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かって大映で 一 世を風靡した勝新太郎 の 「座頭市」 シリーズが、 十六年

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かって大映で 一 世を風靡した勝新太郎 の 「座頭市」 シリーズが、 十六年
か つて大映 で 一世を風靡 し た勝新 太郎
、
の ﹁座頭市﹂ シリ ーズが 十 六年 ぶり に
、
勝自 ら の製作 ・脚本 ・監督 ・主演
復活
そ して十 二月 にな って広島 県沼隈郡 の
〃みろく の
里″ に建 てられた宿 場町 のオ
の 一人 四役 で ﹁座頭市﹂として再登場す
ること にな った。十月 のクラ ンク ・イ ン
、
直前 に六本木 で記者会見が行 なわれ 私
、
はそ の後 中華料理店 で久 しぶり の勝 さ
、
、
んに会 い また共演者 の結形幸 内 田裕
、
、
、
也 陣内孝則 樋 口可南子 ら 旧知 の人
、
たち それ に初対面 の片岡鶴 太郎 などと
。
顔を合 せた
夕た後 ″
∂
/夕
xそぼ「
とめ
︱プ ン ・七 ット で の ロケ撮 影 を見 のた
学
、
め 全 く 未 知 の こ の土 を訪 れ た。 羽 田
地
、
さ ら にそ こか ら
から飛 行 機 で岡 山 空 港
︶
る
。
新聞
、
雑誌
、 レビ ど
テ
な の取 材 陣 も 大
、
挙 し て来 て お り そ の夜 は大方 丈 と いう
。
お寺 み た いな所 で大宴 会 勝 さ ん には前
、
、
に市 川 雷 蔵 日宮 二郎 水 原 弘 ら に つい
、
て いろ いろ と
ても ら った こ
開
か
を
話
せ
、
こ の映
とも あ り、 親 しく 酒 を く 兵変 し
ど を す る。裕 也 は ﹁俺 も ﹃ヨ ミ ック 雑
、
誌 ﹄ の裕 也 です か ら 緒 形 さ ん に は負 け
な いよう にし ま す ﹂ と 言 い、緒 形 、 音
。
ま た ﹁昔 の ﹃座 頭 市﹄ の こと は忘 れ
て 全 く新 し い映 画 と し て見 ても ら っても
笑
い い ﹂と裕 也 は言 う のだ が 、 し かし古 き
を たず ね て新 しき を 知 る、 か つて全 盛 を
き わ め た この シリ ーズ に ついて、 そ れ を
知 ら ぬ世 代 の人 た ちも 若 子 の知 識 を 得 て
。
お いて損 はな いだ ろう そ れ と若 き 日 の
、
勝 新 太郎 の姿 を も から め て 少 しば か り
。
注 解 を し ておき た い
勝 新 太 郎が 大映 京 都 撮 影所 に俳 優 と し
て 入社 し た のは昭和 二十 九年 。 彼 は長 唄
、
の杵 屋勝 束 治 の次男 と し て 杵 屋勝 丸 と
いう 長 唄 名 を持 って いる。 長男 は同 じく
俳 優 と し て活 羅 中 の若 山宮 三郎 であ る。
、
同 時 に大 映 入社 し た新 人 には 関 西歌
、
舞 佼 で市 川 寿 海 の養 子 だ った市 川 ■威
、
新 派 の花 柳 武 始 な どが お り これ ま で役
画 に つ いて の話 は翌 朝 に でも し ても らう
こと にな って いる 。
者 と し て の経 験 が 無 か った のは勝 だけ で
。
。
あ った 映 画界 は権 威 に弱 い 督蔵 らが
、
最 初 か ら エリ ー ト扱 いだ った の に反 し
勝 は し ょせ ん ″三味 線 弾き ″ の扱 いだ っ
。
た
車 で 一時 間 半 も 掛 け て現 場 へ や って き
。
、
た 着 いた時 はも う 日没 近 く こ の日 の
、
撮 影 が 終 って いた平 服姿 の勝 新 太 郎 玉
