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I0 帯域通過ディジタル通信方式

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I0 帯域通過ディジタル通信方式
「基礎通信工学 (第 2 版)」
サンプルページ
この本の定価・判型などは,以下の URL からご覧いただけます.
http://www.morikita.co.jp/books/mid/078282
※このサンプルページの内容は,第2版 1 刷発行当時のものです.
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2007/3/5(14:24): 4 校
◇本書のサポート情報などをホームページに掲載する場合が
あります.下記のアドレスにアクセスしご確認ください.
http://www.morikita.co.jp/support
■本書の無断複写は,著作権法上での例外を除き禁じられています.
複写される場合は,その都度事前に (株) 日本著作出版権管理システム
(電話 03-3817-5670,FAX 03-3815-8199) の許諾を得てください.
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2007/3/5(14:24): 4 校
i
まえがき
本書は「通信工学」という大海へ初めて乗り出す人々を対象とした入門書である.
電気・電子・通信などの諸学科の学部学生を主な対象としているが,単なる数式の羅
列ではなく,定性的な理由づけや直感的な意味の把握を重視しているので,初めて通
信工学を学ぶ社会人や,高専・短大などの生徒にも大いに役立つものと期待している.
通信工学のような厖大な内容を含む分野への入門書のスタイルとしては,全体を広
く浅く読み物的に扱うものと,もっとも基礎となる部分を深く扱うものとがあり得る
が,本書は後者の立場をとっている.すなわち本書では,すべての通信システムの土
台となっている「1 か所からほかの 1 か所への信号の伝送」のために必要な基本的事
項を徹底的に説明する.
このように,本書は通信工学の世界へのスタート台であり,本書をマスターした人
は,日進月歩の通信工学の分野で長く活躍していくための自習力をつけたといえるの
である.「諸君は,哲学を学ぶより,哲学することを学べ.私は諸君に哲学を教えん
とするのではない.哲学することを教えるのだ」と,カントがいったそうであるが,
筆者はこの「哲学」を「通信工学」に置き換えてここに提示したい.
わが国にも,本書と分野を同じくするよいテキストがすでに多数刊行されている.
しかし,筆者はこれまでの長い講義歴の中で「初めて通信工学を学ぶ学部学生が本当
に理解できる教科書」を見つけることができなかった.その原因の一つに,教科書に
は実質的なページ数制限があるというわが国の出版事情があると思われる.それにも
かかわらず,ほとんどの教科書は,少ないページ数の中に,基礎から先端技術までを
網羅しようとしている.
本書では,読者にとって興味深いであろう先端技術や最新システムなどについては,
あえてほとんど触れず,「それらについて記述してある優れたテキスト・文献を読み
こなせる力をつける」ことに集中することにした.さらに本書では,多くの通信工学
のテキストに含まれている確率論や情報理論に関する中途半端な記述は省いた.それ
らについては,それらを本格的に扱ったテキストを読んで頂きたい.
本書の読者には,確率論の学習を前提としているが,詳細な知識は必要なく,むし
ろ,確率変数,確率密度,条件付確率,期待値,分散,独立性などの基本概念の本質
をしっかり理解していることを望んでいる.また,本書は信号伝送の理論的扱いを主
とし,通信機器・電子回路・電波伝搬などハードウェア的なものはほとんど割愛した.
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ii
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まえがき
したがって,本書を理解するための予備知識としては,微積分・確率論・複素数を含
む基礎的な応用数学の力があれば十分である.
第 2 章以降,本書には多数の数式が現れ,そのいくつかは一見難しそうに見えるか
もしれない.しかし,それらは決して数学的に高度で難解なものではないので,先入
観を持たずに向き合っていただきたい.日本語にしろ英語にしろ,自然言語による記
述ではどうしても曖昧さが残る場合にも,数式は事実を曖昧さなく明快・簡潔に記述
できる.その意味で,数式は技術者がマスターしなければならない共通言語のひとつ
なのである.
本書では,まず第 1 章で通信工学の全体を展望した後,第 2,3 章で信号の表現と伝
送について詳しく説明する.この二つの章で扱われる事項の本質を理解し,その扱い
に慣れれば,それ以降の章は容易に理解できる.逆に,それらに関する理解が曖昧で
あれば,それ以降の章の内容を本当に理解することはできないであろう.ただし,教
育的な見地から,ここではまだ確率的な信号は扱わない.
第 4,5 章ではアナログ通信方式の代表である AM と FM を紹介する.その後,第
6 章では PCM を始めとするアナログ信号のディジタル化技術(AD 変換)について
述べる.
確率論は通信工学に本質的に係わってくるものであり,基礎的なテキストといえど
も,これを避けて通ることはできない.しかし,確率論は往々にして,通信工学の初
学者の躓きの石になるものなので,本書では,AM,FM,PCM などを学び読者が通
信工学に興味をもつようになるまで,その導入を待つ構成とした.すなわち,第 7 章
で初めて通信工学における確率論の役割,とくに確率過程のそれについて述べる.
第 8 章では,アナログ通信システムにおけるランダム信号の伝送と雑音の影響につ
いて考察する.第 9,10 章は,今日では主流となっているディジタル通信システムに
関するものである.ここでは,各種の基本的なディジタル通信システムの説明,シス
テム構成,雑音特性,周波数特性などが詳述される.
このように,本書の全 10 章のうち,第 1,2,3,7 章は全体に共通の基礎を扱った
部分,第 4,5,8 章はアナログ通信に関する部分,残りの第 6,9,10 章はディジタル
通信に関する部分となっている.本書は,1 回 90 分の講義 30 回程度の分量に相当し
ているが,項目を取捨選択して 15 回のコースに用いることもできる.この場合,基
礎的でかつ比較的やさしい部分を中心とするなら,第 1 章から第 6 章までを扱うこと
が考えられる.また,これからのディジタル通信の重要性に鑑み,第 1,2,3,6,8,
9,10 章から一部を略して,ディジタル通信システムのコースとすることもできる.
各章の概要には,その章での主な学習目標を列挙しておいたので,各章の学習後,
それらの目標が達成されたことを,各自確認していただきたい.また,各章には適宜
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まえがき
iii
【例】をあげた.大部分は例題的なものであるが,一部は本筋からやや離れた話題提
供である.
また,第 1 章以外の各章末には演習問題をつけた.多くは学習者の理解の確認程度
のものであるが,解を得るのに少し計算や工夫を要すると思われるものには☆印を,
かなりの計算や工夫を要すると思われるものには★印をつけておいた.主な問題には,
巻末に解をつけてある.もちろん,解の形は一意ではないし,種々の解法がありうる
ので,単なる解答例として参考にしていただきたい.
最後に,本書の執筆に当たって,原稿を精読して頂き,種々の誤りや記述の不統一
などに関して多数の有益なご指摘を頂いた,研究室の椋本介士博士に深く感謝する.
2007 年 1 月
著 者 main :
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v
目
第1章
次
通信工学概論
1
1.1 システム工学的アプローチ ...........................................................
1.2 通信システム .............................................................................
1.3 通信工学の世界 ..........................................................................
1.4 変調・復調と符号化・復号化 ........................................................
第2章
信号とスペクトル
1
4
7
8
11
2.1 正 弦 波 ............................................................................... 11
( 1 ) 正弦波とフェーザ
11
( 2 ) 正弦波の片側線スペクトル表現
( 3 ) 正弦波の両側線スペクトル表現
14
15
2.2 周期信号とフーリエ級数 ............................................................. 17
( 1 ) 信号の時間平均と電力
17
( 2 ) 周期信号の複素フーリエ級数展開と両側線スペクトル表現
( 3 ) 実周期信号の片側線スペクトル表現
19
( 4 ) 実周期信号の三種のフーリエ級数展開
20
( 5 ) パーセバルの定理
( 6 ) sinc 関数
22
18
21
2.3 フーリエ変換 ............................................................................ 24
( 1 ) フーリエ変換と連続スペクトル
24
( 2 ) フーリエ級数からフーリエ変換へ
26
( 3 ) レイリーの定理とエネルギースペクトル密度
29
2.4 時間領域表現と周波数領域表現 .................................................... 30
(1) 線 形 性
31
( 2 ) 時間軸の圧縮と伸長
31
(3) 時 間 遅 れ
32
( 4 ) 周波数変換 (変調定理)
33
( 5 ) 微分と積分
34
( 6 ) 双対定理
36
( 7 ) たたみこみ定理
37
( 8 ) インパルス
40
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main :
vi
目
次
( 9 ) 時間領域におけるインパルス
41
( 10 ) 周波数領域におけるインパルス
45
2 章の演習問題 ................................................................................. 48
第3章
信号の伝送
51
3.1 線形システムの応答 (時間領域) .................................................... 51
( 1 ) 線形 (時不変) システム
51
( 2 ) インパルス応答と線形システムの入出力関係
52
3.2 線形システムの応答 (周波数領域) ................................................. 53
(1) 伝 達 関 数
53
( 2 ) 伝達関数とシステムの入出力関係
55
3.3 信号の伝送歪み ......................................................................... 57
( 1 ) 無歪み条件と線形歪み
(2) 等 化 器
59
( 3 ) 非線形システム
61
57
3.4 フ ィ ル タ ............................................................................... 62
(1) フ ィ ル タ
62
( 2 ) 理想フィルタ
63
3.5 信号の減衰と中継 ...................................................................... 66
( 1 ) 電力利得,電力損失 (減衰) とデシベル値
( 2 ) 回線収支解析
67
( 3 ) アナログ中継
69
66
3 章の演習問題 ................................................................................. 71
第4章
線形変調通信方式
73
4.1 帯域通過信号 ............................................................................ 73
( 1 ) 帯域通過信号
73
( 2 ) 帯域通過信号の包絡線-位相表現
74
( 3 ) 帯域通過信号の直交成分表現
75
4.2 振幅変調通信方式と両側波帯通信方式 ........................................... 76
( 1 ) 基底帯域信号
76
( 2 ) 振幅変調通信方式
77
( 3 ) AM 波のスペクトル
78
( 4 ) AM 波の電力
80
( 5 ) 両側波帯通信方式
81
( 6 ) AM,DSB 変調器
82
4.3 単側波帯通信方式と残留側波帯通信方式 ........................................ 85
( 1 ) 単側波帯通信方式
85
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目
( 2 ) SSB 変調器
87
( 3 ) 残留側波帯通信方式
次
vii
89
4.4 線形変調波の復調 ...................................................................... 90
(1) 同 期 復 調
90
( 2 ) 同期ずれの影響
92
( 3 ) 直交振幅変調方式
95
( 4 ) AM 波の包絡線復調
95
4.5 周波数分割多重通信システム ....................................................... 96
( 1 ) 周波数分割多重通信の原理
(2) 群 変 調
98
( 3 ) 通信資源の共同利用
99
96
4.6 受 信 機 ............................................................................... 99
4 章の演習問題 ............................................................................... 102
第5章
角度変調通信方式
104
5.1 周波数変調と位相変調 ..............................................................
