしながら
「詳細かつ万全な
事業継続管理を行うにはどういう管理プロセスが必要になるの
か、それを考えただけで頭が痛くなる」
−そうおっしゃる経営者、
担当者の方が多いのも事実です。
この点、GRCツールでは、下図のように地震等の事業への影
響度を分析していくプロセス、震災に備えて事業継続計画を策定
するプロセス、それらが実効性のある管理状態で維持されていく
ためのBC/DRテストのプロセスなど、BCPに必要な各管理プロ
セスが事業継続管理のモジュールとして用意されています。
こうしたBCPの管理プロセスを作り込んでいくと、自動的に関
連するベンダー管理やコンプライアンス管理、組織(資産)管理
などのモジュールと連動して、情報がアップデートされます。
これ
によって、
1次、
2次、
3次、
4次と外部のサプライチェーンが多い
自動車産業や電機・機械産業などでは、
どこまでBCPを深く連携
させていくべきかを
「見える化」することができるのです。
経営トップが強い意思を持ち、
グループ全体でリスク管理に取
り組む体制を設けていただく必要がありますが、実際には複数の
部門にまたがる業務が対象となるため、
どの組織がリーダーシッ
プをとるのかが障壁(インターナル・ポリティクス)になることが
多くあります。
この点、GRCツールを使うことで、特定の部門に負
担が偏ることなく、自分たちの部署ではどの資産が足りないの
か、
どのようなリスクを見逃していたか、準備する資源は重複して
いないかなどが自然と見えてきます。その結果、全社的な危機管
理の見直しと再構築に大きく一歩踏み出しやすくなります。
たとえば、来期売上15%アップという経営目標を掲げたとしま
す。それを阻害する要因が人員不足、営業マンのスキル不足だと
わかったら、それらも含めてリスク要因としてGRCで改善策を検
討し、管理していきます。つまり、経営活動はそれ自体がリスクの
克服活動の積み重ねであることがわかります。
事業継続管理は、経営上のリスクが短期間に大きな要因として
発生した場合への備えだとお考えください。経営革新=GRC、
米国ではこの考え方に基づいてすでに多くの企業が成功を収め
ています。
■有力ネット・ビジネス企業が採用した
GRCモジュールとその効果例
期待効果
1
効果●
事業継続管理モジュール
クエスチョン・ライブラリー
・質問内容
・回答形式
BC/DRテスト
・テスト承認
・テスト結果
・改善事項
BCPに活用
GRC導入は社内の障壁を自然と崩す
2
効果●
中長期のBCPを
検討して書き込む
3
効果●
計画実施
・実施記録
・関連復旧活動
資産の配置換え
事業継続計画(BCP)
組織(資産)管理モジュール
部門情報
・財務状況
・コンプライ
アンス状況
製品・サービス
・プロダクト
業務プロセス
概要
・プロセス概要 搭載アプリ
・顧客影響度 ・プロセス区分
ケーション
保管書類
・リスク情報 ・セキュリティ
・作成目的
・ライセンス
・機密度
・保存期間
ベンダー管理モジュール
事業継続計画(BC)
・計画基本情報
・レビュー/承認
・緊急対応リスト
資産管理の現場における入力
もう、BCPの管理プロセスの洗い出しは要らない
コンプライアンス管理モジュール
復旧戦略
・段階(経過時間)
別復旧活動
事業影響度分析
BCPの作成
最新情報に基づいたBCP
設備情報
・ロケーション
・重要度
・事故発生数
地震の影響度を
評価・記入する
事業影響度分析
・影響度評価(財務/非財務)
・関連プロセス
事業継続管理モジュール
事業影響度分析
・影響度評価
(財務/非財務)
・関連プロセス
STEP4
資産管理
ベンダー管理モジュール
契約状況
・提出要件
・締結日
・契約書
エンゲージメント
・担当者
・合意内容
・支払条件
ビジネスユニット
STEP3
災害復旧計画(DR)
・計画対象資産
・計画対象環境
・評価
被災情報
・関連資産
・法的/保険措置
・コスト分析
手順に従って
避難訓練を実施
復旧手続き
・代替施設(資産)要求
・施設保護要求
ポリシー
組織(資産)管理モジュール
コンプラ
イアンス
ベンダー
組織
(資産)
外部脅威
事業継続
事故
審査
導入前の課題
解決策
組織・資産の異動が頻繁に発生するほか、1,000を
超えるベンダーが部署ごとにバラバラに管理されて
いたため、BCPが適切に更新されず、信頼性が低下
していた
組織、業務プロセス、資産、ベンダーなどの各情報
を、BCMモジュールに常時連携し、
リアルタイムで
BCP情報の更新を行う
BCPの内容が、常に最新の組織・業務プロセス・
資産・ベンダー の 情 報を反 映 するようになり、
現場でのBCP浸透度が向上、災対時の初動対応
が迅速化した
BCPの変更はMS-WORDと電子メールで管理さ
れ、時間がかかるとともに変更漏れが発生していた
手作業での変更が必要なBCP項目の場合は、
Archerが関係者に変更を喚起する通知を自動発信
する
手作業が必要なBCP項目については、作業進捗
状況が一覧表示されるため、更新漏れが解消した
BCPの内容が業務影響度などのリスク評価結果や
計画の妥当性テスト結果を反映したものになってお
らず、BCPの実効性に問題があった
業務影響度評価等のリスク評価情報、BCPのテスト
結果や発見事故情報をツール上で一元管理し、必要
なBCP更新と自動的に紐付ける
業務影響度評価など最新のリスク状況を反映し
たBCPが維持されるようになり、緊急時に現場で
適用可能な内容となった
「RSA Archer eGRC Suite」のご案内
eGRC = Enterprise Governance, Risk, and Compliance
非常事態通知
・通知者情報
・初動情報経路
・継続情報経路
リスク
実現効果
EMCジャパン株式会社
EMCでは、企業におけるガバナンス、
リスクおよびコンプライアンスを管理(eGRC)
するためのテクノロジーおよびサービスを提供して
います。RSA Archer eGRC Suite はポリシー管理、
リスク管理、
コンプライアンス管理、
エンタープライズ管理、外部脅威管理、ベン
ダー管理、内部監査、
インシデント管理、事業継続管理などの機能を提供し、ITのみならず、財務、法務、経営など企業活動全般における
eGRC活動の効率化を支援します。RSA Archer eGRCソリューションはFortune100の2社に1社が採用しており、RSA Archer
eGRCソリューションを活用する企業間で5,000人以上のユーザーがArcher eGRC Communityを通じて活発に意見を交換しなが
ら、eGRC活動の改善に努めており、実績のあるeGRCのプラットフォームとして認識されています。
09
DR Innovation
新・災害対策考
この震災で浮き彫りになった、
想定外のIT事象を探る
グローバル・サービス統括本部 テクニカル・コンサルティング本部 エンタープライズ・ソリューション部
藤森 綾子
災害時の“まさか”を見つめる
今回の震災によって、日本中の企業はどういった対応をしたの
はほとんど想定されておらず、その対応を通して思いもかけない
か、どのような問題が露呈したのか。
EMCでは、実際に弊社のお
落とし穴に気づいたといえます。また、データセンターでは非常
客様や社内でのヒアリングを重ね、想定外の問題や意外な盲点を
用発電機の燃料不足の懸念が生じるなど、資材不足が表面化しま
実際にシステムを運用する場合、
3時間の計画停電は3時間では
となる機器の洗い出しにも四苦八苦されたそうです。
洗い出し、どうすれば今までにない視点で災害対策を提案できる
した。計画停電による通勤網の遅延や混乱は、
ITインフラを管理
済みませんでした。あるお客様では止める準備に2時間余りが必要
さらに、交通網の混乱で自宅待機となったI
T部門の要員が多数存
のか、広域の激甚災害を想定した災害対策(DR)ソリューション
する人材配置にも新たな課題を突きつけたといえます。
で、
3時間停電、その後の立ち上げにも2時間以上を要し、合計7時
在し、
システムの運用が思うようにできない。あるいは、自家発電は
の提案に取り組んでいます。
これまでも災害に対しては、企業の内部環境と社会的な外部環
間以上かかることになり、実質的には計画停電は1日停電の作業に
日頃から準備していたが、実は発電容量が足りなかった、燃料も足り
従来の災害対策では、直下型地震であっても狭い範囲での地
境の両面で考慮すべきポイントは網羅されていたはずです。
しか
なったことが判明しました。
また、
システムの可視化が行われていな
なかった。そういう思いがけない事態が発生したというお客様の声
震を想定していました。
しかし、東日本大震災ではきわめて広域に
し、輪番停電については考慮していなかったり、同一の電力会社
かったり、可視化が不十分なお客様は、計画停電の準備段階で対象
もお聞きしました。
わたって被災し、
しかも地震だけではなく、津波、液状化、そして原
の管轄内で災害対策を行っているなど、
“まさか”
と疑いたくなる
発災害による環境汚染と避難、計画停電など想定以上の事象が
ような盲点が浮き彫りになったわけです(露呈したDRの“まさか
次々と持ち上がりました。
問題”の図参照)。
液状化地域のデータセンターの盲点
特に企業のITインフラやデータセンターにおいては、計画停電
露呈したDRの“まさか問題”
まさかDR訓練が通用しないとは
まさか運用要員が不在になるとは
運用
機器停止
設備
内部環境
バッチ停止
す。今回の地震では、ディズニーランドで有名な浦安市、千葉県船
する非 常 用 発 電 機 の 燃 料 供 給ラインは 遮 断されて い な い か 、
橋市、埼玉県、神奈川県などにおいて、道路や上下水道などのラ
給電ラインの断線・水没はないか、そもそも非常用発電機設備の
イフラインの被害が今まで以上に顕著でした。
しかし、そうした地
稼働切り替えに担当者は配置できるのかなど、改めて再認識すべ
域のデータセンターでは液状化によるシステム自体の被害は報
き点が表面化しました。
Sクラス業務
負荷急増
Aクラス業務
通信
物流
外部環境
「うちは、遠隔地へのデータ・レプリケーション(データ複製)を
実施を検討した際に、復旧時のDRサイトから本番サイトへの戻し
やっているから災害対策は大丈夫」。そう確信していた企業が、
ができるかどうか分からなかったなど、マニュアル通りには進まな
今回の震災で実際にDRサイトに切り替えて運用を継続しようと
い事態が発覚し、
“ データの避難訓練”の重要性を再認識する事
したらなぜか切り替えられなかった…。あるいは、実際、切り替え
態も見受けられました。
このように想定外の課題がいくつも洗い出された結果、今後
中 長 期 的にはシステムの 可 視 化 の 徹 底 、DR要 員 の 対 応 教育、
多くの企業では短期的、中長期的な2つの視点からの災害対策の
電力会社をまたいだDRサイト構築、災害時訓練の見直し、非常用
見直しが必要になると思われます。
発電設備の容量・燃料の確実な確保などがあるといえます。
短期的には夏場の消費電力15%削減という目標があります。
では、具合的に短期/中長期の見直し策を探ってみましょう。
まさか切り戻せないとは
WAN
追加コスト
Aクラス業務
まさか切り替え
できないとは
Bクラス業務
機器半壊
通信不通
いざDRサイトに切り替えようとしたら…
災害対策サイト
Sクラス業務
経路封鎖
の被害は十分に想定されているとはいえません。計画停電に対応
まさか内陸のDRサイトが液状化とは
プライマリ・サイト
省電力化
液状化被害は、実は近年の地震発生のたびに報告されていま
告されていません。ところが、データセンターのライフラインへ
代替運用
Bクラス業務
まさか電話も通じないとは
まさか保守要員が自宅待機になるとは
資源不達
エネルギ ー
まさかガソリン不足でデータを取りにいけないとは
