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N次元超球の体積はヤコビアン、曲面積は平行四辺形
N次元超球の体積はヤコビアン、曲面積は平行四辺形 上野孝司 2016 年7月4日 N次元超球体積はヤコビアン、曲面積は平行四辺形 1.Γ関数と極座標変換―N次元球の体積はヤコビアン 1‐1.3次元と4次元球の体積 4 3 πr はよく知られた公式である。復習のため微分積分の知識をふまえてこれを 3 導いておこう。3次元球の方程式は、x2 + y 2 + z 2 = r 2 である。z の値を固定して、z = u の断面は、xy 平 √ √ 2 面で、半径 r 2 − u2 の円 x2 + y 2 = ( r 2 − u2 ) となり、球は、高さ Δ u の円柱が積み重なったものと考 半径 r の3次元球の体積 えることができるから、球の体積 V3 は、 ∫ V3 = r −r π(r2 − u2 )du で表現される。これは計算してみると、 [ ]r 1 3 2 V3 = π (r − u )du = 2π r u − u 3 −r 0 2 3 4 3 1 3 3 = 2π(r − r ) = 2π r = πr 3 3 3 4 となり、 πr 3 を得る。 3 それでは、4次元球 x2 + y 2 + z 2 + u2 = r 2 の体積はどうであろうか。実際には視覚できるのは3次元まで ∫ r 2 2 となるが、帰納的なイメージで4次元球を考えるのである。すると、帰納的に、 ∫ V4 = 4 √ 2 π( r − u2 )3 du −r 3 r と推論できよう。これを計算してみると、u = r cos θ で置換すると置換積分より、du = −r sin θdθ である から、 ∫ 0 4 V4 = 2 ・ π r3 sin3 θ(−r sin θ)dθ 3 π/2 ∫ π/2 8 sin4 θdθ = πr 4 3 0 部分積分より、 ∫ π/2 0 sin4 θdθ = ∫ π/2 0 (− cos θ)´sin3 θdθ 1 π/2 = [− cos θ sin3 θ]0 ∫ − π/2 (− cos θ)3 sin2 θ cos θdθ 0 ∫ π/2 2 2 sin θ cos θ =3 ∫ π/2 ∫ π/2 ∫0 π/2 2 2 2 sin4 θdθ sin θdθ − 3 sin θ(1 − sin θ)dθ = 3 =3 0 0 0 ∫ π/2 ∫ ∫ π/2 ∫ π/2 3 π/2 2 4 2 4 sin θdθ = sin θdθ → sin θdθ = 3 4 sin θdθ 4 0 0 0 0 よって、 V4 = 8 43 πr 3 4 ∫ π/2 0 sin2 θdθ = 2πr4 π/2 0 sin2 θdθ ∫ π/2 π/2 (− cos θ)´sin θdθ = [− cos θ sin θ]0 − (− cos θ) cos θdθ 0 0 0 ∫ π/2 ∫ π/2 (1 − sin2 θ)dθ cos2 θdθ = = 0 0 ∫ π/2 ∫ π/2 ∫ π/2 π sin2 θdθ = − 1dθ − = sin2 θdθ 2 0 0 0 ∫ π/2 π sin2 θdθ = より、 2 2 0 ∫ π/2 π 2 よって、 sin θ = 4 0 π 1 V4 = 2πr4 = π 2 r4 4 2 ∫ π/2 sin2 θdθ = ∫ ∫ π/2 を得る(V2 , V3 では π の一次、V4 では、π の2次が出現することに注意) 1‐2. ガンマ関数Γ (x) 3次元、4次元球の体積の導出過程を考えると、n 次元の球の体積 Vn は、fn r n の形をしていること及び三 ∫ π/2 sinn θdθ, 0 cosn θdθ が関与していることが推察されよう。高校の数学から、 ∫ π/2 n ∫ π/2 sin θdθ = 0 cosn θdθ 0 角関数の積分 ∫ π/2 0 (2m − 1)!! π · (n = 2m のとき) (2m)!! 2 = v (2m)!! (n = 2m + 1 のとき) (2m + 1)!! であることが示される。n が偶数のときに π が現れることで、偶数、奇数で表示方法が異なって、表記がや や不便になる。