104
( 1 ) 正弦波の拡張
104
( 2 ) 周波数変調と位相変調
105
( 3 ) 角度変調波の性質
106
5.2 角度変調波のスペクトルと帯域幅 ...............................................
109
( 1 ) トーン変調角度変調波のスペクトル
109
( 2 ) 角度変調波の帯域幅
114
( 3 ) 狭帯域角度変調波のスペクトル
118
5.3 角度変調波の変調と復調 ...........................................................
( 1 ) 角度変調波の発生
( 2 ) 角度変調波の復調
120
121
5.4 連続波変調と干渉 ....................................................................
( 1 ) 連続波変調システムにおける干渉波の影響
( 2 ) FM における干渉波の影響
126
アナログ信号のディジタル伝送
127
129
6.1 標本化と標本化定理 .................................................................
( 1 ) 標本化定理
130
( 2 ) 自然標本化とフラットトップ標本化
133
( 3 ) 折り返し雑音とアンチエリアシングフィルタ
125
125
5 章の演習問題 ...............................................................................
第6章
119
129
135
6.2 アナログパルス変調 .................................................................
136
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viii
目
次
6.3 時分割多重通信システム ...........................................................
( 1 ) 時分割多重通信の原理
( 2 ) TDM と FDM
139
137
137
6.4 量子化と符号化−パルス符号変調− ............................................
( 1 ) 量子化と符号化
139
( 2 ) パルス符号変調通信方式
139
140
6.5 量子化雑音と圧伸 ....................................................................
141
( 1 ) 量子化誤差と量子化雑音
141
( 2 ) 不均一量子化と圧伸
143
( 3 ) 通信路雑音の影響
146
6.6 その他のディジタルパルス変調方式 ............................................
6 章の演習問題 ...............................................................................
第7章
ランダム信号と雑音
( 1 ) 確定信号の相関関数
152
( 2 ) 確定信号のスペクトル密度
155
157
7.3 確率過程の相関と電力スペクトル密度 .........................................
( 1 ) 確率過程の相関関数
160
( 2 ) 自己相関関数とスペクトル密度の性質
160
168
7.4 信号の伝送と雑音 ....................................................................
170
171
7 章の演習問題 ...............................................................................
第8章
152
154
7.2 確 率 過 程 .............................................................................
(1) 雑
音
170
( 2 ) 信号の伝送と雑音
150
152
7.1 確定信号の相関とスペクトル密度 ...............................................
(1) 確 率 過 程
155
( 2 ) 集合平均と時間平均
( 3 ) ガウス過程
159
148
連続波変調通信方式と雑音
174
176
8.1 帯域通過信号の伝送と雑音 ........................................................
176
( 1 ) 帯域通過信号の伝送
176
( 2 ) 受信信号電力対雑音比
177
8.2 帯域通過雑音 ..........................................................................
8.3 線形変調方式と雑音 .................................................................
( 1 ) 同期復調の場合
180
( 2 ) AM の包絡線復調の場合
183
178
180
main :
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目
次
8.4 角度変調方式と雑音 .................................................................
ix
185
( 1 ) 角度変調方式と雑音
185
( 2 ) 角度変調方式における出力雑音
186
( 3 ) 角度変調方式の SN 比
188
( 4 ) FM のスレッショールド効果
189
( 5 ) FM の性質とエンファシス
190
8 章の演習問題 ...............................................................................
第9章
基底帯域ディジタル通信方式
194
9.1 ディジタル通信システム ...........................................................
9.2 情報源符号化と通信路符号化 .....................................................
( 1 ) 情報源符号化
( 2 ) 通信路符号化
192
194
196
196
199
9.3 ディジタル信号 .......................................................................
9.4 基底帯域ディジタル信号のスペクトル .........................................
( 1 ) 基底帯域ディジタル信号波形
206
( 2 ) 基底帯域ディジタル PAM 信号のスペクトル
206
207
9.5 基底帯域ディジタル信号の伝送 ..................................................
9.6 符号間干渉とナイキストパルス ..................................................
( 1 ) ナイキストパルス
212
( 2 ) 符号間干渉とアイパターン
205
210
212
214
9.7 雑音とパルスの誤り率 ..............................................................
( 1 ) パルスの伝送と雑音
216
( 2 ) 判定スレッショールドと誤り率
( 3 ) 誤差関数と Q 関数
218
216
216
9.8 整合フィルタと最適受信機 ........................................................
219
( 1 ) パルス検出のための最適フィルタ
219
( 2 ) 白色雑音の場合 (整合フィルタ)
221
( 3 ) 相関器によるパルスの検出
223
( 4 ) 最適受信機と誤り率
224
( 5 ) M 元ディジタル PAM の誤り率
( 6 ) 前ナイキストパルス
226
225
9.9 再 生 中 継 .............................................................................
9 章の演習問題 ...............................................................................
第 10 章
帯域通過ディジタル通信方式
10.1 帯域通過ディジタル通信システム .............................................
227
229
230
231
main :
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目
次
( 1 ) 帯域通過ディジタル信号の表現と電力スペクトル
( 2 ) 信号点配置図
232
231
10.2 帯域通過信号に対する整合フィルタ ..........................................
233
( 1 ) 帯域通過信号に対する整合フィルタ
233
( 2 ) 同期復調と同期ずれの影響
234
( 3 ) 相関器による同期復調
235
( 4 ) 直交整合フィルタによる同期復調
236
10.3 振幅シフトキーイング方式 ......................................................
( 1 ) ASK 方式
241
( 2 ) ASK の復調法と誤り率
242
10.4 位相シフトキーイング方式 ......................................................
( 1 ) PSK 方式
243
( 2 ) PSK の復調法と誤り率
243
245
10.5 直交振幅変調方式 ..................................................................
( 1 ) QAM 方式
249
( 2 ) QAM の復調法と誤り率
249
250
10.6 周波数シフトキーイング方式 ...................................................
( 1 ) FSK 方式
253
( 2 ) FSK の復調法と誤り率
( 3 ) FSK の帯域幅
257
241
252
255
10.7 差動位相シフトキーイング方式 ................................................
( 1 ) PSK,FSK の非同期復調
( 2 ) DEPSK 方式
258
( 3 ) DPSK 方式の復調と誤り率
257
257
259
10.8 非同期周波数シフトキーイング方式 ..........................................
( 1 ) FSK 波の非同期復調法と誤り率
260
( 2 ) 各種 2 元ディジタル通信方式の誤り率の比較
260
261
10 章の演習問題 ..............................................................................
262
演習問題略解
264
参考文献
276
索
277
引
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1
1
通信工学概論
われわれ人類の生活において,もっとも本質的な必要条件は衣・食・住であるが,これ
らに次いで重要な役割を担うものは,交通と通信であろう.個々の人間の生活がなりたつ
ための必須条件である衣・食・住に対して,交通・通信は,その個々の連携プレーである
社会がなりたつための必須条件といえる.
このうち,交通システムを社会の手足にたとえるなら,通信システムは社会の神経網で
あるといえよう.電話・テレビ・ラジオ・インターネットなどは,われわれの日常生活に
空気や水のように自然にとけ込んでいる.さらに,われわれの日常生活の背後では,テレ
メーター・レーダー・GPS など種々の通信システムが日夜活躍している.
最近数十年の,とくにここ十年間ほどの,通信工学の進歩発展には目をみはるものがあ
る.衛星通信・光通信・移動通信などの分野における日進月歩の発展は,通信工学に携わ
る者の永遠の目標である「いつでも,どこでも,だれとでも」を,すでにある程度まで実
現してしまった感がある.このような通信技術の発展とその社会に果たす役割の増大のた
めに,現代社会はますます多くの通信工学の研究者・技術者の養成を必要としている.
しかしながら,現代の通信システムは,実にさまざまな形態をとっており,しかも,そ
れらのシステムを構成する基礎技術は,信号伝送・信号処理・通信網・交換など,実に多
様な要素を含んでいる.そこで,第 2 章から通信工学の本論に取り組む前に,本章でその
全体を見渡しておくことにしよう.
このような章をおくのは,本論を読み進む際に,自分はいま全体のどこにいるのか,こ
こでは何を理解しておかなければならないのか,などの枠組みをしっかり意識して学ぶ
ことが必要であり,そのためには,先に全体を眺めておくことが有効だからである.した
がって,本章を最初に読む際には,内容の解釈や理解にあまり神経質にならず,気楽に
ざっと読んでおけばよい.
<本章の学習目標>
① 技術的研究対象を数学モデル化して考察する手法について理解する.
② 通信システムの一般的構成と,その主な構成要素の役割を理解する.