輪番停電
まさか電力会社の冗長化が必要とは
火力発電所
10
計画停電3時間、実は1日停電
水力発電所
原子力発電所
地熱発電所
11
DR Innovation
新・災害対策考
電力会社の分散を前提にした、
災害対策の見直しが始まる
“場所に依存するとリスクは減らない”
この定説をITインフラの電源対策では忘れていた
3月11日以前、お客様は広域災害をあまり意識されていなかった
のが実情でした。たとえば、関東圏にDRサイトを構築していた企業
が、逆にもっと近隣にDRセンターを移すといったことを実際に考え
ていたからです。
ところが現在は、金融、製造、流通を問わず、
DRサイトやデータセ
ンターの配置の際には電力会社を分けることから見直されるように
変化しています。昔から言われていましたが、特定の場所に依存して
いては災害リスクは減らないという定説を改めて肝に銘じる取り組
みが始まっています。
関東と関西に分けるだけでなく、九州や北海道にまで電力会社の
分散化を想定することもそのひとつ。電力が途絶えると2次・3次災
害をまねく現実に直面したわけですから、必然といえるでしょう。
新聞・放送・出版等のメディア企業では、今回の災害以前から定期
的に東京本社のデータを関西のバックアップ・サイトに移して、
また
戻すリカバリ作業を行っています。
このように日常的に災害対策を実
施している企業であっても、今回のような広域の大震災が発生した
場合には非常用発電機設備の発電量は十分か、燃料はどれくらいも
つのかなど、再度見直しを図る動きが現れています。その結果、バッ
クアップ・センターの自家発電の燃料が3時間しかもたないことが発
覚するケースもあったといいます。
一方で節電対策は目前です。短期の取り組みとして、常時使用し
ない開発機等の電源を落とすのが一番簡単な方法ですが、
これは中
長期的に取り組める方法ではありません。
また、その場合でも、単に
電源スイッチをON・OFFすればよいわけではなく、電源の切り方・
入れ方を適切に行わなければシステム障害をまねくため、
EMCの
サポート部隊に確認されるお客様が増えています。
また、震災前はコスト削減、運用管理の軽減、冗長性や可用性の
向上などの目的で進められていたインフラの仮想化統合ですが、
この夏節電対策が急務となり、その動きを加速させています。
12
短期の視点
電力不足への対応
節電対策
(使用しない機器の電源オフ)
(物理移転や物理統合・機器刷新による台数削減)
●
計画停電対策
(運用手順の見直し)
(非常用発電機設備の追加)
●
さらなるリスクへの対応
どこにデータを置くかではなく、いつでも置き場所を変えられる災害対策へ
厳格なセキュリティ管理を徹底しているがために、
リモート・サ
ポート契約をされていない企業もあります。こうしたお客様の場
合、ベンダー保守要員が交通網の混乱による自宅待機や被災によ
る立ち入り禁止などで保守に駆けつけられない事態が生じ、災害
時のセキュリティ・ポリシーの見直しを急ぐ金融機関や研究所など
の例が報告されています。実際、
リモート・サポート契約をされてい
たお客様とされていなかったお客様では、復旧にかかる調査・時間
に大きな違いが生じました。震災後、改めてEMCのリモート・サ
ポートのメリットをご理解いただき、別枠でリモート・サポート契約
を結ばれるお客様が多くなっています。
EMC製品はシステムとしてみた場合、
レプリケーション→バック
アップ・サイト切り替え→再び本番サイトに戻すという一連の災害
対 策・復 旧 対 策が実 行できなかった例は報 告されていませ ん 。
しかし、実際にはインフラ・チームと実業務のアプリケーション・
チームは別組織であることが多く、組織の縦割りのサイロ化が
災害対策の壁になることが分かりました。
データの避難訓練を含め、社内の組織的な連携を日頃から行っ
ていかなければ、
どんなに遠方にDRサイトを構築しても機能不全
が生じるわけです。インフラの全体最適はもちろんですが、企業組
織の全体最適の視点が災害対策を見直すポイントの1つであり、
EMCへのそうしたコンサルティング・ニーズも高まっています。
こうした組織のサイロ化の問題は長期的な見直しテーマとなり
ますが、短期的にはまずDRインフラの標準化を進めることをお奨
めしています。インフラごとにSIerが異なり、運用管理ツールもバ
ラバラではいざというときに状況が見えないことになります。マル
チベンダーのインフラをまたいで可視化する標準化ツールやそう
いった管理手法の導入が重要です。
2つの視点で見直す事業継続のための災害対策(例)
その場合、中小・中堅企業のほうが災害対策のインフラ標準化
に取り組みやすい組織構成であるといえます。今まで災害対策の
対象には含まれにくかった部門のファイル・サーバなども、震災で
損壊してデータが消えたら、取引も消える、信用も消えると危機感
を実感されたと思います。そうしたファイル・データと、データベー
スなどの業務データを1つに統合させた環境で保全し、バックアッ
プ/リカバリするストレージやバックアップ・ツールが今後は注目さ
れていくでしょう。
そうはいっても災害対策は“保険”ですから、あらゆる保険に投
資することはできません。火災保険や地震保険にまだまだ加入さ
れていない家庭が多いことを考えれば、
ITインフラの保険も発展
途上段階といえるのではないでしょうか。
しかし、東京と大阪でバックアップを行っていた企業が、東京をメ
インにするのをいったんやめて大阪をメインサイトにし、そのデー
タをさらに九州に保全するなど臨機応変に取り組む対策を始めた
お客様も現れています。
このようにデータセンターのあり方を変幻
自在なものとして見直すのはグローバル企業、外資系企業の場合、
本社判断が必要で時間を要することが想定されますが、地震大国
ニッポンを 理 解 さ れ た 企 業 で は 早 急 な 発 想 転 換 が 始 まって
います。
ヨーロッパでは国をまたいだ災害対策が行われていますが、
今後の日本経済、日本企業の復興には、そうした新たな視点での
事業継続性、災害対策が求められるといえるでしょう。
また、国内外
に拠点を持つ企業では、
クラウドへの移行が改めて事業の継続に
寄与する取り組みとして、災害に強い基盤として再認識されたのは
間違いありません。
●
既存災害対策方式と運用の見直し
●
バックアップの見直し(場所/手法)
●
勤務形態の検討(リモート・アクセス、
シンクライアント)
●
災害時のリモート・サポート状況の確認と対応
中長期の視点
災害対策の見直し
●
災害対策を含めたITインフラの全体最適(縦割り組織の弊害排除)
●
複数の電力会社をまたいだデータセンター計画
●
データ保護やバックアップ方式の標準化
●
システム保護や災害復旧の標準化
●
運用方式の見直し
(場所に依存しない切替可能システム)
クラウドへの移行
●
仮想化技術のさらなる活用
●
クラウド化による全社最適
●
システムの移動性強化(Mobility)
●
省エネへの継続的取り組み(Green/Eco)
13
TECHNOLOGY
進化したAvamar6.0 & Avamar Data Store Gen4の全容
企業のあらゆるデータを
一元的に重複除外バックアップする時代へ
BRS事業本部 事業推進部 プロダクト・マーケティング・マネージャ
No.1の重複除外をさらに低コストで導入へ
羽鳥 正明
世界市場はもちろん、この日本市場においても重複除外バックアップ・ストレージのベンダ・シェアNo.1 ※であ
るEMCが提供するAvamarが、このたびバージョン6.0へと大きく進化しました。これまでAvamarは、遠隔地
サイトのバックアップ統合や、ファイル・サーバや仮想サーバ環境でのバックアップとして主に利用されていまし
た。今後は大規模のデータベースやアプリケーションなどの構造化データを判別できるようになります。これに
より、Avamarによって一元管理された環境でData Domain重複除外バックアップ・ストレージにデータ保存
することが 可 能になります 。また、災 害 対 策に有 効 な 遠 隔 地 へ のレプリケーション(データ複 製 )にお い ても、
Data Domainも合わせて包括的に管理できます。では、その進化の内容をご紹介しましょう。
※テクノ・システム・リサーチ「2010年版 ストレージソリューション市場のマーケティング分析」調査による、国内の重複除外(De-Duplication)ストレージ市場においてEMCはシェアNo.1
Avamarが重複除外バックアップ環境をすべて統合
図2のように、データの更新率が高いデータベースやアプリケーションに対しては、Avamarクライアント・エージェントに組み込まれたData
Domain Boostでブロック分割処理を行ってからData Domainにバックアップする仕組みです。Data Domainにバックアップする場合におい
ても、データを転送する前に削減するため、ネットワークへの負荷を最小限に抑えます。
これにより、ネットワークのボトルネックが解消され、バック
アップ時間の短縮が期待できます。
■従来のAvamarとData Domainの適用環境(図1)
クライアントPC
NAS
ROBO
VM
■最新のAvamar6.0とData Domainの統合環境(図2)
Avamar
クライアント
エージェント
Avamar
サーバ
クライアントPC
NASのNDMP
NAS
遠隔地オフィス
VMware環境
Avamar
サーバ
ROBO
バックアップ
対象マシン
管理は
別々
VM
NASのNDMP
遠隔地オフィス
VMware環境
VM
+DB
データ変更率の高い
VMwareイメージ
VM
+DB
データ変更率の高い
VMwareイメージ
DB
Oracle、SQLなどの
データベース
DB
Oracle、SQLなどの
データベース
e
e
Exchangeサーバ
SharePointサーバ
バックアップ
対象マシン
バックアップ
サーバ
Data Domain
Exchangeサーバ
バックアップ
対象マシン
Avamar
クライアント
エージェント
DD Boost
重複除外
SharePointサーバ
Avamarにて
Avamarと
Data Domainを
一元的に管理
DD Boost
今回の製品発表に伴い、価格の改定も実施しています。まず、スト
レージ容量に対するライセンス価格を17%値下げしました。また、今
までAvamarのキャパシティ・ライセンスは、サーバ側とレプリケー
ション
(複製)側で同一価格でしたが、今回の改定でレプリケーション側
のライセンス価格を58%値下げしています。
データの遠隔地保管によ
る災害対策は急務でも、投資コストは極力抑えたい。そんなお客様の
多くの声にお応えできると考えています。
■レプリケーション・ライセンスの大幅値下げ
ADS Gen3
シングルノード・レプリケーション
Avamar3.3TBノード
キャパシティ・ライセンス3TB
Avamar3.9TBノード
キャパシティ・ライセンス3TB
レプリケーション
レプリケーション
Avamar3.3TBノード
キャパシティ・ライセンス3TB
Avamar3.9TBノード
レプリケーション・ライセンス3TB
58%OFF
Avamar Data Store Gen4は、1,000台の仮想サーバ、
50TBのデータをわずか43分で重複除外バックアップ
今回、同時に発表した高性能・大容量のアプライアンス・サーバ
「Avamar Data Store Gen4」は、ストレージ・ノードのドライブに
2TBのディスクを採用し、すべてRAID1構成によって性能と信頼性
を高めています。最上位モデルの最大構成は124TBのデータを保
存でき、
ノード当たり100GBのSSDを搭載し性能を向上していま
す。米国EMCが検証した結果を引用すると、1,000台の仮想サー