これを解消して一括して表現できるのがガンマ関数Γ (s) である。本節ではこれを説明する。 ガンマ関数とは、 ∫ Γ (s) = ∞ 0 e−x xs−1 dx (s > 0) で表示される関数である。s = n( 自然数)のときは、Γ (n) は以下のようになる。 ∫ Γ (n) = limt→∞ t 0 e−x xn−1 dx 2 {[ } ]t ∫ t n x xn −x xn −x = limt→∞ − ( )´e dx = limt→∞ e (−e−x )dx n n 0 0 n 0 1 1 = limt→∞ tn · e−t + Γ (n + 1) n n tn ntn−1 n! ここで、limt→∞ t = limt→∞ = · · · · · · = limt→∞ t = 0 t e e e ∫ t 1 Γ (n + 1), Γ (n + 1) = n Γ (n) n ∴ Γ (n) = (n − 1) Γ (n − 1) = (n − 1)(n − 2) Γ (n − 2) = · · · · · · よって、Γ (n) = = (n − 1)(n − 2)(n − 3) · · · · · · 2 · 1 · Γ (1) そして、Γ ∫ (1) = 1 ∞ ∴ Γ (n) = 0 e−x xn−1 dx = (n − 1)! さらに一般に、s > 0(整数とは限らない)のとき、Γ (s) の値が存在することが知られており、これを (オ イラーの) ガンマ関数という。そして、s > 1 ならば、Γ (s + 1) = s Γ (s) が成り立ち、n が自然数のときの み、Γ (n + 1) = n! となるのである。よって、Γ (s) は階乗の定義の拡張と考えることができる。 果たして、ガンマ関数がどのようにして三角関数の積分とつながるのであろうか。 1 2 ∫∞ まず、Γ ( ) = √ π となることを確認しておこう。 ∫ ∞ e−x 1 1 Γ ( ) = 0 x 2 −1 e−x dx = 0 √ dx 2 x x = t2 とおくと、dx = 2tdt となるから、 2 ∫ ∞ e−t ∫∞ 2 = 0 2tdt = 2 0 e−t dt t ここで2重積分の公式、極座標変換を用いると、 ∫ ∞ ( 0 2 e−t dt)2 = ∫∞ −t2 ∞∫ ∞ ∫ √0 π dt = 2 0 e−x 2 −y 2 π/2 ∫ ∞ ∫ dxdy = 0 0 2 e−r rdrdθ = π 4 e √ ∫∞ 1 π √ 2 ∴ Γ ( ) = 2 0 e−t dt = 2 · = π 2 2 よって、 0 一般の Γ (p) Γ (q) について同じことを行ってみると、 x = t2 とおくと、 ∫ ∫ ∞ 2 t2(s−1) e−t · 2tdt = 2 Γ (s) = 0 となるから、 ∫ Γ (p) Γ (q) = 4 ∞∫ 0 ∞ 0 ∞ 0 2 t2s−1 e−t dt x2p−1 y 2q−1 · e−(x 2 +y 2 ) dxdy ここで、極座標変換、x = r cos θ, y = r sin θ を行うと、ヤコビアン J = r であるから、 ∫ π/2 ∫ ∞ 2 =4 (r cos θ)2p−1 (r sin θ)2q−1 e−r rdrdθ 0 0 ∫ ∞ ∫ π/2 2 =4 r2(p+q)−1 e−r dr · (cos θ)2p−1 (sin θ)2q−1 dθ 0 0 ∫ π/2 = Γ (p + q) · 2 (cos θ)2p−1 (sin θ)2q−1 dθ 以上から、 0 3 ∫ 2 π/2 Γ (p) Γ (q) Γ (p + q) 0 が得られた。これより、sin θ, cos θ の累乗の積分はガンマ関数で表すことができる。 (cos θ)2p−1 (sin θ)2q−1 dθ = ここで、2q − 1 = k, 2p − 1 = 0 となるように、p, q を決めると、 ∫ π 0 ∫ k sin θdθ = 2 ∫ π/2 となり、 0 π/2 0 k+1 1 )Γ( ) 2 2 sink θ = k+1 1 Γ( + ) 2 2 k+1 Γ( ) √ 2 = π k+1 1 Γ( + ) 2 2 Γ( sink θ をガンマ関数で表すことができた。 