③ 通信工学の全体像を把握する.
④ 変調・復調および符号化・復号化の概念と利点について理解する.
1.1
システム工学的アプローチ
われわれの日常生活においては,新聞やテレビ・雑誌などに,衛星通信,光通信,
パケット通信,コンピュータネットワーク,携帯電話,スペクトル拡散,LAN など
main :
2
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第1章
通信工学概論
といった,通信システムに関する先端の用語が頻出し,それらの技術を駆使した通信
ネットワークによって,ありとあらゆる種類の情報が世界を駆け巡っている.
したがって,通信工学に興味をもった者は,すぐにもこれらの言葉が意味するシス
テムを理解したいと思うであろう.しかし「急がば回れ」ということがある.これら
種々の先端システムの仕組みをいま学んでも,学生が社会に出るころには陳腐な旧技
術になっている可能性もある.
それよりも,それらの技術に共通した本質的・普遍的なものを抽出し,これを体系
的に学んでおけば,今後どんな新技術が現れても対応でき,独創的な新システムの提
案すら可能となるのである.そのような考えから,本書では現存の通信システムのカ
タログ的な紹介ではなく,以下に述べる意味でのシステム工学的アプローチによって,
通信システムの本質を理解する力をつけることを目標とする (図 1.1).
図 1.1
システム工学的アプローチ
通信システムの分野に限らず,技術者が問題に取り組むとき,対象は現実の「もの」
としてそこにある.自然界に微分方程式や確率変数が転がっているわけではないので
ある.その「もの」の性質を知ったり,それを利用した機械を設計したり,その機械
のトラブルの解決などのために,そのシステムの特性を知りたいときには,実験・観
察を行えばよいが,それには長い時間がかかったり,莫大なコストがかかったり,何
よりも,大変危険であるかもしれない.
そこで,ほとんどすべての場合,技術者は,現実の「もの」の性質・振る舞いを表
す数学モデルをつくることから仕事を始める.
この数学モデルに要求されるのは,第一に,本物の振る舞いをよく表すこと,すな
わち,
「表現力」が豊かなことである.しかし,いくら表現力が豊かでも,その特性を
解析するのに莫大な労力を要しては,モデル化の意味がない.したがって,この数学
モデルに要求される第二の点は,「簡単さ」である.
「表現力」といっても,そこでの問題にはさし当たって必要ない詳細な点は切り捨
ててもよいのである.いや,切り捨てたほうがよいのである.一見きわめて簡単であ
るが,必要な性質は大きくクローズアップするのが,よいモデルなのである.そのた
めには,物理的には存在し得ないモデルでも構わない.実際,無限時間続く正弦波や
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1.1 システム工学的アプローチ
3
瞬時に切り替わるスイッチなどのように,便利な数学モデルの多くは,明らかに実世
界とは矛盾する存在である.極言すれば,すべての数学モデルは現実世界の近似に過
ぎない.
簡単に解析できて,問題の本質を浮き彫りにする数学モデルを作れれば,後はきわ
めて能率的に仕事を進めることができる.すなわち,モデルの振る舞いを,解析,あ
るいはシミュレーション (模擬実験,とくにコンピュータによるもの) によって求め,
その結果が不満足であれば,パラメータを変更して再度解析を行うことにより,簡単
に設計案や問題の解決案をつくることができる.
この過程で,モデルの解析結果が実物の振る舞いをよく表しているか否かを,直感
を頼りに評価し,直感に反する結果が出るようなら,単なるパラメータの変更ではな
く,数学モデル自体の手直しが必要となる.図 1.1 のフィードバックという言葉がこ
れを表している.このような直感力があるか否かが,よい技術者とそうでない者との
分かれ目である.また,最後には実システムによる確認実験が必要である.
ここで,さらに一点注意しておきたいのは,モデル化に際して必ず近似が入るので
あるから,作られた数学モデルの解析に際して,必ずしも数学的厳密解にこだわる必
要はないということである.モデル化に際して導入された近似に見合った程度の近似
はどしどし導入して,すっきりした見通しのよい解を得るのも,優れた技術的センス
というものである.
ただし,モデル化と解析に際して,自分が何を切り捨て,どう近似したかを,常に
意識の底に残しておかなければならない.これを忘れて,自分の作ったモデルの動き
を,実物そのものの動きと思い込んでしまうと,
「絶対に起こるはずのない」事故・暴
走,公害などが起こるという,起こり得ないことが起こるのである.
このような問題解決の手法を,ここでは仮にシステム工学的アプローチと呼ぶ.こ
の手法において,技術者の力量の差がもっとも大きく現れるのは「簡単で表現力豊か
な数学モデル」を構築する過程である.驚くほど簡単で,かつ表現力豊かなモデルと
して名高いものに,オームの法則やニュートンの法則などがあり,より普遍的なもの
に,正弦波,線形性,定常性などがある.
しかし,まったく新しい強力なモデルを創出するのは天才の仕事である.そうでな
い人は,表現力が大きく簡単に解析できる多くのモデルについて,その得意分野,使
い勝手,制約条件などの本質を理解してストックとしてもっており,問題に応じて適
材適所に使うセンスを養っておくことが肝要である.
問題が与えられたとき,考えられるモデルの選択は実に多岐にわたる.たとえば,
発電機や増幅器などの物理的実体の振る舞いを考察するのに,確定モデルとするか確
率モデルとするか,定常現象モデルとするか過渡現象モデルとするか,集中定数回路
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4
第1章
通信工学概論
モデルとするか分布定数回路モデルとするか,さらには回路理論的モデルとするか電
磁気学的モデルとするか,線形モデルとするか非線形モデルとするか,などを考察し
たい問題の性質に応じて決めていかなければならない.
1.2
通信システム
図 1.2 に示すように,通信システムとは,情報源から出た情報を,それを必要とし
ている受信者まで運ぶために設けられるシステムである.たとえば,手紙,のろし,
電話,ラジオ,インターネットなどが,この定義にあてはまる.
しかし,工学的にうまく設計されたシステムといえるためには,より正確に,より
早く,より安価に情報を運ぶものでなければならない.すると,今日の技術では何と
いっても電気的手段 (光を含む) によるものになる.このようなわけで,以前はわざわ
ざ電気通信システムといわれていたものが,いまでは単に通信システムといわれるこ
とが多いのである.
図 1.2
通信システム
物質でもエネルギーでもない,この,情報といわれるものに関する,理論的・定量
的な考察は,情報理論という体系にまとめられている.しかし,通信システムの基礎
的な学習に際しては,情報という抽象的なものよりも,通報と呼ばれる,情報を含ん
だ何らかの物理的実体から,さらには,通報を表す電気的波形,すなわち信号 から議
論をスタートさせた方が便利である.したがって,以下本書では,情報源や受信者の
性質などについては,ほとんど扱わない.
通報には,音声や画像などの,時間的にもまた値としても連続な量,コンピュータ
出力などの離散量の系列,アナログ計測値の系列など,種々の形態のものがある.通
信システムによって運ばれる量がアナログ量であるとき,受信された通報の質は忠実
度 (たとえば信号対雑音電力比:SN 比) によって評価される.一方,ディジタル量の
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1.2 通信システム
5
ときには,受信された通報の質は誤り率 によって評価される.
図 1.2 に示すように,通信システムの中身を拡大して見てみると,情報源から与え
られる物理量 (通報) が電気量でない場合には,これを電気量に変換する入力変換器が
必要であり,受信側では逆の変換を行う出力変換器が必要である.変換器の例として
は,各種センサやブラウン管,マイクロフォン,磁気ヘッド,スピーカなどがある.
しかし,これらは (電気) 通信システムの外にあるものであり,本書では扱わない.
すなわち,本書では,電気信号が与えられたとし,これを受信側で再現する問題のみ
を考える.ただし,実際の通信システムを設計する際には,この変換器の性能を念頭
に置くことを忘れてはならない.歪みの大きいマイクロフォンの出力を,高忠実度
(Hi–Fi) システムによって伝送しても意味がない.受信後のスピーカについても同様
である.
ただし,これらの変換器の設計・解析に用いられる手法には,本書で学ぶ通信工学
における手法と共通する点が非常に多いことに注意されたい.このことは,オーディ
オテープや CD など,情報の記録・再生装置においても同様である.
図 1.2 に戻って,(電気) 通信システムの中身をさらに拡大してみると,システムは
送信機・通信路・受信機からなっていることがわかる.通信システムにおける信号の
伝送を妨害する雑音や干渉は,すべて通信路において混入するものとするのが,この
分野での常用手段である.
本書の立場としては,それらの妨害の性質と量が与えられているとき,より正確・
迅速,かつ経済的に情報を伝達できるように送信機と受信機を設計することになる.
このように,本書では通信路は与えられたものとするが,変換器の場合と異なり,(電
気) 通信システムの内側にあるので,これをまったく切り捨ててしまうわけにはいか
ない.
ところで,通信工学の分野では,通信路という用語を広く柔軟に用いる慣習なので,
初学者には注意が必要である.すなわち,そのときの問題にとって興味のある送信側
の最終部分から,対応する受信側の最初の部分までの間に挟まっている部分すべてを,
(広義の) 通信路と呼ぶことが多いのである.たとえば,無線機のアンテナや給電線を
通信路に含めることはしばしば行われる.無線周波数部や中間周波数部など,物理的
には明らかに送・受信機の一部であるものも,通信路の一部としてモデル化した方が
取り扱いが便利な場合も多い.
ここで,通信システムの基本構成要素の役割をまとめておくと,
・送信機:入力信号が,与えられた通信路をうまく通過できるように,すなわち,
通信路に整合するように,信号に種々の処理をほどこす.
・通信路:送・受信機間の橋渡しをする.
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6
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第1章
通信工学概論
・受信機:送信機で行った処理の逆を行い,元に戻す.