バ環境にある50TBのデータを、わずか43分で重複除外バックアッ
プすることができます。
具体的には、右図Aのように1日目から4日目までは初回バックアッ
プを250台ずつ追加していき、
5日目以降は、1,000台同時でのフ
ル・バックアップを43分で完了することができます。
■仮想サーバ1,000台(計50TB)の重複除外バックアップ時間(図A)
TB Protected
TB Scanned
Total Time(Min)
Proxy Infrastructure : Dual Quad Core 64 GB Memory
110
101
100
90
89
80
79
70
68
60
50
50
40
25
30
50
50
43
43
43
12.5
20
10
0
50
37.5
12.5
13.13
13.75
14.38
2.5
2.5
2.5
Day2
Day3
Day4
Day5
Day6
Day7
Day1
(250 VMs) (500 VMs) (750 VMs) (1000 VMs)(1000 VMs)(1000 VMs)(1000 VMs)
初回フル・バックアップ
(4回に分割)
2回目以降のバックアップ
3倍のパフォーマンス、
しかも、
65%も省エネ
このように、新しいAvamar Data Store Gen4は従来モデル
(Gen3)
と比較し大幅な性能向上が図られています。図Bで示されて
いるように、Avamar Data Store Gen4は従来モデルと比較し最大
3倍も高速化されています。性能向上によって、今後の企業データの
増加や仮想サーバの台数増加に対してバックアップ時間のさらなる短
縮を実現します。加えて、Avamar Data Store Gen4は、
1ノード当
たりの消費電力が最大65%も省電力化しています
(図C参照)。
今後のI
Tインフラは、計画停電や省電力という課題に迫られつつあ
りますが、新しいAvamar Data Store Gen4はこのような環境に適
した選択肢となりえるでしょう。
■パフォーマンスが1.5∼3倍に向上(図B)
(TB/day/node)
25
20
15
10
5
Gen3/
3.3TB
Gen3
(TB/day/node)
TB(day/node)
0
■新旧Avamar Data Storeの消費電力比較(図C)
マルチノード
シングルノード
Gen4/
3.9TB
Gen4/
7.8TB
VA
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
Gen4
65%
削減(※)
1.x TB
2.x TB 3.x TB
7.x TB
(※)同じ容量で換算した場合の数値
Data Domain
SharePoint
SharePoint
他社NAS製品を含めた全社規模の重複除外処理へ
コラム
メインフレームのバックアップも重複除外の時代に
今までEMCでは、IBMのメインフレームのバックアップ・ソリューションとして
Bus-Tech社との共同開発によるディスク・ストレージによる仮想テープ・ライブ
ラリ製品ですが、
EMCが昨年11月にBus-Tech社を買収したことに伴い、新た
にMDL-1000/2000をラインアップしてメインフレーム市場に投入します。
このMDLシリーズは、DLmの廉価モデルとして位置づけられ、小規模から中規
模システムのバックアップに適しています。MDLシリーズは、
ストレージ・ユニット
としてData Domain重複除外バックアップ・ストレージを採用しており、
メイン
仮想サーバのイメージレベル・バックアップに加えて、
リカバリ時間も短縮へ
VMwareのバックアップでは、vStorage APIs for Data Protection (VADP)のChanged Block Tracking機能を使って、仮想サーバ
のカプセル化されたVMDKファイルの中の変更ブロックだけを抽出して重複除外することができます。今回、Avamar6.0では、Changed
Block Tracking機能を使ってバックアップできるだけでなく、
リカバリも可能にしました。
これにより、仮想サーバの障害から復旧を行う際に、差
分のブロック・データを転送するだけで済むため、
イメージ・レベルのリカバリ時間が短縮されます。
■IBM System z に対応したEMCのバックアップ製品
EMC Disk Library for Mainframe(DLm)を提供してきました。
これは、
フレーム環境においても重複除外バックアップが実現します。
エントリーのMDL-1000にはData Domain DD630を組み合わせ、
パフォーマンス
Avamar 6.0では、市場で数多く利用されているWindows Storage Server搭載のNAS製品に対応しました。
これにより、企業内のさまざ
まなNASのデータを重複除外バックアップすることが可能となりました。
このようなファイル・サーバやクライアントPCなどの非構造化データは
もちろんのこと、今回のバージョン・アップでOracleやMS SQLなどのデータベース、Microsoft ExchangeやSharePointなどの構造化デー
タに至るまで、Avamarによってすべて重複除外処理が行えるようになり、市場でNo.1の重複除外ソリューションを企業内のあらゆる環境で全社
的に利用いただけるようになります。
14
ADS Gen4
シングルノード・レプリケーション
DLm-960
MDL -1000
w/DD630
DLm-120
MDL-2000
w/DD670
FICON接続によって最大12TBの重複除外バックアップが可能です。
ミッドレン
ジのMDL-2000は、Data Domain DD670を組み合わせることで、容量は最
大で76TBに拡張できます。
拡 張性
15
TECHNOLOGY
SMB(中堅・中小企業)向けEMC VNXeシリーズの革新性を聞く
容量不足!予算不足!管理者不足!そして節電!
そんなSMBの悩みを、
この“全自動”ストレージなら解決できる
ダイワボウ情報システム株式会社
販売推進本部 販売推進部
プロダクトエンジニアグループ
(兼)テクニカルサポートグループ
マネージャー
渡邊 賢氏
Q1
ダイワボウ情報システム株式会社
販売推進本部 販売推進部
プロダクトエンジニアグループ
係長
大谷 洋史氏
Q4
ス
大谷氏 トレージの使用量や重複除外の状況はどのように見えるのか。CIFSサーバの
機能を実装して、普段使っているようなアプリケーションのデータを大量にコピーしてみ
ました。
すると、使用率や重複除外率がパッとグラフで出てきたわけです。非常にわかりや
すくSMBのお客様にも受け入れやすいと思います。弊社のフィールドSEも使ってみて、
この操作感はSMB向けのエントリーのNASと変わらない!と言っていました。
4月11日、EMCジャパンよりSMB(中堅・中小企業)向けユニファイド・
ストレージEMC VNXeシリーズの発売開始が発表されました。
この新製品
は、
ミッドレンジの性能・機能・信頼性を、
シンプルな管理と100万円を切る
価格でディストリビューター様がお届けする今までにない戦略商品です。
これまでSMBのお客様は、それぞれの部門や部署が決済しやすい安価
なストレージ・デバイスを随時購入してきましたが、近年のデータ量および
バックアップ・データの急増には十分な予算を投入できないのが実情で
す。
また、本格的なストレージを導入し、仮想化統合に着手しようとしても支
店や営業所には管理できる人材がいるとは限りません。
こうしたSMBの悩み(予算・人材・管理・統合)
をすべて、今までにないお
得な価格と性能で解決するのが新しいVNXeです。そこで今回、実際に
VNXeの実機を検証し、その革新性を実感されたダイワボウ情報システム
様の生の声をご紹介します。
Q5
Q6
導入前
導入となると専門スキルが不安ですが、
VNXeはストレージの管理経験がなくても扱えますか?
(デュアル・コントローラ、SAS 6本構成)
A
B
年間の節電金額●−●=180,672円
★1年間の節電金額:180,672円
A
●1年目
:ファイル・サーバ4台 計1200W
B
●1年目
:VNXe1台 計300W
★2年間の節電金額:361,344円
1200W×24時間×30日
=864KW/月=電気料金 20,549円/月
300W×24時間×30日
=216KW/月=電気料金 5,493円/月
★3年間の節電金額:542,016円
20,549円/月×12ヶ月
A
=年間の電気料金 246,588円●
5,493円/月×12ヶ月
B
=年間の電気料金 65,916円●
★4年間の節電金額:722,688円
★5年間の節電金額:903,360円
V N X e1台 導 入 で 、信 頼 性 が あ がり高 度 な バックアップ機 能 がつ い て 、
か つ5年 でほぼ初 期 投 資を回 収 できる!
節電効果:東京電力 従量電灯B 50A契約
●
東京電力の電気料金シミュレーション・サイト
http://www.tepco.co.jp/life/custom/ratesimu/jyu_b/jb00-j.html に基づく試算
このように、節電の費用対効果は統合すればするほど年々大きくなります。
また、仮想化を前提にした場合、
ブロック・デバイスとしてのストレージの上にiSCSIでOracleなどの構造化データを乗せていました。
その際に今までは別途NASを提案していたのですが、それらをVNXe1台に統合化できるのは分かりやすいですし、省エネや省スペー
ス、省管理、省保守の面でも今後期待したいですね。
ネットワークやRAIDが故障したり、停電がおきた場合、
データが消えるのが心配なお客様も多いのでは?
大谷氏
VNXeは、
ストレージ・プロセッサーや電源装置の二重化など、すべてのコンポーネントが冗長化されていますの
で、稼働中に故障が発生してもサービス停止やデータ消失が発生する心配はありません。
また、万が一故障が発生した場合
でも対処方法がガイドされる仕組みになっています。機材の評価中、試験的に故障を作り出すためにストレージ・プロセッ
サーBのライト・キャッシュ保護用バッテリーを取り外してみました。すると、
“SP Bのバッテリー・バックアップ・ユニットが
故障”、
“パーツの交換が必要”
と表示され、
オーダーするべきパーツ番号やコール先がUnisphereの1画面ですべて把握で
きるようになっていました。
これはこれまでになく親切な設計で大変驚きました。
SMBのお客様は、兼業のIT管理者の方が多いですから、
アクシデントが発生したときに何が起きているのか、
どう
渡邊氏
対処したらいいのかが日本語でひと目でガイダンスされるのはとてもありがたくて重要なことですね。それ以上に、
この夏
は電力事情がありますから、突然停電になってデータが消える心配もぬぐえません。
しかし、VNXeなら電力供給が停止して
も自動的にそのデータをフラッシュ・メモリに退避させ、停電の瞬間までデータを保護してくれるので心強いです。
VNXe導入後
VNXe1台に統合 合計消費電力300W
ファイルサーバ4台 合計消費電力1200W
もちろんです。
以前までのEMC製品と比べて、明らかにユーザー・インター
大谷氏
フェースが分かりやすくなっています。私だけでなく、他のサーバ管理のエンジニアも使っ
てみて驚きました。EMCストレージ管理ソフトのUnisphereを開いて、VMwareの仮想
サーバにストレージを割り当てる設定をしたのですが、自動的にメニューが出てきてやり
たいことが直感的に見えるので、
4∼5ステップ、時間にしたら5∼10分もかかりません。
この全自動のストレージなら、
ストレージ管理が初めてのSMBのお客様でも安心です。
16
VNXeの省エネ効果は試算されていますか?