1‐3.n 次元球の体積(イメージ) 以上より、ガンマ関数から n 次元球の体積 Vn を求めてみよう。 n 次元球の方程式は、 x21 + x22 + · · · · · · + x2n = r2 1 節の議論をふまえ、ざっくりイメージして考えると、 Vn = ∫ fn rn とおくと、 r √ n−1 dx Vn = fn−1 r2 − x2 −r ∫ 0 ∫ π/2 = fn−1 · rn−1 sinn−1 θ(−r sin θ)dθ = 2rn fn−1 sinn θdθ (x = r cos θ とおく) π 0 ∫ π/2 n n = 2fn−1 r sin θdθ 0 n+1 )√ 2 sin θdθ = fn−1 π より、 n+2 0 Γ( ) 2 n+1 n−1+1 ) √ Γ( 2 ) √ Γ( √ Γ (1) 2 fn = π · π · ······ · π · f0 n+2 n−1+2 3 Γ( Γ( Γ ( ) ) ) 2 2 2 √ n Γ (1) = ( π) n Γ ( + 1) 2 √ n 1 = ( π) n n Γ( ) 2 2 √ 2 = ( π)n n nΓ( ) 2 よって、√ n 2( π) n Vn = n r nΓ( ) 2 ∫ fn = fn−1 · 2 と推論できる。 π/2 n √ ・n = 2 のとき、V2 =( π)2 Γ( 2 r2 = πr2 2 Γ (1) 4 √ ・n = 3 のとき、V3 = ( π)3 √ π 4 3 3 r = πr (∵ Γ ( ) = ) 3 3 2 2 3Γ( ) 2 2 √ ・n = 4 のとき、V4 = ( π)4 3 2 4 Γ (2) r4 = 1 2 4 π r (∵ Γ (2) = 1) 2 と1節と同じ結論を得る。 1‐4.極座標変換とn 次元球の体積 1‐ 3 節の推論の結果は正しいのであるが、議論があまありに大ざっぱなので、厳密に議論する。ポイント は、n 次元極座標変換の公式である。2 次元のときは、x = t cos θ, y = r sin θ という公式を n 次元に拡張す る。n 次元極座標変換とは、 (x1 , x2 , · · · · · · , xn ) → (r, θ1 , θ2 , · · · · · · , θn−1 ) の変換であり、具体的には、 x1 = r cos θ1 x2 = r sin θ1 cos θ2 x3 = r sin θ1 sin θ2 cos θ3 ············ xn−1 = r sin θ1 sin θ2 · · · · · · sin θn−2 cos θn−1 x = r sin θ sin θ · · · · · · sin θ n 1 2 n−2 sin θn−1 というものである。 3次元では、 x = r cos θ y = r sin θ cos ϕ z = r sin θ sin ϕ 4次元では、 x1 = r cos θ1 x = r sin θ cos θ 2 1 2 x3 = r sin θ1 sin θ2 cos θ3 x4 = r sin θ1 sin θ2 sin θ3 である。ここで、極座標変換のヤコビアン Jn が問題となるが、 Jn = ∂(x1 , x2 , · · · , xn ) = rn−1 sinn−2 θ1 sinn−3 θ2 · · · · · · sin θn−2 ∂(r, θ1,······ , θn−1) となる。実際、3次元の J3 を計算してみると、 ¯ ¯ ¯ cos θ ¯ J3 = ¯¯ sin θ cos ϕ ¯ ¯ sin θ sin ϕ −r sin θ r cos θ cos ϕ r cos θ sin ϕ ¯ ¯ ¯ ¯ −r sin θ sin ϕ ¯¯ ¯ r sin θ cos ϕ ¯ 0 第2列から r,¯第 3 列から r sin θ がくくり出せるので、 ¯ ¯ ¯ cos θ ¯ 2 J3 = r sin θ ¯¯ sin θ cos ϕ ¯ ¯ sin θ sin ϕ − sin θ cos θ cos ϕ cos θ sin ϕ ¯ ¯ ¯ − sin ϕ ¯¯ = r2 sin θ · det A ¯ cos ϕ ¯ 0 5 上の行列式 det A は、t AA = E( 単位行列 )を満たす(直交行列)であるから、| det A| = 1 となり、 det A = ±1 となる。