となる.
送信機での処理では,とくに,変調 ・符号化・多重化などが重要である.通信路で
は,信号が減衰し,また,先に述べたように,雑音や干渉,さらには歪みの問題が発
生する.
これら,信号の伝送を妨害する主な要素の性質をまとめておくと,
・減衰:信号が弱まる.しかし形は変わらない.
・歪み:システムの非線形性,周波数特性などにより,波形が変わる.
・干渉:ほかの通信系の信号が混入する.
・雑音:信号と無関係なランダムな電気信号が混入する.
となる.
ほかにも,受信信号強度が変動するフェージングや,受信信号の周波数が変動する
ドップラシフトなど,信号の伝送に悪影響を与える種々の重大な問題があるが,本書
では,もっとも基本的な上記の 4 種のみを扱う.
ここで,通信工学など信号を扱う分野では,信号 v(t) と av(t − td ) とは,形が同じ
であるといわれることに注意されたい.すなわち,定数倍と時間遅れは歪みではない
のである.通信路における信号の減衰とは,この a が 1 以下 (通常きわめて小さい) に
なることをいう.これは,無線伝送路での電波の広がりや,大気中の水蒸気による吸
収,ケーブルでの電力消費などによる.
減衰自体は信号の形を変えないので,受信後に 1/a 倍に増幅してやれば何の問題も
ないように思われる.ところが実際は,減衰は大きな問題である.それは,信号に混
入する本来きわめて微弱な雑音や干渉が,信号が減衰しているために,対抗馬として
前面に浮かび上がってくるからである.
雑音には,熱雑音やショット雑音など通信システム内部で発生する内部雑音と,空
電・銀河雑音や電気機器内での放電・スイッチングによる雑音などの外部雑音がある.
また,自然雑音と人工雑音に分けることもできる.しかし本書では,雑音の発生機構
などを詳述することはせず,与えられた量の与えられた性質の雑音が加わるものとし
て,その信号伝送への影響について考察していく.
歪みや干渉は,技術・コスト面は別として,理論的には完全に除去が可能なので,
通信システムにとってもっとも根本的な妨害要素は雑音ということになる.
情報理論の創始者シャノン (Shannon,C.E.) は,通信システムの性能を規定するの
は,雑音と,システムが利用できる通信路の帯域幅 B であることを述べた.すなわ
ち,ここでは詳細は略すが,ある条件の下で,通信路を通して誤りなく伝送できる情
報の最大伝送速度 C は,
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7
1.3 通信工学の世界
S
C = B log 1 +
N
(1.1 )
で与えられる.ここに,S ,N は受信信号および雑音の電力である.
この式が表している,帯域幅 (B) と信号電力 (S) の間のトレードオフ (同じ量の情
報を運ぶのに,B を大きくすれば,S は小さくてもよく,その逆もなりたつこと) は,
多くの通信システムにおいて実際にも見られることであり,通信の一つの本質を表し
ている.帯域幅が広いと,信号波形の早い変化を表現でき,したがって,同じ時間内
に多数の波形を区別して送れ,また,信号電力が雑音電力に比べて大きければ,より
多くの波形が区別可能であることは直感的にも明らかである.
1.3
通信工学の世界
図 1.3 に,広く通信工学といった場合にカバーされる技術・理論の全体を示した.
図 1.3
通信工学の世界
通信工学を支える技術において,変・復調器,増幅器,フィルタ,伝搬路,信号処理
機器などのハードウェアの占める比重はきわめて大きく,最近ではとくに CPU · DSP
やメモリなどのディジタル回路の比重が大きくなりつつあるが,本書では通信工学の
ソフトウェア面,中でも,図中に信号理論と示した部分を主に扱うことにする.
図中の通信網理論とは,1 か所からほかの 1 か所への信号伝送システム (図 1.2) を
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104
5
角度変調通信方式
前章の線形変調通信方式では,正弦波の三つのパラメータのうち,振幅を送りたい基底
帯域信号に関係づけて変化させた.本章では,ほかの二つ,すなわち,周波数あるいは位
相を変化させる方式について考察する.これらは,それぞれ周波数変調 (FM) および位
相変調 (PM) 通信方式と呼ばれるが,まとめて角度変調通信方式とも呼ばれる.
前章で繰り返し述べたように,線形変調方式では本質的に,変調によって基底帯域信号
スペクトルを搬送波周波数の近傍に平行移動し,復調によって元に戻すのみであった.し
たがって,信号帯域幅も W (SSB),2W (DSB,AM) というように基底帯域信号の帯
域幅 W に依存し,2W 以上になることはなかった.
ところが,非線形変調方式である角度変調の場合,変調を受けた波のスペクトルは基底
帯域信号のスペクトルと簡単な関係にはない.また,帯域幅は変調の深さによって変わり,
広い帯域幅をもつように設計されたときには,線形変調方式に比べて,雑音や干渉を大幅
に抑圧できることを第 8 章で学ぶ.
角度変調方式は,その本質的な非線形性のために数学的扱いが困難なので,本章の議論
は前章に比べて近似・直感的な説明に頼る度合いが多くなる.しかし,この非線形性のた
めに,角度変調を採用した通信システムは,凡庸な線形変調方式では不可能であった種々
の興味深い性質をもつのである.
<本章の学習目標>
① 瞬時周波数の概念を理解し,周波数変調,位相変調の時間領域表現を理解する.
② 角度変調波のスペクトルと帯域幅に関する近似的議論を理解する.
③ 角度変調波の変調法,復調法の概要を理解する.
④ 各種連続波変調における干渉波の影響について理解する.
5.1
周波数変調と位相変調
( 1 ) 正弦波の拡張
角度変調通信方式を理解するために,搬送波を表す Ac cos(ωc t + φ) なる関数 (正弦
波) を一般化した関数 Ac cos θc (t) を考える (図 5.1).
正弦波は,この一般化した関数において角度 θc (t) が t の一次関数 (ωc t + φ) である
とき,すなわち,角度の増加割合 dθc (t)/dt が一定値 ωc である場合である.これは等
速回転するフェーザに相当する.
一般の場合を考えると,
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5.1 周波数変調と位相変調
図 5.1
105
Ac cos θc (t) のフェーザ表現
dθc (t)
(5.1 )
dt
は,時刻 t にみた時の角度の (瞬時) 増加割合であり,瞬時角周波数と呼ばれる.
ωi (t) =
一方,
1
1 dθc (t)
ωi (t) =
(5.2 )
2π
2π dt
は,瞬時周波数である.瞬時周波数は,もしフェーザが,その観測した瞬間と同じ速
fi (t) =
度で回転しつづけるとしたら表すであろう正弦波の周波数であるといえる.
角度変調を考える場合には,搬送波周波数を fc = ωc /2π として,
θc (t) = ωc t + φ(t)
(5.3 )
とおくと便利である.
この場合,瞬時周波数は,
1 dφ(t)
= fc + F (t)
fi (t) = fc +
(5.4 )
2π dt
となる.ここに,F (t) は瞬時周波数偏移と呼ばれ,基準となる搬送波の周波数と時刻
t における瞬時周波数の差を表している.
このとき,式 (5.3 ),(5.4) から,
t
θc (t) = ωc t + 2π
F (λ) dλ + φ(t0 )
t0
となることがわかる.ここに,積分の下限 t0 と定数 φ(t0 ) は初期角度に関するもので
あるが,以後の考察には本質的に関係しないので,以下では,
t
θc (t) = ωc t + 2π
F (λ)dλ
(5.5 )
と書くことにする.
( 2 ) 周波数変調と位相変調
ここでも,送られる基底帯域信号 x(t) は平均 0 で,|x(t)| 1 に正規化されており,
また最高周波数は W であるとする.
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106
第 5 章 角度変調通信方式
位相変調では,式 (5.3 ) の項 φ(t) を,
φ(t) = φ∆ x(t)
(5.6 )
と,信号 x(t) に比例して変化させる.
ここに,正定数 φ∆ は,搬送波 Ac cos ωc t からの最大位相偏移である. ±π 以上の位
相差は区別できないので,φ∆ には,
φ∆ π
(5.7 )
という制限がある.もちろん,位相差が ±π を越えるたびにそのことを記憶しておく
方式とすればこの制限は不要であるが,一般に PM では式 (5.7 ) のように仮定される.
式 (5.6 ) から,PM 波は,
xc (t) = Ac cos {ωc t + φ∆ x(t)}
(5.8 )
と書けることがわかる.
一方,周波数変調では,式 (5.4 ) の瞬時周波数偏移 F (t) を信号 x(t) に比例して変
化させる.すなわち,
F (t) = f∆ x(t)
(5.9 )
とする.正定数 f∆ は,周波数偏移と呼ばれる.
f∆ には f∆ fc という制限はあるが,一般に fc は十分に大きくできるので,PM
の場合の式 (5.7 ) のような制限は事実上ないといえる.
式 (5.4 ) から,FM の瞬時周波数は,
fi (t) = fc + f∆ x(t)
であり,FM 波形は式 (5.5 ) から,
t
xc (t) = Ac cos ωc t + 2πf∆
x(λ)dλ
(5.10 )
(5.11 )
となることがわかる.
以上の PM,FM の定義式 (5.8 ),(5.11) は,帯域通過信号の包絡線 – 位相表現 (た
だし,包絡線は一定) になっていることに注意されたい.
( 3 ) 角度変調波の性質
式 (5.8 ) と (5.11) を比べると,両者には簡単な関係があることがわかる.すなわち,
図 5.2 に示したように,信号 x(t) を積分した後に PM 変調すれば FM 波が得られ,逆
に,x(t) を微分した後に FM 変調すれば PM 波が得られる.