。
緒 夫妻 に会 う 勝 プ ロモー シ ョンの社 長
、
であ る中 村 玉緒 は こ の映 画 の完 成 ま で
、
女優 業 を休 む のだ そ う で 自 分 は出演 せ
家 光 の乱 心 ・激突 ﹂ で大 チ ャ ンパ ラを や
ったば か り の緒 形 、
一カ月 前 に青 山 の ロ
プ に白 虎 隊員 の服装 を し た勝 新 太郎 が 化
、
粧室 から威勢 よく 飛 び出 し てき て 俳優
こ の夜 は勝 夫妻 の ほ か に東 映 の ﹁将 軍
ック ・コンサ ー ト の
楽 屋 で会 ったば か り
、
の裕 也 そ れ に勝 夫 妻 の長 男 であ る奥 村
。
雄 大 な ど が待 って いる 父 親 に似 ず 大 人
。
し︼
そう な若 者 であ る
符 形 と は昨年 一緒 だ った カ ンス の話 な
こ の三人 が 同 時 にデ ビ ューし た作 品が
﹁花 の白 虎 隊 ﹂ ︵加 戸 放 監督 ︶ であ った。
口ヶ に出 発 す る時 、 白 塗 り の メーキ ャ ッ
ず に こ の映 画 の進 行 に いろ いろと細 か い
。
気 づ か いを し て いる
さ て宿 場 町 のオ ープ ンはな かな か立 派
、
な も ので そ こを 歩 いて いる と時 代劇 全
。
盛 の頃 に生 き て いる よう な錯 覚 に陥 る
こ こに は家 が 四〇 戸 建 て られ 、施 工 に要
し た期 間 が 一八〇 日、費 用が 二億 円 だ そ
う で、 今 どき な か な か大 掛 りなも のであ
103
会館 の正 面 に横 づ け にな って いた ハイ ヤ
ー に乗 り こも う と し た。
、 、
演 抜 課 員 が 走 ってき て ﹁君 君 だ め
、
。
だ よ 君 はパ ス に乗 る んだ ﹂ と 言 う 勝
は脇 役 俳 優 や裏 方 さ んた ちが 乗 って いる
パ スに不承 不承 乗 り こま なけ れ ば な ら な
、
。
か った そ の間 雷蔵 は悠 然 と ハイ ャ ー
。
に乗 って出 発 し て し ま った
こ の作 品 で は雷蔵 が 主役 、 武始 が 準 主
、
、
役 勝 は脇 役 にすぎ な か ったが そ れ は
役 者 と し て のキ ャリ ア の差 で やむ を 得 な
、
いと し ても 雷蔵 のギ ャラが 三十 万 円 な
、
の に比 し 勝 は 三万 円 と いう ひど い差 で
。
あ った
こ の映 画 をき っかけ に雷蔵 は スタ ー街
、
道 を突 っ走 り 海 回健 二監督 ﹁新 ・
平家物
0
語 ﹂ ︵昭 3︶ で平 清 盛役 を演 じ たあ た り
、
から 大 映 京 都 を代 表 す る者 手 の ト ップ
・ス タ ーと し て、 めき めき 売 り出 し て い
った。
勝 のほう はそ の間 も 一向 に人 気 が 出 な
。
か った 彼 は い つも 白塗 り の 二枚 目役 を
、
や ら され て いたが それ は大 映 の起 用 法
、
の誤 ま り であ り 彼 はただ単 に ナ マ ッ白
い 二枚 目 の似 合 う キ ャラ ク タ ー で はな か
った。
う だ つのあ が ら ぬ数 年 間 を 過 し た後 、
﹁ド ド ンパ酔 虎 伝 ﹂ ︵田中 徳 〓監督 ・昭
、
6
3 ︶あ た り から だ んだ ん地 が 出 てき て
、
三枚 目的 な要 素 を加 え 奔 放 に暴 れ 回 る
、
二枚 目 半 的 な役 が 多 く な り そ れ で彼 は
。
つい に生 気 み なぎ った そ の彼 が 始 め て
爆 発 的 な 人 気 を 得 た のが 今 東 光 原 作 の
0
6
﹁悪 名 ﹂ ︵田中 徳 三 ・昭 3
︾ であ つた