実際に計算してみると、 { } J = r2 sin θ cos θ(cos θ cos2 ϕ + cos θ sin2 ϕ) + sin θ(sin θ cos2 ϕ + sin θ sin2 ϕ) = r2 sin θ(cos2 θ + sin2 θ) = r2 sin θ 4 次元の場合も同様に、 第2列から r, 第 3 列から r sin θ1 , 第 4 列から r sin θ1 sin θ2 をくくり出すことができるから、 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ J4 = ¯¯ ¯ ¯ ¯ cos θ1 −r sin θ1 0 0 sin θ1 cos θ2 r cos θ1 cos θ2 −r sin θ1 sin θ2 0 sin θ1 sin θ2 cos θ3 r cos θ1 sin θ2 cos θ3 r sin θ1 cos θ2 cos θ3 −r sin θ1 sin θ2 sin θ3 sin θ1 sin θ2 sin θ3 r cos θ1 sin θ2 sin θ3 ↓ r sin θ1 cos θ2 sin θ3 ↓ r sin θ1 sin θ2 cos θ3 ↓ くくり出し ←−←−←− ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ J4 = r3 sin2 θ1 sin θ2 ¯¯ ¯ ¯ ¯ r r sin θ1 cos θ1 − sin θ1 0 sin θ1 cos θ2 cos θ1 cos θ2 − sin θ2 sin θ1 sin θ2 cos θ3 cos θ1 sin θ2 cos θ3 cos θ2 cos θ3 sin θ1 sin θ2 sin θ3 cos θ1 sin θ2 sin θ3 ↑ cos θ2 sin θ3 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ r sin θ1 sin θ2 ¯ ¯ 0 ¯ ¯ ¯ 0 ¯ ¯ − sin θ3 ¯ ¯ cos θ3 ¯ 直交行列 2 3 J4 = r sin θ1 sin θ2 が導かれる。n 次元の場合も同様に、くくり出しと直交行列から計算することができる。厳密には、n に関 する数学的帰納法を用いて導くことができる。 さて、本稿のテーマに戻り、n 次元球の体積 Vn を計算する。半径 a の n 次元球は(以下で極座標として r を用いるので表記を r から a に切り替える)、 x21 + x22 + · · · · · · + x2n = a2 (a > 0) で表され、その体積は、 ∫ Vn = ∫ ··· dx1 dx2 · · · dxn x21 +x22 +···+x2n 6a2 ここで極座標変換を用いると、ヤコビアンから、 ∫ ∫ = = ··· 05r5a ∫ a n−1 0 r Jdrdθ1 · · · dθn−1 ∫ dr π 0 sinn−2 θ1 dθ1 · ここでガンマ関数より、 ∫ π 0 sinn−3 θ2 dθ2 · · · · · · · · ∫ π 0 ∫ sin θn−2 dθn−2 · n−1 n−2 an Γ ( 2 ) Γ ( 2 ) Γ (1) √ n−2 Vn = · 2π · · ······ · · ( π) · n n − 1 3 n Γ( ) Γ( Γ( ) ) 2 2 2 6 2π 0 dθn−1 √ 2( π)n n = n a nΓ( ) 2 を得る。これは 1 ‐ 3 節の結果と一致する。上述から Vn の導出には極座標変換のヤコビアンが決定的に重 要であるとともに積分の値が三角関数の累乗の積分、つまりガンマ関数に帰する過程が見事に示されているの である。 2.曲面積、原点は平行四辺形アステロイドで積分復習 2‐1.球の表面積 前節ではN次元球の体積を求めたが、本節では球の表面積、さらに一般の写像 ϕ で表現される曲面積を扱 う。なお、本節の後半では、かなり大変な力づくの積分の計算を伴う。