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5.1 周波数変調と位相変調
FM と PM にはこのような密接な関係があるので,両者の性質には似た点が多いが,
以下にみるように,異なる点もまた多いので注意を要する.しかし,少なくとも解析
法には共通する部分が多く,一方の解析結果の簡単な変形により,他方に対する結果
を導くことができる場合が多い.
図 5.2
FM と PM の関係
一方,これらの角度変調方式は,前章の線形変調方式とは多くの点で異なった性質
をもっている.
重大な相違点の一つは,先にも触れた帯域幅の違いであるが,さらに,角度変調波
では振幅が一定で,したがって,信号電力が,
S=
A2c
2
(5.12 )
と,一定である点が線形変調とは大きく異なる.
振幅が一定であると,電力効率のよい非線形増幅器が使えるなど,装置の構成上有
利になることが多く,この特徴に注目して角度変調が採用される場合も多い.
ここで,FM,PM をより直感的に理解するために,以上の定義を,これまでも扱っ
てきた円形陸上トラックのたとえからみてみよう.
AM の場合は,ランナーの周回速度は一定 (もし変動したらそれは雑音や干渉のせ
いである) で,ランナーが円周の外にふくらんだり,内に入ったりする様子が信号 x(t)
を表すのであった.
一方,PM および FM では,ランナーはきちんと円周上を走る (ここでも,円周か
らの外れは雑音や干渉のせいである).しかし,これらの場合には,ランナーの周回速
度 (ペース) が変動し,その変動が信号 x(t) を表すのである.
ただし,その表し方に違いがある.すなわち,PM では,一定速度で走る観測者 (搬
送波に相当する.ペースメーカーといってもよい) との,円周上の位置の差が情報に
対応している.したがって,半周以上リードしたりされたりすると,本当の差 (本当
の信号値) がわからなくなる.
一方,FM では,x(t) に対応しているのは,差ではなく,差の広がる (縮まる) 速さ
である.たとえば,現在,ランナー (信号) が,観測者 (搬送波) にいくら差をつけられ
ていても,その差が縮まりつつあるときは,x(t) の正の値に対応しているのである.
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108
第 5 章 角度変調通信方式
このように,FM は現在のスピード差 (位置の差の微分) に価値をおく,いわば「刹
那主義者」であり,PM はあくまでも現在の位置の差 (これまでのスピード差の積分)
にこだわる「実績主義者」なのである.このことが,以下にみていく両者の性質の違
いの元になっている.
例 5.1
PM,FM 波形の例
角度変調波の形を信号 x(t) に結び付けて直感的に理解するには,一般に FM の方がわ
かりやすく,PM の場合は,図 5.2 に基づいて x(t) の微分波形での FM を考えるとよい.
たとえば,図 5.3 の (a) に示す正弦波 x(t) を PM,FM した場合の波形を考えてみよう.
図 (b) の FM 波は,定義式 (5.10 ),すなわち,基底帯域信号 (a) の大小に比例して瞬時
周波数が変化することから容易に理解できる.ところが,定義式 (5.6 ),すなわち,位相が
信号 (a) に比例して変化することから,図 (c) の PM 波を理解するのは容易ではない.一
方,図 (a) を微分した波形図 (d) を FM した波形として PM 波形を描くのは容易である.
図 5.3
FM,PM 波形の例
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5.2 角度変調波のスペクトルと帯域幅
5.2
109
角度変調波のスペクトルと帯域幅
前節では角度変調波を時間領域で考察したが,本節ではこれを周波数領域で眺めて
みよう.
最初に注意しなければならないのは,瞬時周波数という概念は周波数成分という概
念とは異なるということである.前者は波形を時間領域で表現するために用いるも
のであって,時間とともに変動しうるが,後者は波形を周波数領域で表現したもので
ある.
たとえば,図 2.34 の FM パルスは,図 (a) にみるように,瞬時周波数として fc と
fc + fd しかもたない.しかし,同図 (b) にみるように,そのスペクトルは (確かに,
fc と fc + fd 付近に集中はしているが) 広い範囲にわたっている.周波数の切り替わ
る瞬間の波形の急変を周波数領域で表現するためには,理論上無限に高い周波数成分
まで必要なのである.
この瞬時周波数と周波数の混同から, FM は最初,AM より狭い帯域幅で信号を伝
送できる可能性があると考えられた.たとえば,瞬時周波数を基底帯域信号の値に比
例して,搬送波周波数の上下 1 kHz の範囲で変動させれば,たとえ帯域幅 5 kHz の信
号でも,2 kHz の帯域幅で伝送できると考えられたのである.
事実は,本節の (2) にみるように,最小でも AM と同じ帯域幅が必要なのである.
このことは 1922 年にカーソン (Carson,J.R.) によって指摘された.FM が雑音や干
渉の抑圧に関して AM にはない長所をもつことは,やっと 1936 年になって,アーム
ストロング (Armstrong,E.H.) によって見出されたのである.
( 1 ) トーン変調角度変調波のスペクトル
角度変調システムは非線形なので (このことは本節の (2) で説明する),一般の基底
帯域信号に対して変調波のスペクトルを求めるのは容易ではない.そこで,まずトー
ン変調,すなわち正弦波 cos ω1 t により変調した FM 波
t
xc (t) = Ac cos ωc t + 2πf∆
cos ω1 λdλ
f∆
= Ac cos ωc t +
sin ω1 t = Ac cos {ωc t + β sin ω1 t}
f1
(5.13 )
を考える.これは,sin ω1 t による φ∆ = β の PM 波ともみなせる.
ここに,
β = f∆ /f1
(FM),
β = φ∆
(PM)
は,xc (t) と搬送波の最大位相差であり,変調指数と呼ばれる.
(5.14 )
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110
第 5 章 角度変調通信方式
変調指数はトーン変調に対してのみ定義され, FM の場合には,変調の深さである
周波数偏移 f∆ と基底帯域信号の周波数 f1 による.一方,PM の場合には,変調の深
さ φ∆ そのものである.
トーン変調を一般的に扱うには,これまでのように,正弦波 cos(ω1 t + φ) を考える
べきであるが,以下にみるように,φ = 0 の場合ですら扱われる式がかなり複雑にな
り,一般の φ の場合には非常に複雑になるので,ここでは φ = 0 の場合のみを考察す
ることにした.これは,角度変調システムの理論的考察がいかに困難であるかを予見
させるに充分である.
式 (5.13 ) の信号のスペクトルを求めるために,これを直交成分表現
xc (t) = Ac {cos(β sin ω1 t) cos ωc t − sin(β sin ω1 t) sin ωc t}
(5.15 )
に変形する.
ここからさらに先に進むためには,本書にはこれまで現れたことのない「三角関数
の三角関数」を処理しなければならない.
解析に入る前に,そのような関数の性質を直感的につかんでおこう.図 5.4 は,
cos(β sin ω1 t) を cos x の x が時間とともに β sin ω1 t にしたがって変化するものとして
説明したものである (簡単のため β < π/2 の場合を図示した).
図 5.4
周期関数 cos(β sin ω1 t)
この図から,この関数は,かなり高調波を含んでいそうであるが,基本周波数が 2f1
の周期関数であることは明らかである.
そこで,定義式 (2.9 ) を用いて,この周期関数のフーリエ級数展開を試みると,残
念ながら,その係数は陽には求まらないことがわかる.
しかし,n 次の第 1 種ベッセル関数
π
1
Jn (β) =
ej(β sin λ−nλ) dλ
2π −π
(5.16 )
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230
10
帯域通過ディジタル通信方式
ディジタル信号が,同軸ケーブルなどによって基底帯域のまま伝送される場合もあるが,
電話回線や無線通信路などの帯域通過通信路を通して伝送される場合の方が格段に多く,
その場合には,伝送路に適した周波数の正弦波を搬送波として用い,その振幅・位相・周
波数を基底帯域ディジタル信号によって変調することが行われる.これを帯域通過ディジ
タル通信方式という.
帯域通過システムの場合にも,前章で扱った基底帯域システムの場合と同様に,システ
ムにとってとくに重要なのは,信号の占める帯域幅と雑音による誤り率である.したがっ
て,なるべく狭い帯域幅を占め,かつ符号間干渉のないように整形された帯域通過パルス
波形を用いることは,もちろん重要なことである.
しかし本章では,問題をあまり複雑にしないで,帯域通過システムによるディジタル信
号伝送の本質を理解するために,各パルスが時間 T 内に限られている場合を主に扱う.ま
た,加わる雑音としては主に白色ガウス雑音を考え,さらに,伝送される信号はすべて等
確率で独立に現れるとする.
基底帯域ディジタル信号波形を AM·PM·FM したものはそれぞれ,ASK (振幅シフ
トキーイング) ・PSK (位相シフトキーイング) FSK (周波数シフトキーイング) 方式
と呼ばれ,帯域通過ディジタル通信の基本となるものである.また最近では,帯域幅の節
約のために,AM 的な面と PM 的な面を合わせもつ QAM 方式もよく用いられている.
本章では,まず 10.1 節と 10.2 節で,帯域通過ディジタル信号のスペクトルと最適受信
機・誤り率などに関して,最初にまとめて述べておくべき二,三の事柄を扱う.これらの
節は,最初にざっと目を通しておき,後に具体的に必要になったときに改めて本格的に読
み直すと,理解が容易であろう.
次に,各種の基本的なディジタル変調方式を紹介し,その最適復調法と誤り率などを考
察する.その後,これらの方式に対する,最適ではないがよく用いられる復調法について
簡単に紹介する.
<本章の学習目標>
① 帯域通過ディジタル信号の時間領域表現とその電力スペクトルについて理解する.
② 帯域通過ディジタル信号の波形と信号点配置図との関係を理解する.
③ 帯域通過ディジタル信号に対する整合フィルタと相関受信について理解し,それ
らによる最適受信機の誤り率の導出法を理解する.
④ 各種の帯域通過ディジタル通信方式の定義と性質について理解する.