今まではファイル
・サーバ4台を使い、合計1200W/時の電力を消費していたとします。
このVNXeですと、デュアル・コント
大谷氏
ローラ、SASドライブ6本の構成で、実消費電力は約300W。
これだけで、従来よりも900W削減できる計算になります。
この節電効果を
東京電力の従量電灯B・50A契約において、
24時間連続運用で計算すると、
どれくらい電気料金を節約できるのか、東京電力のサイトで
計算してみました。
SMB(中堅・中小企業)ではストレージを各部門や担当者ごとで導入しているケースが
まだ多いようです。安価なストレージを買い足せば、問題は解決するのでしょうか?
Q3
VNXeの信頼性の高さに期待しているのはどのようなお客様ですか?
渡邊氏 このVNXeは、データを消さない工夫がされています。ストレージのコントローラが二重化さ
れているので、
ファンや電源ユニット、I/Oモジュール、キャッシュ・メモリまですべて冗長構成となり、
お客様が開発される高信頼システムへの組み込みストレージとして期待されています。サーバの仮想
化が進めば進むほど、ストレージに信頼性がないとすべてのシステムに影響が及びますので、災害対
策の強化としてVNXeのリモート・レプリケーション機能を使う提案なども大変注目されています。
いいえ、それはベストな選択ではありません。
「数テラバイトのストレージが欲しいんだが…」。SMBのお客様からそういう
渡邊氏
リクエストに対するご相談をいただくことも多いのですが、必要なディスク容量と製品価格だけで判断され、数十万円の安価なNAS
を部署単位で導入をされるケースも少なくありません。安価なNASを複数台導入するのでしたら、
3年先、
5年先を見すえて、
1部門
単位から複数の部門にわたりストレージの導入を統合して、EMC VNXeを1台導入することをお奨めしています。そうすれば、
デー
タ保護や管理の問題、
システムの拡張性などの、今までのNASの課題から解放されます。
また、NASを統合したことで大幅な節電
効果(消費電力・料金の削減)
が得られます。VNXeは、本格的なストレージ統合の時代を切り拓く製品といえるかもしれません。
Q2
誰でも簡単にストレージの使用率や重複除外率が分かりますか?
インタビューの結論
VNXeは、いわば“親切なオートマチック車”
●
お客様が経験したことのないストレージ容量の割り当て
●
今まで行っていなかったデータの重複除外や圧縮
●
データ・バックアップは専門家でないとできない
●
計画停電が心配だ
●
ネットワークやRAIDが故障したら
10分でできる
アタリ
自動でできる
全部門をまとめて簡単にできる
二重化のキャッシュ専用メモリでデータを消さない
二重化されているので大丈夫(高性能機のノウハウ)
VNXeシリーズ
(2U:VNXe3100/3U:VNXe3300)
17
TECHNOLOGY
1,000km離れたデータセンター間のストレージを連携(フェデレーション)
災害退避、可用性向上
VPLEXでクラウドに向けた
新たなデータセンターの基盤をつくる
中野 逸子
マーケティング本部 マーケティング・マネージャ コアストレージ担当
クラウド化に向けて、ITインフラの統合・共有プール化、さらに、データセンターを有機的に結合していきたいとい
うニーズが高まっています。VPLEXは、異機種混在のストレージを束ねて統合するストレージ仮想化製品であり、
しかも、一般的なストレージ仮想化製品では解決できない、距離の壁を越えて、複数のデータセンターに分散してい
るストレージの連携を実現します。
これにより、データセンター間でのリソースの共有化・最適化が可能になり、さら
に、災害対策も含めて可用性・信頼性の向上を図ることができます。
本稿では、EMC VPLEX Geoの登場によって、
さらに充実したVPLEXファミリについてご紹介します。
独自の仮想ストレージ・テクノロジーを採用したEMC VPLEXファミリ
(以下、VPLEXファミリ)は、複数異機種混在のストレージを仮想化し、
あたかも1台のストレージのように利用することができます。
しかも、離れた2つのデータセンター間にある異機種混在ストレージを連携(フェデ
レーション)させ、共有データとして、両サイトからの読み書きを可能にするAccessAnywhereを実現しています。
データセンター間のストレージ連携によって、遠隔サイト間でデータを共有したり、
システムを止めることなくデータを移動したりすることが可能に
なります。さらに、サーバ仮想化技術と連携することによって、データだけでなく、仮想マシン(アプリケーション)も移動することができるのです。
このデータとワークロードの透過的な移動と共有により、データセンターの統合や、
リソース使用率の最適化を図ることができます(図1参照)。
従 来 インフ ラ モ デ ル
V P L E X による 新しい I T インフ ラ
A社
C社
D社
B社
E社
C社
Z社
サーバ
Z社
B社
A社
A社
OS/データベース
アプリケーション
OS/データベース
アプリケーション
ストレージ
ストレージ
バックアップ
バックアップ
テスト
テスト
障害復旧
障害復旧
ユーザー
ユーザー
サーバ基盤
サーバ基盤
ネットワーク
B社
A社
C社
D社
B社
E社
C社
Z社
Z社
ORACLE
SAP
Microsoft
マルチサイト・クラスタ
VPLEX
Witness
VM
アクティブ
Access Anywhere
アクティブ
VPLEXは、
データ共有による生産性向上にも有効です。
たとえば、地理的に分散した開発チームがデータを共有しなければならない場合、
データが
大きくなればなるほど、FTPなどの手段によるデータの共有に時間がかかり、
データの一貫性を保持できないといった課題が生じ、
ひいては業務効率
を下げてしまうことがあります。VPLEX Metro/Geoであれば、ユーザーがどちらのサイトからもリード/ライトが可能となります。
また、変更部分だ
けの同期となるため、
データセンターをまたいで大容量のデータを共有するためのリソースも効率化を図ることができます。
独自の仮想ストレージ・テクノロジー
VPLEXファミリは、
データセンター内、
データセンター全体、
データセンター間で情報の移動とアクセスを提供するための次世代のソリューション
です。VPLEXは、サーバと異機種混在ストレージの間に配置されるアプライアンスであり、複数のエンジンが連携するスケールアウト・クラスタ・アー
キテクチャを採用しています。
データ・キャッシング機能と独自の分散キャッシュ一貫性テクノロジーを特長としています。
(図3,4参照)
■クラウドに向けたITインフラの進化(図1)
サーバ
■VPLEX Witnessによる可用性向上
データ共有による新たなソリューションも実現
約1,000km離れたサイト間のストレージ連携を実現
ネットワーク
VPLEXは、
ビジネスの継続性向上にも非常に有効です。VPELX Localにおいても、異機種混在
のストレージ間でストレージ連携することにより、
データ移行を可能にし、
データ移行や筺体の入れ
替えなどに伴うダウンタイムを回避することができます。
また、異なるストレージ筺体間でのデータ
のミラーなどによる可用性向上を図ることができます。
さらに、VPLEX Metro/Geoの革新的な技術である2つのデータセンター間にまたがったスト
レージ連携(フェデレーション)
によって、
サイト全体が利用できなくなった場合にも、可用性を高める
ことができます。異なるサイト間で、
データをミラーリングすることによって、サイト障害時にもデー
タのアクセスを継続することができるのです。また、サーバ・ベースのクラスタ・ソフトウェアとも
連携しますので、
システム全体の可用性を高め、
ダウンタイムのないシステム構築を可能とします。
VPLEX は、仮想マシン
(業務システム)
を他のサイトにダウンタイムなく移動させることができる
ので、
計画停電やテロなどの非常事態に備えて、
まさに、
「災害退避」
と呼べるソリューションとなります。
2 0 1 1 年 7 月より、データセンター 間にまたいだ連 携を行っている場 合には、
「VPLEX
Witness」
という2拠点のデータセンターを監視し、
フェイルオーバーを管理するソフトウェア機能
を新たに提供し、可用性のさらなるレベル向上を図りました。
■分散キャッシュ連携技術(図3)
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
APP
OS
■スケールアウト・クラスタ・アーキテクチャ
(図4)
99.999%以上の可用性実績をもつEMCストレージ・エンジンを活用
場所の制約を超えて実現する分散キャッシュ連携技術
小さく始めてプラグインで容易にパフォーマンスとキャパシティをスケールアウト
キャッシュ・コヒーレンシ・ディレクトリ
VPLEX
Access Anywhere
ストレージ基盤
VPLEX
ストレージ基盤
新規書き込み
ブロック3
ブロックアドレス
キャッシュ A
キャッシュ C
キャッシュ E
キャッシュ G
Cadhe DirectoryB
Cadhe DirectoryA
ワークロードが動的に分散された単一の仮想ストレージ・プール
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 111213 …
コンポーネント障害への高い可用性と一貫性のあるサービス・レベルの維持
読み出し
ブロック3
Cadhe DirectoryD
Cadhe DirectoryC
Cadhe DirectoryF
Cadhe DirectoryE
VPLEX
エンジン
VPLEX
エンジン
VPLEX
エンジン
グローバル・メモリ
Cadhe DirectoryH
Cadhe DirectoryG
CPUリソース
システム帯域幅
データセンター内、
データセンター間に
おけるリソースの最適化
データセンター間で、
データや仮想マシンが自在に移動可能に
キャッシュ
キャッシュ
キャッシュ
キャッシュ
EMCおよびEMC以外のアレイ
第一世代のVPLEXファミリとして、同一サイトでのストレージ連携を実現するLocalと、近隣(約100km)サイト間でのストレージ連携を実現
するMetroを、昨年6月から提供し、多くのお客様に導入していただいてきました。さらに2011年7月に、VPLEX Geoが加わったことで、新たな
仮想化のステージに進むことになります(図2参照)。
VPLEX Geoは、約1,000km離れた2拠点のデータセンター間のストレージ統合が可能です。国内で1,000kmといえば、東京・大阪間など
広域な対応が可能です。VPLEX Geoは、非同期50msの遅延を許容する設計になっていますので、お客様のネットワーク環境によっては距離を
さらに伸ばすことも可能です。
最新の書き込み位置をVPLEXクラスタ間で共有することで、
ホストから完全に透過的に、ストレージの場所を問わず、
常に一貫性のとれたデータへ、ローカル/リモート環境の
いずれにおいてもフルアクセスが可能
システム・リソースはすべてのワークロードを動的に分散
■ローカルおよびリモートのストレージを容易に管理(図5)
データセンター内にて
異機種混在環境の
ストレージを連携して
仮想ストレージを実現
2010年6月
18
■VPLEX VS2(図6)
New
■VPLEXファミリの進化(図2)
VPLEX
Local
実績ベースで99.999%以上の可用性を持つ
ストレージ・エンジンによる高可用性
小さく始めて、必要に応じてパフォーマンスと容量を
4エンジン
(8ダイレクタ)
・クラスタまでスケールアウト
(1サイトあたり)
VPLEX
Metro
100km離れた
データセンター間にて
仮想ストレージを実現
(同期)
NEW
VPLEX
Geo
1,000km離れた
データセンター間にて
仮想ストレージを実現
(非同期)
2011年7月
VPLEX
Global
新たに開発されたラックマウント型クラスタは、
サイズが
従来比1/2、消費電力も1/2になり、設置スペースと
消費電力の大幅な削減を実現
複数拠点
グローバルに
将 来
仮想ストレージのための専用アプライアンスも、
さらに強化しました。
処理能力が大幅に向上したIntelマルチコア・プロセッサや、