朝 吉 を慕 う
、
歯切 れ
こ の映 画 で はも う ほと んど 白塗 り の 二枚
目姿 を 放 葉 、 暴 れ ん坊 の河 内 の 一匹狼 の
。
若 い規 分 ・朝 吉 に扮 し た
、
勝 と共 演 し た 田宮 二郎 が
チ ンピ ラ の モー ト ルの貞 に扮 し
の良 い タ ンカを切 る こ の 二人 は絶 妙 の コ
、
ンピを 組 み、 暗一
嘩 に次 ぐ 喧嘩 片 っ端 か
ら 悪 い奴 ら を や っつけ てゆ く の が 痛 快
、
。
で 観 客 は熱 狂的 な拍 手 を 送 った
、
田中 監督 の カ ラ ツと し た演 出 も 良 く
こ の映 画 は当 時 と し て は莫 大 な 八 五〇 〇
。
万 円 の配 給 収 入 を あげ た これ は勝 の入
、
社 七年 目 にし て の初 の大 ヒ ット であ り
、
、
同 じ年 に す ぐ に﹁続 ・
悪 名 ﹂が 作 られ シ
リ ーズ 化 さ れ て大 映 のド ル箱 と な った。
そ の翌年 に ﹁座 頭 市 ﹂ シリ ーズ が 始 ま
る のであ る。
5
森一
勝 は昭和 3年 に ﹁不知火検校 ﹂ ︵
、
生 ︶と いう作 品 に出 て いるが ここで彼
、
の演 じ た飯 医者 ・徳 の市 は な んとも教
いよう のな いほど徹底 した極 悪 非 道 の
。
男 旗本 の若奥様 に自 分が貯 め こんだ金
、
、
を貸 し 弱 み に つけ込 んで犯 し し かも
ペテ ンにかけ て貸 した金を奪 い取 って彼
。
女を自殺 に追 いこむ しかも師 の検校 を
、
殺 して自 分が位 に つき 金 の力 で茶屋娘
。
を無理矢 理妻 にす る そ の妻 に男があ る
、
と知 ると彼 を毒 殺 自 分 の妻 をも しめ殺
し、 そ の罪を他人 にかメせる。
これだけ冷酪非情 に徹 したド ライな悪
●座頭市物語
玉 を作 りあげ た のは脚 本家 の大 塚稔 であ
った。 そ し て、 座 頭 市 シリ ーズ は子 母沢
、
寛 の原 作 と銘 打 って いるが 実 は市 の こ
と は彼 の随 筆 集 ﹁ふと ころ手 帖 ﹂ にた っ
、
、
た 一 二行 記 さ れ て いるだ け であ り 事
、
実 上 の原 作 者 は そ こからあ の ユ ニー ク
。
な人 間像 を 創 造 し た犬 塚 な のであ る
●統 ・座頭市物語
天知茂︶と人間的 にふ
て いる平手造酒 ︵
、
れ合 うあ たり の味 わ いも よく 結局彼 は
。
進 んで市 に斬 られ る のであ る この世 の
裏街道を歩く 日蔭者 同士 の友情 を描 いた
この作 品 で、市 は新 し いヒー ロー像 とし
て フ ァンに熱狂的 な支持を受 け る こと に
。
な った 仕込杖 を操 る独特 の スタイ ルが
。
人気 を呼 んだ
この第 一作 の配収 は五千万円 でまあま
、
同年 に森 一生監督 の ﹁続
・
さ 人 は急速 に
市
物
語
が
製
作
れ
気
座
頭
﹂
。
若山富 三
上昇 これ は市が兄 の浪人者 ︵
、
、
郎 ︶と故味方 として朗 い 結局 兄を斬
、
るが そ の後 の虚無的 な心 情 が 良 か っ
。
た 第 二作 ﹁新 ・
座頭市物 語只 田中徳 三・
、
8
昭 3︶ では 卑怯 な裏切 り方 をした自 分
、
の師 匠を斬 ってしま い 以後 二度 と正常
あ であ ったが
自 塗 り の 二枚 目 時 代 と は比較 になら ぬ圧
。
倒的 支 持 を得 た のであ った
第 一作 の ﹁座 頭 市物 語 ﹂ ︵三隅 研 次 ・
な世界 では生き て いけな いと いう業 を背
。
負 った市が描 かれ た
シリ ーズ は 一本 ごと に観客数が ふえ、
そ れ ま で の時 代 劇 の美 化 され た ヒー ロ