⑤ 各種の同期復調,非同期復調帯域通過ディジタル通信方式の誤り率の導出法と,誤
り特性について理解する.
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2007/3/5(14:24): 4 校
10.1 帯域通過ディジタル通信システム
10.1
231
帯域通過ディジタル通信システム
( 1 ) 帯域通過ディジタル信号の表現と電力スペクトル
当然ながら,帯域通過ディジタル信号 xc (t) も,帯域通過信号としての包絡線 – 位
相表現,直交成分表現をもつ.便宜のために再掲しておくと,
xc (t) = A(t) cos{ωc t + φ(t)} = Ac {xi (t) cos ωc t − xq (t) sin ωc t}
(10.1 )
である.
ASK では,φ(t) は一定で,A(t) が情報を運ぶ.一方,PSK と FSK では,A(t) は一
定で φ(t) が情報を運ぶ.また,QAM では,A(t),φ(t) ともに情報により変化する.
ところが,これらの変調方式の中で,FSK 以外のものは多くの共通点をもってい
る.その原因は,それらの方式では,式 (10.1 ) の同相成分 xi (t),直角成分 xq (t) が,
送信すべきディジタルデータに簡単な形で関係しているからである.
すなわち,後に学ぶように,FSK の場合以外,信号波形は,
!
∞
∞
xc (t) = Ac
ak p(t − kT ) cos ωc t −
bk p(t − kT ) sin ωc t
k=−∞
(10.2 )
k=−∞
と書ける.ここに,ak ,bk は送られるデータから決まる実数値であり,時間パラメー
タ k をもつ離散定常確率過程である.ただし,ASK や 2 元 PSK のように,同相成分
のみからなるシステムの場合には bk = 0 である.
式 (10.2 ) は,
xi (t) =
∞
ak p(t − kT ),
k=−∞
xq (t) =
∞
bk p(t − kT )
(10.3 )
k=−∞
を意味し,同相成分と直角成分がともに,前章のディジタル PAM であることを示し
ている.
xc (t) は,同じ基本パルス波形 p(t) (以下,とくに断らないかぎり矩形波とする) を
もち,振幅 ak ,bk をもつディジタル PAM 波形が,同じ周波数をもち,直交する二つ
の正弦波,すなわち,cos ωc t と − sin ωc t を別々に DSB 変調したものの和であるとい
える.
10.3 節以降にみるように,送信データと ak ,bk との関係づけの違いにより,xc (t)
は ASK,PSK あるいは QAM となるのである.したがって,これらの場合の変調器
は図 10.1 のようにして実現できる.
ここで,FSK 以外の方式の場合に役立つ,帯域通過ディジタル信号の電力スペクト
ル密度の性質について述べておく.
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232
第 10 章
帯域通過ディジタル通信方式
図 10.1
ASK,PSK,QAM の変調器
10.3 節以降にみるように,それらのシステムでは一般に,式 (10.1 ) の直交成分表
現において xi (t),xq (t) は無相関で,平均値 0 の定常確率過程となる.この条件がな
りたつときには,xc (t) の電力スペクトル密度は xi (t),xq (t) の電力スペクトル密度
Gi (f ),Gq (f ) を用いて,
Gc (f ) =
A2c
{Gi (f − fc ) + Gi (f + fc ) + Gq (f − fc ) + Gq (f + fc )}
4
(10.4 )
と書ける.
同相成分のみからなる信号の場合には Gq (f ) = 0 なので,上式は,
Gc (f ) =
A2c
{Gi (f − fc ) + Gi (f + fc )}
4
(10.5 )
となる.
また,xi (t),xq (t) とも同じパルス波形 p(t) に基づき,しかも ak ,bk が同じ確率的
性質をもつときには,Gi (f ) = Gq (f ) となるので,式 (10.4 ) は,
Gc (f ) =
A2c
{Gi (f − fc ) + Gi (f + fc )}
2
(10.6 )
となる.
式 (10.3 ) の基底帯域信号 xi (t),xq (t) はディジタル PAM 波形なので,その電力ス
ペクトル密度 Gi (f ),Gq (f ) は式 (9.4 ) で与えられる.
( 2 ) 信号点配置図
次に,信号の誤り率特性に深く関係する信号点配置図について述べておく.
M 元システムの信号点配置図とは,数学的には,M 個の信号波形のなすベクトル
空間の正規直交基底を定め,各信号波形をその基底に対する座標点として描いた図の
ことである.
ASK,PSK,QAM など,後の多数の例にみるように,式 (10.2 ) で表される信号の
場合には,正規直交基底として,エネルギー 1 をもち直交する二つの信号,
main :
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10.2 帯域通過信号に対する整合フィルタ
2/T cos ωc t,
−
2/T sin ωc t
233
(0 t < T )
をとるとよい.
システムの誤り率特性は,信号点配置図における信号点間の距離によって決まっ
てしまうことが,後に明らかにされる (式 (10.29 )).FSK の信号点配置図については
10.6 節で述べる.
10.2
帯域通過信号に対する整合フィルタ
( 1 ) 帯域通過信号に対する整合フィルタ
次に,帯域通過システムにおける整合フィルタと最適受信方式について考える.そ
のために,9.8 節を復習してみると,実は,どの議論も対象とする信号パルス p(t) を
基底帯域信号に限ってはおらず,すべてが帯域通過信号に対してもそのまま適用でき
ることがわかる.
そこで,継続時間 T ,振幅 Ac =
2E/T ,周波数 fc = n/T (n は正整数) の正弦波
信号
(0 t < T )
p(t) = Ac cos(ωc t + φ)
(10.7 )
を考える (図 10.2(a)).ここに E は p(t) のもつエネルギーである.
白色雑音の中からこの信号を検出する最適フィルタ (帯域通過整合フィルタ) のイン
パルス応答 (簡単のため t0 = T とする) は,式 (9.38 ) から,
hopt (t) = KAc cos{ωc (T − t) + φ} = KAc cos(ωc t − φ) (0 t < T )
(10.8 )
となる (図 10.2(b)).ここに最後の等号は,fc = n/T より,cos ωc T = 1,sin ωc T = 0
となることから導かれる.
次に,簡単のために任意定数を K = 1 とおいて,上の p(t) に対するフィルタ出力
を求めると,0 t < T では,
y(t) = hopt ∗ p(t) =
t
Ac cos(ωc λ − φ)Ac cos{ωc (t − λ) + φ} dλ
0
t
A2c
A2c
sin{ωc (2λ − t) − 2φ}
=
t cos ωc t +
2
4ωc
0
=
A2c
A2
t cos ωc t + c sin ωc t cos 2φ
2
2ωc
(10.9 )
となる.
帯域通過信号では一般に ωc は大きな値をとるので,上の第 2 項はほとんど無視で
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234
第 10 章
帯域通過ディジタル通信方式
きる.また,T t < 2T では,上式の折り返しになることは対称性から明らかであ
り,結局 y(t) は図 10.2(c) の実線のようになる.
式 (10.9 ) は,t = t0 = T で最大値 A = E = A2c T /2 をとる.これは,式 (9.39 ) で
K = 1 とおいたものにほかならない.両側電力スペクトル密度 N0 /2 の白色雑音が加
わっているときには,サンプル値の分散は,式 (9.40 ) より,σ 2 = N0 E/2 となる.
図 10.2
例 10.1
帯域通過整合フィルタ (n = 6,φ = π/4)
パルスの有無の判定誤り率
雑音の中に上記の信号が含まれている確率が 1/2 である場合を考える.このとき,
式 (9.22 ) に関連した考察と同じ理由から,最適スレッショールド値は V = E/2 となる.
したがって,信号の有無に関する判定誤り率は,
"
∞
2
1
E
− λ2
√
e 2σ dλ = Q
Pe =
2N0
2πσ
E/2
(10.10 )
となる.
( 2 ) 同期復調と同期ずれの影響
図 10.2(c) からわかるように,帯域通過整合フィルタの場合,サンプリングのタイ
ミングのわずかなずれが大幅な信号出力の低下を招くので注意が必要である.もちろ
ん,雑音出力の統計的性質はサンプリング時刻とは無関係である.
また,受信信号と整合フィルタの位相に誤差があり,たとえば式 (10.7 ) が,
p (t) = Ac cos(ωc t + φ + θ)
であったとすると,式 (10.9 ) は,
(0 t < T )
(10.11 )
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10.2 帯域通過信号に対する整合フィルタ
y (t) =
A2c
A2
t cos(ωc t + θ) + c cos(2φ + θ) sin ωc t
2
2ωc
235
(10.12 )
となる.このときも,雑音出力の統計的性質には何の影響もないことはもちろんで
ある.
このように,信号とフィルタの間で位相差 θ があると,サンプリング時刻での信号
サンプル値は cos θ 倍に減少してしまう.たとえば,図 10.2(c) には θ = π/2 の場合の
フィルタ出力の信号分が波線で示されている.このとき,サンプリング時刻 t0 = T で
のサンプル値は 0 となり,信号出力はないことになってしまう.
このように,帯域通過システムでの整合フィルタの利用には,搬送波周期の何十分
の一といったオーダーのサンプリング (シンボル同期) 精度や,搬送波の位相合わせ
(搬送波同期) が必要であることがわかる.
受信された帯域通過ディジタル信号の搬送波の周波数と位相が完全にわかっている
ときの信号パルスの検出法を同期復調という.
なお,変調方式によっては,整合フィルタ出力の包絡線を求めた後にサンプリング
を行う非同期復調を用いることができる.このとき搬送波同期は必要なく,またサン
プリング時刻の精度も基底帯域方式なみでよいことが,図 10.2 (c) からわかる.
このように,一般に非同期復調は構成が簡単であるが,後に 10.7,10.8 節でみるよ
うに,同期復調に比べて出力に雑音の影響が大きく現れ,誤り率がより大きくなる.