PCI Gen 2カードを搭載してスループットが向上
複数のデータセンターにまたがって、複数の
ストレージを1つのリソースとして管理が可能
10ギガビット イーサネットWANインターフェースを採用し、
クラスタ間の通信も高速化
19
TECHNOLOGY
エンタープライズにも広がる
「ビッグデータ」の
保存・管理に最適なスケールアウトNAS製品
EMC Isilonシリーズに新製品が登場
アイシロン事業本部 マーケティング部 マネージャ
武堂 貴宏
スケールアウトNAS(Network Attached Storage)のグローバル・リーダーとして、世界中で1,800社以上の顧客を持つ
Isilon Systems社は2010年12月EMCと経営統合し、その日本法人であるアイシロン・システムズ株式会社も2011年7月
よりEMCジャパンの「アイシロン事業本部」
として再スタートを切りました。それに伴い、同社の主力製品であるスケールアウト
NAS製品は
「EMC Isilon(以下、Isilon)」
という新名称で、今後もさらなる多くのお客様のニーズに応えていくことになります。
本稿では、経営統合に先立って2011年4月から5月にかけて発表されたIsilonシリーズの新製品についてご紹介します。
スケールアウトNASの
次世代モデルを発表
最大の特長は
「シングル・ファイル・システム」
本格的なビッグデータ時代を迎え、そのストレー
すでに10年にわたってその技術を成熟させてき
ジ基盤として多くの企業がスケールアウトNASに注
ました。
目しています。膨大に増え続けるデータから効果的
Isilonの独自の分散ファイル・システム(オペ
な企業活動に結び付けるために、大量のデータを
レーティング・システム)である
「OneFS」は、最小
シンプルに放り込んでおける
「大きなバケツ」
とし
3台∼最大144台の物理ストレージ(ノード)を
ての役割をスケールアウトNASに求めているので
1つの仮想的なストレージ・プール(クラスタ)
とし
す
(コラム参照)。
て管理します。その総容量にかかわらず、
クラスタ
従来、大量のデータや大容量のファイルを扱う
はシングル・ファイル・システム、
シングル・ボリュー
企業といえば、3D映画などを制作するメディア&
ムで管理できるのが特長です。保存されるデータ
エンターテインメント系やライフサイエンス関連
はノード間 の ストライピング ( * 1 ) により、R A I D
などの企業が中心でした。
しかし近年は、一般の企 (Redundant Arrays of Inexpensive Disks)
以上のN+4(最大)のレベルで保護が可能になっ
業(エンタープライズ)
にも、ITソリューションとして
ています。
また、OneFSのアドオンとして、
クォータ
スケー ルアウトNASが浸透しています。これは
リモート・レプ
管理(*2)やスナップショット、階層管理、
「ビッグデータの時代」を迎え、特定の業種にかか
リケーションなどを提供するさまざまなアプリケー
わらずスケールアウトNASが広がっていることを
ション・ソフトウェアが用意されているのも、Isilon
示しています。
の魅力となっています。
この領域のリーディング・カンパニーとして大き
な アド バ ン テ ー ジ を 持って い る の が I s i l o n
(*1) 1つのデータを2つ以上のハードディスクに分けて同時に
Systems社(現EMCアイシロン事業本部)です。 書き込むこと。
(*2) ユーザーやグループ単位でディスク使用量の制限量を
いち早くスケールアウトNASの開発に取り組み、 設定する機能。
スケールアウトNASのハードウェア・プラット
フ ォ ー ム とし て 、従 来 よ り S A S( S e r i a l
Attached SCSI)
ドライブ搭載のSシリーズ、
S A T A( S e r i a l A d v a n c e d T e c h n o l o g y
Attachment)
ドライブ搭載のXシリーズ、アー
カイブ(ニアライン)向けのNLシリーズをライン
アップしてきましたが、新製品として2011年4月
にS200とX200、5月には108NLが相次いで
リリースされました。
中でもS200とX200の2モデルは従来モデ
「パフォーマンスのS200」
と
「柔軟性のX200」が新登場
■S200とX200の製品仕様(図1)
筺体サイズ
X200
2U
2U
最大ドライブ数
24
12
ドライブの種類
2.5”SAS,SSD
3.5”SATA,SSD
ノードあたりの容量
7.2TB-14.4TB
6TB-36TB
搭載可能SSD容量
200GB/400GB/1.2TB
200GB/400GB/600GB/1.2TB
最大 CPU 数
2(クアッドコア)
1(クアッドコア)
メモリ容量
24GB-96GB
6GB-48GB
144
144
最大クラスタ サイズ
プロトコル
最大スループット
20
S200
NFS, CIFS, FTP, HTTP, iSCSI
85GB/S
30GB/S
ルを単に機能強化したものではなく、外見、アー
キテクチャを刷新した次世代モデルとなっていま
す(図1)。S200の特長を一言で表せば「速いプ
ラットフォーム」です。特にHPC(ハイ・パフォーマ
ンス・コンピューティング)やメディア&エンター
テインメントなど高速I/Oが不可欠な領域では、
最大で140万/秒を超えるNFSオペレーションと
85ギガバイト/秒のトータル・スループットを提
供するS200が威力を発揮します。一方、X200
は「スケーラブル・ストレージの新標準となるプ
ラットフォーム」であり、大容量のSATAドライブ
と超高速のSSDを組み合わせ、柔軟性・拡張性
を兼ね備えたモデルとなっています。各ノードは
InfiniBand (*3)で接続され、高速なノード間通信
を実現しています。
ニアライン向けストレージのNLシリーズ最新
モデルであるIQ 108NLは、
ノード当たり108
テラバイトというIsilonの中で最も高密度のプ
ラットフォームで、テラバイト当たりのコストが低
く、最高の経済性を実現します。
グローバル・ネー
ムスペースを使用して、単一のストレージ・プール
で15.5PBまで容易に拡張でき、複数のボリュー
ムを管理する必要はありません。
(*3) InfiniBand(インフィニバンド):サーバ/クラスター用
高速I/Oバスアーキテクチャおよびインターコネクトのこと。
OneFS最新バージョンは
エンタープライズにも
使いやすく機能を拡張
Isilonシリーズのパフォーマンスを最大限に引
き 出 す の が 、独 自 の 分 散 ファイ ル・シ ス テ ム
「OneFS」です。OneFSも、S200、X200のリ
リースに合わせて最新バージョン6.5がリリースさ
れました。
今 回 の バージョン・アップで注 目したい 部 分
は、エンタープライズのITソリューションとして
Isilonをより効率的に使える機能の強化です。
ここでは以下の4つの機能について紹介します。
1. ユーザーIDの識別、
アクセス権限管理の容易化
エンタープライズでは、部門や業務によってWindowsやUNIX、Macなど、
さまざまなクライアントが混在して使われています。OSの違いにより、
ユーザーのID、
アクセス権限の管理方法が異なりますが、OneFS 6.5はそれを識別し自動的にマッピングします。
マルチ・クライアントOSの混在環境
の管理をよりシンプルにします。
2. CIFSプロトコルのネイティブ・サポート
Windows環境でのファイル共有のために、従来はSamba ( * 4 ) 経由でCIFS(Common Internet File System)に対応していましたが、
OneFS6.5よりネイティブ・サポートすることで、
パフォーマンスを大きく向上させます。
(*4) マイクロソフト社のWindowsネットワークを実装したフリーソフトウェア。
3. グローバル・ネームスペースの高速化とSSDを使った階層管理
SmartPoolsにより、お客様は同一のクラスタ内のさまざまなシステム・タイプのプールをすべて単一
ファイル・システムに統合できます。異なるパフォーマンスと容量を持つノード間にデータを自動的に移行す
ることで、価値とアクセスの必要性に応じてデータが常に最適に保存されるようになります。OneFS6.5で
は、SmartPoolsでSSDのサポートが追加され、
グローバル・ネームスペースが高速化されます。
グローバル・ネームスペースの高速化において、
メタデータまたはデータ自体をSSDに保存したり、
また
特定のクラスタのSSDを使用してSSDを持たないシステムのメタデータを保存できます。その結果、高い
コスト・パフォーマンスで幅広いデータ・フローの性能を向上でき、高価なSSDリソースの投資を最大化でき
ます。
(図2)。
■異なるタイプのビックデータを
シングル・ファイル・システムで管理(図2)
VMDKデータ
レイテンシー
HPCデータ
I/Ops
4. 非同期レプリケーション性能拡張
ディザスタ・リカバリの用途など、非同期でデータをレプリケーションする場合、OneFS 6.5および最新の
SyncIQ 3.0では、更新データを迅速に特定し、複製する際にパフォーマンスを向上するための統合スナップ
ショット機能を追加しました。同じ容量のデータを保護するために必要な時間を大幅に短縮可能で、災害復旧
アプリケーションにおけるRPO(Recovery Point Objective:目標復旧地点)
も向上します。
コラム
Fileデータ
MB/s
アーカイブ
スケールアウトNASは、大きさを変えられる
「1つの巨大なバケツ」
企 業 活 動から生じる大 量データを解 析し、ビジネスへの付加価値に活用するビッグデータの時代には、ボリュームが膨大で、構造も
複雑化するデータを効率よく保存するためのスケールアウトNASのようなスケーラブル・ストレージが必要です。
一般的なNAS(図3右)は、NASコントローラで、ディスクへのアクセスを制御します。そのため、ビックデータの管理など、ディスクの
容量が増えるに従ってアクセスのトラフィックが増大し、やがてコントローラの処理能力を超えてしまうことでパフォーマンスが低下します。
そうなると、コントローラもより能力の大きなものに置き換えていく必要があり、そのために発生する手間やコストが課題となります。
一方、スケールアウトNASは、図3左に示すように、NASコントローラの機能をディスク装置に内蔵するアーキテクチャとなっています。
その結果、ディスク容量を増やすと同時にコントローラも増え、ディスクへのアクセスを分散させることが可能です(マルチヘッド)。
スケールアウトNASのメリットは、ボトルネックの発生を防ぐだけではありません。管理が非常に容易であることも大きな特長です。
Isilonシリーズは1クラスタで物理ノードを最小3台から最大144台
まで接続できますが、これをシングル・ファイル・システム、シングル・
ボリュームとして管理できます。
■スケールアウトNASのアーキテクチャ
(図3)
スケールアウトNAS
通常のNAS
ストレージ管理者は、増え続けるデータに対処するためボリューム
NASコントローラ
を管理したり、RAIDを設計することに頭を悩ます必要はありません。
CPU
ノードの増設や交換時でも、サービスを止めることすら不要です。
まるで
大きなバケツに、好きなようにデータをどんどん放り込んでいくイメー
ジで、最大15.5ペタバイトのストレージを運用することが可能です。
この使い方は、今後企業において増大してくるビッグデータを保管、
管理するストレージとして最適といえます。
CPU
メモリ
スループット
メモリ
ネットワーク
スループット
ディスク
NASコントローラとディスクが一体
ディスク
NASコントローラとディスクが分離
21
なるほどTechnology
話題の
ビッグデータとDWHの
深くて新しい関係について
最近、よくインターネットの記事やエグゼクティブ向けのフォーラムなどでも
取り上げられるようになった「ビッグデータ」。
2011年から、本格的にこのビッグデータを、一般の企業においても
ビジネスに活用していく時代が幕を開けたといわれています。
それでは、そもそもビッグデータとはどういうもので、今なぜ注目されているのか?