ー像 と は異 な り、 座 頭 市 は盲 目 で、 む さ
く る し いほど の汚 なづ く り、 ア コギ な や
く ざ 風 だが 、 居 合 抜 き の名 人 で、 目が 見
。く
えな い の に やた ら に強 い ′ク チ好 き で
、
女好 き と いう ま こと に人間 臭 ふん ぶ ん
、
と し た役 ど こ ろ で こ の男 を演 じ て勝 が
、
7
昭 3︶で は 市 の人 間像 はま だ暗 く世 を す
、
ね た陰惨 さが あ り 後 に出 てく る ユー モ
、
ア味 が な か ったが そ の市 が 結 核 を患 っ
104
「
座頭市」と勝新太郎
四作 目 の ﹁座 頭 市 兇状 旅 六 田中 ︾ に至 っ
て は前 作 を 一挙 に倍 増 す る 一億 五千 万 円
。
の配収 を あげ る大 ヒ ットと な った 日本
、
映 画 の配 収 が 落 ち始 め た こ の時 期 に 勝
は ﹁悪名 ﹂ と の ニ シリ ーズ で爆 発 的 な人
。
気 を得 る に至 った のであ る
さ ら に四十 年 から は ﹁兵 隊 やくざ ﹂ シ
リ ーズ も ヒ ットさ せ た。 こう し て勝 は配
0「音」を楽 しむ時代劇を正夫 しなきやレ
3
3けなレ
収 と か マス コミの話題 の点 では雷蔵 を上
、
回 って 二人 は ″カ ツライ ス″として大
。
、
吹京都 を支 え ギ ャラも雷蔵 と並 んだ
昭和 四十 二年 には独立して勝 プ ロを設
、
立 三船 敏郎 や石原裕 次郎 などと共 に ス
ター ・プ ロの 一環 を担 う こと にな った。
。
四十 四年 に市川雷蔵が死去 ﹁炎上﹂
、
﹁
華 岡青洲 の妻 ﹂など で男優賞 を取 り
﹁眠 狂 四郎 ﹂ ﹁忍 び の者 ﹂ ﹁陸 軍中 野 学
、
校 ﹂ シリ ーズ で活 躍 し て いた彼 は 三十
七 歳 の若 さ で癌 細 胞 に犯 さ れ て は か なく
も こ の世 を 去 った。
、
勝 は底 知 れ ぬ寂 家 感 を覚 え 二十年 後
。
の今 日 でも 雷茂 の こと を 忘 れ な い
四十 六年 には ﹁顔 役 ﹂ を自 ら製 作 ・監
、
督 ・主演 で撮 り 暴 力 組 織 と通 じ て いる
一夜 明 け て翌朝
、
み ろく の里 には かな
、
、
悪徳刑事 を人間的 に描き 演じ まる で
若 い映 画青年 のような若 々し い映像 を創
。
造 して驚 かせた
四十七年 には シリ ーズ第 二十 四作 ﹁新
、
翌
座頭市物 語 ・折れ た杖 ﹂を自 ら監督
年 の第 二十 五作 ﹁
新 座頭市物 語 ・笠間 の
、
火祭 り﹂ ︵
東 宝 安 田公義︶ で 一応 ピリ
オドが打 たれ た。
見 ると マイ ルド ・七プ ンが 一箱 置 いて
。
、
あ る そ んなも の な ん で俺 が 取 らなき
ゃいけ な いんだ 、 と 、 私 は黙 って勝 の顔
。
を 見 て いた
、
﹁な んだ よ 自 分 ば っか リ ビ ー ル 飲 ん
、
。
で 人 の顔 を じ っと見 て 煙 草 取 れ と言
、
勝新 太郎 新作 ﹁
座 頭市 ﹂を大 いに語 る
り強 い雨 が 降 って いた。 撮 影 が あ や ど ま
、
。
れ た 勝 新 太 郎 はゆ っく り眠 り 朝 遅 く
。
ホテ ルの Pビ ー で会 った 既 に撮 影 は か
、
。
な り押 し て お り 雨 で 一旦中 止 はき つ い
昨 夜 や ってき た陣 内 孝 則 は今 日 一日 し か
。
スケジ ュー ルが 空 いて いな い
、
だが 取 り敢 え ず 天 気待 ち の勝 さ ん に
て いる
って る んだ よ﹂
、
私が な おも ピ ー ルを飲 み 勝 の顔 を 見