本節を積分の技術習得の復習としても 使用していただきたい。 今、R2 から R への写像 z = f (x, y) を考える。このとき、 (x、y)平面の面積が確定した領域 K ⊂ R2 に は、曲面(x, y, f (x, y)) が考えられ、その曲面積 S は、 ∫∫ √ S= k ∫∫ √ 1+ fx2 + fy2 dxdy = k 1+( ∂f 2 ∂f ) + ( )2 dxdy · · · · · · (1) ∂x ∂x で与えられる。(1)は後に一般の写像が示す曲面積を表す公式の一つの応用例として直接導くことができ る(2 ‐ 3 節参照)。 (1)を用いると、球の表面積を容易に導くことができる。 球の方程式は、x2 + y 2 + z 2 = a2 (a > 0) で表すことができ、これは √ z = ± a2 − x2 − y 2 (+ は上半球、− は下半球) であるから、上半球の表面積 S は、 ∫∫ S= x2 +y 2 5a2 √ 1 + fx2 + fy2 dxdy で与えられる。 −x ∂f −2x = √ = fx = √ ∂x 2 a2 − x2 − y 2 a2 − x2 − y 2 ∂f −2y −y = fy = √ = √ 2 2 2 2 ∂y 2 a −x −y a − x2 − y 2 よって、 1+( ∂f a2 ∂f 2 ) + ( )2 = 2 ∂x ∂x a − x2 − y 2 よって、 7 ∫∫ S= x2 + y2 5a2 √ a a2 − x2 − y 2 dxdy ここで、x = r cos θ 、y = r sin θ とおくと、 ¯ ¯ ¯ cos θ − r sin θ ¯ ¯ ¯ ヤコビアン J = ¯ ¯ = r であるから、 ¯ sin θ r cos θ ¯ ∫ 2π ∫ a ar √ S= drdθ 2 a − r2 0 0 ∫ a [ √ ]a r √ dr = 2πa − a2 − r2 0 = 2πa2 =2πa 2 2 a −r 0 よって、球の表面積は、 2S = 4πa2 となる。 2‐2.平行四辺形の面積 これからいよいよ写像で定義される曲面積の公式を求めよう。本質は以下に述べる平行四辺形の面積であ る。いま、3次元ベクトル ⃗a, ⃗b があり、⃗a, ⃗b のなす角を θ とする(2 ‐ 1)。 (図 2 ‐1) ⃗a, ⃗b が作る平行四辺形の面積 S は、 ¯ ¯ ¯ ¯ 1 ¯ ¯ ¯ ¯ S = (|⃗a| × ¯⃗b¯ sin θ × )× 2 = |⃗a| ¯⃗b¯ sin θ 2 で表せる。 ¯ ¯ ¯ ¯ 一方、⃗a・⃗b = |⃗a| ¯⃗b¯ cos θ であるから、 ¯ ¯2 2¯ ¯ (⃗a・⃗b)2 = |⃗a| ¯⃗b¯ cos2 θ ¯ ¯2 2¯ ¯ = |⃗a| ¯⃗b¯ (1 − sin2 θ) 8 ¯ ¯2 ¯ ¯2 2¯ ¯ 2¯ ¯ = |⃗a| ¯⃗b¯ − |⃗a| ¯⃗b¯ sin2 θ ¯ ¯2 2¯ ¯ = |⃗a| ¯⃗b¯ − S 2 ¯ ¯2 2¯ ¯ となり、S 2 = |⃗a| ¯⃗b¯ − (⃗a・⃗b)2 √ よって、S = ¯ ¯2 2¯ ¯ |⃗a| ¯⃗b¯ − (⃗a・⃗b)2 · · · · · · (2) となる。いま、a, b が2次元ベクトルの場合には、 ⃗a = (a, b) ⃗b = (c, d) のとき、 S= √ (a2 + b2 )(c2 + d2 ) − (ac + bd)2 √ a2 c2 + b2 c2 + a2 d2 + b2 d2 − a2 c2 − 2abcd − b2 d2 √ = (ad − bc)2 ¯ ¯ ¯ a b ¯ ¯ ¯ = |ad − bc| = ¯ ¯ ¯ c d ¯ = となる。 2‐3.写像の曲面積 以上の議論をふまえて、写像の曲面積を導く。 いま、R2 内の面積を持つ集合 K から R3 への C1 級写像を ϕ とおく。 ϕ1 = x(t, s) (t, s) ∈ K · · · · · · (3) ϕ2 = y(t, s) ϕ = z(t, s) 3 このとき、ϕ の値域 (写像による像)Im ϕ ϕ= Imϕ = {ϕ(t, s)|(t, s) ∈ K} を R3 内の C 1 級の曲面といい、写像 ϕ をこの曲面の助変数表示という。