そのビッグデータは、意思決定や競争力をどのように変えるのでしょうか?
変化を予測しにくい不確実性の時代における、
ビッグデータとDWH(データウェア・ハウス)の新しい関係を探ってみます。
ストラテジー・アライアンス統括本部 データ・コンピューティング事業本部 テクノロジー・プロフェッショナルサービス部長
Q1
仲田 聰
それではまず、野村総合研究所様によるビッグデータの背景と定義をご紹介しましょう。
「ハードウェア、及びソフトウェア技術の進化によって、
これまでは困難だった、複雑で大規模なデータの分析処理が可能
になり、今後、企業の競争力の向上や社会問題の解決に役立つことが予想されます。
この数年、利用者が急激に拡大してい
るソーシャル・メディア内のテキスト・データ、携帯電話・スマートフォンに組み込まれたGPS(全地球測位システム)から発
生する位置情報、時々刻々と生成されるセンサー・データなど、我々の日々の生活の中で生み出されるデータは、数年前と
は比べ物にならないほど膨大かつ複雑になってきています。
ビッグデータとは、
このようにボリュームが膨大であると共に、
構造が複雑化することで、従来の技術では管理や処理が困難なデータ群を指す概念です*」。
ここで野村総合研究所様が指摘されている膨大かつ複雑化するビッグデータは、実は2007年からスタートしたIDCと
EMCの共同調査「IDC Digital Universe Study」
によっても明らかにされてきた現象です。世界中で生成されるデジタ
ル情報の総量はビッグデータの爆発的な増加によって、毎年40%以上の割合で増え続けており、
2020年には44倍に達
すると予測されています。 これまでは、映像や携帯電話の通話記録、
ツィートなどのビッグデータは保存はされていましたが、データベース化され
たり、BI(ビジネス・インテリジェンス)の分析対象にはなっていませんでした。
しかし、
ここ数年、米国を中心にビッグデータ
を解析して新たなビジネスの価値(知見)
を発見する企業が現れてきました。
日本では2011年が“ビッグデータ元年”
といわれ、広く一般企業でもビッグデータの潜在的な価値に注目する動きが始
まっています。
*Source: 2011年5月24日 株式会社野村総合研究所
ビデオ&グラフィック
ゲノムシークエンス
地震探査
音楽/音声
コンピュータモデリング
22
PDF
衛星画像
PDF
ビッグデータは、経営の意思決定をどう変えるのですか?
今現在でも売上データや顧客の購入履歴のデータを基に、売れ筋商品の予測など重要な経営分析は行われています。
しかし、
それらの元になるデータは、
“構造化データ”
と呼ばれるもので、基幹業務のデータベースやERPなどで発生するデータです。
ビジ
ネスの新しい知見は、
こうした従来のデータだけでは発見されにくく
従来の意思決定環境
ビッグデータ時代の意思決定環境
なっており、
まさに不確実性の時代を迎えたといえます。
変化が予測可能な環境
変化が予測困難な環境
たとえば、著名な誰かのツィートで次々と書き込まれた情報が翌日
あるいはその日のうちに一気に多くの消費行動に変わる。そういう予
外部
行動の
ビジョンと
シグナル
定義
方針
測困難な経営環境の変化が生まれています。米国の携帯電話会社は
Feed
back
数年前からビッグデータに着目し、顧客の解約率の改善や新たな通話
Sense
Plan
サービスの開発に役立てています。
従来のデータベースなどのデータとビッグデータが本質的に異な
週、
日
年、四半期
React
Analyze
Act
Do
る点は、消費社会や研究・開発段階などにおける
“生のデータ”
だとい
単位
単位
うことです。
テラバイトあるいはペタバイト級の膨大な生データを今
までにない強力なDWHエンジンやBIツールで解析して経営の意思
Judge
Check
決定に役立てる試みが、
この2011年から始まったビッグデータとビ
ジネスの融合の時代といえるでしょう。
ビッグデータの活用の仕方次
Plan-Do型
Sense-React型
2011, ITR Corporation All rights reserved.
第で経営の意思決定が変わり、企業の競争優位性が変わるのです。
Q3
ビッグデータとは?今なぜ注目されているのでしょうか?
医療用画像
Q2
企業の競争力は、ビッグデータの活用でどう変わりますか?
購入履歴やオンライン・サイトの検索履歴などのビッグデータを分析して、おすすめ商品の表示やおすすめメールが届く
“レコメンデーション”。あるいは、検索した言葉と連動した広告が現れる
“インタレスト・マッチ”。特定のエリアの携帯電話の通
話データを分析した通信会社の“解約防止キャンペーン”。
こうしたビッグデータの活用例は、顧客の単価を上げる施策として、
あるいは顧客の囲い込みを図る対策としてすでに実施されています。そうした企業は、他社よりも競争優位性に優れているの
は明らかです。
Q4
一般企業がビッグデータを活用できるのはなぜ?
今まではビッグデータの活用というと、気象変動予測や災害予測、遺伝子情報の大規模解析、医療・医薬分野の解析など、
特定の限られた用途で利用されていました。そこでは、スーパー・コンピュータと特殊な分析ツールを使い、数週間から1ヶ月を
かけて計算処理し、答えを導き出していたのです。
ところが 、近 年オープンソー スの 並 列 分 散 処 理 基 盤( M a p R e d u c e )や 高 度 な 分 散ファイ ル・システム( H a d o o p
Distributed FS)が浸透し、何週間もかかっていたビッグデータの計算処理を1時間、あるいは数10分で行う並列分散処理
のDWHエンジンが登場し、最近では各社から専用のアプライアンスも投入されています。
コストも計算スピードもケタ違いに
改善されたDWHによって、いよいよ一般企業がビジネスに活用できる段階を迎えたわけです。
Q5
EMC Greenplumは他のDWHとどう違うのでしょうか?
EMC Greenplum Databaseが革新的なのは、
ソフトウェアだけで最初から最後まで全プロセスで
超並列処理を行う点です。現在の多くの並列処理DWHエンジンは部分的な並列処理で終わっていま
す。
また、巨大なビッグデータを読み込むときのスピードは世界最高速です。独自のScatter/Gather
Streaming技術によって、
1ラック構成の1時間当たりのロード量は10TBに達します。
しかも、サーバ本体は一般的なIAサーバでよく、
さまざまなバージョンのSQLデータやOracleデー
タをそのまま計算処理でき、現在使用されているBIツールを使って解析できるなど、既存環境への導
入のしやすさもスムーズです。米国や先進的な日本のビジネス・リーダー、業界アナリストは、
ビッグ
データ革命の時代が幕を開けたということを知っています。
これにどのように立ち向かう体制を整える
かが、企業の将来を左右するといえるかもしれません。
アタリ
EMC Greenplum
Data Computing Appliance
23
Case Study1
学校法人 近畿大学
システム構成図
様
高い性能と信頼性で安定稼働
クラウド環境への移行を推進
URL:http://www.kindai.ac.jp/
■設 立:大正14年(1925年)
近 畿 大 学 が 新 システム の 導 入 を 決 定
した時点では、Cisco UCSは発表されて間
も な い 製 品 で 国 内 テ ストも さ れ て い な
かったが、ネットワークにサーバを包含す
るという設計思想がクラウドの考え方と方
向が一致していること、コンポーネントが
業界標準技術で構成されていることから、
■所在地:〒577-8502 東大阪市小若江3-4-1
■学生数:32,505人(H22年5月現在)
■教職員数:1,731人(H22年現在)
VCE連合の親和性でシステムの安定稼働と高速処理を実現
先進的な教育システムを支えるEMC CLARiX
西日本で最大規模の総合大学である近畿大学では、国内初導入となる新コンセプトのブレード・サーバ「Cisco UCS」
と
EMCのネットワーク・ストレージ・システム「EMC CLARiX CX4」、サーバ仮想化ソフトウェア「VMware」で構成され
るシステム基盤を構築し、2010年4月から稼働開始した。新システムは、同大学の12番目の学部となる総合社会学部
の新設に伴い、学内システム基盤のクラウド化を見据えたシステム整備の一環として導入されたもので、VCE連合とし
て協業する親和性の高さを背景に安定稼働を実現するとともに、
システム全体としての高い信頼性と耐障害性、当初予
想を上回る高い性能を発揮している。近畿大学では、今回のシステムをプライベート・クラウド化の第一ステップとして
位置づけ、将来的に学内に横展開することで、他に先駆けた学内クラウド環境への移行を目指している。
進取の精神で未来を志向する
西日本で最大規模の総合大学
大阪専門学校と大阪理工科大学を母体
として大正14年(1925年)に設立され
た近畿大学は、3万2,000人以上の学生
が在席する西日本で最大規模の私立総合
大学。幼稚園から大学院まで幅広い教育
の機会を提供し、3つの総合病院と20の
研究所等を運営する。
「 実 学 教 育 」と「 人 格 の 陶 冶 」を創 立 以
来の建学の精神とする近畿大学は、未来
を 進 取 する学 術 研 究 に 積 極 的 に 取り組
み、水産資源やエネルギーなどの多様な
分野で卓越した研究成果や業績をあげて
きた 。たとえば 、同 大 学 の 水 産 研 究 所 が
2002年6月に世界で初めて成功したク
ロマグロの完全養殖は、現在では同大学
発 の ベンチャー 企 業によって“ 近 大 マグ
ロ”
の 商 標で商 品 化されている。また、理
工学部機械工学科が2006年1月に開発
した
“バイオコークス”
の製造技術は、茶殻
や野菜くずなどの植物由来廃棄物から固
形燃料を製造できることから、二酸化炭素
(CO2)がゼロカウントされる新しい国産
エネルギーとして注目を集め、実用化に向
けた実証実験が進められている。
24
総合社会学部の開設を機に
クラウドを視野に入れたシステムを構築
進取の精神による未来志向の総合大学
を標榜する近畿大学は、12番目の学部と
して、自然 科 学と社 会 科 学 の 双 方 の 視 点
で新しい社会システムを構築できる人材
の育成を目的とした総合社会学部の新設
を決定し、2009年4月から新システム構
築のプロジェクトを開始した。システムの
導入にあたって近畿大学では、システム構
成の柔軟性や拡張性、運用管理性を考慮
し、ブレード・サーバと仮想化によるシステ
近畿大学 KUDOS(情報処理教育棟)
ムを導入することを決定する。その背景と
なった考え方について、総合情報システム
部 教育システム課 課長代理、矢藤邦治
氏は「クラウド・コンピューティングが注目
されていたこともあり、システム運用の効
率 化や運 用 管 理コストを低 減できるクラ
ウド環 境を視 野に入れたシステム構 築に
挑戦しようと考えました」と説明している。
従来より近畿大学では、各学部の情報処
理 教 室システムは個 別に導 入 ・ 運 用され
てきたが、
「KUDOS(情報処理教育棟)」