。
マネ ーシ ャーが 慌 て て煙 草 を取
い ろ いろと 今 回 の映 画 に ついて話 を 聞 く
り に来 よう と す る。
、
、
田山 さ ん 俺 は こう いう芝 居 が
十
撮 り た いんだ よ﹂
、
マネ ーシ ャーた ちが ほ っとす る。
、
﹁これば っか り 五分 ぐ ら い描 いて たら
、
、
迫 力 あ って 面 白 い でし ょ スト ーリ ー
。
よ りね 何 も な いんだ か ら。 い つ べ ん
、
俺 が 煙 草 く れ って言 った時 ピ ー ル飲 ん
﹁なあ
私 はな おも 彼 を 見 つめ た ま ま で何 も し
、
。 、
な い と 彼 は突 然 語 調 を 戻 し て言 っ
。
た
。
、
﹁い いんだ よ 俺 は こ の人 に言 ってる
。
。
んだ よ 早 く 取 れ よ 取 れ ったら、 取 れ
つ,・
﹂
。
こと にす る
坐 ると直 ぐ 彼 は ﹁前 にあ んた に会 った
、
、
。
時 怒 鳴 った んだ よね ﹂ と 言 う ﹁そ う
、
。
そ う あ の は面 白 った と私
時
か
﹂
。 自
勝 身が
今 から 六年 ば かり前 の こと
監督 し て いた テ レピ の連 続 も の ﹁警 視
K﹂ が 祝 聴率 不振 のた め打 切 ら れ た ころ
、
。
だ 東 京 プ リ ンスな アルの 一室 で 彼 は
。
無 念 そ う に演 出 談 議 を し て いた 彼 は前
夜 テ キ ー ラを飲 みす ぎ て 二日酔 いだ と言
、
い ペ ッド に入 った ま ま ヨー ヒ ー を 飲
、
。
み 私 は枕 許 でピ ー ルを飲 ん で いた
。
彼 は突 然 私 に こう 言 った
、
﹁お い あ ん た の前 にあ る煙 草 一本 取 れ ﹂
ざ
Rυ
nv
、
。
でたら 工合 悪 い筈 だ ろ そ れ を あ ん た
。
は澄 ま し て ピ ー ル飲 ん でる これ 撮 って
。
ても 面 白 いも んね 人間 の持 って る チ ッ
、
、
ポ ケな も の そ んな チ ッポ ケな こと を
りな いから です か?
、
﹁いや そ う いう こと じ ゃな いんだ よ。
ど っち かと言 う と 信 用 でき る 監督 が いな
。
いと いう こと だ 不満 と い う の じ ゃな
く、 、
う から。 同 じ戦 争 直
ち
生
が
立
連
、
銀 座 の焼 跡 歩 いて
皆
後 に焼 跡 歩 いて ても
なぜ 狙 われ る かと言 う と
座 頭 市 は狙
の傍 に いち ゃ食 って いけ な いわけ だ よ⋮
⋮ と いう よ う な 感 じ のも のが や り た い。
これが 今 ま で たく さ ん作 ってき た、 有 名
てみ た いんだ よ
っこ
れ か ら按 摩 さ ん の映
画 を 撮 る んだ け ど 皆 さ ん見 る か見 な いか
って﹂
︱︱ 今 ま で の座 頭 市 の パ ター ンを取 っ
払 って新 し いも のを ?
、
我 々ぐ ら い の年 鮪 の人達 を喜 ば せ
﹁昔
てき た座 頭 市 の スト ーリ ーな ら今 た く さ
。
んあ る んだ よ そ れ を 全部 外 し た と こ ろ
、
で 新 し く こんな 眼 の見 え な い坊 主が い
、
たと そ こ でそ の回 り に裕 也 だ と か陣 内
、
だと か鶴 太 郎 だ と か そ う いう若 い人 た
。
ちを 配 す る わけ で 前 に俺が や って た頃
、
、
の相 手 役 は上 田吉 二郎 平 幹 二朗 仲 代
、
、
天 知 茂 だ ったけ ど 今 はも う そ う
達矢
いう と ころじ ゃなく な って る から﹂
︱︱ じ ゃあ 、 う んと現 代 風 の 座 頭 市
で?