いま、助変数表示 (3) を持つ曲面 の曲面積 S を ∫∫ √ S≡ k ( ∂(y, z) 2 ∂(z, x) 2 ∂(x, y) 2 ) +( ) +( ) dtds · · · · · · (4) ∂(t, s) ∂(t, s) ∂(t, s) と定義する。この定義は以下のように意義づけられる。 いま、点 A(t, s) が与えられたとき、縦、横の長さがそれぞれ、dt, ds の長方形は、写像 ϕ によって ( ∂ϕ ∂ϕ dt, ds) = ((xt , yt , zt )dt, (xs , ys , zs )ds) ∂t ∂s で張られる平行四辺形に移される。 (図 3 ‐ 1) 9 s+ds C D ds s A B dt t O t+dt 写像φ C z D B A O y x 曲面は微小な平行四辺形の総和として表されるから、 S= ∑ ∂ϕ ∂ϕ dt, ds) の面積 · · · · · · (5) ( ∂t ∂s として表される (図 3 ‐ 2)。 C D B A 曲面は、微小な平行四辺形の和として表される 10 以下に示すように、公式(2)を媒介として、 (4)=(5)となることが示される。 (4)の積分の中は、 √ ∂(y, z) 2 ∂(z, x) 2 ∂(x, y) 2 ) +( ) +( ) dtds ∂(t, s) ∂(t, s) ∂(t, s) ¯ ¯ 1/2 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ y y ¯2 ¯ z z ¯2 ¯ x x ¯2 ¯ s t ¯ ¯ s t ¯ ¯ s t ¯ dtds = ¯ ¯ ¯ +¯ ¯ +¯ ¯ ys yt ¯ ¯ xs xt ¯ ¯ zs zt ¯ ( { } 内は、 (ys zt − yt zs )2 + (zs xt − zt xs )2 + (xs yt − xt ys )2 = (x2s + ys2 + zs2 )(x2t + yt2 + zt2 ) − (xs xt + ys yt + zs zt )2 ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ∂ϕ ¯2 ¯ ∂ϕ ¯2 ¯ ¯ ¯ − ( ∂ϕ・∂ϕ )2 = ¯¯ ∂t ¯ ¯ ∂s ¯ ∂t ∂s (この計算は非常に重要であり、読者は丹念に確認されたい) ここで(2)より、上の最後の式は、 √ ( ∂ϕ ∂ϕ , で張られる平行四辺形の面積に他ならない。つまり、 ∂t ∂s ∂(y, z) 2 ∂(z, x) 2 ∂(x, y) 2 ∂ϕ ∂ϕ ) +( ) +( ) dtds = ds, dt で張られる平行四辺形の面積 ∂(t, s) ∂(t, s) ∂(t, s) ∂t ∂s であることがわかる。よって、(4)は Imϕ の曲面の曲面積となる。 それでは、はじめに戻り、公式(4)を用いて(1)を導いておこう。 曲面 z = f (x, y) は、 x = x(t, s) = t y = y(t, s) = s z = z(t, s) = f (x, y) とおけるから、 ∫∫ √ ∂(y, z) 2 ∂(z, x) 2 ∂(x, y) 2 ) +( ) +( ) dtds ∂(t, s) ∂(t, s) ∂(t, s) k ¯2 1/2 ¯2 ¯ ¯2 ¯ ∫ ∫ ¯¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ ¯ 1 0 ¯ ¯ zt zs ¯ ¯ 0 1 ¯ dtds = ¯ ¯ +¯ ¯ +¯ ¯ ¯ 0 1 ¯ ¯ 1 0 ¯ K ¯ zt zs ¯ ∫∫ √ = 1 + zt2 + zs2 dtds ∫ ∫k √ = 1 + zx2 + zy2 dxdy ( k を得る。 2‐4.アステロイドを追う 11 2 ‐ 3 節の結果を用いて、 x2/3 + y 2/3 + z 2/3 = a2/3 (a > 0) · · · · · · (6) で表せる曲面の面積を求めてみよう。(6)で z = 0 のとき、 x2/3 + y 2/3 = a2/3 (a > 0) となり、これを xy 平面上で図示すると以下のような形に表せ、この図 (方程式) は、アステロイドと呼ばれる。 (図 4 − 1) y x2/3+y2/3=a2/3 x (6)を z = k(0 < k < a) の平面で切るとその断面は、図 4 − 1 の曲線と相似になるから、(6)はアステ ロイドを3次元に拡張したものと考えられ、図示すると第1象限では以下のようになる。 図4−2 z x2/3+y2/3+z2/3=a2/3 O y x さて、(6)の曲面積 S の計算に入ろう(この計算はかなり大変であり、部分積分、置換積分を総動員する) 。 対称性から第1象限の曲面積を求めてから、それを8倍すればよい。 12 (6)より、 z 2/3 = a2/3 − x2/3 − y 2/3 両辺を x で偏微分すると 2 2 2/3−1 z zx = − x2/3−1 3 3 z −1/3 zx = −x−1/3 よって、 zx = −z 1/3 x−1/3 同様に y で偏微分すると、 zy = −z 1/3 y −1/3 よって、 1 + zx2 + zy2 = 1 + x−2/3 z 2/3 + y −2/3 z 2/3 = 1 + z 2/3 (x−2/3 + y −2/3 ) z 2/3 = a2/3 − x2/3 − y 2/3 であるから、 S/8 = ∫∫ √ D { } 1 + (a2/3 − x2/3 − y 2/3 )(x−2/3 + y −2/3 )dxdy · · · · · ( · 7) (D = (x, y)|x2/3 + y 2/3 < a2/3 , x > 0, y > 0 ) となる。ここからの計算はかなり複雑で、部分積分、置換積分および三角関数の逆関数の微分・積分を繰り 返して用いるので注意されたい。 t = a−2/3 x2/3 , s = a−2/3 y 2/3 とおくと、 2 dt = a−2/3 x−1/3 dx 3 2 ds = a−2/3 y −1/3 dx 3 であるから、 dxdy = 9 2√ a tsdtds 4 となる。これより、(7)は、 ∫∫ √ 9 √ 1 + (a2/3 − x2/3 − y 2/3 )(x−2/3 + y −2/3 )・ a2 tsdtds 4 Δ (Δ = {(t, s)|t + s < 1, t > 0, s > 0}) ∫∫ √ 9 √ S/8 = 1 + (a2/3 − a2/3 t − a2/3 s)(a−2/3 t−1 + a−2/3 s−1 )・ a2 tsdtds 4 ∫ ∫Δ √ 1 1 9 2√ = 1 + (1 − t − s)( + ) a tsdtds t s 4 Δ∫ ∫ √ 9 2 = a (1 − t − s)(t + s) + tsdtds 4 ∆ S/8 = ここで再度、x + y = t, x − y = s とすれば ヤコビアンは ¯ ¯ ¯ ¯ t ¯ x ¯ ¯ sx ty ¯¯ ¯¯ 1 1 ¯=¯ sy ¯ ¯ 1 − 1 ¯ ¯ ¯ ¯ = −1 − 1 = −2 であり、 ¯ Δは、E = {(x, y)|x > y, x > −y, x < 1 } に写り、 2 13 ∫∫ √ 9a2 (x + y)(x − y) + (1 − x − y − x + y)(x + y + x − y) 2dxdy 4 ∫ ∫E √ 9a2 = x2 − y 2 + (1 − 2x)(2x)dxdy 2 ∫ ∫E √ 9a2 = 2x − 3x2 − y 2 2 E {∫ } ∫ x√ 9a2 1/2 2x − 3x2 − y 2 dy dx = 2 0 −x S/8 = ここで、不定積分の公式 ∫ √ a2 − x2 dx = 1 √ 2 x (x a − x2 + a2 sin−1 ) + C(C は定数) 2 a を用い、2x − 3x2 = k 2 とおくと、 ∫ x √ ∫ 2x − 3x2 − y 2 dy = x √ 1[ √ 2 y ]x y k − y 2 + k 2 sin−1 2 k −x ]x y √ 2x − 3x2 −x k 2 − y 2 dy = −x [ 1 √ = y 2x − 3x2 − y 2 + (2x − 3x2 ) sin−1 2 √ x = x 2x − 4x2 + (2x − 3x2 ) sin−1 √ 2x − 3x2 −x よって、 9 S/8 = a2 2 ∫ 1/2 