を 開 設した 2 0 0 0 年 から 、そ の 運 用 を
段 階 的に総 合 情 報システム部に移 管し、
KUDOSに設置されたCisco UCSとEMC CLARiX
2008年には薬学部を除く全学部の移管
を終了した。それ以降、総合情報システム
部では、従来からの教育内容や使い勝手
を維持・継続するために、各学部が導入・
構 築したシステムをそ のまま運 用してき
たが、同部が今回のシステム構築を機にク
ラウド環境への移行を目指す背景には、こ
れまで個別に運用されてきたシステムを
統 合することで、運 用 効 率 の 向 上と運 用
管 理コストの 低 減を実 現することが狙 い
にある。
新コンセプトのシステムを国内初導入
システムの信頼性を確保する
CLARiX CX4
近 畿 大 学が今 回 導 入したシステムは、
サーバとネットワーク、ストレージ・アクセス
が統合された「Cisco Unified Computing
System
(UCS)
」、
ネットワーク・ストレージ・
システム「EMC CLARiX CX4-240」と
「EMC CLARiX CX4-120」
(バックアップ
用)
、
SANスイッチ
「Cisco MDS 9124」
で構
成され、
同期/非同期のリモート・ミラーリング
機能を提供するレプリケーション・ソフトウェ
ア
「EMC MirrorView/S」、
ストレージ管理
ソフトウェア
「EMC NavisphereManager」
「EMC NavisphereAnalyzer」、バックアッ
プ・ソフトウェア「EMC SnapView」なども
導入された。
Cisco UCSのファブリック・インターコ
ネクトには、
「Cisco UCS 6140XP」を
2 台 導 入し 、こ れら を 2 台 の ブレ ード ・
サ ー バ「 Cisco UCS 5108」と4 本 の
10Gbpsイ ー サ ネットで 接 続 。サ ー バ ・
シャーシ内には、ハーフサイズのブレード・
サーバ「Cisco UCS-B200-M1」を16台
格納している。また、
サーバ仮想化ソフトウェ
ア「VMware」によって 、1 台 のブレード・
サーバ上に1個の仮想マシンを稼働させ、
仮想マシンあたり20台のクライアントを
ネットワーク・ブートできるようにした。
新システムの導入に際しては、ブレード・
サーバと仮想環境によるプラットフォーム
の構築が前提となったほか、仮想環境でも
従 来と同 様 のクライアント環 境を実 現で
きること、サーバの余剰リソースを他の学
部や目的にも利用できる拡張性などが要
件となった。今回の新システムは、
こうした
要件を満たすものとして2009年7月に
導入が決定され、同年12月に基本設計・
運 用 設 計 を 開 始 、実 機 検 証 、詳 細 設 計 、
総合・運用テストを経て、2010年4月の
総合社会学部の開講に合わせて本番稼働
を開始した。今回のCisco UCSの導入は
国内で初めてのケースとなるもので、シス
テムの 設 計 、構 築 、実 機 検 証 、統 合テスト
を伊 藤 忠テクノソリューションズ( C T C )
が、SIをNTT西日本が担当した。
近畿大学 総合情報システム部教育システム課
髙木 純平
氏
近畿大学 総合情報システム部教育システム課 課長代理
矢藤 邦治
氏
矢藤氏は「サーバ環境自体に大きな問題
が発生することはないと判断しました」と
し、
「 それよりもシステム全体の信頼性、耐
障 害 性と処 理 性 能を重 視しました」と語
る。新システムのストレージには、185台
のクライアントをネットワーク・ブートする
イメージや運用基盤となるサーバ・イメー
ジが格納されるため、ストレージ・システム
には高速でクライアント・イメージをブー
トできる性能と、サービスを停止させない
信 頼 性とバックアップ /リストア 機 構 が
重 要 な 要 件となる。今 回 、新 システムに
導入されたEMC CLARiXは、
こうした要件
を満たすストレージ基盤として選定された
もので、総合情報システム部教育システム
課の髙木純平氏も「EMCとシスコシステ
ムズ、ヴイエムウェアがVCE連合として協
業していることから、システム全体の親和
性が高く、安心して導入できました」と語っ
ている。
2010年4月に本番稼働を開始した新
システムは、近畿大学が当初想定していた
以上の処理性能で安定稼働しているとい
う。現在同大学では、
ネットワーク・トラフィッ
クや仮想OSの処理速度、ストレージ・シス
テムの 性 能といった観 点からシステムを
分析するなど、コンピューティング・リソー
スのさらなる効率利用を進めようとしてい
る。そ の 視 線には、パブリック・クラウド・
サービスの利用を含めた学内システム基
盤のクラウド化がはっきりと見えている。
25
Case Study2
薩摩川内市
システム構成図
様
URL:http://www.city.satsumasendai.lg.jp/
■所在地:〒895-8650
■鹿児島県薩摩川内市神田町3番22号
■職員数:1,149人(平成23年4月1日現在)
左から
薩摩川内市
企画政策部 情報政策課 行政情報グループ 主任
業務システムの仮想化で、
初期投資抑制や運用コスト削減が実現。
開けた“地方自治体版プライベート・クラウドへの道”
井ノ下 真一
氏
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社
西部システム技術部 システム技術第2課
岡林 誠治
氏
行政システム九州株式会社
第2ソリューションビジネス推進部 鹿児島支店
桑原 雅之
氏
薩摩川内市では、市民の生活を行政の立場から支えるため、2009年、市が所有するITシステムの今後のあり方に
ついて抜本的な検討を開始した。高いコスト・パフォーマンスを発揮するシステム構成を模索する中で、選択したの
はEMC統合ストレージの採用と仮想化によるサーバ統合だった。メインフレームおよびオープン・システム、双方
のストレージとなったEMC Symmetrix、VMWare環境を取りまとめるEMC Celerraを中核に構築された新シ
ステムは、職員の運用工数削減、処理能力、データ保護レベルの向上を実現。ITコスト削減の目処もたっており、
“地方自治体版プライベート・クラウドへの道が開かれた”
と評価されている。
豊かな自然に恵まれた日本人のふるさと
鹿児島県薩摩川内市は、九州・薩摩半島
の北西部に位置する地方都市だ。東シナ
海 に 面した 変 化 に 富 む 白 砂 青 松 の 海 岸
線、市街部を悠々と流れる川内川、みどり
豊かな山々や湖など、そこは自然にあふれ
ている。名だたる温泉郷でもあり、東シナ
海に浮かぶ美しい甑(こしき)島は、映画や
ドラマのロケ地としてもたびたび選ばれて
いる。
2011年3月には、九州新幹線が全線
開 業し、福 岡から約 1 時 間 2 0 分 、関 西も
4時間以内とぐっと近くになり、ビジネス・
観光ともに今後期待される。一度訪れると
強く記憶に残る
“みんなのふるさと”
にしよ
うと、3,800人の薩摩川内市シティセー
ルスサ ポーター ”が 意 気 込 む 。人 口 は 約
10万人。この市民の生活を行政の立場か
ら支えているのが、薩摩川内市だ。
ITシステムの今後をどう考えるか
2009年、同市では市が所有するITシ
ステムの今後のあり方について抜本的な
検討を始めた。2004年に行われた、いわ
ゆる
“平成の大合併”
で1市4町4村が統合
され、薩摩川内市となった。そして、それら
すべてのITシステムが現在の薩摩川内市
26
の庁舎内に集結。そこには、メインフレー
ムに加 えてオ ープン系システムも あり、
当時ですでにサーバ台数は行政系だけで
も70台にも上っていた。このままいけば
サーバは増加する一方で、運用は煩雑化
し、そのスペースの確保や空調・電気工事
も考え続けなければならない。
どうすれば高いコスト・パフォーマンスを
発揮するITシステムが構築できるか。熟考
を重ねた結 果 、すべてのシステム環 境を
オープン化することを決定。ただ、その時
点ではメインフレーム環 境を移 行するに
は時間が不足しており、2011年12月ま
で引き続きリースでメインフレームを運
用することになった。だが、そうした中で
も、できるかぎり無駄にならないIT投資を
実現したいと同市は考えた。
し かし 、簡 単 に 採 用 す る わ け に は い か
なかった。薩摩川内市 企画政策部情報政
策課 課長 田中晴樹氏は語る。
「本市が所有するITシステムは、薩摩川
内市民の重要な情報を預かっており、市民
との窓口として24時間365日ノンストッ
プで稼働し続けなければなりません。まず
は技術的な安定性、堅牢性を、そしてコス
ト・メリットをしっかり確認する必要がある
と考えました」
そこで、同市はCTCの支援によるワー
クショップを実施。これは、ITインフラ統合
プロジェクト推進支援技術(SOIDEAL)の
一環として行われるもので、顧客の所有す
るITシステムの現状分析、統合効果試算、
統 合 手 法 の 技 術やポリシー の 検 討 、統 合
実行計画作成などを行うものだった。
EMCのストレージ性能、
仮想化実績を評価して採用
集 約 可 能といった統 合 効 果 試 算 数 値も、
田中氏や井ノ下氏の背中を押す大きな要
因となった。
ワークショップでは、E M C の み ならず
主 要 ベンダーすべてのストレージがさま
ざまな 角 度 から評 価 された 。そ の 結 果 、
選 択されたのは、最 高レベ ルの 可 用 性を
提 供 するエンタ ー プ ライ ズ・ストレ ー ジ
EMC Symmetrixと、高性能な統合ネット
ワーク・ストレージEMC Celerraだった。
薩摩川内市 企画政策部 情報政策課 行政
情報グループ 主任 井ノ下真一氏は選ん
だ理由を次のように語る。
「EMCは、ネットワーク・ストレージ部門
でも、仮想ストレージ部門でも、専業であ
るだけに世界的に高いシェア、実績を有し
ていることが数字で証明されて納得でき
ました。利用できるサーバ、アプリケーショ
ンが非常に多く、実装の可能性やスピード
が確保できることもゆるぎない信頼を置
く材料になりました。
また、
メインフレーム、オープン系の両方
が同 時に接 続できるストレージは他にな
く、技術的な優位性も高く評価しました」
加えて、ワークショップで算出された、IT
コストの 3 割 削 減 、サ ーバ7 0 台を4 台に
出てきた提案は統合ストレージと
サーバ仮想化
そ の 意 向 を 受 け て 、基 幹 系 シ ス テ ム
アプリケーションベンダ 行政システム九州
はシステム・インテグレータ 伊藤忠テクノ
ソリューションズ(以下、CTC)より技術支
援 を 受 け 、同 市 に 対して E M C 統 合 スト
レージの活用と仮想化によるサーバ統合
を提 案した。実 現すれば地 方自治 体で初
めて実現する先進ソリューションとなる。
薩摩川内市 企画政策部 情報政策課 課長
薩摩川内市 企画政策部 情報政策課 行政情報グループ 主任
氏
氏
田中 晴樹
井ノ下 真一
運用工数の削減、処理能力・
データ保護レベル向上を実現
正 式な決 定は2010年 3月に下され、