、
。
﹁う ん 座 頭 市が 六本 木 を 歩 いて い て
、
それ じ ゃ﹃ア マ ンド ﹄で待 って る よ と か
、
言 っても 少 しも 可笑 しく な いよう な時
、
。
代 劇 が い つか来 る よ う な気 がす る んだ
、
、
だ か ら 一両 十 両 と 言 っても 暮 六 つ
と言 っても 今 の若 い人 に は分 から な い。
、
一両 と い った ら大 体 ソ ーブ ヘ三回遊 び
、
に行 け る よう な値 段 だ と か 俺 だ った ら
。
そ う いう見 当 つけ る か ら分 か るけ ど そ
う いう のも 色 々 ふく め てね、 迷 って、 迷
って、 迷 って、作 って る わけ だ よ ﹂
︱︱ 現 場 でも 迷 い に迷 って ?
﹁本 番 O K の出 た フ ィ ル ムが 送 られ てく
る んだ け ど ね。 だ け ど ヘンで書 いた物 じ
ゃな く て、 これ は フ ィ ル ムと照 明 と カ メ
ラ マ ンと俳 優 さ んと 、 そ こ にま かり間違
えば ど う にも な ら な く な っち ゃう ヒ ット
ラ ーみ た いな 監督 が いる わけ でし ょ。 だ
、
け ど も こ の ヒ ット ラ ー は 強 い こと を言
って るも んだ から、 皆が ず ︱ っと信 じ て
く れ てさ、 次 の場 面 ど うす る のかと思 っ
て次 の場 面 の ア ング ル待 って る んだ け ど
、
も そ の時 に この ヒ ット ラ ー の頭 の中 に
。
次 が 浮 か ん でな い時 の こ の孤 独 さ ね 皆
、
が 日を開 け て待 って てくれ る んだ よ 俺
電頭 市 と結形等"す るlR人
グズ グズ 言 って男 らし く な いと いう と こ
、
ろ に 男 の可愛 ら しさが 出 る ん でね ﹂
私 は彼 の即 興 の芝 居 を見 事 に受 け た わ
、
け だが 勝 さ んも あ の時 のや り取 りを よ
く え て いた わけ だ 。
覚
さ て、 話 はだ んだ んと ﹁座 頭 市 ﹂ の こ
と にな ってく る。
目本
酵皿
が
般
た のと深 川 の焼 跡 歩 いて た のと皆 そ れ ぞ
。
れ連 う それ と同 じ よう に監督 と か芸 能
。
人 の生 立 ち は み んな違 う から だ から 監
督 が 千 人 斬 る座 頭 市 を作 り た いと言 って
、
も 俺 が 嫌 だ と 言 えば それ でお し ま いだ
も ん。旺 頭 市 の持 って る魅 力 はな んだ ろ
うと 思 う と、 スト ーリ ーを決 め る んじ ゃ
、
な く て カ メラが 座 頭 市 を自 由 に歩 か せ
、
て そ れ に ついて行 ってみ よう と いう こ
とだ。
。
座 頭 市 が 〓木 のり平 の漁 師 に会 う そ
し て のり平 の紹 介 で女規 分 のお は ん ︵
樋
口︶ に会 う。 そ こ で喧 嘩 にな ってそ こ に
。
いら れ なく な る す ると他 人 のた め に人
を斬 り罪 を背 負 って浪 々の身 で歩 いて い
ると いう緒 形 幸 が 登 場 す る。 と ころが 彼
も 罪 が 背 負 いき れ る のかど う かと思 い始
。
す る と今 度
なる
め たと ころ で座 頭 市 に会 う
、
例 え は ﹃座 頭 市﹄ やる の に や くざ の
キ ャステ ィ ングが 浜 幸 ︵
浜 田幸 一︶ さ ん
、
み た いな人 だ った り 親 分 役 が 柄 葉 さ ん
われ る よ う な所 に いな いと生 き て いけ な
。
いんだ よ 映 画 の中 の座 頭 市 は阿弥 陀 様
﹁最 初 は真 似 ると いう こと から 入 って い
った んだ け ど、 そ のう ち に歌 舞 伎 役 者 だ
。
け じ ゃな く な ってき た んだ よ 現 代削 な
、
ん かや ると 地 下鉄 を待 って る人 だ った
り、 酔 っば ら って タ ク シー の運 転 手 と喧
、
嘩 し て いる人 た った り 今 こう し てイ ン
タビ ューし て いる ことだ った りな。 モデ
ルが 現 在 実 在 し て いる人 にな っち ゃう ん
。
だよ
、
み た い に小柄 な男 だ った り と いう風 に