0 { } √ x −1 2 2 x 2x − 4x + (2x − 3x ) sin √ d · · · · · · (8) 2x − 3x2 (8)の第2項を I とおき、部分積分を用いると、 ∫ I= 1/2 0 ∫ (2x − 3x2 ) sin−1 √ 1/2 x dx 2x − 3x2 x dx 2x − 3x2 [0 ]1/2 ∫ 1/2 x x ´)dx − (x2 − x3 )(sin−1 √ = (x2 − x3 ) sin−1 √ 2 2x − 3x 0 2x − 3x2 0 ∫ 1/2 π x ´)dx = − (x2 − x3 )(sin−1 √ 16 2x − 3x2 0 = (x2 − x3´) sin−1 √ ここで、 d 1 (sin−1 x) = √ であるから、 dx 1 − x2 x 1 ´) = √ (sin−1 √ (この計算も複雑なので確認されたい) 2 2x − 3x (2 − 3x) 2x − 4x2 [ } ] ∫ 1/2 { √ 1 9 2 π 2 3 2 √ + x 2x − 4x − (x − x ) dx · · · · · · (9) S/8 = a 2 16 (2 − 3x) 2x − 4x2 0 (9)まで式を展開してきたが、(9)の積分をまともに計算すると、 14 [ ] ∫ 1/2 9 2 π 12x4 − 13x3 + 3x2 √ S/8 = a + dx 2 16 (2 − 3x) 2x − 4x2 0 となるのだが、ここで計算は行き詰ってしまう。ここで、次のように式の展開を考える。 ] [ 2 4 2 x2 − x3 = − (x − )3 + (x − )2 − 3 3 27 1 1 1 1 1 =− = = 2 2 2 − 3x −3x + 2 3 −3(x − ) x− 3 3 というように式の変形に着目すると、 { } √ 9 π 2 2 4 1 1 S/8 = a2 + x 2x − 4x2 + (x − )3 + (x − )2 − dx (− ) 2 √ 2 16 3 3 27 3 0 2 (x − ) 2x − 4x 3 ] [ ∫ 1/2 9 2 π 1 8 dx = a + (45x2 − 108x3 + 3x + 2 + )√ 2 16 27 0 6x − 4 2x − 4x2 ∫ 1/2 1 sin2 θ とおくと、 2 dx = sin θ cos θdθ, 2x − 4x2 = sin2 θ cos2 θ だから dx √ = dθ となる。 2x − 4x2 従って上式最後の項の積分は、 ∫ π/2 (3 sin2 θ − 4)−1 dθ であるが、ここで、tan θ = t とおくと、 8 ここで、x = 0 t2 dt sin2 θ = , dθ = だから、 2 1 + t 1 + t2 ∫ ∫ π/2 ∞ dt (3 sin2 θ − 4)−1 dθ = −8 = −2π となる。 8 2+4 t 0 0 (t = 2 tan θ とおいて、置換積分せよ) また、 ∫ π/2 0 sin2n θdθ = (2n − 1)π (2n)!!2 より、 }] [ { 1 45 3 1 π 108 5 3 1 π 3 1 π π 9 2 π + − + + 2 − 2π S/8 = a 2 [16 27 { 4 4 2 2 8 6422 2 2 2 }]2 9 1 135 108 15 3 π = a2 + π− π + π + π − 2π 2 16 27 64 8 96 8 17 2 = πa 8・12 よって、 S= 17 2 πa 12 を得る。 *本稿の執筆に際しては、以下を参考とした。 15 ・解析入門(杉浦光夫、東京大学出版会) ・解析学入門(田坂隆士、秀潤社) ・解析概論(高木貞治、岩波書店) ・対話・微分積分学(笠原晧司、現代数学社) *筆者経歴 東京大学理学部数学科を経て教育学部卒業。証券会社、外資系通信社で金融・資本市場の業務を経験。専門は、債券資 本市場。主な著書・論文: 『信用リスクを読む』 (日本評論社) 、 『信用リスクとM&A』 (同) 、 『世界金融危機と信用リスク』 (同)、『鎮めの文化と資本市場』(ブルームバーグ) 、 『金融派生商品』 メール:[email protected] 16