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貨物船はっこう 21 流し刺し網損傷事件

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貨物船はっこう 21 流し刺し網損傷事件
平成 19 年広審第 65 号
貨物船はっこう 21 流し刺し網損傷事件 (簡易)
言 渡 年 月 日
平成 19 年 12 月 13 日
審
判
庁
広島地方海難審判庁(藤岡善計)
理
事
官
古城達也
受
審
人
A
名
はっこう 21 一等航海士
職
海 技 免 許
損
三級海技士(航海)
害
はっこう 21・・・損傷ない
流し刺し網 ・・・一部に損傷
原
因
見張り不十分
裁
決
主
文
本件流し刺し網損傷は,見張りが十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
裁決理由の要旨
(海難の事実)
1
事件発生の年月日時刻及び場所
平成 18 年 6 月 30 日 19 時 20 分
香川県手島西方沖合
(北緯 34 度 24.1 分
2
船舶の要目
船
種
船
名
貨物船はっこう 21
総
ト
ン
数
2,187 トン
長
121.12 メートル
全
機 関 の 種 類
出
3
東経 133 度 37.9 分)
力
ディーゼル機関
4,550 キロワット
事実の経過
はっこう 21 は,平成 13 年 7 月に進水した,限定沿海区域を航行区域とする船尾船橋型の
ロールオン・ロールオフ貨物船で,A受審人ほか 8 人が乗り組み,乗用車 60 台及びシャー
シ 29 台を積載し,船首 4.47 メートル船尾 5.16 メートルの喫水をもって,平成 18 年 6 月 30
日 18 時 40 分岡山県水島港を発し,宮崎港に向かった。
19 時 05 分A受審人は,水島港外で,船長から船橋当直を引き継いで甲板手と 2 人体制の
船橋当直に就き,塩飽諸島西方沖合を南下し,19 時 16 分小手島港 4 号防波堤灯台から 343
度(真方位,以下同じ。)2.55 海里の地点に達し,針路を 205 度に定め,15.0 ノットの対地
速力で,自動操舵により進行した。
ところで,香川県手島西方沖合では,4 月下旬から 7 月下旬まで及び 9 月上旬から 11 月下
旬までの間,流し刺し網漁が行われ,同網漁は,夕刻,長さ約 900 メートルの網を,その上
辺が海面から約 3 メートル下になるよう投網し,翌朝揚網されるもので,網の存在を示すた
め網の両端と中央に海面上の高さが約 1 メートルの標識灯が設置され,A受審人は,付近海
域を何度も通航していたので,同網漁が行われていること及び前示標識灯が設置されている
ことを知っていた。
定針したとき,A受審人は,正船首方 1.0 海里のところに流し刺し網が設置され,同網の
存在を示すオレンジ色の標識灯を視認することができる状況であったが,左舷船首方約 1.5
海里のところで漂泊中の漁船が動き始めたことから,同船の動静に気を奪われ,前路の見張
りを十分に行わなかったので,このことに気付かなかった。
こうして,A受審人は,その後も前路の見張りを十分に行わず,流し刺し網に向け続航中,
19 時 20 分小手島港 4 号防波堤灯台から 323 度 1.9 海里の地点において,はっこう 21 は,原
針路,原速力のまま,同網に乗り入れ,これを乗り切った。
当時,天候は曇で風力 2 の南西風が吹き,視界は良好であった。
その後,A受審人は,流し刺し網に乗り入れたことを知り,船長に報告するとともに,回
頭して現場に戻り,事後の措置にあたった。
その結果,はっこう 21 には損傷がなかったが,流し刺し網の一部に損傷を生じた。
(海難の原因)
本件流し刺し網損傷は,香川県手島西方沖合において,南下する際,前路の見張りが不十分
で,流し刺し網に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為)
A受審人は,香川県手島西方沖合において,南下する場合,流し刺し網の存在を示す標識灯
を見落とすことのないよう,前路の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同
人は,動き始めた漁船の動静に気を奪われ,前路の見張りを十分に行わなかった職務上の過失
により,流し刺し網の存在を示す標識灯を見落としたまま,同網に向首進行し,同網に乗り入
れる事態を招き,網の一部に損傷を生じさせるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては,海難審判法第 4 条第 2 項の規定により,同法第 5 条第 1
項第 3 号を適用して同人を戒告する。
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