、
発 想 し て いく か ら スト ーツ ーを 俳 優 さ
な座 頭 市が 帰 ってき たと いう んじ ゃな く
、
て 今 の若 い 二十 代 の人 た ち に問 いかけ
はそ の浪 人 から見 た座 頭 市 と いう こと に
。
。
次 に座 頭 市 が 狙 われ る
、
ん の台 詞 と か身 体 を使 って迫 ってゆ く と
、
いう よ うな脚 本 が 十 年 位 前 か らだ ん だ
き ち ゃ った んだ ﹂
ん嫌 にな って、
︱ ︱ 監督 ま でや ってし ま お うと いう の
、
は 役 者 と し て出 て いるだ け じ ゃ物 足
宿 場 町 の 大 オ ー ブ ン ・セ ッ ト
nv
「座頭市」 と勝新太郎
信 じ ら れ た時 に何 も 浮 か
。
を 俺 は見 つけ て る んだ って顔 を し て い
、
。
なが ら 実 は何 も 見 つか ってな い そ の
、
時 は舞 台 に出 て て ふと自 分 が 舞 合 に い
、
る こと 忘 れ て台 詞 が 出 て こな い そ の孤
。
独 と 同 じ でね
︱︱ 俳 優 の時 は台 本 は読 ま な いと言 っ
、
て いた し 今 回 も ス タ ッフの誰 もが 台
、
。
本 を 持 って いな いと言 う 事 実 脚 本
、
を書 かな いん です か それ とも 現 場 で
ズ タズ タ に直 す ん でか ?
、
﹁現 場 で変 え ち ゃう と 言 っても そ の変
。
、
え る物 が 無 い 脚 本 は書 く んだけ ど そ
れ は撮 り終 って から書 く んだ よ﹂
︱︱ じ ゃあ 、 毎 日現 場 で アイデ アを ?
、
﹁毎 日毎 日 って言 う んじ ゃなく て あ る
。
程度 ま で は出 来 て る わけ だ から ただ普
通 の人 の出来 て ると いう のは スト ーリ ー
、
が 出 来 て る と いう こと で そ れ で完 成度
。
が 数 十 パ ー 七 ント 俺 の出来 て る って言
う のは人 間関 係 の流 れ が や っと出来 て い
、
ると いう こと で スト ーリ ーは後 か ら出
。
来 る ただ 人 間 の毛 穴 から吹き 出 てく る
、
湯 気 の よう な も のが スト ーリ ーと し て
、
少 しず つ浮き 出 て る こと は確 か で 全 然
。
無 いんじ ゃな いんだ 映 画 を見 る人達 に
、
スト ーリ ーを 見 て下 さ い って言 う か そ
、
れ と も 人 間 の 一人 一人 の仕草 だ と か そ
う も のを 見 て下 さ い、 そ うす ると最 後 に
皆 さ んそ れぞ れ の スト ーリ ーが 出来 る ん
じ ゃな いかと か﹂
︱︱ 勝 さ ん は後 者 の方 でし ょう ?
。
﹁ど っちが い いかね 俺 が スト ーリ ーを
、
決 め て作 っち ゃう か 映 画 だ か ら自 分 の
、
見 せ た いと こだけ ア ップ にし て 見 せ た
く な いと ころ は Pング にす れば 、 と か、
や っば り監督 の好 き 嫌 いで編 集 す る こと
。
にな る でも 話 術 の間 と いう のが あ る か
ら、 や っば り次 の音 を待 って い る と い
う、 次 隻 民 入 ってく る間 の よ う な も
、
の 時代 劇 と いう の は音 の間 の気 持 良 さ
と いう か、 音 を 作 って かなき ゃ台 詞 も つ
。
ま ら な い ただ ″金 を貸 し てく れ ″ と い
う のを , ア ルに ″金 を貸 し て 下さ い” と
、″
、
一
金 を 貸 し て下さ いま し いカ
言う のと
、
哀 っ い調 子 で︶ と言 う のじ ゃ
れ
ば
。 じ
同 場 面 でも 音 を楽 しむ
と
︵
ず い分 ちが う
時 代制 を 工夫 し なき ゃいけ な い ﹂
︱︱ 今 の時 代 劇 は粗 雑 にな って る から
、
﹁今 も う音 の 工夫 な ん か無 く な ってき
、
。
て る 亡b年 会 な ん か でや る時 代劇 ね 今 や
あ れが ま とも な時 代期 にな り つ つあ る﹂
︱︱ 勝 さ んも 午 飾 を 重 ね て、年 を取 っ
た座 頭 市 にな る わけ です か ?