EMC Symmetrixがメインフレーム・スト
レージとして信頼に足る安定性を発揮す
るとともに、翌月4月よりハードウェアの更
新時期が迫った業務システムから、EMC
CelerraをベースにVMware環境での仮
想化が進められた。すでに6月の中旬には
4 つ の 業 務 が 仮 想 化 環 境 で サ ービ スイ
ン。現時点で15業務、全システムの20%
程度が仮想化を完了しており、サーバ・マ
シンの最後の更新時期が来る4年後まで
順次、移行が進められていくという。
EMC統合ストレージの導入は、同市に
以下のような効果をもたらしている。
第 1に、運 用に職 員 の 手 がかからなく
なった。導入してから8ヶ月間、安定稼働を
続けており、通 常 の 運 用 業 務では職 員が
筺体に触れることはない。一度だけ庁舎が
停電になった際には、EMCがリモートで停
止操作を行った。
第 2に、業 務システムの 処 理 能 力が高
まった。バッチ処理の中には従来10時間
かかっていたものが1 時 間と1 / 1 0に短
縮したものもあり、職員の業務効率向上に
大きく貢献しているという。
第3に、データ保護レベ ルが向上した。
これまでは個々の業務システムごとにバッ
クアップを行っていたが、新システムでは
週に1回、すべての業務システムのデータ
をストレージ主導で自動バックアップする
ため、1人の職員がテープ交換さえ行えば
よく、バックアップ 漏 れといったリスクも
解消した。
地方自治体版プライベート・クラウドへの
道が開かれた
一方、仮想化によるサーバ統合はどうか。
まず 、サ ー バ 増 加 が 発 生しな い た め 、
スペース確保や空調・電気工事の懸念から
解放された。
また、
コスト削減効果も見えてきた。現時
点での試算では、2012年、オープン系シ
ステムの45%が移行された時点で従来の
コストを下回ることが明らかになっている。
以降、仮想化を進めるほどに低減度がどん
どん高まっていくとのことだ。
冒頭で触れたとおり、2012年1月には
メインフレームが撤去されるが、先進のソ
リューションを採用したことで、ストレージ
はそのまま生き続ける。その日が来ても、
単にストレージ内のボリューム構成を変え
て別の目的に利用することができる。
業務システムを全面統合可能な新シス
テム、
これを井ノ下氏は
“地方自治体におけ
るサーバ仮想化は、地方自治体版のプライ
ベート・クラウドだ”
と語る。
「市の業務も企業の事業と似た側面も
あり、これもプライベート・クラウドの1つ。
これによって初期投資が抑制できるだけで
なく、スペースや環境整備、人件費を含め
て運用コストが大きく削減できます。今回
の構築によってプライベート・クラウドへの
扉は開かれ、この扉はもう二度と閉じられ
ることはありません」
(井ノ下氏)
これはまさに、EMCストレージを中核と
した先進ソリューションが、地方自治体のIT
に新しい未来をもたらした好例である。
27
TOPICS
EMCジャパン、重複除外ストレージ市場で
圧倒的なシェアNo.1を獲得
EMC WORLD Las Vegas 2011
LAS VEGAS MAY 9-12
CLOUD MEETS BIG DATA
レポート
風薫る5月、第11回目となるEMCワールドが米国ラスベガスにて開催されました。世界103ヶ国から
10,000人を超えるお客様、パートナー様、プレス、アナリストの皆様に、ご参加いただき、会場はラスベガス
の街に負けないほどの華やかな熱気に包まれ、大盛況のイベントとなりました。
シェア
No.1
∼Data DomainとAvamarの2製品で、
2010年金額ベースで国内シェア82.5%を達成∼
EMCジャパンは、2011年4月7日に株式会社テクノ・システム・リサーチ
(TSR)
が発行した
「2010年版 スト
レージソリューション市場のマーケティング分析」
において、国内の重複除外(De-Duplication)
ストレージに
て市場シェア82.5%(金額ベース)
を獲得し、
シェアNo.1を達成しました。今回、TSRが発表したマーケティン
グ分析は、2011年2月に調査されたもので、サンプル数23,500件の中の515件の有効回答数を基に分析
した結果となります。
重複除外市場の推移 (※東日本大震災前の予測)
今年のEMCワールドでは「Cloud meets Big Data
(クラウドとビッグデータの交差点)」をテーマにさまざまな
講演、発表、セミナー、展示などを実施。EMCコーポレー
ションの最高経営責任者であるジョー・
トゥッチをはじめ、
各エグゼクティブによる基調講演により、数多くのメッセー
ジおよび新製品や新テクノロジーの紹介が行われました。
また体験型トレーニングや自由討論会を含む500以上の
ブレークアウト・セッション、100以上のハンズ・オン・セミ
ナーや展示、教育セッション、そして各種新製品の記者会見
国内の重複除外ストレージ市場は、2010年から2015年にかけ、金額ベースで19.5%、台数ベースで27.8%の年平均成長率となると予想さ
れており、2010年からの5年間で金額ベースで2.4倍、台数ベースで3.4倍にまで成長すると見込まれております。今後、重複除外ストレージは、
ストレージ市場の中でも突出した成長が期待される分野として注目されています。
アナリストの市場およびEMC分析
TSRのシニアアナリスト幕田範之氏は、
「 2010年重複除外ストレージ
の市場規模は3,319百万円、1,083台であり、2009年からの対前年比
は金額ベースで4.4倍と急速に成長しました。
この要因は同市場において
トップシェアで あるE M Cジャパンの E M C D a t a D o m a i nとE M C
Avamarの売上が大幅に拡大したことにある」
との見解を示しています。
2010年の重複除外ストレージ市場におけるEMC ジャパンのメーカー・
シェアは、金額ベースで82.5%、台数ベースで73.0%、容量ベースで
65.8%と、市場の大半を占める大きな勢力を持っています。
が、各所にて実施されました。
D社 0.5%
C社 4.5%
B社
6.0%
A社
6.5%
株式会社テクノ・システム・リサーチ
シニアアナリスト
幕田 範之氏
基調講演では、ジョー・
トゥッチが登壇。
「クラウドとビッグ
ユーザーの導入効果
データの 交差するところにビジネス・チャンスがある」と
今回のTSRのユーザー調査では、
プレ調査(5,166件)
において重複除外(De-Duplication)
を理解
していると回答したユーザーは16%であり、ほとんどが理解していない状況でした。
しかしながら、スト
レージを認識しているユーザーを対象にした本調査(515件)では、45%が重複除外を理解し、さらに
26%が導入を検討しており、導入意欲の高さがわかります。
また、重複除外を導入しているユーザーのう
ち、81%がデータ量を1/5以上削減できたと回答しており、確実に効果は上がっていると見られます。
言及。
「クラウド」をいかに加速化し、ペタバイト級のデータ
である「ビッグデータ」をどのように管理・分析して、即座に
お客様のビジネスに求められる価値を引き出せるのか、
と
いう点を柱に基調講演が行われました。
また、同会場では、
「 CIOサミット」やEMCのスポンサー
により、データを真に考える科 学 者たちが集う「データ・
サイエンティスト・サミット」も開催されました。これはデー
タに基づく学術の識者や、
ビジネスやITにおけるリーダーが
参加する先進的なサミットで、未来に向けてのデータのあり
方などが討論されました。また、高校生参加による「VEX
Roboticsコンペティション
(ロボット・コンテスト)」も開催。
見どころ満載のパワフルな4日間となりました。
来年のEMCワールドは、2012年5月21日からラスベガスにて開催
されます。1年後のEMCがどのようなメッセージを発表しているのか!?
今後も、テクノロジー・リーダーとして、ますます魅力あるテクノロジーや
ソリューションを提供してまいります。どうぞご期待ください。
28
2010年重複除外ストレージ市場
メーカー・シェア ∼金額∼
EMC ジャパン
82.5%
※出典:株式会社テクノ・システム・リサーチ
「2010年版 ストレージソリューション市場の
マーケティング分析」
編 集 後 記
今話題のFacebook。ハーバード大学の学生が立ち上げ、すでに7億
人以上の会員がいる。EMCのボストン本社の人と会話した際、彼の娘が
Facebookの初期からのメンバーであり、Facebookを扱った有名な
映画のことなどを誇らしげに語っていた。一方、シリコンバレーの人と
話すと、IT業界、いや世界全体を変えているのは米国の西海岸であり、
EMCも本社が西海岸にあった方がよいのではという人もいる。米国
の東海岸と西海岸では、それぞれプライドを持ち、自信にあふれてい
る。それは、日本の東京と大阪に似ている面があると思う一方、日本が
世界を変えているのだ、
と主張できるように頑張っていきたい。
( F)
[発 行 人] 笛田 理枝子
[編 集 長] 金森 淳
[発 行] EMCジャパン株式会社
東京本社 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2丁目1番1号 新宿マインズタワー
URL:http://japan.emc.com
送付先/住所変更などのお問い合わせは下記へ
onマガジン日本版事務局
メール:[email protected]
この度の震災では各国の迅速な救援活動が印象的だった。特に隣国
の 中 国・韓 国 は、日本との 国 際 的 な 問 題が あったもの の 、最 優 先で
援助に来てくれたのは非常に有り難いことだ。ただ、日本政府の自力で
何とかするという態度が逆効果となり残念。政府の対応は歯がゆいば
かりだが、これも震災復興の方針や対応策が決まらず、すべてにおい
て後手後手に回ってしまった結果だ。海外で日本に対して不信感が
広 がって い るの も 無 理 は な い 。しかし日 本 の 企 業 は 、この 震 災 を
教訓として、信頼される体制づくりを早急に整えておかなければなら
金
ない。政府の二の舞にならぬように。○
EMC²、EMC、Avamar、Celerra、CLARiX、Data Domain、InsightIQ、Isilon、Isilon Systems、
MirrorView/S、Navisphere Analyzer、Navisphere Manager、OneFS、RSA、SmartConnect、
SmartLock、SmartPools、SmartQuotas、SnapshotIQ、SnapView、SRDF、Symmetrix、SyncIQ、
Unisphere、VMAX、VNX、VNXe、VPLEXは、米国EMCコーポレーションの登録商標または商標です。
これらの商標は、
日本または諸外国で商標登録等により、適用法令で守られている場合があります。
他のすべての名称ならびに製品の商標は、
それぞれの所有者に帰属します。本誌掲載内容は、
EMCジャパン株式会社および米国EMCコーポレーションに帰属します。
また、無断転載はご遠慮ください。
29
Fly UP