( 3 ) 相関器による同期復調
各信号パルスが時間 T 内に収まっている場合には,整合フィルタに等価な相関器を
用いた受信方式もよく用いられる (式 (9.43 )).
相関器は,各信号区間の始まりから,入力と受信側で保持している複製信号 (レプ
リカ) pr (t) との積の積分を計算し始め,T 秒後に,その積分値を元にして信号の検出
を行う.その後 (事実上瞬時に),積分値を 0 にリセットして,次の区間のパルスの検
出を始める.
図 10.2(a) のパルスに対する相関受信機の出力波形を,位相誤差 θ があるとして求
めると,
t
y(t) =
=
Ac cos(ωc λ + φ + θ)Ac cos(ωc λ + φ) dλ
0
A2c
2
t cos θ +
A2c
{sin(2ωc t + 2φ + θ) − sin(2φ + θ)}
4ωc
(10.13 )
となる.
したがって,最終的な相関の値は E cos θ となる.θ = 0 (位相誤差なし) および π/4
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236
第 10 章
帯域通過ディジタル通信方式
図 10.3
相関器の出力
の場合を,図 10.3 に示す.
このように,相関器による受信の場合も,位相ずれ θ による信号サンプル値の劣化
は整合フィルタの場合と同じく cos θ 倍である.
( 4 ) 直交整合フィルタによる同期復調
(0 t < T ) の有無を判定するには,基
このように,一つの信号 Ac cos(ωc t + φ),
底帯域システムの場合とまったく同様に,その信号に整合したフィルタ,または相関
器を用いればよい.
しかし,Ac や φ の異なる M 個の信号からなる帯域通過 M 元システムの復調にお
いては,それらの個々に整合した M 個のフィルタ (相関器) を用いなくても,同相成
分用の整合フィルタ (相関器) と,直角成分があるときには,直角成分用の整合フィル
タ (相関器) を用意して,両者の出力を総合してパルスの最適判定を行うことができ
る.以下,整合フィルタの場合を例として,この点を一般的に考察しておこう.
そのために,まず式 (10.7 ) の信号
p(t) = Ac cos(ωc t + φ) = Ac cos φ cos ωc t − Ac sin φ sin ωc t
(0 t < T )
(10.14 )
を考える.
"
ei (t) =
2
cos ωc t,
T
"
eq (t) = −
2
sin ωc t
T
(0 t < T )
(10.15 )
は,同相,直角の正規基底信号なので,信号点配置図上での p(t) の座標は,
"
"
%√
&
√
T
T
cos φ, Ac
sin φ =
(xi , xq ) = Ac
E cos φ, E sin φ
(10.16 )
2
2
と表せる (図 10.4(a)).
ここで,同相の正規基底信号 ei (t) に対する整合フィルタを考える (簡単のため
K = 1,t0 = T とする).すると,そのインパルス応答は,
"
"
2
2
cos ωc (T − t) =
cos ωc t
hopt i (t) =
(0 t < T )
T
T
(10.17 )
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277
索
引
〈記号・英数字〉
2 元システム (binary system) ................... 206
2 元信号 (binary signal) ........................... 197
AD 変換 (analog to digital conversion) ..... 129
AFC (automatic frequency control) ......... 100
AGC (automatic gain control)................. 100
ARQ (automatic repeat request) ............. 199
ASK (amplitude shift keying) ................. 230
BCH 符 号 (Bose-Chaudhuri-Hocquenghem
code) ............................................... 202
BPSK (binary PSK) ............................... 243
CDMA (code division multiple access) 方式
......................................................... 99
CW 変調 (continuous wave modulation) ...... 8
DA 変換 (digital to analog conversion) ...... 129
DEPSK (differentially encoded PSK) ....... 258
FEC (forward error correction) ............... 199
FSK (frequency shift keying) .................. 230
mod2 (modulo 2)mod2 加算器 ................. 202
M 元 PSK (M -ary PSK) 方式 .................. 243
M (> 2) 元システム (M -ary system) ......... 206
M 相 PSK(M -phase PSK) 方式 ................ 243
NRZ(non-return to zero) ........................ 206
OOK (on-off keying) .............................. 241
PCM 電話 (PCM telephony) .................... 145
PSK (phase shift keying) ........................ 230
QPSK (quadrature PSK) ........................ 243
RS 符号 (Reed-Solomon code) .................. 202
RZ(return to zero) ................................. 206
〈あ
行〉
アイパターン (eye pattern) ....................... 214
圧縮器 (compressor) ......................... 141, 144
圧伸器 (compander) ................................ 144
誤り率 (error rate) ..................................... 5
アルファベット (alphabet)........................ 196
暗号化 (encryption) ................................... 10
安全性 (security) ....................................... 10
アンチエリアシングフィルタ (anti aliasing filter)
....................................................... 135
位相 (phase) ............................................. 13
スペクトル (phase spectrum) .......... 14
同期ループ (PLL;phase-lock loop) .. 123
歪み (phase distortion) ................... 57
変調 (PM;phase modulation) ......... 8
イメージ周波数 (image frequency) ............. 101
因果律 (causality) ..................................... 53
インパルス応答 (impulse response) .............. 52
ウィーナ・ヒンチン (Wiener-Khinchine) .... 155
上側波帯 (upper sideband) ......................... 79
エネルギースペクトル密度 (energy spectral density) .................................................. 30
エルゴード性 (Ergodicity) ........................ 158
エントロピー (entropy) ............................ 197
エンファシス (emphasis) .......................... 191
折り返し雑音 (aliasing noise) .................... 135
〈か
行〉
開口効果 (aperture effect) ........................ 134
回線収支解析 (link budget analysis) ............ 68
ガウス過程 (Gaussian process) ................. 159
ガウス雑音 (Gaussian noise) ..................... 170
角周波数 (angular frequency) ..................... 13
確定信号 (deterministic signal) ................... 11
角度変調 (angle modulation) ....................... 8
確率 (probability) ................................... 156
過程 (random process or stochastic process) ................................................ 156
空間 (probability space) ............... 156
変数 (random variable) ................ 155
重ねの理 (principle of superposition) .......... 31
カーソンの法則 (Carson’s law) .................. 116
片側線スペクトル (one-sided line spectrum) .. 14
カットオフ周波数 (cut off frequency) ........... 63
ガードタイム (guard time) ....................... 139
ガードバンド (guard band) ......................... 97
過変調 (over-modulation) ........................... 77
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278
索
引
干渉 (interference) ..................................... 6
間接法 (indirect FM) ............................... 120
ギッブス現象 (Gibbs phenomenon) ............. 23
基底帯域 (audio frequency) ...................... 100
信号 (base-band signal) ................... 8
基本周波数 (fundamental frequency) ........... 18
狭帯域 FM (narrow band FM) ................. 118
狭帯域 PM (narrow band PM) ................. 118
狭帯域信号 (narrowband signal).................. 74
局部搬送波 (local carrier) ........................... 91
グレイコード (Gray code) ........................ 140
群変調 (group modulation) ........................ 98
結 合 確 率 密 度 関 数 (joint probability density
function) ......................................... 157
減衰 (attenuation) ..................................... 6
検波 (detection) ........................................ 77
広帯域 FM (wide band FM) ..................... 117
高調波 (harmonics) ................................... 20
硬判定 (hard decision) 法 ......................... 203
コサインロールオフ (cosine rolloff) スペクトル
....................................................... 213
語頭条件 (prefix condition) ...................... 198
コミュテータ (commutator) ...................... 138
〈さ
行〉
最小距離 (minimum distance)................... 201
再生中継器 (regenerative repeater) ............ 227
雑音 (noise) ............................................... 6
差動 PCM (differential PCM) .............. 9, 150
差動 PSK (differential PSK) 方式 ............. 257
差動符号化 (differential encoding) ............. 258
サバイバ (survivor) ................................. 204
残留側波帯 (VSB) ..................................... 85
通信方式 (vestigial sideband) .......... 73
時間平均 (time average) ........................... 158
試行 (trial) ............................................. 156
自己相関関数 (auto-correlation function) ... 153
事象 (event)............................................ 156
二乗余弦波 (raised cosine pulse) ................. 43
自然標本化 (natural sampling) .................. 133
下側波帯 (lower sideband) .......................... 79
時不変 (time invariant) .............................. 52
時分割多元接続 (time division multiple access)
......................................................... 99
時分割多重 (time division multiplexing) ....... 9
時分割複信 (time division duplex) ............... 99
弱定常 (wide sense stationary) ................. 160
周期 (period) ............................................ 12
信号 (periodic signal) ..................... 12
集合平均 (ensemble average) .................... 157
周波数 (frequency) .................................... 12
瞬時角
(instantaneous angular frequency) ........................................... 105
逓倍器 (frequency multiplier) ........ 120
分割多元接続 (frequency division multiple access) ......................................... 99
分割多重 (frequency division multiplexing) .................................................... 9
分割複信 (frequency division duplex)
......................................................... 99
偏移 (frequency deviation) ............ 106
変換 (frequency translation) ........... 33
変調 (FM;frequency modulation) ... 8
弁別器 (frequency discriminator) ... 122
樹状符号 (tree code) ................................ 199
受信機 (receiver) ........................................ 5
受信者 (recipient) ....................................... 4
巡回符号 (cyclic code) ............................. 202
瞬時周波数 (instantaneous frequency) ....... 105
偏移 (instantaneous frequency deviation) ............................................... 105
乗積変調器 (product modulator) ................. 82
冗長性 (redundancy) ................................. 10
情報源 (information source) ........................ 4
符号化 (source coding) .................... 9
情報発生速度 (information rate) ............... 197
情報理論 (information theory) ..................... 4
深宇宙通信 (deep space communication).... 196
信号 (signal) .............................................. 4
速度 (signaling rate) .................... 205
対雑音電力比 (signal to noise power ratio) ................................................... 68
点配置図 (signal constellation) ...... 232
伸張器 (expander) ............................ 141, 144
振幅 (amplitude) ....................................... 12
スペクトル (amplitude spectrum) .... 14
制限器 (amplitude limiter) ............ 121