、
﹁いや 年 齢 の行 った座 頭 市 にし よ うと
、
か 若 い座 頭 市 にし よう と か考 え てな い
。
か ら 今 思 った時 が 幾 つ位 の座 頭 市 にな
、
っ
る
い
が
て
そ
か
十
歳 と は言 え な い
れ
二
。ま 、 こ
の前 久 し ぶ り に豪
あ
、
い格 闘劇 を撮 った んだ け ど か つて ﹃悪
だ ろう け ど
名 ﹄ と か ﹃兵 隊 や く ざ ﹄ で や って いた の
、
こ の年 齢 にな っても勝 新 太郎 は凄 い
、
。
な って いう位 そ んな風 にや って る 相
が
当 き つか ったけ ど ね ﹂
︱︱ 若 い俳優 さ ん達 は アド リブ の台 詞
を?
﹁あ るけ ど ″ぐ っとき ち ゃう ″ と か ″ス
、
カ ッと し た よイ と か そ う いう言葉 で出
ち ゃう んだ よね 。 ″ド スと鉄 砲 じ ゃ肌 触
りが ちが う” な ん て、 時 代 劇 にはち ょ っ
と向 いてな い。 アド リブ が 頭 に 浮 か ん
、
で それ を時 代劇 風 に言 う のはど う し た
ら い いか って開 く 人 が いる ﹂
︱︱ キ ャ ステ ィ ング はど う 選 んだ ん で
す か?
、
﹁自 分 で選 んだ と いう よ りね たま ま た自
分 が こう いう連 中 と 一緒 に仕事 し て み た
いな あ と思 った ら こう な っち ゃ った んだ
、
よ。 鶴 太郎 はね 樹 木 希 林 と コマー シ す
ルで話 し て いる時 の顔 が 何 と も 言 えず い
、
。
い それ で選 んだ 裕 也 は前 に俺 に喧 嘩
。 と り
俺 知 合 いた か った んじ
売 ってき た
ゃな い の﹂
、
話 し て いる間 にも 雨 は降 り続 き 本 日
、
の撮 影 は中 止 にな り 勝 新 太郎 は テ レピ
。
用 の撮 影 を す る た め に出 て行 った 二日
、
、
間 ついに現 場 を 見 る こと が できず 久
し ぶ り の座 頭 市 姿 の勝 新 太郎 を 見 る こと
も でき な か った。 そ れ は 二月公 開 の新 作
﹁座 頭 市 ﹂ の画 面 でし っく り見 る ことが
。
でき るだ ろう
107
ん でな い時 のね ﹂
︱︱ 満 日健 二監督 だ った らそ んな時 、
例 えば 小 道 具 な り何 な り にイ チ ャ モ ン
。
つけ て こま かす んだ よね
、
﹁と こ ろが 俺 そ う いう風 に こ の葉 っば
、
、
が 悪 いやと か 天 気 が 悪 いやと かね イ
、
チ ャモ ンつけ る よ り 事 実 俺 が 困 って る
時 は皆 に見 ても ら っち ゃ った方 が い いと
、
。
思 って 勝 新 太郎 を含 め て これ か ら俺
と つき 合 う んだ った ら、 ご ま かし じ ゃな
く て。実 際 に はね ″皆、 金 いく ら かあ る
、
。
か″ って スタ ッフに言 って る んだ こ
う いう状 態 な んだ よ って。 と ころが 、 皆
は金 が 無 いから俺 が く れ ると思 って皆待
って た んだ 。 皆 も ら いてえ んだ よ。 だ け
んだ ﹂
ど こ っち に は何 も 無 いんだ よ。 屁 も 無 い
メガ フォ ン持 って 現場 を指 標す る勝監督
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