歪み (amplitude distortion) ............ 57
変調 (AM;amplitude modulation) .. 8
変調通信方式 (AM) ........................ 73
シンボル同期 (symbol synchronization) ..... 211
スクランブラ (scrambler) ........................... 90
スーパーヘテロダイン受信機 (super heterodyne
receiver) .......................................... 100
スペクトルアナライザ (spectrum analyzer) ... 90
スペクトル拡散 (spread spectrum) .............. 99
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索
スレッショールド効果 (threshold effect) ..... 147
正規過程 (normal process) ....................... 159
(正規化) 電力 (normalized power) ............... 17
正弦波 (sinusoidal wave) ............................ 11
整合フィルタ (matched filter) ................... 221
ゼロクロスカウンタ (zero-cross counter) .... 123
ゼロクロスジッタ (zero cross jitter) ........... 215
線形システム (linear system) ...................... 51
線形シフトレジスタ (linear shift register) ... 202
線形歪み (linear distortion) ........................ 57
線形符号 (linear code) ............................. 202
線形変調 (linear modulation) ...................... 8
線形連続波変調 (linear CW modulation)...... 73
相加雑音 (additive noise) ......................... 171
相互相関関数 (cross-correlation function)... 152
相互変調 (cross modulation)....................... 97
送信機 (transmitter) ................................... 5
ソフトウェア無線機 (software radio) ............. 8
〈た
行〉
帯域制限通信路 (bandwidth-limited channel)
....................................................... 196
帯域通過信号 (band-pass signal) ................. 73
帯域幅 (bandwidth) ................................... 32
ダウンコンバージョン (down-conversion) ..... 90
多重化 (multiplexing) ................................. 6
たたみこみ (convolution) ........................... 37
符号 (convolutional code) ............. 202
単極 (unipolar) ....................................... 206
単側波帯 (SSB) ......................................... 85
通信方式 (single sideband) .............. 73
遅延歪み (delay distortion) ........................ 58
中間周波数 (intermediate frequency) ......... 100
中継器 (repeater) ...................................... 69
忠実度 (fidelity) ......................................... 4
中心極限定理 (central limit theorem) ........ 159
中心周波数 (center frequency) .................... 74
直接法 (direct FM) .................................. 120
直角成分 (quadrature component) .............. 75
直交関数 (orthogonal function) ................... 18
直交振幅変調 (QAM,quadrature AM) ....... 95
直交符号 (orthogonal code) ...................... 252
通信システム (communication system) ......... 4
通信路 (channel) ........................................ 5
符号化 (channel coding) .................. 9
容量 (channel capacity) ................ 199
通報 (message)........................................... 4
低域通過信号 (low pass signal) .................... 76
引
279
ディエンファシスフィルタ (deemphasis filter)
....................................................... 192
定差変調 (DM;delta modulation) ............... 8
定常 (stationary) .................................... 159
適応デルタ変調 (adaptive delta modulation)
....................................................... 149
適応等化器 (adaptive equalizer) .................. 59
デコミュテータ (decommutator) ............... 138
デシベル (deci-Bell) 値 ............................... 66
デルタ変調 (delta modulation) ................. 148
電圧制御発振器 (voltage controlled oscillator)
....................................................... 120
伝達関数 (transfer function) ....................... 54
電力制限通信路 (power-limited channel) .... 196
電力利得 (power gain) ............................... 66
等化 (equalization) .................................... 59
等化器 (equalizer) ..................................... 59
同期復調 (synchronous or coherent demodulation) ................................................. 90
同相成分 (in-phase component) .................. 75
同調 (tuning) .......................................... 100
ドップラシフト (Doppler shift) .................... 6
トレードオフ (trade-off) ............................. 69
トレリス図 (trellis diagram) ..................... 202
トーン変調 (tone modulation) .................... 79
〈な
行〉
ナイキストパルス (Nyquist pulse) ............. 212
ナイキストレート (Nyquist rate) ............... 130
軟判定 (soft decision) 法 ........................... 203
二乗変調器 (square-law modulator) ............. 82
ノッチフィルタ (notch filter) ...................... 63
〈は
行〉
バイポーラ (bipolar) ................................ 206
パイロット搬送波 (pilot carrier) .................. 94
白色雑音 (white noise) ............................. 171
波形通信路 (waveform channel) ................ 194
ハフマン符号 (Huffman code) ................... 197
パリティ検査 (parity check) ...................... 200
パリティビット (parity bit) ...................... 200
パルス位置変調 (pulse position modulation) .. 8,
136
パルス振幅変調 (pulse amplitude modulation)
................................................... 8, 136
パルス幅変調 (pulse duration modulation, pulse
width modulation) ....................... 8, 136
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280
索
引
パルス符号変調 (pulse code modulation)....... 8
パルス変調 (pulse modulation) .................... 8
搬 送 波 抑 圧 振 幅 変 調 方 式 (suppressed carrier
AM) .................................................. 81
歪み (distortion) ........................................ 6
非線形歪み (nonlinear distortion) ................ 57
ビタビ復号 (Viterbi decoding) .................. 203
ビット誤り率 (bit error rate) .................... 217
非同期復調 (non-coherent demodulation) ... 235
標本化 (sampling) ...................................... 8
周波数 (sampling frequency) ......... 130
定理 (sampling theorem) .............. 130
レート (sampling rate) ................. 130
標本間数 (sample function) ...................... 156
標本空間 (sample space) .......................... 156
標本値 (sample value) .............................. 156
標本点 (sample point).............................. 156
比率検波器 (ratio detector) ...................... 123
ヒルベルト変換 (Hilbert transform) ............. 86
フィルタ (filter) ........................................ 62
フェーザ (phasor) ...................................... 12
フェージング (fading) ................................. 6
フォスター・シーリー周波数弁別器 (Foster-Seely
discriminator) .................................. 123
(複素) フーリエ級数展開 (complex Fourier series
expansion) ......................................... 18
(複 素) フ ー リ エ 係 数 (complex Fourier coefficient) ................................................ 18
復調 (demodulation) ................................. 77
符号化 (coding) .......................................... 6
率 (code rate) .............................. 200
利得 (coding gain) ....................... 205
符号間干渉 (inter-symbol interference) ........ 65
符号系列 (code sequence) ......................... 195
符号語 (code word) ................................. 198
フラットトップ標本化 (flat top sampling) .. 133
フーリエ逆変換 (inverse Fourier transform) .. 25
フーリエ変換 (Fourier transform) ................ 25
プレエンファシスフィルタ (preemphasis filter)
....................................................... 192
フレーム (frame) ..................................... 138
フレーム同期 (frame synchronization) ....... 138
ブロック符号 (block code) ........................ 199
偏移比 (deviation ratio) ........................... 116
変換器 (transducer) .................................... 5
変調 (modulation) ...................................... 6
指数 (modulation index)................. 77
ポアソンの和公式 (Poisson’s sum formula) ... 42
包絡線 (envelope) ...................................... 74
復調 (envelope demodulation) ......... 95
補間関数 (interpolation function) .............. 132
補間フィルタ (interpolation filter) ............. 132
〈ま
行〉
マーカ (marker) ...................................... 138
マンチェスター (Manchester) 波形 ............. 207
無線周波数 (radio frequency) .................... 100
無相関 (uncorrelated) .............................. 169
メトリック (metric) ................................. 203
モールス符号 (Morse code) ....................... 197
〈や
行〉
ユニオンバウンド (union bound) ............... 255
〈ら
行〉
理想高域通過フィルタ (ideal high pass filter)
......................................................... 63
理想帯域通過フィルタ (ideal band pass filter)
......................................................... 63
理想低域通過フィルタ (ideal low pass filter) .. 63
両極 (polar) ............................................ 206
量子化 (quantization) .............................. 129
誤差 (quantization error) .............. 139
雑音 (quantization noise) .............. 139
両側線スペクトル (two-sided line spectrum)
......................................................... 15
両側波帯 (double sideband) 通信方式 ..... 73, 81
レイリーの定理 (Rayleigh’s theorem) .......... 29
連続スペクトル (continuous spectrum) ........ 25
連続波変調 (continuus wave modulation) ...... 8
漏話 (cross talk) ....................................... 97
〈わ
行〉
ワード同期 (word synchronization) ........... 200
著 者 略 歴
福田 明(ふくだ・あきら)
1967 年
1972 年
1973 年
1988 年
2006 年
東京大学工学部電気工学科卒業
東京大学大学院博士課程修了(電子工学専攻)
工学博士(東京大学)
静岡大学工学部助教授
静岡大学工学部教授
静岡大学創造科学技術大学院教授 現在に至る
[主な著書]
『流星バースト通信』コロナ社(1997)
『理工系のための応用確率論−基礎編−』森北出版(2003)
基礎通信工学[第 2 版]
© 福田 明 2007
1999 年 3 月 10 日 第 1 版第 1 刷発行
2006 年 3 月 10 日 第 1 版第 7 刷発行
2007 年 3 月 30 日 第 2 版第 1 刷発行
【本書の無断転載を禁ず】
著 者 福田 明
発 行 者 森北博巳
発 行 所 森北出版株式会社
東京都千代田区富士見 1-4-11(〒 102-0071)
電話 03-3265-8341 / FAX 03-3264-8709
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日本書籍出版協会・自然科学書協会・工学書協会 会員
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落丁・乱丁本はお取替えいたします
印刷 / エーヴィスシステムズ・製本 / 協栄製本
Printed in Japan / ISBN978-4-627-78282-2
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